- [EU]12月3日、EU理事会と欧州議会は、ロシアの天然ガス輸入を段階的に廃止する規制について暫定合意に達した。同規制は、2025年5月に欧州委員会が発表していた恒久的にロシア産化石燃料からの脱却を推進する政策コミュニケ「REPowerEU」のロードマップに基づく具体的な規制となる。
今回の規則は、ロシアからの液化天然ガス(LNG)およびパイプラインによる天然ガスの輸入に対して法的拘束力のある段階的禁止を導入するもの。
2025年6月17日以前に締結された短期契約については、LNGに関しては2026年4月25日から、パイプラインによる天然ガスについては2026年6月17日から輸入禁止措置が適用される。また、2025年6月17日以前に締結された長期契約については、LNGについては2027年1月1日から禁止され、パイプラインによる天然ガスについては2026年9月30日から禁止されるが、後者について定められた貯蔵レベルに達していない加盟国は1か月の延長が可能となっている。
ウクライナ侵略以降EUはロシアからのエネルギー輸入を大幅に削減しており、ロシアからの天然ガス総輸入割合は2021年には45%だったのに対し、2024年には19%に減少している。本規制については今後EU理事会と欧州議会によって承認され、正式に採択される必要がある。
また、12月3日、欧州委員会は、主要産業分野向けの重要原材料の確保を加速・強化し、EUのバリューチェーンを供給の混乱から守ることを目的としRESourceEU行動計画を採択。同イニシアチブは地政学的ショックから産業を守るための資金調達と具体的な手段を提供し、欧州およびそれ以外の地域で重要原材料のプロジェクトを促進し、同志国と連携してサプライチェーンの多様化を目指している。
特に、同イニシアチブの下では、2026年初めには欧州重要原材料センターを設立し、需要を集約し、戦略的原材料の共同購入と販売契約の確保を行い、重要原材料の備蓄に関するEUの協調的アプローチを構築することを目的としている。本イニシアチブにより、中国への依存を減らすことが最大の目的とされている。
- [英国/ノルウェー]12月4日、ストーレ・ノルウェー首相の訪英に際し、英国およびノルウェー政府はロシアの海中領域における脅威に対抗することを目的とした新たな防衛協定を発表した。
英国当局によると、過去2年間で英国周辺海域を航行するロシア艦船は約30%増加しており、脅威は一層高まっているという。 今回の合意の中核は統合艦隊の共同運用であり、少なくとも13隻の艦船(英国8隻とノルウェー5隻以上)により構成される艦隊が、グリーンランド、アイスランド、英国間の戦略的に重要な海域をパトロールし、ロシア海軍の活動を監視する。あわせて、重要な通信、電力、ガスを輸送する海底ケーブルやパイプラインなどの重要インフラの防衛を強化するという。
今回の協定は、2025年9月に英国がノルウェーから受注した100億ポンド規模のフリゲート艦の調達契約に引き続くものである
- [米国]労働省によると、11月29日までの1週間の新規失業保険申請件数は19.1万件(前週から▲2.7万件)だった。2022年9月下旬以来の低水準まで低下した。ただし、この週には感謝祭が含まれており、その影響によって季節調整値が歪められている可能性もある。また、11月22日までの週の継続受給者数は193.9万人(▲0.4万人)へ、2週連続で低下した。2024年同時期(187.1万人)を上回っており、足元にかけて高止まりしている。
労働市場では、雇用と解雇の双方とも低水準という状況にあるため、見た目の数字は極めて悪化しているわけではない。しかし、雇用環境の実態は悪化する方向にある。実際、ADPの全米雇用報告によると、11月の民間雇用者数は前月比▲3.2万人と、10月から減少に転じた。特に、中小企業などを中心に、雇用者数が減少した。また、チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、11月に発表された米企業の人員削減数は前月比▲53%の7.1万人だった。前年同月比では24%増で、11月単月としては22年以来の高水準を記録した。年初からの人員削減数は117.1万人(前年同期比+54%)になった。
- [イスラエル/レバノン/米国]12月3日、イスラエルとレバノンの当局者が国境のナクーラにあるUNIFIL本部で、1993年以来となる直接かつ公式な対話を実施した。長年敵対関係にある両国が、民間特使や外交官を交えて向き合うのは極めて異例であり、米国が数か月にわたり働きかけてきた調停努力の成果といえる。今回の会談は、イスラエル軍がベイルートでヒズボラの最高軍事司令官タバタバイを暗殺してから2週間も経たない時期に行われ、1年前の停戦以降で最も重大な攻撃の直後であった。
イスラエル側からは国家安全保障会議(NSC)のレスニック外交政策担当副部長、レバノン側からはカラム元駐米大使が出席し、協議は約3時間にわたって行われた。会談後、イスラエル側は「前向きな雰囲気の中、経済協力案を練ることで一致した」と発表したが、レバノンのサラム首相は、イスラエルとの外交関係正常化や経済関係構築には「程遠い」と強調した。レバノンは2002年の「アラブ和平構想」を支持し、パレスチナ国家の樹立なくしてイスラエルとの関係正常化はあり得ないとの立場を崩していない。サラム首相は「経済協議は正常化の一部であり、和平に先行することはできない」と述べ、イスラエル側の主張に明確に反論した。
一方、南レバノンでは停戦発効後もイスラエルによる空爆や小規模作戦が続き、これまでに300人以上が死亡し、うち127人以上は民間人とされる。イスラエルはヒズボラが停戦違反を続けていると主張する一方、レバノン側はイスラエル軍の越境攻撃や前哨基地の存在こそ違反だと反論している。こうした相互不信の中で、レバノンではイスラエルが再び大規模作戦に踏み切るのではないかとの懸念が高まっている。
12月4日、レバノンのアウン大統領は、次回のイスラエルとの協議を12月19日に開始すると表明し、初回協議について「前向きだった」と評価した。今回の会談は、米国仲介の下、両国が対話継続に合意し、再協議に向けて踏み出した点で象徴的な前進といえる。歴史的な敵対関係の中でごく小さな一歩に過ぎないものの、両国が新たな接点を探り始めたことは、地域情勢に慎重ながらも重要な示唆を与えている。
- [米国/コンゴ民主共和国(DRC)/ルワンダ]12月4日、トランプ米大統領はDRCとルワンダ間の「ワシントン平和繁栄協定」の調印式を主催した。トランプ大統領の名が新たに冠された米国平和研究所(USIP)で開催された調印式には、DRCのチセケディ大統領とルワンダのカガメ大統領のほか、ケニア、ブルンジ、アンゴラ、アフリカ連合(AU)、トーゴ、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の首脳・閣僚らも出席した。
トランプ大統領は「Delivering Peace(平和を推進する)」と大きく掲げられたバックドロップの前で冒頭に演説を実施。「これで1 年足らずで私たちが終結させた 8 番目の戦争となった。彼ら(DRCとルワンダ)は長い間、互いに殺し合ってきたが、これからは抱き合い、手をつなぎ、他の国々と同じように米国から経済的利益を得ることに多くの時間を費やすだろう」と述べ、ノーベル平和賞受賞への期待を改めて公衆の前でにじませた。しかし、実際にはDRC東部でのDRC国軍と、ルワンダ軍が支援するルワンダ系反政府勢力「3月23日運動(M23)」の戦闘が続いていることを受け、ルワンダのカガメ大統領は「もしこの合意が頓挫し、物事が予定通りに進まなかった場合、その責任はトランプ大統領ではなく、我々自身にあるだろう」と発言。その後に演説を行ったDRCのチセケディ大統領も「新たな道の始まりであり、困難な道である」と表現するなど、仲介を行ったトランプ氏を阿(おもね)りつつも実際の停戦・和平の実現は困難であることをメッセージの中に込めている。DRC東部の一部地域をM23が実効支配し続けていることを受け、これまでもチセケディ・カガメ両氏はたびたびお互いを公然とののしりあっている。今回の署名式でも2人は握手を行わなかったと報じられている(12月5日付、英FT紙)。
12月4日の米国務省の発表によると、今回調印された「ワシントン平和繁栄協定」にはこれまでの米国の仲介により署名されたDRC・ルワンダ間の和平に向けた「原則宣言(4月)」、両国外相間で署名された「和平協定(6月)」のほか、今回新たに署名された「地域経済統合枠組み(REIF)」、米国とDRC間の戦略的パートナーシップ協定などもすべて含んだ総称になるとのこと。REIFでは、DRCとルワンダを中心とする大湖地域全体の鉱物サプライチェーンの強化や、ダム・水力発電所の整備、そして米国も支援するDRC南部からアンゴラのロビト港を結ぶロビト回廊への将来的な接続などが盛り込まれた。この合意は広く、DRC東部の紛争地域で産出されるタンタルやスズ、タングステンなどの重要鉱物への米国企業のアクセスを担保するためのものだとみられている。しかし、実際にはM23がこれらの鉱物を活動の資金源としており、それをルワンダに密輸・加工し、ルワンダから世界中に輸出するサプライチェーンが構築されていると指摘されている。今回の調印式にもM23は出席しておらず、DRCとM23の停戦交渉は並行してカタールの仲介により行われている。「セレモニー的」なトランプ大統領による調印式が実際の和平、そして米国の利益につながるか疑問視する声も多い。
- [ロシア/インド]12月4日、ロシアのプーチン大統領が4年ぶりにインドを訪問した。2022年2月のウクライナ侵攻後で初めて。ロシア産原油購入を続けるインドに米国トランプ政権が高関税で圧力を高める中、プーチン氏とモディ首相は4日の一対一の非公式会談や5日の首脳会談で戦略的パートナーとしての結束を確認し、エネルギーや軍事分野の協力を協議するもよう。ロシア大統領府によると、プーチン氏にはベロウソフ国防相ら7閣僚が同行し、会談ではロシア製地対空ミサイルS400の追加供与や、ロシアの最新鋭戦闘機スホイ57の供与など軍事協力についても協議するとみられる。
- [米国/中国]『フィナンシャル・タイムズ』紙が、トランプ政権が米中間の「貿易休戦」を損なわないようにするために、中国国家安全部が関与したとされる大規模サイバー攻撃「ソルト・タイフーン」に関する制裁発動を停止したという独占記事を報じている。ソルト・タイフーンは米国政府高官の非暗号化通信や主要通信会社のネットワークを侵害していたとされ、前政権の高官も「前例のない規模」の侵害と指摘していた。
複数の米国政府関係者によれば、トランプ大統領と習近平国家主席が10月の釜山会談で合意したデタント(関係安定化)を維持する目的から、制裁だけでなく大幅な対中輸出規制も見送られているとしている。ホワイトハウスは、米国が中国に依存するレアアースの比率を引き下げるまで、米中間の「安定」を最優先する政策に転向しており、さらに、2026年4月に予定されているトランプ訪中を成功させたい意図もあると推測される。
しかし、中国強硬派の政府高官や専門家は、国家安全保障を犠牲にして貿易上の利得を優先していることを批判している。トランプ政権はNVIDIA(エヌビディア)が先端半導体H200を中国に輸出するためのライセンス供与を検討しているとの報道もあり、懸念を広げている。
さらに政権内では、中国政策の一貫性確保を目的に、トランプ側近のスティーブン・ミラー副首席補佐官が各省庁の動きを統制する役割を与えられたとしている。ホワイトハウス関係者は、輸出規制(特にBlackwellなどの最先端チップ)は維持しつつ、中国がフェンタニル前駆物質取締り、農産物輸入、レアアース供給継続に同意したことを成果として強調する。しかし専門家は、中国は交渉を戦略的時間稼ぎに使う傾向があるとして、米国が「罠」に陥る可能性を警告している。
上述の記事以外に、トランプ政権は2026年4月の訪中時に、中国が要求している「台湾の独立に反対する」という文言を受け入れるか、その場合、何を中国から受け取るのかについても正式に検討を始めるとの情報がある。もしそれが現実になった場合は、日本を含む東アジアの安全保障に重大な影響が生じることになる。
- [ブラジル]2025年第3四半期のブラジルGDPはわずかに減速し、前期比+0.1%の成長にとどまった。これは第2四半期の+0.3%(当初は+0.4%)から下方修正されたものであり、市場予想の+0.2%も下回った。前年比では+1.8%と、第2四半期の+2.4%から鈍化している。全体として、年初から続く経済活動の緩やかな減速を示している。
今後は、第3四半期に承認された所得・信用拡大策や7月下旬の債務支払いに支えられ、民間消費の回復が第4四半期にわずかな加速をもたらす見込みである。2025年の「ソフトランディング」シナリオを裏付けている。年間成長率は+2.2%と予想されており、2026年3月には金融緩和サイクルが開始される見通しだ。
需要面では、民間消費が勢いを失ったものの、政府支出と投資の増加が一部を補った。民間消費は前期比+0.1%と、第2四半期の+0.6%から減速したが、3四半期連続でプラス成長を維持している。これは失業率が過去最低水準にある強い労働市場などが支えとなっているためである。公共消費は+1.3%となったほか、投資は建設や資本財輸入の増加により+0.9%と反発した。純輸出もGDPにプラス寄与し、輸出は堅調を維持した一方、輸入は国内需要の弱さから伸び悩んだ。
供給面では、サービス業が弱い動きを見せた。サービス業は前期比+0.1%にとどまり、第2四半期の+0.3%から減速した。特に金融サービスが足を引っ張った。一方、産業部門は鉱業、建設、製造業の回復により+0.8%と好調だった。農業は第2四半期に1.4%減少した後、大豆やトウモロコシなどの好天候による収穫が寄与し、第3四半期に+0.4%と持ち直した。今後はコーヒーや牛肉の追加関税の撤廃は好材料だが、米中間の大豆取引交渉は今後の輸出に影響する可能性がある。
金融政策では、ブラジル中央銀行(BCB)が2026年3月に利下げを開始し、セリック金利は現在の15.0%から年末には12.75%に低下すると予想される。12月11日開催の会合では金利据え置きが見込まれるが、声明文の一部が調整される可能性がある。インフレ率は緩やかに低下しているものの、BCBは慎重姿勢を維持し、信頼性確保を重視するとみられる。
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