デイリー・アップデート

2020年5月19日 (火)

[米国] 新型コロナウイルス感染拡大により米国民の多くが外出を禁じられる中、車での移動も制約を受けている。それに伴い各州の運輸省が推進する道路整備計画の主要な財源になっていたガソリン税の収入が大幅に減少しており、以前より予定されていた道路整備計画の実施が困難な状況に追い込まれつつある。今後も多くの米国民が在宅勤務を余儀なくされた場合、各州のガソリン税収入が減少することは不可避とみられる。

[香港] 全人代の「政治報告」中、従来、香港については「一国二制度と高度な自治の維持」と短く言及されるのが慣例だったが、今年の全人代では変化の可能性ありと香港メディアが報じている。特に焦点は香港基本法23条(国家に対する叛逆、 国家の分裂、 叛乱の煽動などを禁じている)に基づく新法の制定であり、4月末に夏宝龍・香港マカオ事務弁公室主任がキャリー・ラム行政長官に対して強く立法化を求めたと言われている。米国務省は香港人権法案にもとづき、香港の一国二制度や自治について検証を行うレポートを作成する予定だが、全人代で起こり得る変化を警戒し、会議終了までレポート発表を延期すると決定した。

[タイ] 2020年第1四半期(1-3月期)の実質GDP成長率は前年同期比▲1.8%だった。2014年1-3月期(反政府デモが激化した時期)以来のマイナス成長。新型コロナウイルス感染拡大の影響、予算の執行の遅れ、世界経済の低迷等により大幅に減速した。特に観光収入と公共投資の縮小が大きかった。2020年通年の実質GDP成長率の見通しは、2月時点の+1.5~+2.5%から▲5.0~▲6.0%に下方修正された。

[イラク] 5月16日、新たに就任したカーゼミー首相は、人民動員部隊(PMU)の制服を着てPMU本部を訪問した。PMUの故ムハンデス副司令官は今年1月に米軍の対イラン革命防衛隊司令官攻撃時に一緒に殺害されており、イラン寄りといわれているPMU内の一部勢力は当時国家諜報局トップだったカーゼミー首相が米軍に所在情報を流したのではないかと疑っている。PMUはイスラム国(IS)撃退のために、2014年に主に同国南部のシーア派民兵によって組織された武装集団で、2016年に正式にイラク国軍に統合されている。

[EU] 5月18日、メルケル首相とマクロン大統領は、欧州委員会が債券を発行して設立する復興基金について基本合意に至った。今後、EU首脳らに正式に提案する予定。基金の規模は5,000憶ユーロ。欧州委員会が市場で資金を調達し、EU予算の枠組みを使って新型コロナウイルス感染の影響が大きい産業・地域に分配する計画。しかし、オーストリアのクルツ首相はじめ北欧諸国の合意は困難との見方が強い。

[中国] 全人代開催を目前に控えた5月18日、共産党中央と国務院は、連名で「新時代における社会主義市場経済体制の整備を加速することに関するガイドライン」を公表した。全文は1万字超で、記述は民間経済、資本市場など広範囲にわたるが、既に提示された政策方針と重複する内容も少なくない。個人的に注目した点としては、国有企業改革、破産制度の健全化(個人破産法の整備)、不動産税の立法化、金利の市場化、電力・ガスなど独占業種の業界改革、商業ベースの年金保険の発展促進など。

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