エチオピア/北部情勢緊張続く

2026年10月01日


髙橋 史

9月28日、エチオピア北部ティグライ州南部の交通の要衝・アラマタで、エチオピア国防軍(ENDF)らとティグライ防衛軍(TDF)ら反政府勢力との間で交戦が発生し、少なくとも民間人52人が死亡した(9月28日、BBC)。アラマタはTDFが拠点を置くティグライ州の州都メケレから120kmの位置にある。


9月20日にティグライ人民解放戦線(TPLF)、アムハラ・ファノ民族運動(AFNM)、アファール民族統一革命戦線(ARDUF)ら7つの反政府組織が「エチオピア人民生存のための勢力同盟」の結成を発表した(2026年9月24日デイリー・アップデート参照)。9月23日にTPLFの軍事部門であるTDFらが連邦政府管理下にあったティグライ州の3つの空港の制圧を発表して以降、反政府勢力と政府軍との衝突はティグライ州、アムハラ州、アファール州といったエチオピア北部に拡大している。ドローン攻撃が多用されている戦闘により、民間人が巻き込まれる被害が増加している。


激しい戦闘が続いたアラマタは現在、ENDFが制圧したとみられているが、TDFとARDUFはアファール州の州都・セメラに向けて進軍していると複数のメディアが報じている。セメラはジブチとエチオピアの首都アディスアベバを結ぶ物流の大動脈である国道1号線沿いに位置している。内陸国であるエチオピアは物流の約9割強をジブチ経由に依存していることから、反政府勢力には物流の混乱を招いてENDFを疲弊させたい狙いがあるとの見方がある(9月28日、ACLED)。


約60万人が死亡したと推定される2020~2022年の「ティグライ紛争」のような大規模な人道危機の再発を防ぐべく、国際連合、欧米諸国、アフリカ連合(AU)、日本政府などもエチオピア北部情勢への懸念を示している。9月28日には、米国上院議員6人(民主党)がマルコ・ルビオ国務長官に対し、ティグライ地域における緊張の高まりに向けた措置を講じるよう要請した。同議員らは、「戦闘再開は米・トランプ政権が(9月18日に)エチオピア・エリトリア向けの経済制裁を解除してから、わずか1週間もたたないうちに起きた。これらの制裁を期限切れにすることは、自らの恐ろしい行為に対する抑制がないと考える交戦当事者を助長する」として米政府の対応を批判し、ルビオ長官および米国務省が直ちに調停の場に戻るよう求めている。


しかし、エチオピア政府は戦闘のみならず外交面でも攻勢を強めている。9月27日にENDFのジュラ最高司令官はTDFなどの反政府組織をエリトリア、スーダン、エジプトといったエチオピアと対立する国々が支援していると改めて非難(9月28日、ロイター通信)。しかし、スーダンやエジプトなどはこの主張を否定しており、周辺地域でも事態解決に向けた足並みがそろっていない状況が続いている。また、7つの反政府同盟のうち一部の反政府組織は同盟への参加を否定するなど、同盟内でも早くも連携のほころびがみられる。しかし、2025年に政党登録を抹消されたTPLFをはじめ、政府と対立を続ける反政府勢力連合は、ENDFとの軍事力の圧倒的な差があるものの、ゲリラ戦のような「非対称戦争」を継続するとの見方もある。(国際部 髙橋史)

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