デイリー・アップデート

2026年5月20日 (水)

[ソマリランド/エルサレムに世界初の大使館設置を発表] 

ソマリランド共和国は、世界で初めてエルサレムに大使館を開設すると発表した。ソマリランドの駐イスラエル大使モハメド・ハッジ氏は、近くエルサレムに大使館を設置し、イスラエル側もソマリランドの首都ハルゲイサに大使館を開設すると自身のXに投稿した。これは、2025年12月にイスラエルが世界で初めてソマリランドを正式承認した流れを受けたものであり、両国関係の急速な接近を象徴している。ハッジ大使は、ヘルツォグ大統領への信任状提出に加え、戦略協議も実施したと説明し、両国の協力強化を強調した。

 

ソマリランドは1991年にソマリアからの独立を宣言し、独自の通貨、軍隊、行政機構を有し、事実上の独立国家として機能してきた。しかし、分離独立を認めればアフリカ各地の分離主義を刺激しかねないとの懸念から、国連加盟国による正式承認は得られていない。イスラエルによる国家承認に対しても、周辺アラブ諸国やアフリカ連合、イスラム協力機構、欧州連合などから反発が出た。ソマリア政府も一貫してソマリランド独立を認めていない。

 

一方、イスラエルにとってソマリランドは極めて戦略的価値が高い。ソマリランドはアデン湾を挟み、イランとの関係が指摘されるフーシ派が支配地域を持つイエメンと向かい合っており、紅海・アデン湾の海上輸送監視や安全保障上の拠点となり得るためである。近年、イスラエルとソマリランドの接触は急速に拡大しており、イスラエル外相のハルゲイサ訪問、水資源分野での協力、イスラエル初のソマリランド駐在大使任命などが進められてきた。背景には、紅海・アフリカの角地域を巡る地政学的重要性の高まりがある。

 

また、今回の動きはエルサレム問題にも波紋を広げている。エルサレムはイスラエル・パレスチナ紛争の核心であり、多くの国は和平交渉への影響を避けるため、大使館をテルアビブに置いている。しかし、トランプ政権が2017年にエルサレムをイスラエルの首都として承認し、翌年に米国大使館を移転して以降、グアテマラ、コソボ、ホンジュラス、パプアニューギニア、フィジーなどが追随した。ソマリランド大使館はエルサレムで8番目の大使館となる見通しであり、イスラエル政府は各国に対し、大使館移転費用を支援する新たな財政インセンティブ制度の導入を決めている。

[ケニア/ストライキ・抗議デモ] 

5月19日、ケニアのキプチュンバ・ムルコメン内相は、運輸セクター同盟(TSA)と会談を実施し、TSAが呼びかけていたマタトゥ(ミニバス)などの公共交通機関のストライキは1週間中断されると発表した。

 

石油精製品の純輸入国であるケニアは、燃料のほぼ全量を中東湾岸諸国から輸入している。ホルムズ海峡の事実上の封鎖を受けて燃料供給が遮断されている中、ケニア・エネルギー・石油規制庁(EPRA)は4月に燃料小売価格を24.2%引き上げた。5月14日にはさらに23.5%の引き上げを発表し、ディーゼル燃料価格は1リットル=242シリング(約1.8ドル)、ガソリン価格も1リットル=約1.65ドルに設定された。これを受け、TSAは5月14日に発表された価格の引き上げと、燃料価格の35%引き下げを政府に要求し、5月18~19日に首都ナイロビを含む大規模な交通ストライキに踏み切った。このストライキに同調する形で、ナイロビ等で一部暴力的な抗議デモが発生。治安当局との衝突によりこれまで4人が死亡、30人以上が負傷したほか、700人以上が逮捕されたと報じられている(5月19日付、BBC等)。

 

ケニア政府は燃料価格上昇による国民生活への打撃を緩和するために、7月まで燃料にかかる付加価値税(VAT)を16%から8%に引き下げる対応をすでにとっている。また、ジョン・ムバディ財相も「この(中東)戦争は我々が引き起こしたものではない。このストライキは全くもって不必要だ」と国民の理解を得ようとしているが、ストライキや抗議デモによる経済への悪影響を考慮し、TSAに譲歩する形で交渉継続を選んだとみられる。

 

ケニアでは、2024年の反増税デモで60人以上が死亡し、2025年のZ世代らによる反政府デモでも約60人が死亡するなど、治安当局による過剰な武力行使が国際人権団体からの批判を招いている。ケニアでの暴力的な抗議デモには、「Goons(ならず者)」と呼ばれる、雇われの暴力組織が扇動している点も広く疑われているが(5月19日付、Africanews)、今回の抗議デモに関してもアムネスティ・インターナショナルはケニア政府に対して「最大限の自制」を求めている。

 

一方で、ナイジェリアを除きほとんどの国が石油精製品を輸入に頼るサブサハラ・アフリカの国々では、ケニアと同程度の燃料価格の上昇がすでにみられている。そのため今回のケニアでの騒乱は、他のサブサハラの国々でも同様の事態が展開されていく「先行指標」との見方もある。また、ケニアのように燃料補助金や減税を続ければ、財政赤字を拡大させる恐れもある。

[ASEAN/第1四半期成長率] 

5月18日までに、ASEAN5諸国の第1四半期実質GDP成長率が各国の統計当局より公表された。全体感としては、3月にイラン情勢を受けた供給減少・インフレ率上昇を踏まえ民間消費がやや停滞したものの、米国のAI関連需要・データセンター需要が同地域の主要輸出品である電子機器・電子部品の米国向け輸出を後押ししたこともあり、成長率おおむね堅調であった。

 

・インドネシア:5.6%(前期は前年同期比5.4%)

・タイ:2.8%(同2.5%)

・フィリピン:2.8%(同3.0%)

・ベトナム:7.8%(同8.5%)

・マレーシア:5.6%(同6.2%)

 

今回、前四半期に比べ成長率が低下した国はマレーシア、フィリピンの2か国。マレーシアは政府消費・公共投資の低下が成長率低迷につながったものの、民間消費・投資の伸び率はそれぞれ4.7%、7.8%と引き続き高い水準が続いている。同国ではオクタン価95のガソリン向けに燃料補助金を供与しており、それによりガソリン小売価格が一定に保たれている。これによりイラン紛争による原油価格高騰を受けてもインフレ率上昇幅が限定的であったことも(3月のインフレ率は1.7%)、民間消費の下支え要因となった。他方でフィリピンの場合は燃料補助金・石油基金が存在しないことも影響し、3月時点でのインフレ率が4.1%とベトナムに次ぎ高い水準となり民間消費の伸びが3.0%に低下したことが、減速の主因となった。イラン紛争以前より問題となっていた治水事業の汚職スキャンダル発覚による公共投資停滞も尾を引いている。

 

前四半期に比べ成長率が上昇した国はタイとインドネシア。タイは過去より5か国の中で最も成長率が低い状況が継続しているが、直近3四半期では上昇している。支出別では、産業機械・車両関連を中心とした民間投資の伸び率が10.1%と全体を牽引した。また、タイ東南部で開発が進められている経済特区「東部経済回廊」を中心に、データセンター・クラウドサービスを中心としたデジタル産業・プリント回路基板や光通信関連製品を中心としたハイテク産業への海外投資増加も後押しとなった。インドネシアでは政府支出の大幅な伸びが成長の牽引役となった。具体的には、2026年度予算を前年比約5倍まで増額させた無料給食プログラムの加速が主因となった。他方で、足もとでは本プログラム実施や燃料補助金増額も背景に財政赤字が拡大している。第1四半期の財政赤字は240兆ルピアと、GDP比で0.93%を記録した。財政法上、財政赤字GDP比を3%以下に抑制する必要があるため、今後政府は本プログラムの予算縮小やインフラ・教育予算削減を実施する可能性がある。その場合は第2四半期以降の成長率が停滞しかねない。

 

第2四半期以降は、エルニーニョ現象による少雨が農作物生産・電力供給に与える影響が懸念視される。農作物に関し、例えばインドネシア・マレーシアの主要輸出品であるパーム油生産量を減少させかねない。また電力供給の中で水力発電が占める割合が高いベトナム(約29%、IEA)に関しては、少雨による電力需給逼迫や政府・国営電力公社による節電要請が製造業を中心に経済活動低迷に繋がり得る。

[米国・中国/中国コンテナ企業をカルテル起訴] 

5月19日、米司法省は、中国の大手コンテナメーカー4社と幹部7人を、価格カルテルを形成していた容疑で起訴したと発表した。対象となったのは世界の標準コンテナ市場において大きなシェアを有する企業である。米当局は、これら企業が2019年末から生産量を意図的に制限し、世界的なコンテナ不足と価格高騰を引き起こしたと主張している。

 

起訴内容によれば、各社は深せんで会合を開き、生産ラインの稼働時間制限や新工場建設の抑制で合意したほか、相互監視のため87台の監視カメラまで設置していたという。違反企業には罰金を科す仕組みも導入されていた。米司法省は「世界のコンテナ製造の95%を支配するカルテル」だったと批判している。

 

米側によれば、この供給制限は新型コロナ流行直前の2019年11月から始まっていた。コロナ禍では物流混乱と輸送需要の急増が重なり、コンテナ価格は2019年から2021年にかけて2倍以上に上昇した。CIMCの関連事業利益は2019年の約2,000万ドルから2021年には17億ドル超へ急増し、一部企業は100倍近い利益増を得たとされる。

 

米テレビ局のCBSは、米国当局が「中国企業がコロナ前に意図的に世界供給網を締め付けた可能性」を調査していると報じており、コロナ起源調査とも関連していると伝えている。米司法省内部ではコロナ関連の捜査が継続しており、情報機関も調査に関与しているという。米国内では、中国がパンデミック下の物流危機を利用して利益を拡大したとの見方が強まる可能性がある。 また、この発表のタイミングについて、CBSは、米政権が米中首脳会談への悪影響を避けるため、起訴内容の公表を会談後まで控えていたと報じている。

[ボリビア/デモ拡大] 

元左派大統領エボ・モラレスの支持者らが2026年5月中旬から国内各地で道路封鎖やデモを展開し、社会不安が急速に拡大している。首都ラパスでも大規模な行進が行われ、約2週間にわたる封鎖の影響で食料、燃料、医療物資の不足が深刻化している。高速道路ではトラックが立ち往生し、患者が病院に到達できない事例も報告されており、隣国アルゼンチンが軍用機で食料支援を行うなど、事態は国際的な支援を要する局面に至っている。

 

今回の抗議活動は、5月初旬のストライキを発端としている。当初は限定的な動きであったが、やがて労働組合、鉱山労働者、運輸関係者、農業団体などが加わり、全国規模の運動へと発展した。背景には、物価上昇や燃料不足といった生活コストの急騰がある。デモ参加者はロドリゴ・パス政権に対し、緊縮政策の撤回と生活環境の改善を求めており、一部では大統領の辞任を要求する声も上がっており、地域的な不満であったものが、次第に国家全体の経済運営に対する不信へと広がってきている。

 

教育分野では教師が賃上げや予算拡充を求めており、運輸部門では燃料不足や供給の混乱を理由に無期限ストライキが実施されている。また、先住民や農村部の住民は、特定の大地主を優遇するとされる農地政策に反発している。政府は一部の農地法を撤廃したものの、抗議活動は収束していない。

 

パス政権は、財政の立て直しを優先し、支出削減や燃料補助金の見直しを進めている。さらに、燃料価格統制の段階的撤廃や国内エネルギー生産の拡大を柱とする経済改革案を準備している。しかし、これらの政策は短期的には国民負担を増加させるため、反発を招いている。政府は交渉や賃上げ措置を通じた緊張緩和を試みる一方、治安部隊を動員して道路封鎖の解除に当たっている。

 

こうした混乱の中で、2006年から2019年まで大統領を務めたエボ・モラレス元大統領は抗議活動を支持する立場を明確にしている。現在も一定の政治的影響力を有しており、燃料や食料価格の上昇などの問題が解決されない限り抗議は続くと主張している。

 

国内では不安の高まりが経済活動にも影響を及ぼしている。5月中旬には治安への懸念から複数の銀行が一時的に支店を閉鎖する事態となり、金融システムにも緊張が広がっている。パス政権は2025年11月に発足した比較的新しい政権であり、それまで約20年続いた左派政権からの転換を象徴する存在である。そのため、現在の混乱は単なる経済問題にとどまらず、政治体制の方向性をめぐる対立とも深く結びついている。

[中国/「開票経済」取締強化] 

5月初旬に開かれた非鉄業界の年次会合LME Asia Weekにおいて、中国で3月頃から行われている「開票経済(Invoice Economy)」への取締り強化が大きな話題になった。これに関連する報道は4月頃から増えている。発票(Fapiao)は中国における公式インボイスで、税務・決済・通関・貿易金融の基盤となるが、これまで同一貨物の多重売買や循環取引を通じ、売上計上や融資、地方政府の補助金獲得にも利用されてきた。中国当局はこうした「実需を伴わない取引」が税収や経済規模を水増ししているとして是正を進めている。

 

国家税務総局(STA)は3月以降、広東・四川を皮切りに取締りを強化し、4月には上海でもインボイス発行枠(invoice quota)を厳格化。一部トレーダーでは発行枠が約6割削減されたとされる。対象はリサイクル、鉱産品・建材・化学品卸、道路貨物輸送など6業種に及ぶ。

 

市場では銅取引への影響が顕在化しており、輸入・国内流通が停滞。上海先物取引所(SHFE)の銅在庫は4?5月に約3割減少したが、需要増というより流通制約による影響とみられている。スクラップ流通停滞を受け、一部では精錬銅への代替需要も発生。中小トレーダーでは、インボイス制限により取引執行や貿易金融が制約され、輸入意欲が低下している。

 

亜鉛市場でもスポット取引減少や「商品はあるがインボイスがない」状況が発生しているとの報道もある。市場では今回の措置を単なる税務監査ではなく、中国コモディティ市場における「信用創造メカニズム」の是正と捉える見方が多い。今後は国有企業・大手企業中心への取引集約が進む一方、短期的には市場流動性低下が警戒されている。

[ロシア・ベラルーシ/過去最大規模の核戦力演習を実施] 

2026年5月19~21日、ロシアとベラルーシは前例のない大規模な核戦力演習を実施した。ロシア戦略ロケット軍、北方・太平洋艦隊、遠距離航空軍、レニングラード・中央軍管区に加え、2023年以降ロシアの戦術核兵器が配備されているベラルーシ軍も参加し、核戦力の統合運用体制を検証した。動員規模は約6万4,000人、装備7,800台以上、200基超のミサイル発射台、140機以上の航空機に達し、海上戦力では戦略原潜8隻を含む潜水艦13隻と水上艦73隻が投入されるなど、特に海洋核戦力の拡充が顕著であった。

 

演習では、複数訓練場への弾道・巡航ミサイルの発射訓練に加え、ベラルーシ領内での核兵器共同運用手順、指揮統制、部隊展開、運搬手段の即応性などが重点的に確認された。これにより、ロシアは同盟国内における核戦力の実戦配備能力と即応態勢を対外的に示した形となる。

 

戦略的背景としては、ウクライナ支援を強化するNATO諸国への牽制が主目的とみられる。特にフランスやポーランドによる関与発言、北欧諸国の動向を受け、ロシアは核抑止力が実際の軍事手段として機能し得ることを強調。核戦力の運用を実戦レベルで示すことで、エスカレーション抑止と交渉力強化を図る意図がある。

 

今回の演習は、ウクライナ戦争の長期化の中で、核要素を含む軍事シグナルを一段と強めた事例と位置付けられる。欧米側は地域の安全保障環境をさらに不安定化させる動きとして強い警戒を示しており、今後の東欧・北欧における軍事バランスやNATOの抑止対応にも影響を与える可能性が高い。

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