2026年7月30日 (木)
[ザンビア/大統領選へ]
南部アフリカのザンビアで8月13日に5年ぶりの大統領選・議会選が実施される予定だ。候補者は14人いるものの、事実上、現職で再選を目指すハカインデ・ヒチレマ大統領(与党:国民開発統一党(UPND))と、最大野党「愛国戦線(PF)」が事実上分裂したことにより結成された、野党連合「トンセ同盟」率いるブライアン・ムンドゥビル氏(元PF)の一騎打ちとみられている。 元実業家のヒチレマ氏は、2021年の前回大統領選で59%の得票率で勝利し、PF政権からの政権交代を実現した。同氏は就任後、2020年のデフォルト後の債務再編と、国際通貨基金(IMF)からの支援を受けた経済再建、20%台から一けた台のインフレの減速、アフリカ第2の銅生産国であるザンビアの銅生産の回復や外国投資の増加など、マクロ経済を安定させてきた実績を強調。再選後も経済の回復を最優先とすることを公約に掲げているほか、2025年末の憲法改正で議席数を167から280に拡大し(「ゲリマンダー」との批判もある)、大統領選の得票数に応じた比例代表制(40議席)を導入するなど、周到な準備を進めてきた。ロバート・ランシング研究所は、現職が優位に働くこと、野党の分裂により、同氏および議会でのUPNDの勝利の確率を60%と予測している(7月29日)。 対する野党・トンセ同盟は、ムンドゥビル氏が5月に立候補を表明してから勢いを吹き返しつつある。ヒチレマ政権ではマクロ経済の状況は改善したが、国民生活の改善や貧困削減にはつながっていないとの批判を軸とし、食料価格の高騰や失業、政府の横暴などの問題への対処、IMF批判などを公約に掲げている。また、元PF党首で2021年まで大統領を務めたエドガー・ルング氏が2025年に死去したことを受け、同氏の国葬をめぐって国民の間でも論争が続く中、もともとPF・ルング氏の牙城だったカッパー・ベルト州や北部州での票の取戻しを図っている。 ザンビアは南部アフリカの中でも民主的な選挙が実施される国として知られ、独立以降、過去3回政権交代が実現している。ヒチレマ氏が再選すれば、これまで通り、国際協調路線が継続され、投資家からの信頼回復が続くとの見方が多い。ザンビアの銅産業で圧倒的なプレゼンスを示す中国企業の活動は継続し、米国は中国の影響力を抑制する動きを続けるとみられる。 他方で、ヒチレマ氏は選挙戦に向けて国民の不満を招く計画停電を回避するために、電力の輸入を急拡大させており、また多雨により記録的な豊作となったトウモロコシの余剰生産分の農家からの買い取りを行うといったポピュリズム的施策が財政赤字をさらに悪化させるとの懸念もある。目下、2026年1月に施行された「ローカル・コンテンツ法(鉱山会社に対して現地調達比率拡大を義務付け)」をどの程度徹底するのか、また、2026年1月に終了したIMFの新規プログラムがいつ頃に開始されるか等に注目が集まっている。
[アルゼンチン/中銀改革を法制化]
2026年8月初旬、アルゼンチンのミレイ大統領は、中央銀行の改革法案を議会へ提出する。この改革は、長年続いてきた財政赤字の穴埋めを目的とした通貨発行を制度的に禁止し、中央銀行の独立性を強化することを目的としている。 改革の中心となるのは、中央銀行の使命を通貨価値の維持に限定することになる。これは2012年の制度改正によって追加された雇用促進や金融安定といった複数の目標を見直し、インフレ抑制を最優先とする。特に注目されているのが、中央銀行による政府への資金供給を全面的に禁止する条項である。対象は中央政府だけでなく州政府や自治体にも及び、公債の新規引き受けも認められない。これにより、財政赤字を中央銀行の資金で補う従来の手法は事実上不可能となる。アルゼンチンでは過去に財政赤字を埋めるための通貨発行が繰り返され、高インフレの大きな要因となってきたためである。 改革案には中央銀行の独立性を強化するための制度変更も盛り込まれている。総裁や理事を解任する際には上下両院で3分の2以上の賛成を必要とし、政治的な都合による介入を難しくする仕組みを導入する。また、一部の案では理事の任命や解任に上院の承認を義務づけることも検討されている。 さらに、政府が長年利用してきた特殊な国債についても見直しが進められる。これまで中央銀行の外貨準備と引き換えに政府へ資金を供給する手法が用いられてきたが、改革案ではこうした仕組みを廃止する方針である。また、資産価格の変動によって生じた帳簿上の利益を財政支出へ流用できないようにし、中央銀行の利益処理を厳格化することも盛り込まれている。 政府は改革法案を段階的に進める考えであり、第二段階では財政赤字を補うための通貨発行を刑事犯罪として扱う法案も検討している。この案では、赤字補填のための通貨発行を事実上の通貨価値毀損行為とみなし、厳しい責任を課すことを目指している。また、財政支出が予算を超えた場合には行政活動を制限する「シャットダウン」制度の導入も議論されており、恒常的な財政均衡を実現するための制度整備が進められている。 こうした改革は国際通貨基金(IMF)の支援を受ける経済安定化政策とも密接に関係している。IMFは以前から中央銀行の独立性強化や財政規律の確立を求めており、ミレイ政権は今回の改革がそうした要請に沿ったものだと説明している。そのため、海外の投資家からはアルゼンチンの政策運営に対する信頼向上につながる可能性があるとの見方も出ている。 もっとも、改革への反対意見も少なくない。歴代の中央銀行関係者の中には、中央銀行の使命を物価安定だけに限定することは柔軟性を失わせると批判する声もある。また、厳格な財政規律が公共サービスの縮小につながる可能性を懸念する意見も存在する。法案が成立するためには議会で幅広い支持を得る必要があり、今後の政治交渉が成否を左右することになる。
[米国/政策金利の据え置き]
連邦準備制度理事会(FRB)は29日までの連邦公開市場委員会(FOMC)を開催、政策金利(FF金利の誘導目標レンジ)を3.5~3.75%に据え置くことを決定した。据え置きは5会合連続だった。ただし、据え置きが9票、0.25%利上げが3票と意見が割れた。利上げを主張したのはハマック・クリーブランド地区連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス地区連銀総裁、ローガン・ダラス地区連銀総裁の3人だった。 ウォーシュFRB議長は、反対票が3票入ったことについて、「活発な議論を望んでいたが、その通りになった」と話した。議論は白熱したもので「家族げんか」のようだったとして、金利据え置きの決定には大多数の支持があったとしている。 また、「(今回の据え置き決定は)物語の始まりであって、終わりではない」と述べた。今回実施したことは、「利上げの一時停止」と表現すべきではない。実施したことは、経済状況の綿密な検証だった。どのような準備を今後すべきか見極めるための作業と表現した。物価上昇率について、足元で鈍化するなど、心強いデータがいくつか出ているものの、単一のデータに過度に依存してはならないため、しばらく状況を注視する姿勢を示した。 物価目標について、「目標はただ1つ、2%だ」と語り、2%超えを許容しない姿勢を改めて示した。2%を上回る物価上昇率が5年間続いていることを踏まえて、FRBが事実上2%を上回る物価目標があるという誤った印象を残してしまった。しかし、事実上の2%を超える物価目標はないとしている。 その上で、物価安定について信認を維持していくとして、「FRBは揺るがない」として、「必要かつ適切な場合には、ためらわず行動を起こす」とも述べて、今後の金融引き締めの可能性を残した。こうしたウォーシュ氏の発言や3人の地区連銀総裁が今回利上げを支持したこともあって、市場では次回9月以降に利上げが実施されるという見方が広がっている。
[インド/若年層反乱に関する世界の論調]
インド・ゴキブリ党事件の論評整理。高成長国というインドへの期待の裏側では若年層の雇用不安・教育制度への不信・政治的閉塞感が一気に噴出したと認識されている様子だ。本事案は医学部入試の問題漏洩を発端に、数百万人が再試験を強いられ、なかには自殺者も出たことで社会問題化した。さらに最高裁長官が若者たちを「ゴキブリ(cockroach)」と侮蔑したことが火に油を注ぎ、在米インド人学生が「Cockroach Janta Party」を結成し、多くの支持を集め、街頭デモへと発展した。運動はインド全国に拡大し、教育相の辞任に至って一旦終結した。この問題の本質は試験不正ではなく、教育制度への不信・雇用不足・機会の不平等にあるとの指摘が見られた。25歳未満の大卒者の約4割が失業し、年約500万人の卒業生に対し正規の給与所得職は170万人分にすぎないとの報道もあった。「成績さえ良ければ人生が開ける」というインドの能力主義の前提を崩したこの不正は、若者にとっての最後の希望すら断たれたと受け止めもあった。もう一つ注目すべき点は単なる反政府運動ではなく、BJP支持基盤に近いヒンドゥー教徒中心の一般学生が中心となった点だろう。彼らは「強い国家・ヒンドゥー民族主義・高成長」と引き換えに政治的自由を容認してきた政府との「暗黙の契約」を見直し始めているともの指摘が見られた。政府は逮捕・SNS監視といった取り締まりと、動画による若者への再接近という二正面作戦で対応しているが、対立軸は「反モディ対モディ」から「機会を求めるZ世代対現状維持の政治システム」という世代対立へと変質しつつある。若年層の失業・教育の機能不全・成長期待が集まっていた中間層の不満・SNS動員が結節した本事案は、中国の「寝そべり族」、ネパールのZ世代の反乱にも通底する。経済活動の基盤の揺らぎをどのように解釈するかで、外部の成長期待や政策、企業の対応は大きく変化していくことになる。
[欧州/熱波の影響広がる]
欧州では6月以降、記録的な熱波と少雨の影響で河川水位の低下が続いている。EUのコペルニクス気候変動サービスによると、2026年6月は西欧で観測史上最も暑い6月となり、7月末から8月初旬にかけてもフランスを中心に40℃前後の高温が予想されている。山火事や水利用制限に加え、足元では河川物流への影響が深刻化しつつある。 特に注目されるのが、ロッテルダム港とドイツ西部・スイスを結ぶ欧州最大の工業物流動脈であるライン川だ。カウプ観測点の水位は30cm程度まで低下し、船舶は積載率を大幅に落として運航せざるを得ず、複数船への積み替えや運賃上乗せにより物流コストが急上昇している。報道によると、ロッテルダムからドイツ南西部カールスルーエ向け石油製品輸送費は、6月末の1トン当たり約45ユーロから130~140ユーロへ約3倍に上昇した。キール世界経済研究所(IfW)は、ライン川の低水位がドイツの7~9月期GDPを0.1~0.2%押し下げる可能性があると試算している。 商品分野にも影響が生じつつある。7月中旬、ティッセンクルップは鉄鉱石・石炭の内陸輸送が滞ったことから、高炉の生産を一部抑制した。石油化学では、ナフサ輸送の制約や輸送費上昇を受けて内陸部スチームクラッカーの操業に影響が及び、LyondellBasellはドイツのブタジエンプラントで不可抗力を宣言、Shellも一部設備を停止した。ただし、企業間でも対応状況には差がみられる。 また、ドナウ川でもブダペストの水位が観測史上最低となり、セルビアでは燃料備蓄の活用を開始、ルーマニアやスロバキアでは河川航行に支障が発生した。ハンガリーのパクシュ原発やルーマニアのチェルナボダ原発では冷却水確保のため出力調整・停止が行われるなど、物流に加え電力インフラにも影響が広がっている。これにより、欧州の電力需給や燃料市場にも影響が波及する可能性がある。さらにフランス・スペインなどを中心に山火事が拡大し、大規模な避難も発生している。熱波の影響は農業にとどまらず、物流・エネルギー・製造業へと波及しており、今後の影響拡大に留意が必要だ。
[米国・ウクライナ/首脳会談]
7月28日、ウクライナのゼレンスキー大統領はホワイトハウスで米国のトランプ大統領と会談し、米国主要メディアは今回の訪米を通じてトランプ政権および米国議会内で対ウクライナ支援への機運が一段と高まったと報じた。会談では、対空防衛の要となるパトリオットミサイルの追加供与やライセンス生産などが協議され、ゼレンスキー大統領は冬季のロシア軍によるエネルギーインフラ攻撃への備えとして緊急支援を要請した。ウクライナ側は迎撃ミサイル在庫の不足を訴え、約300発の追加供与を求めている。 会談後、トランプ大統領は協議を「非常に良好だった」と評価。さらに米国上院では、中国やインドを主な対象とする「ロシア産エネルギー輸入国への100%関税」法案が議事手続き関連の採決において86対12の大差で可決され、対ロシア圧力強化の流れが鮮明となった。Politico(米国の政治専門メディア)は、ゼレンスキー大統領が今回の訪米で「ウクライナは勝利可能である」との認識をトランプ大統領や上下両院議員に浸透させたと分析。英紙であるFinancial Timesも、今回の会談はトランプ政権から追加支援を引き出す上で最良の機会だったと評価している。また、トランプ政権の特使であるジャレッド・クシュナー氏とスティーブ・ウィトコフ氏のキーウ訪問でも合意しており、今後数週間以内に実現する可能性がある。 今回の訪米は、停滞していた米国・ウクライナ関係の改善と対ロシア圧力強化の両面で重要な転機となる可能性があり、今後の軍事支援拡大や停戦交渉への影響が注目される。
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