2026年7月31日 (金)
[バングラデシュ/6年ぶりの利下げ]
7月30日、バングラデシュ銀行は政策金利を10%から9.5%に引き下げることを決定した。2020年3月以来の利下げである。中銀は2024年10月以降、政策金利を10%に据え置いていた。
バングラデシュにて課題となってきた外貨繰りは、2025年以降にIMFプログラムの下でクローリング・ペッグ制を導入したことで正規ルートでの海外送金が増加したことで改善傾向にある。外貨準備高も、2026年6月時点で329億ドルと昨年比23%増加している。他方で、実体経済では停滞が目立つ。例えば実質GDP成長率はFY25の3.49%からFY26には4.14%へ緩やかに回復したものの、依然として低水準である。この背景には、民間部門向けの融資が停滞していることが上げられる。中銀によるドル買い・タカ売りの操作が増えたことや中銀が経営危機にある銀行に対して無担保の流動性支援を実施していることを受け、銀行部門の過剰流動性が増加している。他方で2025年は暫定政権下での政策変更リスク、今年以降はイラン情勢の影響など不確実性の高止まりを受け、銀行は民間企業への貸出より国債購入を優先している。その結果、民間部門の信用収縮が起きている。例えば2026年5月・6月の、民間部門向けの信用伸び率は4.7%・5.5%と、低水準に留まっている。インフレ率はイラン情勢による燃料価格高騰の影響もあり、直近6月は9.2%と昨年以来上昇傾向にあるため(2025年10月は8.2%)、実質ベースでは民間部門向けの信用は収縮していることになる。中銀は利下げにより貸出金利を引き下げ、銀行による企業向け融資活発化を企図している。
他方で、インフレ率が高騰している中で利下げを実施することで更にインフレが加速しかねないことには留意が必要である。また、貸出金利は昨年の水準より既に大きく低下しており(2025年1月は9.8%→2026年5月は7.9%)、利下げによりどれだけ貸出金利が低下するかは不透明である。
また政策金利に関し、今年1月にIMFが発出した第4条協議レポートの中で、IMFは「インフレが鎮静化した明確な証拠が出るまでは、拙速な利下げ(正常化)を避け、少なくとも現在の10%を維持すべきである」と提言している。インフレ率が上昇している中での今回の利下げ判断はIMFの提言と乖離するものである。バングラデシュ政府は現在、IMFとの間で新規プログラム合意に向けて交渉を実施している。IMFが課題として挙げている歳入拡大策・銀行部門の改革が停滞する中で、更に政策金利のスタンスにおいても乖離が生じることで、新規プログラム合意が遠のくことが懸念される。
[中国/政治局会議の内容]
7月30日、中国共産党中央政治局は政治局会議を開き、10月に北京で第20期五中全会を開催すると決定した。主要議題は政治局から中央委員会への活動報告と、「党内統治を全面的かつ厳格に進めるための重大問題の研究」である。2027年の第21回党大会前で最後の全体会議となる見込みで、主要議題からも、党内における締め付けや管理強化が継続することが見込まれる。人事をめぐる駆け引きが続くなか、この政治的圧力が政策決定や幹部の行動を萎縮させる形で波及する可能性があるとの指摘がある。
「党と人民が『強党・強国』という歴史的主導権を勝ち取った」として、国際社会における中国の影響力拡大を称賛しつつ、経済認識では「経済運行における困難と挑戦を高度に重視する必要がある」との表現が加わった。4月の会議が「好調な滑り出し、主要指標は予想を上回る」としていたのに比べ、明らかに慎重な見立てへと変化している。これを受けて下半期の方針には「実務的で実効性のある追加政策を適時に策定・実施する」との文言が入り、既存政策を出し切った上で、大規模ではないものの追加の支援策が打ち出される可能性がある。より積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策を維持し、第15次5か年計画の好スタートを目指す。
貿易にも一定のスペースが割かれ、サービス貿易の振興や「貿易の均衡的発展」、対外投資管理制度と海外総合サービス体系の整備、外資誘致が並んだ。ただしこれを不均衡是正の意思表示と判断するのは時期尚早である。「均衡的発展」は必ずしも輸出削減を意味せず、実際には輸入の拡大、低付加価値品から電気自動車・電池・半導体などへの輸出の高度化、そして財からサービス(とくにデジタル・AI関連)への重心移動を指すとみられる。同じ表現は約20年前に中国商務部が度々用いていたが、その後20年で不均衡はむしろ拡大し、昨年の貿易黒字は過去最大の約1兆9,000億ドルに達した。家計消費が生産能力に対して慢性的に弱いという国内の不均衡が解けない限り、黒字は貿易政策ではなく成長モデルの帰結であり続ける。また、「貿易の均衡的発展」と同時に、対外投資の支援が挙げられている点からも、輸出を減らす意図がないことが読み取れる。
リスク面では、不動産市場の安定、一括債務処理案の実施、地方中小金融機関の改革とリスク処理、資本市場の投融資改革に加え、ダムや堤防などの防災対策が挙げられた。
[メキシコ/Q2は成長回復]
メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)は2026年第2四半期のGDP速報値を公表した。実質GDP成長率は前期比1.5%となり、市場予想の1.4%をやや上回る結果であった。農業生産は前期比3.3%、工業生産は同1.6%、サービス業は同1.5%増加し、経済活動全体を押し上げた。
第1四半期のGDPは前期比0.6%減であったが、メキシコ経済が指標ほどは弱くなかったことを示唆する。第1四半期の弱い数字が経済全体の減速を正確に反映していなかった理由としては、第一に、ハリスコ新世代カルテル(CJNG)のトップ摘発を目的とした治安作戦が、一時的に経済活動へ大きな混乱をもたらしたこと。第二に、GDPの季節調整モデルが近年の貿易データの大きな変動を十分に反映できておらず、成長率を実態より低く示したことが指摘されている。
特に季節調整に関しては、過去1年間の貿易動向の急激な変化が統計上の歪みを生んでいる可能性が高い。こうした変化は、米国のトランプ政権による関税政策や、メキシコ政府が自由貿易協定を締結していない国からの輸入品に追加関税を課したことなどによって引き起こされたと考えられる。そのため、GDP統計は今後も過去データを含めて改訂される可能性がある。
ただし、投資の持続的な回復ではなく、最低賃金引き上げによる一時的な消費の急増を反映したとの見方もあり、年後半の持続的な成長を約束するものではなかった。それでも、第3、4半期の成長がなかったとしても、2026年通年のGDPは前年比1.5%程度になることになる。IMFは7月に改訂した経済見通しにおいて1.2%の成長を見込むが、財務省が公表した年間成長率は前年比1.8~2.8%であり、両者には差がある。詳細な内容については2026年8月24日に公表予定の第2四半期GDP確報値を待つ必要がある。
メキシコ経済に対する楽観的な見方としては、第一に、米国経済が依然としてメキシコ成長の重要な牽引役であること。第二に、世界の製造業に回復の兆しが見られ、特に半導体や機械関連分野が近年のメキシコの貿易黒字を支えていること。第三に、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が見直し協議に向かう中でも維持される見通しが示され、米国の関税政策に対するメキシコの相対的な競争優位が保たれるとの期待から、不確実性がやや低下したことである。
こうした環境に加え、第2四半期の予想以上に強いGDP成長を踏まえると、2026年通年の実質GDP成長率1.2%には上振れリスクがあると考えられる。ただし、その実現には今後のGDP統計改訂の内容が大きく影響する見通しである。
[米国/26年Q2の経済成長率は減速]
商務省によると、2026年第2四半期(Q2)の実質GDP成長率は前期比年率+1.5%だった。成長ペースはQ1(+2.1%)から鈍化したものの、2025年Q2以降、5四半期連続のプラス成長だった。
内訳を見ると、個人消費と民間投資の寄与度が合計で3.3ポイントあり、民需主導の成長だった。その一方で、在庫の取り崩しが▲0.7ポイント、輸出以上に輸入が増加したため純輸出が▲1.0ポイントとなり、成長率を押し下げた。
個人消費(Q1+0.5%→Q2+3.2%)は、減税策などによる税還付が例年よりも大きかったことが下支え要因になった。また、株価が上昇していたこともあり、資産効果から高所得者層の消費を後押しした。その一方で、中低所得者は貯蓄を切り崩して消費に回す動きも見られた。財(+0.5%→+5.2%)、サービス(+0.5%→+2.2%)ともに増加した中で、耐久財(+0.5%→+6.8%)を中心に財が個人消費をけん引した。
企業設備投資は、AI向けデータセンター投資がけん引役になった。構築物(▲4.7%→▲5.0%)が減少し続けている一方で、機械装置(+15.8%→+15.2%)が2四半期連続の2桁増だった。研究開発などの知的財産生産物(+13.8%→+8.8%)も高めの増加率だった。
もっとも、設備投資の部材では輸入品も多いため、輸入の増加(純輸出の減少)につながっている。実際、輸入(+11.8%→+11.5%)は2四半期連続で2桁増だった。それに対して輸出(+10.9%→+4.5%)は増加したものの、減速していた。
また、政府支出(+4.4%→▲0.8%)は2四半期ぶりに減少に転じた。連邦政府(+9.4%→▲4.1%)が2025年末の政府閉鎖の反動から2026年Q1に大幅な増加に転じた影響がはく落したことが大きかった。
米国経済は引き続き緩やかな成長を続けると期待される。ただし、中東情勢に影響を受けた物価の高騰や、AIや半導体関連投資の調整など、下振れリスクは引き続き大きい。
[エネルギー危機とEVシフト]
7月30日、国際エネルギー機関(IEA)は5月に公表した「Global EV Outlook 2026」のアップデート版を公表した。2026年上期の市場データを反映し、中東危機に伴うエネルギー危機が電気自動車(EV)市場や世界の自動車産業に与える影響を分析したもの。道路輸送用車両は世界の石油消費のほぼ半分を占め、燃料価格高騰や供給途絶の影響を受けやすい。IEAは、EVが石油輸入の削減や消費者の燃料価格変動への耐性向上につながることから、エネルギー安全保障策として改めて注目されていると指摘する。
2026年上期の世界の自動車販売は中国と米国の不振により前年同期比▲5%減少した。IEAは、下期にある程度の回復を見込むものの、通年で▲2%のマイナス成長と予想している。一方、EV販売は上期合計で900万台を超え、前年同期比では▲1%減にとどまった。第2四半期に500万台超と前期比35%増加し、新車販売に占めるEV比率は前年同期の23%から24%に上昇した。通年のEV販売は前年比約10%増の2,300万台、販売シェアは29%に達すると予想する。欧州は上期に30%増加したほか、オーストラリア、ブラジル、インド、韓国、ベトナムでは中東危機後の3~6月販売が前年同期比でおおむね倍増した。
競争力で先行するのは中国勢だ。中国の上期EV販売は約2割減少したが、EV輸出は120%超増え、国内販売の減少を完全に相殺した。中国は電池を中心とする統合サプライチェーンと、先進国比で約35%低いEV生産コストを持つ。IEAは、内燃機関車に強い既存メーカーが市場シェアや雇用を失う可能性を指摘しており、今後の自動車産業の競争力は、電池やソフトウェア、製造効率に加え、新興市場での事業展開が左右するとの見方を示した。
[ロシア下院選挙、11政党の登録完了]
7月30日、ロシア中央選挙管理委員会(CEC)は、2026年9月の国家院(下院)選挙に向け、署名収集が免除される参加資格を持つ11政党の候補者名簿登録を完了した。これにより、選挙戦は制度手続きの段階から実質的な政治キャンペーンの段階へ移行した。パンフィロワCEC委員長は、登録完了をもって選挙プロセスの「第1段階」が終了したと位置付けている。
今回の選挙で注目されるのは、ウクライナとの早期停戦を訴える改革派野党「ヤブロコ」が正式に選挙参加を認められた点である。同党は400人を超える候補者を擁立しており、ロシア国内における反戦・和平志向の有権者層への訴求を図る。一方で、同党の支持基盤は限定的であり、議席獲得へのハードルは依然として高いとみられる。
もっとも、選挙結果を左右するのは与党「統一ロシア」と既存の院内政党が中心となる見通しだ。統一ロシアはメドベージェフ党首の下、ラブロフ外相や退役軍人らを名簿上位に配置し、現在の圧倒的多数派の維持を目指す。共産党(CPRF)、自由民主党(LDPR)、「公正ロシア」、「新しい人々」も議席維持に注力するが、政治環境や支持率を踏まえると、議会構成が大きく変化する可能性は低いとの見方が優勢である。投票は2026年9月18~20日に実施され、今後は各党による選挙運動が本格化する。今回の選挙は、ウクライナ情勢の長期化や国内経済への影響を背景に、プーチン政権への支持基盤の強さを改めて確認する政治イベントとして位置付けられる。
[EU/データセンター]
7月30日、欧州連合(EU)は、技術的主権の推進と「AI大陸」の実現に向け、最大7拠点の「AIギガファクトリー」を設立する公募を開始した。EUと加盟国からの最大100億ユーロの公的資金を原資に、少なくとも200億ユーロの民間投資を誘発し、総額300億ユーロ以上の投資創出を目指している。
この施設は、最先端のAIプロセッサ、ソフトウェア、クラウド、高速接続、省エネデータセンターを統合したインフラとなる。スタートアップや中小企業、産業界、学術界、公的機関に対し、先端AIモデルの学習・推論・微調整に必要なコンピューティング能力を提供し、技術開発はデータ保護や安全性、倫理に関するEU基準に準拠して行われる。
応募は企業、公的機関、投資家によるコンソーシアムや特別目的会社(SPV)が可能で、単一国または複数国に分散して設置できる。18の加盟国が欧州高性能計算共同事業(EuroHPC JU)と共同調達協定を結び、コンピューティング利用時間を共同調達することとされている。
ハードウェアは欧州や同志国から調達可能で、欧州サプライチェーンの強化につなげるほか、米国のAMD、NVIDIA、Qualcommとも協定を結び、必要なハードウェアへの円滑なアクセスを確保している。
[エチオピア航空/過去最高売上]
7月29日、国営エチオピア航空は2025/26年度(2025年7月~2026年7月)の決算説明会を開催し、売上高が過去最高となる91億ドル(前年比約20%増)だったと発表した。150の国際線就航地を持ち、売上高、輸送量ともにアフリカ最大の航空会社である同社は、同年度に2,070万人の乗客を輸送し(前年比10%増)、貨物輸送量も前年比16%増と好調だった。最終利益についての発表はなかったものの、中東情勢による燃料価格の高騰により運営コストは前年比25%増加し、特に2026年3~6月は運航に影響が生じたとしている。他方で、中東情勢の緊張の継続が迂回ルートとなるエチオピアに恩恵をもたらすとの見方もある(7月30日、Bloomberg)。
「アフリカのドバイ」を目指すエチオピアは、首都アディスアベバの南東約40kmに「ビショフトゥ(アブセラ)新国際空港」の建設を進めている。第1期工事は2030年に完了予定で、年間6,000万人の処理能力を持つ。これは現在使用されているボレ国際空港の2倍強となる。将来的には年間1億1,000万人まで拡大させる野心的な計画で、これは現在世界最大の処理能力を持つアトランタ国際空港を上回る。総額125億ドルの新空港プロジェクトのうち、20億ドルはエチオピア航空の自己資金が充てられ、アフリカ開発銀行(AfDB)が87億ドルの資金調達の幹事銀行を務める。同行はすでに5億ドルの拠出を約束している。
プロジェクトを管理するコンソーシアムは、ドバイおよびレバノンを拠点とするシダラ・グループで、設計にはザハ・ハディッド・アーキテクツも関与している。空港の主要建設契約に関しては、ボレ国際空港の建設も手がけた中国系企業4社も応札に関心を示していると報じられており(7月30日、Business Insider Africa)、特定の国・地域に偏らないパートナー連携を進めている点も特徴的だ。なお、7月29日に米国政府高官は「新空港プロジェクトにおける米国企業の参画を目指している」と発言した(7月29日、Reuters)。具体的な参画方法については言及しなかったものの、米ボーイング製航空機が追加導入される可能性があり、エチオピア航空と米国企業との結び付きが強化されるとの見方を示した。Africa Report紙(7月4日)は、米国国際開発金融公社(DFC)が中国が関与しないことを条件に、10億ドルの融資と、さらに10億ドルのポリティカルリスク保険の付与を示唆しているほか、米国輸出入銀行(EXIM)も融資に関心を示していると報じている。アフリカにおける中国の影響力を抑制しようとする米国の動きは、「ロビト回廊」のようなインフラプロジェクトのほか、重要鉱物分野でも顕著にみられる。
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