持続的な外国人材の受入れに向けて

2026年05月20日

住友商事グローバルリサーチ 戦略調査部 チームリーダー チーフアナリスト
大井 二三郎

 

 少子高齢化による労働力不足が懸念される中、女性やシニアと並んで外国人の活躍も期待されている。外国人在留者数はこの5年間で4割増加し、2025年末時点では413万人、日本の総人口の3%に達している。労働者としては257万人で、国籍別に見ると中国、ベトナム、韓国・朝鮮が約半数を占め、業種別にみると製造業(食料品製造や輸送用機器製造など)、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業が約半数を占めている。既に多くの産業、事業所で外国人労働者は不可欠な存在になっている。

 

 年齢構成を見ると、在留外国人は20歳代が多く、在留外国人全体の約3割にも達する(日本人では約1割に過ぎない)。特定技能1号の在留期間が5年、技能実習は3年(この二つの在留資格で外国人労働者の3割を占める)であることからも類推できるように、勤続年数も相対的に短く、平均賃金も労働者全体の平均に比べると低い。

 

 もっとも、将来にわたって外国人労働力が「若く」、「短期の」、「低廉な」労働力であり続けるかは定かでない。2019年に創設された特定技能制度および2027年にスタートする育成就労制度(特定技能制度に接続)により、長期在留の道筋が開かれた。企業からも継続雇用への要望は多い。そもそも、就労可能な在留資格においては日本人と同等以上の報酬額が一つの要件であり、外国人労働者の就業期間の長期化が進めば、外国人も必ずしも「低廉な」労働者とはならないだろう。

 

 また、国際環境の変化も影響を及ぼすかもしれない。近年、「稼ぐ国」としての日本のポジションは大きく変化している。日本の一人当たりGDP(35,973ドル)は既にオーストラリア(66,352ドル)に遠く及ばず、台湾(39,489ドル)、韓国(36,227ドル)も下回っている。今後数十年の間には、現在、日本に労働者を送り出している国々の人口動態も変化し、人口送出圧力も緩和しよう。

 

 海外から低廉な労働力を受け入れ続けることの是非についても考える必要がある。人口減少局面においてその影響を緩和することが期待される一方で、低廉な労働力の供給が続けば、そうでなければ見られたはずの賃金上昇が生じないかもしれず、省人化投資も妨げられるかもしれない。

 

 在留外国人を短期的な労働者としてではなく長期的な生活者として捉えれば、さらに多様な論点があり、対応すべき課題がある。持続的な外国人材の受入れ・活用とそのために必要な環境整備についてはさらなる議論が必要であろう。

 


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