2025年8月22日 (金)
[米国]
ニュージャージー州では6月から電気料金が17?20%上昇し、住民の不満がSNSで拡散されている。電力会社は、需要増とそれに対応する発電量の増加を価格上昇の理由に挙げている。また送電網運営会社はAI・データセンター・製造業復活による需要増を指摘している。
特に電力会社が再生可能エネルギーの接続に消極的で、古い石炭・ガス発電を優先しているとの批判もある。この問題には政治的な対立も絡んでおり、民主党知事候補が電力会社の対応を批判し、共和党側は民主党が求めた化石燃料由来の発電所の閉鎖や天然ガス規制を非難している。現地の世論調査では、有権者の26%が電力会社を、19%が民主党の州知事を非難している。エネルギー価格は11月に行われる州知事選の主要争点となる様相を呈している。
隣接するニューヨーク州ではインフレ負担の還付政策を実施する予定であり、今年の秋に400ドルを基準に満たす納税者に還付する。財源はインフレによる消費税収増を活用するとされており、800万人に合計約20億ドルが還付されると見込まれている。この政策には批判と擁護が混在しているが、州知事は「来年はない」として今年の還付を正当化している。各国インフレの影響で負担が増し、生活者は大変。
[EU/米国]
8月21日、EUと米国は関税協定に関する共同声明を発表した。 関税の引き下げと撤廃については、米国はEUから輸入する大半の製品に対して15%の関税を課すことに合意 。EUは米国の工業製品に対する関税を撤廃し、農産物や水産物の市場アクセスを拡大する 。一方で、米国がEU製の自動車に課していた27.5%の関税は、EUが米国製品への関税を引き下げたことが確認されるまで延期された。
この合意には、EU加盟国および欧州議会の承認が必要であり、時間を要する可能性がある。欧州通商委員は、8月末までに一部の米国製品に対する関税を引き下げる法案を提出する意向を示しており、法案提出をもって米国の関税が遡及的に引き下げられることを期待している。
EUの自動車産業は米国への輸出に大きく依存しており、EU最大の経済国であるドイツは、合意された協定の迅速な締結を強く求めていた。
欧州からの自動車輸出に対する関税は、従来2.5%だったが3月から25%の追加関税が課せられている。EUは、EUからの輸出全般については、トランプ大統領が以前に示唆していた30%の関税よりは低い水準で合意に至ったが、それでも再就任前の平均税率の3倍に相当する高い関税となっており、EU内での合意をめぐる議論は続いているが、多くの詳細が未解決のままとなっている。
また、声明では、医薬品、木材、半導体チップに対する米国の関税が15%に制限されることが改めて確認されるとともに、航空機およびその部品、ジェネリック医薬品とその成分、コルクなどの「希少な天然資源」に対してゼロ関税を適用する方針が示された。ジェネリック医薬品については、5月に発表した「最恵国待遇(Most Favored Nation: MFN)薬価政策」※が適用される。
一方、フランスとイタリアが求めていたワインとスピリッツに関する同様の特例措置は認められなかったことから、欧州は引き続き交渉を続けるとしている。
また、エネルギー・技術分野での協力として、EUは米国から7500億ドル相当の液化天然ガス(LNG)、石油、原子力エネルギー製品を購入することや、400億ドル相当の米国製AI半導体購入、EU企業が2028年までに米国の戦略分野に6000億ドルの追加投資を行うことも改めて確認されるとともに、 デジタル貿易障壁への対応としては、不当な障壁に対処するとともに、今後の協議を継続する意向を示している 。
※国内における処方薬の価格を他の先進諸国と同水準に引き下げることを目的とした大統領令
[パナマ]
8月20日、パナマでは2026年予算に対する議論が開始された。予算の規模は、349億ドルとなっており、2025年の修正予算より約14%も多く、パナマ史上最大の規模となっている。
財務大臣は、インフラ整備や社会プログラムへの投資など予算の妥当性を強調した。提案された予算では、投資に111億ドル(GDPの12%)、債務返済に81億ドルを充てる方針であり、財政赤字はGDP比3.4%に抑えることを目標としている(2025年は3.9%)。
しかし、議会では与党が過半数を確保できておらず、与党の同盟関係が流動的なことから、予算案の承認には困難が予想されている。野党議員らは、農業、住宅、大学などの主要分野に対する予算削減を批判している。
予算案の審議は、10月31日まで2か月強続けられる予定であるが、必要に応じて年末まで臨時議会が招集される可能性もある。
[カザフスタン]
中央アジアのカザフスタンは最近、1人あたりの名目GDPでロシアを追い越した。国際通貨基金(IMF)によると、2025年にはカザフスタンの1人あたりGDPが約14,770ドルに達する見込みであり、ロシアの約14,260ドルを上回るとされている。
これは必ずしも全体的な富や生活の質向上を意味するものではないが、ロシアを上回った理由としては、安定した高い経済成長や豊富な資源と政府が取り組んでいる汚職撲滅対策、また、経済制裁による制約がなく、積極的な外資企業の誘致などがあることも挙げられている。
ロシアの有名なビジネスマンかつ「アルミ王」と言われたオレグ・デリパスカ氏(国内アルミ大手Rusal社の元社長)は、国内における所有権の強化、中国とヨーロッパと繋ぐ物流回廊の整備、国家の経済介入の縮小などによるカザフスタンの進展を高く評価している。ただし、購買力平価(PPP)で見ると、1人あたりの名目GDPでは、依然として、ロシアがカザフスタンを上回っている。
[中国]
中国当局もステーブルコインの発行を計画しているとの報道が散見されるようになっている中、米外交問題評議会の中国専門家であるZongyuan Zoe Liu(劉宗媛)氏が8月19日付の『フォーリン・ポリシー』誌に、中国がアメリカの「Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins(GENIUS法)」をどのように受け止めているか、また中国自身の政策が今後どう展開するかについてエッセイを寄稿している。以下にその内容を紹介する。
米国で成立した「GENIUS法」は、米政府の規制下にある銀行による、ドル裏付け型ステーブルコインの発行を制度化するものである。従来の不安定な民間ステーブルコインとは異なり、1:1のドル償還保証を通じて高い信頼性を付与する。この結果、今後数年で最大1.75兆ドル規模の新たなドル建てデジタル資産が流通する可能性があり、その影響は米国内にとどまらず、国際金融秩序にも波及すると見込まれている。
とりわけ中国にとって脅威となるのは、ステーブルコインが資本規制を事実上回避し、匿名性を保持したまま国境を越えて流通し得る点である。中国共産党の権力基盤は、金融抑圧と厳格な資本管理に支えられてきたが、ドル建てステーブルコインが広く普及すれば、資本流出を防ぎきれず、エリート層への優遇的資金配分を通じた統治メカニズムが揺らぐ危険性がある。また、特に輸出型企業は取引コスト削減の観点からステーブルコインの利用を歓迎する可能性があり、人民元の国際的地位が浸食され、ドル覇権の強化につながるとの警戒感が強まっている。中国の研究者や国営メディアは、ドルステーブルコインの普及が米国債需要を高め、ドルの基軸通貨体制を一層強固にすると警告している。
一方で、中国自身は暗号資産を厳格に禁止する一方、ブロックチェーン技術を国家戦略として推進し、デジタル人民元(e-CNY)を発行した。しかし、デジタル人民元の普及は低迷しており、既存のアリペイや微信支付に劣後している。こうした状況下で、中国は香港を実験場として、香港ドルやオフショア人民元に裏付けられたステーブルコインの導入を認め、国際流通の可能性を模索している。
中国版ステーブルコインは、実名認証や使用制限を組み込んだ「プログラム可能マネー」として設計される見通しであり、国家統制を強化する手段となる。米国の銀行発行ステーブルコインがドルの優位性を拡張するのに対し、中国は統制的なデジタル人民元および人民元ステーブルコインによって対抗しようとしており、今後の国際金融は、二つの異なるデジタル通貨モデルによる覇権競争へと収斂していく可能性が高い。
[米国]
8月21日、国務省は、米国への渡航査証所持者に対する行動調査を実施することを明らかにした。対象者は5,500人に上るとみられ、超過滞在、犯罪行為、テロ活動、あるいはテロ支援活動が確認された場合は、当該者の渡航査証を取り消す。米国への短期渡航であれば、日本や欧州各国は入国査証が免除されているが、世界の大多数の国々からの対米渡航には短期間であっても査証取得が必要。査証発行にあたっての背景調査は行われているが、査証発給済みの外国人に対しても、その行動調査を行うには膨大なリソースが必要になると見積もられている。トランプ政権は、不法越境者に対する取り締まりのみならず、合法的な対米渡航者についても規制強化を進めている。留学査証などの発行に際しても、学生のSNSアカウントを確認し、米国の安全保障を損ねるような内容の発信の有無を審査すると発表している。
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