2025年8月26日 (火)
[ポーランド]
8月25日、ナブロツキ大統領は国内で暮らすウクライナ避難民への支援を延長する改正法案に拒否権を行使し、成立を阻んだ。ウクライナから避難した世帯はこれまで子ども1人あたり800ズロチ(約3万2,000円)を受け取ってきた。支援金のほか、医療費は無料などとの支援措置も含まれている。延長法案の成立は不透明で、手当が10月から打ち切られる可能性がある。ナブロツキ大統領は「家族手当はポーランド国内で働く意欲を持つウクライナ人に限定すべきだ」と訴え、就職せずに納税もしていないウクライナ避難民は支援しない姿勢を示した。ポーランドは避難民を多く受け入れてきたが、国民の間に支援疲れが広がっている。
一方、8月25日、ガフコフスキ副首相兼デジタル担当大臣は、法案が成立しない場合、ウクライナでのスターリンク運用に打撃となるとの見方を示した。ポーランドはウクライナで利用されるスターリンクの利用料金を肩代わりしており、同法が法的根拠になっているという。ウクライナの通信を支える「スターリンク」の運用に支障が出れば、戦況にも影響が及ぶ可能性がある。
[イスラエル/パレスチナ]
8月25日、イスラエルはガザ南部のハーン・ユニスにあるナセル病院を攻撃し、5人のジャーナリストと4人の医療従事者を含む20人が死亡、50人以上が負傷した。犠牲となったジャーナリストには、ロイター通信やカタールの衛星TV局アル・ジャジーラのカメラマン、NBCの記者らが含まれる。報道によれば、今回の攻撃は「ダブルタップ(同一標的に数分差で連続攻撃する軍事戦術)」と呼ばれる手法が用いられたことが、ジャーナリストの犠牲者が多かった背景にあるという。最初の砲撃でナセル病院の最上階が直撃され、その数分後、現場に駆け付けたジャーナリストや救助隊員が外階段を上っている最中に、2発目の砲弾が命中したとされる。
2023年10月7日以降、ガザでイスラエルの攻撃により殺害されたジャーナリストの数は245人に達しており、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)、ジャーナリスト保護委員会(CPJ)、外国プレス協会(FPA)など各団体が強く非難している。また、世界保健機関(WHO)や国境なき医師団(MSF)も、医療施設を標的にした攻撃を強く批判し、即時停戦を求めた。
今回の攻撃に対しては、イスラム協力機構(OIC)や欧州諸国、中東の周辺国をはじめ、各国政府からも非難の声が相次いでいる。トランプ米大統領は「このようなことは見たくない」と不満を示し、英国のラミー外相はXに「恐怖を覚えた」と投稿。さらにフランスのマクロン大統領も「これは容認できない。民間人とジャーナリストは、いかなる状況下でも保護されなければならない」と強く非難した。
[ドイツ]
ドイツの2023年第2四半期の経済は、予想を上回る縮小となった。ドイツ連邦統計局(Destatis)が発表した確定データによれば、国内総生産(GDP)は前期比で0.3%減少した。この数値は、7月30日に公表された速報値(0.1%減)から下方修正された。第1四半期は0.3%成長だった。今回の成長率の低下は、主に投資、建設、輸出の減少が大きい。
第2四半期の経済縮小は、政府が国内投資の拡大を約束していたにもかかわらず、ドイツ経済が関税の不確実性に対して脆弱であることを浮き彫りにした。政府の最大の懸念は雇用の喪失であり、米欧間の関税引き上げを回避するために、米国への生産拠点移転を検討する企業が増加している。
一方、企業活動の指標である購買担当者指数(PMI)は改善傾向を示している。ドイツのPMIは7月の50.6から8月には50.9へと上昇し、3月以来の高水準を記録した。PMIの改善は、米欧間の合意によって企業の信頼感が回復しつつあることを示している。
しかし、関税の引き上げ、ユーロ高、財政政策の不透明さといった要因が、今後の経済成長を抑制する可能性がある。
[コンゴ民主共和国(DRC)/ルワンダ/ウガンダ]
8月20日、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)はDRC東部の北キブ州でルワンダ系反政府勢力「M23」が7月に140人以上のフツ族民間人を殺害したと発表した。HRWは、これはM23による反ルワンダ武装組織「ルワンダ解放民主勢力(FDLR)」およびワザレンド系組織「CMC-FDP(注)」に対する一掃作戦であり、8月6日に国連が発表した319人が殺害されたとする報告書と一致していると主張した。また、同作戦にはM23支援のためルワンダ国防軍(RDF)が参加しており、2021年にM23が再結集して以来、民間人に対する最悪の事件だと報じている。
FDLRは1994年に少数派のツチ族と穏健派フツ族を殺害した「ルワンダ大虐殺」を首謀したグループを中心に構成され、大虐殺終了後に隣国DRC東部に逃れた後もルワンダとの武力衝突を続けてきた。ツチ族のルワンダのポール・カガメ大統領は大虐殺の混乱を収めたあとも、FDLRがDRC東部からルワンダの安全保障を脅かしていると主張し、ルワンダの軍事行動を正当化してきた。
米・戦争研究所は今回のM23らによる作戦の目的はFDRLらによる支配地域の占領と補給路の確保にあったと指摘。しかし、M23による民間人に対する無差別暴力は国際法違反であり、戦争犯罪に相当するほか、カタールと米国がそれぞれ並行して調停を続ける和平交渉に対する明確な違反だと分析している。
米国は6月にDRCとルワンダの政府間で提携された和平協定を仲介。DRCに対してはFDLRなどの武装組織への支援停止を、ルワンダに対してはRDFの武装解除を求めてきたが、今回の作戦でM23に対してRDFが支援していたとなればルワンダは和平協定を反故にしていることになる。
一方でカタールは、DRCと紛争当事者であるM23との直接和平交渉を仲介してきた。7月に当事者間で署名された「原則合意」では即時停戦とM23の支配地域からの撤退が盛り込まれたが(2025年7月22日デイリー・アップデート参照)、これも同じく全く守られていないこととなる。ルワンダ政府は国連やHRWによるルワンダがM23を軍事支援したとする報告結果を「事実に基づくものではなく、いかなる証拠も欠如している」と全否定している。
両和平交渉で定められた内容の実効性が乏しく、先行きが不透明な中、北キブ州に隣接するイトゥリ州では、反ウガンダ武装勢力「連合民主軍(ADF)」と「コンゴ開発協同組合(CODECO)が7月末に40人の民間人を殺害するなど治安が不安定な状況が続いている。DRCとウガンダは共同でADFらの掃討作戦を進めているが、イスラム系組織を母体とするADFは「イスラム国(ISIS)」とリンクしているとみられており、対応に苦慮している。DRC東部地域では数百もの武装組織が重要鉱物と支配地域の獲得をめぐって分裂、拡大、吸収統合などを進めており、地域の安定には相当の時間を要するとみられる。
(注)ワザレンドはスワヒリ語で「愛国者」を意味するDRC東部の民兵組織。DRC国軍(FARDC)と協働してM23ら反DRC政府勢力と戦闘を行っている。CMC-FDPもワザレンドの一派とみなされている。
[米国/中国]
米ニューハンプシャー州で土地を購入している中国企業と投資家の動向は、軍事施設への近接性と「トロイの木馬的な買収」への懸念から、一部の政治家の注目を集めている。過去10年間のニューハンプシャー州における3件の主要な土地購入について懸念が表明されている。そのうち直近の土地購入は今年の1月に、中国最大の飲料会社である農夫山泉が、ナシュアのペンニチャック水道システム近郊の土地を購入した件。重要社会インフラのそばでの外国企業の土地購入は、特に購入者が地政学的ライバル国と関連している場合、国家安全保障上の懸念を引き起こすことがある。これらの買収は、軍事施設や防衛関連企業に近い不動産を所有することがあり、軍事的な脆弱性を露呈するリスクもあるとされる。中国企業の農夫山泉は、この土地を購入したが、その額は6,700万ドルで、ナシュア市の公式評価額1,570万ドルの4倍に相当すると見られている。そして、この土地はナシュア空港や防衛施設、連邦航空局管制センターに近接している。
ナシュア市は州の経済開発努力を支持しており、その妨げにはならないと述べ、農夫山泉がペンニチャック水道システムを購入するとの噂を強く否定した。中国の駐米大使館報道官は「本質的に、中米の経済・貿易関係はWin-Win。長年にわたり、中国企業による米国への投資は、米国の雇用と経済成長に重要な貢献をしてきた」「国家安全保障の概念を過剰に拡大し、経済・投資問題を政治化することは、市場原則と国際貿易ルールに反し、米国のビジネス環境への信頼を損なう」とコメントしている。
[日本]
日本銀行によると、7月の企業向けサービス価格指数は前年同月比+2.9%となった。上昇率は6月(+3.2%)から縮小し、2024年9月以来の3%割れになった。
内訳を見ると、不動産(6月+2.5%→7月+2.2%)が、その他の不動産賃貸(ホテル賃貸)などを中心に上昇率を縮小させた。また、リース・レンタル(+2.5%→+2.0%)では、産業機械リース、建設機械・事務用機器レンタルなどが上昇率を縮小させた。広告(+2.0%→+1.3%)では、ネット・新聞・雑誌広告(+1.8%→▲1.0%)が低下に転じた影響が大きかった。諸サービス(+4.1%→+3.3%)では、宿泊サービス(+7.5%→+5.4%)に加えて、機械修理(+6.2%→+1.1%)や商品・非破壊検査・計量証明サービス(+4.5%→+1.7%)、スポーツ施設提供サービス(+1.3%→▲1.4%)などの鈍化が目立った。
企業向けサービスは、いわゆるBtoB取引のうちサービス価格を表している。これがいずれ川上の消費者物価指数に転嫁されていくことになる。足元にかけてやや鈍化しているものの、上昇ペースは依然として2%超であり、消費者物価に当面上昇圧力をかけ続けると予想される。
[アルゼンチン]
アルゼンチンでは現在、金利の急騰と為替の下落が続く中、政権中枢に近い人物を巡る新たな汚職疑惑が市場に深刻な影響を与えている。
問題の発端は、障害者支援機関(ANDIS)の元局長ディエゴ・スパニョーロ氏による音声データの流出である。この音声には、機関内で賄賂がやり取りされていたとする内容が含まれており、ミレイ大統領の妹で首席補佐官を務めるカリーナ氏が関与している可能性が示唆されている。ミレイ大統領はスパニョーロ氏を即座に解任し、当局は同氏の自宅を家宅捜索した。
この疑惑の影響により、アルゼンチンのドル建て国債は急落し、株式市場も3%以上下落するなど、経済的な打撃が広がっている。政府は信頼できる説明を示すことに苦慮しており、今後の展開は追加の証拠の有無に左右される見通しである。
ミレイ大統領には、過去にも仮想通貨「リブラ」を巡るスキャンダルがあった。これは、大統領がSNSで紹介した後に価格が暴落した事例であり、最終的には証拠不十分で沈静化した。しかし、今回の疑惑は障害者関連の政策とも関係しているため、政治的影響はより深刻になる可能性がある。
9月7日には、ブエノスアイレス州の地方選挙が予定されているが、これは10月の中間選挙の前哨戦とされており、与党が不振に陥れば、ミレイ大統領の支持率低下の兆候と受け止められるとされている。経済面でも、野党が先週複数の支出法案を可決し、ミレイ政権が成果として掲げる財政黒字の達成を脅かしている。さらに、政府はペソ防衛のために流動性規制を導入したが、これが商業銀行の間で不安を引き起こしている。中間選挙では、野党が分裂状態にあるため、与党のリバタリアン党(LLA)は依然として有利とされているが、汚職疑惑や経済の混乱が続けば、支持率が低下する可能性は高い。そうなれば、経済的圧力が強まる中で、政権の統治能力が任期後半に制限される恐れがある。
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