デイリー・アップデート

2025年8月27日 (水)

[米国] 

8月26日、ラトニック商務長官はテレビ番組のインタビューに答え、トランプ政権が国防産業への出資を検討していることを明らかにした。具体的には、ロッキード・マーチン社の名を挙げ、同社への出資を国防長官以下、関係者が検討中であると述べた。商務長官は、ロッキード・マーチン社の売り上げの97%は米国政府の国防調達によるもので、実質的に政府機関の一部であるとも発言した。同社のほかに、ボーイング社、パランティア社などにも言及した。

 

8月22日にトランプ大統領は、インテル社に対する10%出資を発表しており、半導体産業以外に対しても政府出資が行われる可能性を示唆していた。インテル社は、米国政府が89億ドルを出資するが(出資比率9.9%)、同社経営には携わらないと明らかにしている。日本製鉄によるUSスチール買収案件のように連邦政府が黄金株を取得する例もあり、今後、国防産業に対する出資がどのような形になるかは不明。

[オーストラリア/イラン] 

アルバニージー首相は、オーストラリア保安情報機構(ASIO)が「メルボルンのユダヤ教礼拝所シナゴーグ」と「シドニーのユダヤ系コーシャー食事施設」に対する放火事件をイラン革命防衛隊(IRGC)が代理勢力を使って起こした事案と発表し、イラン大使を含む3人の外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ」として追放した。この追放は第二次世界大戦以降で初めての措置で、キャンベラのイラン大使館は閉鎖される。なお、オーストラリアの外交官は既にイランを離れている。また、アルバニージー首相はIRGCをテロ組織として法的に指定する方針を明らかにした。オーストラリア政府はイランへの渡航警告を渡航禁止として、イラン国内に滞在するオーストラリア人に早期退避を強く推奨している。イランは一連のオーストラリアの対応に強い反発を見せており、必ず対抗措置を取ると警告した。

 

一方で、オーストラリアはパレスチナの国家承認を国連総会で表明する予定であることを公表しており、イスラエルからの強い反発も受けている。今回の措置は、パレスチナ支持が反ユダヤ主義と同義ではないという立場を明確にすることになったが、一層の安全保障強化も必要となると見られている。しかし、パレスチナ支持を表明しながらもイラン抜きのパレスチナを支持するという複雑な構図を生み出すことになる。

[モザンビーク/ルワンダ] 

8月26日、ルワンダを訪問しているモザンビークのクリストヴァン・チュメ国防相は、北部カーボ・デルガド州のテロ対策にあたってモザンビーク・ルワンダ軍の共同作戦を継続するとの意向を示した。

 

仏資源大手・トタルエナジーズらが同州北部・アフンギ半島で進めていた液化天然ガス(LNG)開発プロジェクトは、イスラム系反政府武装組織「モザンビーク・イスラム国(ISM)」の襲撃により2021年以降、停止している。その直後にモザンビークとルワンダの二国間協定に基づき、同地域にルワンダ国防軍(RDF)・警察が数千人単位で派遣され、治安維持にあたってきた。ルワンダ軍の派遣にはEUも「欧州平和ファシリティ(EPF)」を通じて金銭的な支援を行っている。

 

ISMの活動は、RDFや「南部アフリカ開発共同体(SADC)」合同軍(2024年に撤退)などの軍事作戦により、2021年の最盛期に比べ小規模・分散化した。攻撃はプロジェクトサイト周辺や主要幹線道路沿い、海上でも散発的に続いてはいるが、トタル社は2025年内に「不可抗力宣言」を撤回し、2029年LNG生産開始に向けた準備を進める意向を示している。

 

そのような中でのチュメ国防相のルワンダ訪問は、今後のモザンビークの国家収入にとって極めて重要な国家級プロジェクト再開を見据えて、今後も長期的にRDFを駐留させ、治安維持を確保したい政治的・経済的狙いがあるとみられる。

 

アフリカの内陸国のルワンダは約人口1,400万程度の小国だが、国連平和維持活動(PKO)への派兵数は5,886人と、ネパール(6,119人)に次いで世界第二位(2025年5月末時点)の派遣国である。人口あたりの派遣数はネパール(人口4,845万)を上回り世界1位だ。この背景には1994年の「ルワンダ大虐殺」を収束させたポール・カガメ大統領が、米国・欧州による高度な軍事訓練を受けながら軍事力を増強させたRDFを積極的に海外に派遣し、その見返りに資金援助を得るといった外交・経済政策がある。

 

フランス国際関係研究所(IFRI)は、ルワンダはカガメ大統領による独裁的な統治や、隣国DRC東部に対する軍事作戦では国際的な批判を浴びているが、こうしたPKO派遣によりその批判を緩和させようとしていると指摘。また、PKO以外にもモザンビークや中央アフリカ共和国など、二国間協定に基づくRDFの派遣を通じて、小国でありながらもアフリカ、ひいては国際社会での影響力を高めようとするルワンダの国家戦略だとみている。

 

さらに、IFRIは、カーボ・デルガド州に派遣されていたSADC合同軍のような多国間組織はしばしば派遣された側の国(モザンビーク)の「国家権威」を損なうため、モザンビークとしてもルワンダのような二国間での軍事協力を好んだ背景があると分析している。

 

ルワンダはこうした軍事提供を行う国々に対して、カガメ大統領が率いる政党「ルワンダ愛国戦線(RPF)」の事実上の金融部門であるクリスタル・ベンチャーズ社を通じた経済的利益の確保を同時に図っている。英・FT紙は2024年、トタル社はLNGプロジェクトの警備のためクリスタル・ベンチャーズの関連子会社と契約を結んだと報じている。中央アフリカでも関連企業によるダイヤモンドや金などの鉱物探査が許可されている。

[ロシア/NATO] 

独シュピーゲル誌は、1990年代にロシアがNATOに加盟する可能性について議論された歴史的背景について報道。同誌は、ドイツの現代史研究所の出版物や、実際交渉にあたった参加者の個人アーカイブから、これまで機密文書を研究してきたことを報じている。これによると、1990年代初頭に、クリントン米国大統領政権がロシアのNATO加盟の可能性を真剣に検討した当時、ロシアのエリツィン大統領も加盟に前向きで、「包括的な欧州の安全保障構築」を目指していたという。

 

しかし、ドイツ政府や当時のヘルムート・コール首相はロシアのNATO加盟に強く反対し、米国内でもロシア加盟に懐疑的な声が多かった。主な懸念点は、ロシアを加盟させるとNATOの集団防衛原則が崩れる可能性があることだった。具体的には、NATO加盟国であるロシアが対中国紛争に陥った場合、欧州の兵士が大陸の反対側で戦争をしなければならないのか、との懸念だった。

 

また、ドイツの政策立案者は、ロシアが市場改革と民主改革への道を歩み続けるかどうか確信が持てず、ロシアが再び冷戦時代のように欧州に対する脅威になるのではないかとも懸念していた。

[中国] 

8月25日、中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁は「グリーン・低炭素転換の推進と全国炭素市場建設の強化に関する意見」を発表した。生態環境部の報道官は、この文書が全国炭素市場の中長期的な発展に向けた時間軸、ロードマップ、作業内容を明確にするものであると説明した。

 

中国は2021年に全国炭素排出権取引市場(強制炭素市場)を、2024年には全国温室効果ガス自主削減取引市場(自主炭素市場)を開始した。これまでの政策は、方向性や原則の提示にとどまり、段階的な拡大を強調する内容が中心だった。しかし今回初めて、2027年および2030年の二段階の到達目標が明示され、対象範囲、制度設計、価格シグナルの完成度に関しても具体的な目標が設定された。

 

また、従来は排出企業による取引が中心で流動性が低かったが、今回の意見では、炭素担保や炭素買戻しなどの融資ツールの導入、銀行や証券会社などの金融機関の参入が明記されており、炭素を金融資産として位置付ける方針が示された。

 

これまで炭素市場は主に発電部門が中心だったが、今年は鉄鋼、セメント、アルミニウム精錬業界が強制炭素市場に組み入れられた。さらに、2027年までにすべての主要産業部門を網羅する方針が示されている。自主的な温室効果ガス排出削減取引市場についても、すべての主要分野を対象に拡大する予定である。

 

自主炭素市場はこれまで地域的・分散的に運用されており、透明性や信頼性に課題があったが、今後は方法の統一、透明性の確保、重点領域のカバーなどが進められる予定であり、これは国際市場との接続を意識した動きとみられる。

[イラン/オーストラリア] 

8月26日、オーストラリアのアルバニージー首相は、2024年10月と12月にシドニーとメルボルンで発生したユダヤ教施設放火事件について、イランの革命防衛隊(IRGC)がオーストラリア国内のエージェントを通じて関与した可能性が高いと発表した。そのうえで、駐豪イラン大使を”ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)”と宣言し、同大使を含む4人のイラン人外交官に対し、7日以内の国外退去を通告した。さらに、駐イラン・オーストラリア大使館は業務を停止し、館員を全員退避させたことを明らかにするとともに、イラン滞在中のオーストラリア人に対し、直ちにイランから出国するよう要請した。

 

オーストラリア保安情報局のバージェス長官は、両事件で死傷者は出なかったものの、「恐怖を煽り、分断を助長し、社会の結束を損なうことを狙ったものだ」と記者会見で述べた。オーストラリア政府はIRGCをテロ組織に指定する法案を提出する予定である。

 

この発表を受け、イランのアラグチ外相はXに「イランには数十のシナゴーグが存在し、国内でその保護に最大限の努力を払っている。そうした中で、イランがオーストラリアで同様の施設を攻撃していると非難するのは全く意味をなさない」と投稿。さらに、アルバニージー首相がイスラエルとの関係改善のために今回の措置を取ったと非難し、「オーストラリアの首相は”弱い政治家”であり、その点でネタニヤフ首相は正しい」と付け加えた。

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