デイリー・アップデート

2026年8月17日 (月)

[米国/ガザ対応で特使が中東訪問] 

8月16日、トランプ米大統領の娘婿で顧問のクシュナー氏はエジプトで、ハマス政治指導者ハリール・アル=ハイヤ氏らと約90分間会談した。2025年10月のガザ停戦・人質解放合意成立時以来となる直接協議で、エジプト、カタール、トルコの仲介国関係者のほか、「平和評議会」のムラデノフ・ガザ担当上級代表、ブレア元英首相らも参加した。

 

会談の焦点は、トランプ政権が進めるガザ和平計画の次段階、とりわけハマスの武装解除とガザの非軍事化だった。クシュナー氏は、イスラエル側に撤退などの措置を求めるには、ハマス側も武装解除に向けた具体的な行動を開始する必要があると強調。武器・軍事インフラの放棄に加え、ガザの統治権限をパレスチナ人テクノクラートで構成されるガザ行政委員会(NCAG)に移譲し、将来のガザ統治にハマスが関与しないよう求めた。ハマス側は武装解除へのコミットメントを改めて表明し、統治権限を移譲する用意があるとの意向も示した。ただし、ハマスはイスラエル側も合意内容を履行することが必要だと主張しており、イスラエルによるガザへの空爆継続への不満を表明した。

 

「平和評議会」は、ハマスが武器の引き渡しや軍事インフラの廃棄に着手すれば、イスラエル側にも対応措置を求める方針で、国際安定化部隊(ISF)のガザへの展開、ラファハ地区での復興開始、イスラエル軍の初期段階の撤退に関する協議などが想定されている。イスラエルに対しては、ガザへの人道支援を加速させることも求めている。ネタニヤフ首相は米国側の和平案に強い懐疑姿勢を示し、ハマスが完全に武装解除するまでイスラエル軍は撤退しないとの立場を公に示している。10月27日にはイスラエル総選挙を控えており、選挙前にガザに関して大幅な譲歩を表明する可能性は低いとの見方も出ている。

 

クシュナー氏はエジプトでの協議後、8月16日夜にイスラエルへ移動した。8月17日にはムラデノフ氏らとともにネタニヤフ首相と会談し、ハマスの武装解除に対応してイスラエルが取る措置や、今後数カ月のガザ和平計画の進め方について協議する予定となっている。ガザではイスラエル軍による空爆が続くほか、停戦違反を巡って双方の非難も続いている。ハマスの武装解除とイスラエル側の撤退・軍事行動停止をどのような順序で進めるかが、和平計画の次段階を実行に移す上での焦点となっている。(国際部 広瀬真司)

[米国/高齢化社会] 

ビジネスインサイダー誌が米国の長期介護費用の高騰が大きな社会課題となっていると指摘している。米国保健福祉省(HHS)傘下の地域生活局(ACL:Administration for Community Living)は、現在65歳になる人の約70%が、その後の人生で何らかの長期介護サービスや支援を必要とすると推計している。また、約20%は5年以上にわたり介護を必要とする可能性があるという。
問題は、その費用負担の重さにある。米国には日本の介護保険制度に相当する全国的な公的介護保険制度がなく、多くの介護費用は家計負担となる。介護費用は在宅介護で年間約5万ドル、介護付き住宅で約6.6万ドル、介護施設では11万ドル超との試算もあり、高齢者やその家族にとって大きな経済的負担となっている。
近年は負担が一段と増している。全米退職者協会(AARP)の分析によれば、2019年から2024年にかけて在宅介護や介護付き住宅の費用は約50%上昇し、65歳以上世帯の所得増加率(22%)を大きく上回った。直近でも在宅介護費用は前年比約7.9%上昇しており、一般物価を上回るペースで負担増が続いている。
背景には深刻な介護人材不足がある。米国の介護分野では在宅介護員や介護補助職に移民労働者が多く従事しており、これまで移民流入が高齢化による人手不足を緩和してきた。しかし、ベビーブーマー世代の高齢化で介護需要が急増する一方、人材供給は追い付いていない。介護職の賃金上昇がサービス価格を押し上げ、費用増加の一因となっている。
日本も高齢化という課題は共通するが、公的介護保険によって費用負担は一定程度社会化されている。一方の米国では、介護費用の増大によって家計の貯蓄取り崩しや家族による介護負担が拡大しやすい。これは福祉の問題にとどまらない。介護のために家族が離職すれば労働供給が減少し、将来の介護費用への備えから消費が抑制されれば経済成長にも影響する。長期介護問題は、高齢化、移民政策、労働市場の変化が交差する米国経済の構造課題として注目されている。(経済部 本間隆行)

[原油/IEAの警鐘] 

8月12日、国際エネルギー機関(IEA)は月次の石油市場レポートで、世界の石油需給見通しを修正。2026年第3四半期の供給不足幅の予測を、前月予想の日量約80万バレル(b/d)から180万b/dへ倍以上に引き上げた。6月半ばに成立したイランと米国の停戦が崩壊し、7月の世界供給量は前年を630万b/d下回った。湾岸地域の生産は、紛争前の水準を依然として830万b/d下回っている。

2026年の需要は前年比▲160万b/dと、前月予測から減少幅を拡大した。供給途絶による物理的な消費不能、価格高騰による需要破壊、中国経済の鈍化や構造変化など、要因は複合的だ。それでも供給が需要以上に大きく落ち込み、緊急備蓄放出も行われたことから、2月末以降の世界石油在庫は累計4.1億バレル減少した。IEA加盟国の緊急備蓄の放出ペースは足元で鈍化しており、7月の在庫減少の大半は輸送中を含む洋上在庫の減少によるものと指摘している。

今回の月報では、冒頭コラムで「Disconnects」という言葉を使っている。原油の絶対量や世界全体のバランスだけでなく、精製・物流・備蓄構成の脆弱性を示唆するものと思われる。7月は中東の供給停止やロシアの石油製品輸出減少、中国の製油所稼働低下が重なり、世界の製油所処理量は前年を約▲500万b/d下回った。世界の石油製品海上貿易は前年比▲380万b/d減少し、ディーゼルやジェット燃料などの不足から欧州や米国の精製マージンは記録的水準に上昇している。IEA加盟国は3月に合意した協調備蓄放出4億バレルのうち3億バレルを実行済みで、なお1億バレルの放出余地は残るが、その大半は原油であり、石油製品の需給逼迫を緩和する効果は限られる。産油国や戦略備蓄に原油が存在しても、必要な製品へ転換し、需要地まで届けられないミスマッチが深刻化している。

IEAは、中東情勢が今後数か月で鎮静化し生産が回復すれば、従来予測どおり年末には供給過剰へ転じ、2027年には余剰が最大400万b/dに達するとしている。一方で、湾岸地域の生産が現行水準から回復しなければ、IEAの基本シナリオとの比較で、年末までに累計6.1億バレルの供給が失われるとも述べている。中国、インド、日本、欧州などで備蓄拡充や対象製品の見直しも進んでいるが、IEAは、早期正常化を前提としてきた現在の石油安全保障体制が、長期的な供給途絶、とりわけ石油製品不足には十分対応できない可能性を警告しているとも受け止められる。(経済部 鈴木直美)

[日本/GDP速報(4~6月)・企業物価指数(7月)] 

8月17日、内閣府は4~6月期の国内総生産(GDP)速報値を発表した。物価変動の影響を除く実質(季節調整値)は前期比+0.3%(年率換算+1.1%)と、中東情勢の影響が表れるなか、3四半期連続でのプラスとなった。名目では+1.2%(年率換算+4.8%)。実額は年率で、実質598兆2,880億円、名目687兆7,182億円。

 

前期比の実質成長率+0.3%に対する寄与度では、内需が▲0.2ポイントと3四半期ぶりのマイナス、外需(輸出-輸入の純輸出分)が+0.5ポイントと3四半期連続のプラスとなった。

外需では、輸入は中東情勢悪化に伴う中東からの原油輸入の大幅減にてマイナスとなった一方、輸出は北米向けの自動車輸出やAI需要に伴う半導体輸出で下支えされた。

内需では、GDPの約半分を占める個人消費が▲0.0%と、8四半期ぶりのマイナスとなった。

民間企業の設備投資は▲1.2%と2四半期連続のマイナス。政府消費は+1.6%と5四半期連続のプラス。民間在庫変動は、成長率に対して+0.3ポイントの寄与となった。

なお、国内経済全体の物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比+2.6%(1~3月期は+3.2%)。

 

また、日銀が発表した7月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は135.8で前年同月比+7.2%となった。6月の+7.3%から僅かに上昇率は縮小したものの、2か月連続で7%を超えた。

 

中東情勢悪化による原油価格上昇は一旦落ち着いたものの、依然として影響が広がっており、石油・石炭製品は+17.5%(6月の+22.8%から上昇幅は5.3ポイント縮小)、化学製品は+12.9%(6月の+15.1%から上昇幅は2.2ポイント縮小)。銅やアルミニウムなどの価格上昇を受け、非鉄金属は+40.6%と、6月の+39.3%を1.3ポイント上回る高い上昇率となった。また、電子部品・デバイスは+3.3%、電気機器は+4.6%、情報通信機器は+17.3%と、AI需要拡大による関連部材の価格上昇もみられた。

 

調査対象の515品目のうち、前年同月比で価格上昇したのは434品目(うち、10%以上の価格上昇は111品目)、下落は69品目、変わらなかったのは12品目だった。

 

円ベースでの輸入物価指数は+29.1%、輸出物価指数は+18.9%となった。輸入物価指数の前年同月比は2025年2月から11月までマイナスで推移していたが、12月にプラスに転じて以降、円安や中東情勢の影響を受け、4月(+21.4%)、5月(+26.3%)、6月(+30.1%)、7月(+29.1%)と急激に上昇幅が拡大した。

 

企業物価指数の動向は、サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数と併せて、消費者物価指数に影響を与える。中東情勢に伴う原油価格高騰は一旦落ち着いているが、輸入物価への影響は続いている。それが企業物価の上昇に繋がり、徐々に消費者物価に転嫁され始めている。また、今後は令和8年熊本地震のサプライチェーンへの影響についても注視が必要。(経済部 菊井彩乃)

[米国上院/AGOA延長法案可決] 

8月8日、米国上院は、アフリカ33か国に特恵関税を与える「アフリカ成長機会法(AGOA)」の2028年末までの延長を承認した。2000年に施行されたAGOAはこれまで幾度か延長が行われたものの、2026年12月31日に失効する予定だったことから、2年間の再延長を認めるものだ。


同延長案は、共和党のスーザン・コリンズ上院議員(メーン州)が委員長を務める上院歳出委員会が、夏季休会直前の8月2日に提出した「27年度つなぎ予算案(Continuing Appropriations and Extensions Act, 2027)」の法案の中に含まれているものだ。同法案は主に11月の中間選挙前に政府機関の閉鎖などを防ぐために、米国の27年会計年度が開始する10月1日から12月11日までの予算措置を確保するもので、賛成90票、反対6票で可決された。このように基本的には「つなぎ予算(CR)」を確保するための法案だが、「例外」として期限を迎えようとするいくつかのプログラムの延長を規定しており、その中にAGOAの延長が含まれていた。


同法案は、CRを主題としながらも、2025年12月に下院歳入委員長のジェイソン・スミス下院議員(共和党)が提出した「AGOA延長法案(AGOA Extension Act(H.R.6500))」が原案となっていた。2026年1月に下院で可決した同法案は2028年末までの延長を求めていたが、26年1月末のつなぎ予算終了前に「2026年度歳出法案(Consolidated Appropriations Act, 2026)」を急いだ上院が、AGOAの延長期間を3年から1年に短縮してパッケージで可決・成立させたことから、今回は当初のスミス議員らの要求である2028年末までの延長を組み込んだものとみられる。


米国通商代表部(USTR)のグリア代表は、「トランプ政権の意向」として2026年年初は「1年延長」を支持していたが、4月に下院歳入委員会が開催した公聴会に召集された際には、スミス委員長に促される形で「複数年」の延長の可能性を示していた。スミス氏は、AGOAは米国にとってアフリカにおける中国やロシアへの対抗において重要な政策ツールであると主張し、延長を強く希望する人物の一人だ。


AGOA延長を含む法案は休会明けの8月31日に下院で審議される見込みで、可決に至ればトランプ大統領の署名をもって施行の運びとなる。米国にとってアフリカにおける主要貿易相手国である南アフリカ、ナイジェリア、アンゴラに関しては別途、7月に米国通商法第301条に基づき12.5%の関税が課されたものの、主要輸出品のほとんどは例外品目(免税)のため、AGOA再延長による効果は限定的だ。他方で、AGOAが失効すれば、縫製品などの米国向け輸出品に「最恵国待遇(MFN)」の税率が課されることとなるケニア、レソト、マダガスカルといった国々では、301条関税やMFNが課される域外の競争相手に対して競争上の優位を維持することが可能となる。(国際部 髙橋史)

[インドネシア/2027年度予算案] 

8月14日、プラボウォ大統領は2027年国家予算案を公表した。歳出は4,097.2兆ルピア(約2,300億ドル)、歳入は3,426兆ルピアを目標としており、今後、議会審議を経て9月頃に承認される見込みである。

 

政府は今回の予算案を通じて、足元で高まる財政悪化懸念の緩和を図っている。歳出の前年比伸び率は6.6%、歳入の伸び率は6.8%に設定された。2024年・2025年はいずれも歳出の伸びが歳入を上回り、財政赤字が拡大してきた。今回は、無料給食プログラムなど看板政策の予算を抑制し、公共調達の効率化を進める一方、徴税能力の向上により歳入増を図ることで、財政赤字の縮小を目指す。財政赤字は671.2兆ルピア、GDP比2.4%と、2025年実績・2026年見込みの2.9%から縮小させる計画である。

 

もっとも、目標達成の実現可能性には疑問の声もある。特に歳入面では、石炭・天然ガスなど主要輸出品であるコモディティ価格がピーク時から下落・軟化しており、コモディティ関連企業からの法人税やロイヤリティ収入が伸び悩む可能性がある。その場合、財政赤字GDP比は政府目標を上回る可能性がある。また、実質GDP成長率目標は6%とされているが、インドネシア経済が過去10年以上にわたり5%前後で推移してきたことを踏まえると、達成は容易ではない。ペルマタ銀行は、歳入が想定ほど伸びない場合、財政赤字GDP比は2.7~2.9%まで拡大すると予想している。

 

なおプラボウォ大統領が大統領就任前より掲げていた看板政策である無料給食プログラムについては、予算を今年度の335兆ルピアから240兆ルピアまで減額している。背景には、財政規律回復以外にも、本プログラムに対する国民からの反対が拡大していることが挙げられる。世論調査会社SMRCによると、7月時点で本プログラムを支持すると回答した割合は33.8%と、昨年の62.5%から約30ポイントも低下している。背景には、執行が予定どおり進まなかったことに加えて汚職スキャンダル発覚が存在する。前者については食中毒発生等により2025年度の予算執行額は50兆ルピアにとどまった。後者については、今年6月に本プログラムの所掌官庁であるインドネシア国家栄養庁の長官と副長官2名が5,600万ドルに上る調達詐欺の容疑で当局に逮捕されている。なお14日に、プラボウォ大統領は予算案とは別に議会にて年次演説を行ったが、その中でも本プログラムについての直接的な言及は避けている。(国際部 土田慧)

[朱鎔基死去と再評価] 

8月12日、中国の朱鎔基・元首相が北京で死去した。97歳だった。豪胆で率直な性格と歯に衣着せぬ物言いで知られた朱氏は、江沢民政権下で経済政策を主導し、国有企業、金融、財政改革や中国のWTO加盟を推進した。こうした実績から西側では、市場経済化と対外開放を進めた「改革派」として高い評価を受けてきた。


一方、中国経済の専門家からは、こうした「改革者」像を相対化する論評も出てきている。例えば、朱氏の時代に農村所得の伸びが大幅に鈍化し、1980年代に進んだ農村金融の自由化も逆転した結果、当時人口の大半を占めた農村が改革の恩恵から取り残されたと指摘する意見や、朱氏の改革は市場の自律性を高めるというより、税収の中央集権化や国有銀行の再編、大型国有企業の強化を通じて、中央政府の財政・金融面での統制能力を高めたと評価する意見もある。また、朱氏は市場や国際貿易を重視する一方で、大型国有企業の民営化には否定的であり、強い国家と共産党支配を当然視していたことから、米国が抱いた「自由主義的改革者」というイメージは単純化され過ぎているとの指摘もある。


ただ、このような朱氏の再評価が相次ぐ背景には、民間企業の活力低下や内需不足、国家統制の強化、対外関係の悪化など、現在の中国が抱える問題も影響している可能性がある。功罪とは別に、朱氏は改革・対外開放を重視し、外国とも率直に対話した時代の象徴として懐古の対象になっているためだ。


さらに、朱氏の死去は江沢民元国家主席の生誕100周年の5日前であり、江氏の生誕100周年記念大会(8月17日)と、朱氏の火葬および主要官庁における半旗掲揚(8月18日)が連続して実施されることになる。両者への追悼が「江・朱時代」への郷愁に結び付けば、現在の習近平体制との比較を誘発しかねず、当局が公式報道で江氏と朱氏を意図的に切り離して扱うかが注目される。(国際部 前田宏子)

[米国/小売売上高の減少] 

商務省によると、7月の小売売上高は前月比▲0.6%となり、1月以来6か月ぶりのマイナスだった。市場予想(+0.1%)に反して、6月(+0.2%)から減少に転じた。2025年12月と2026年1月はともに▲0.0%と小幅なマイナスであり、それ以来の減少だった。

 

内訳を見ると、アマゾンのプライムデーが例年の7月から6月に前倒しされ、ほかの業者も同時期にセールを開始したことが下振れの一因だったとされている。実際、無店舗販売は▲2.2%となり、6月(+0.9%)から減少に転じた。ただし、前年同月比の伸び率は6月に+12.4%、7月に+7.7%であり、売上高の水準自体は高い。

 

その他では、ガソリンスタンドは前月比▲0.9%と、6月(▲5.8%)に続いて減少した。これは、ガソリン価格の低下などを反映したものだ。また、自動車・同部品(▲1.8%)や家電・電気機器(▲0.5%)は6月の増加から減少に転じた。家具・家庭用品(+0.3%)やヘルスケア・パーソナルケア(+0.7%)は増加に転じた。飲食料品(0.0%)は6月(▲0.1%)からおおむね横ばい圏で推移した。同統計に唯一含まれているサービス部門の飲食サービスは+0.5%で、6月(+0.4%)から小幅に加速した。

 

こうした結果を受けて、市場では連邦準備制度理事会(FRB)が9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置くという見方が広がっている。7月の雇用統計で、非農業部門雇用者数が前月比▲2.3万人と予想外の減少に転じたこと、7月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比+3.4%となり、上昇率を5月以降2か月連続で縮小させたことなどもあり、小売売上高が据え置き観測をさらに強めることになった。(経済部 鈴木将之)

[ロシアのプーチン大統領の北方領土初訪問と日露関係への影響] 

8月13日、ロシアのプーチン大統領は北方領土(ロシア名・クリル諸島)の択捉島を初めて訪問した。ロシア大統領による北方領土訪問は、2010年のメドベージェフ大統領(当時)による国後島訪問以来、16年ぶりであり、プーチン大統領自身としては初の訪問となった。訪問では水産加工工場、学校、病院を視察し、住民との交流も行った。プーチン大統領は8月12日にサハリンでロシア太平洋艦隊の大規模軍事演習も視察しており、極東地域におけるロシアの主権と軍事的プレゼンスを誇示する狙いがあったとみられる。
プーチン大統領は訪問に先立ち、「クリル諸島のロシア帰属は第二次世界大戦の結果として国際的文書で確定している」と述べ、北方領土問題は事実上解決済みとの立場を改めて表明した。また、日露平和条約交渉が停滞している原因は日本の対ロシア制裁にあると主張した。これに対し、日本政府は「北方領土は歴史的にも国際法上も日本固有の領土である」として強く反発した。高市首相は今回の訪問を「断じて許容できない」と批判し、外務省は駐日ロシア大使を呼び、正式に抗議した。また、政府内では、今後の日露交流や関連事業の見直しを含む対抗措置の検討に入ったと報じられている。高市首相は、今回の訪問が日本国内の対ロシア感情をさらに悪化させ、中長期的な関係改善を困難にするとの認識を示した。
さらに、2026年8月13日、ロシアのノズドレフ駐日大使と中国の呉江浩駐日大使は、第二次世界大戦の結果を見直そうとする動きに反対する共同声明を発表した。声明は明示的に北方領土問題へ言及していないものの、戦後秩序の維持を強調し、日本や西側諸国による歴史認識への異議申し立てをけん制する内容だった。これは、近年強まる中露の戦略的連携を象徴する動きとして注目された。(国際部 ゴロシニコフ アントン)

 

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