2026年8月18日 (火)
[アルゼンチン/労働市場]
アルゼンチンの労働市場では、正式雇用の減少と労働訴訟の増加が進行しており、経済の先行きに対する懸念となっている。2026年8月時点で、業界団体のUART(労働保険連合)は、2026年の新規労働訴訟件数が過去最多となる13万7,800件に達すると予測している(2026年1~7月の訴訟件数は7万2,525件)。
[ASEAN/実質GDP成長率]
8月17日までに、ASEAN6か国の第2四半期実質GDP成長率が各国の統計当局より公表された。全体としては、イラン情勢を受けたエネルギー価格上昇やインフレ率の高止まりにより民間消費はやや減速したものの、第1四半期に続き、米国のAI・データセンター需要を背景とした電子機器・電子部品輸出が成長を下支えし、成長率は総じて堅調であった。
・シンガポール:5.9%(第1四半期は5.6%)
・タイ:1.9%(第1四半期は2.8%)
・フィリピン:2.3%(第1四半期は2.8%)
・ベトナム:8.4%(第1四半期は7.9%)
・マレーシア:6.0%(第1四半期は5.4%)
[アルゼンチン/家計債務の増加]
アルゼンチンのミレイ政権が進める改革は、財政赤字と中央銀行による財政ファイナンスに依存してきた経済構造を転換しようとする試みだ。財政収支の改善やインフレ率の低下は一定の成果だが、その一方で、家計部門には新たなひずみが表れ始めている。
EL PAÍSが8月16日に報じたところでは、銀行や電子ウォレット、クレジットカードなどから借り入れているアルゼンチン国民は2,000万人を超え、そのうち26.1%が延滞状態にある。延滞債権額は個人向け信用全体の17.5%に達し、ミレイ政権発足時の2023年末の4.2%から約4倍に上昇した。家計向け信用残高は97.1兆ペソで、延滞率の上昇は2026年6月まで20カ月連続だったという。
背景として挙げているのは、マクロ経済環境の転換である。Eco GoのMarina Dal Poggetto氏は、高インフレと実質マイナス金利の時代から、インフレが低下し「ローン返済額がインフレで目減りしなくなる」環境へ移ったことを指摘している。また、ノンバンク融資は家計向け信用全体の14.1%にすぎない一方、延滞債権では31%を占める。なお、銀行の個人ローン金利は年率55~172%、電子ウォレットでは48~260%に達し、総金融コストが年率1,000%を超える例もあるという。
中央銀行の統計でも悪化は確認できる。BCRAによると、銀行など正規金融システムにおける家計向け融資の延滞率は2025年5月の4.5%から、2025年12月には9.3%、2026年5月には12.8%まで上昇した。もっとも、5月の企業向け延滞率は3.5%にとどまり、銀行の自己資本もリスク加重資産比30.7%と高いため、現段階では銀行危機というより、家計を中心とする信用ストレスと見る方が適切だ。
政府はその救済に慎重なスタンスをとっている。ミレイ大統領とカプート経済相は家計債務を「民間同士の問題」と位置づけており、ミレイ氏は、国家が救済すればその費用を他の国民に負わせることになるとの考えを示した。野党側は、財政緊縮や公共料金引き上げ、実質賃金の弱さによって家計が日常支出を借金で補うようになったと批判している。EL PAÍSは、銀行関係者の見方として、2024年半ばから2025年初めにかけて「所得を信用で代替していた」との指摘を紹介している。
重要なのは、ミレイ政権が政府赤字を縮小した後、その調整を誰が引き受けるかである。企業投資が増え、雇用や実質所得が回復すれば、政府依存から民間主導への移行は成功する。一方、企業投資が十分に増えないまま家計が借入で消費を維持すれば、政府部門の改善と引き換えに家計のバランスシートが悪化する可能性がある。
この点では日本にとっての示唆もある。長く家計と企業が資金余剰となり、政府が大きな赤字主体となってきた。しかし日本の経験も、政府が支出すれば自動的に生産性や潜在成長率が上がるわけではないことを示している。重要なのは、政府か民間かという二者択一ではなく、支出が将来の所得や生産を生むかどうかである。(経済部 本間隆行)
[トランプ氏、北朝鮮へ融和シグナル]
8月16日、トランプ米大統領は国防総省に対し、米韓合同軍事演習を「大幅に縮小」するよう指示したと明らかにした。トランプ氏は自身のSNSで、北朝鮮の金正恩総書記とは良好な関係にあり、金氏は自身を「非常に尊重している」と強調した。さらに、北朝鮮は自らの在任中は「脅威的ではなく、敬意を払っている」と主張、高額な費用をかけた米韓演習は北朝鮮に「不適切で敵対的なシグナル」を送ると批判した。また、金氏が自身からの働きかけに反応しているとも述べるなど、2018~19年に3回会談した金氏との直接対話を再開する意欲を改めて示している。
一方、17日に米韓両軍は年次大規模演習「乙支フリーダム・シールド(UFS)」を予定通り開始した。トランプ氏の発信が演習開始の直前だったためで、韓国軍約1万8000人が参加し、北朝鮮によるドローン攻撃やGPS妨害、サイバー攻撃なども想定した訓練を27日まで実施する。ただ、今後の演習については縮小される可能性がある。
専門家からは、演習縮小は金正恩氏を米朝対話に呼び戻すためのシグナルであり、第1次トランプ政権時と同様、軍事演習を外交カードとして利用する狙いがあるとの見方が出ている。一方、北朝鮮はロシアとの軍事協力を深め、核・ミサイル能力も強化しているため、現在は以前ほど米国との交渉を必要としておらず、演習縮小だけで対話に応じる保証はないとの指摘もある。さらに、北朝鮮から核・ミサイル開発の抑制などの見返りを得ないまま、北朝鮮が長年要求してきた演習縮小を先に提示すれば、米韓軍の即応態勢を低下させるだけでなく、今後の交渉カードを失う恐れがあるとの懸念も強い。短期間の演習縮小であれば軍事的影響は限定的との見方もあるが、米韓同盟の重要な軍事措置が米朝首脳外交の取引材料となることへの警戒が広がっている。(国際部 前田宏子)
[モザンビーク/LNG開発進展]
8月17日、米国・資源大手エクソン・モービルは、同社が主導する「Rovuma液化天然ガス(LNG)プロジェクト」の投資前契約(pre-investment contract)を締結したと発表した。
[日本/第3次産業活動指数(6月)]
8月17日に経済産業省が発表した6月の第3次産業活動指数(2019・2020年平均=100、季節調整済)は106.7で前月比▲0.2%と、3か月ぶりに低下した。個人向けと事業所向けに分けると、広義対個人サービスは105.8で▲1.9%と3か月ぶりの低下、広義対事業所サービスは107.7で+1.4%と、3か月連続の上昇。全体として、第3次産業活動は、「一部に足踏みがみられるものの、持ち直し傾向にある」とし、4月から3か月連続で基調判断を据え置いた。
業種別では、10業種中7業種で前月比低下、3業種で上昇した。低下したのは、「小売業」(▲5.1%)、「生活娯楽関連サービス」(▲3.3%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(▲4.6%)など。上昇したのは「金融業、保険業」(+4.7%)、「運輸業、郵便業」(+4.4%)、「情報通信業」(+0.1%)。
低下方向の要因として、「小売業」にて、「その他の小売業」(医薬品・化粧品小売り、その他小売業)(▲6.3%)や、梅雨や台風などの悪天候の影響によって「織物・衣服・身の回り品小売業」(▲14.4%)が不振だった。また、「生活娯楽関連サービス」の「飲食店、飲食サービス業」(▲6.2%)が同じく天候不順により低下した。「電気・ガス・熱供給・水道業」では、「電気業」(▲5.3%)にて電力需要量減少により低下した。
上昇方向の要因として、「金融業・保険業」では、「金融商品取引業、商品先物取引業」(+20.9%)にて株取引が引き続き活発だった。
なお、業種分類とは別に、個々のサービスを特徴によってグループ分けした再編集系列において、「観光関連産業」の指数は117.1で▲0.1%となった。2025年11月の中国政府による日本への渡航自粛要請以降、中国からの訪日客数は激減しているが、観光関連産業の生産活動は底堅く推移している。
また、広義対個人サービスを、生活に必要不可欠で変動が相対的に小さい「非選択的サービス」と、個人の選択による変動が大きく所得環境や経済環境の影響を受けやすい「し好的サービス」で分類すると、それぞれ▲0.5%、▲3.3%と後者の方が大きく低下した。6月は天候の影響で個人が娯楽やファッションなどのし好品への出費を控える、または出費する機会自体が少なかったとみられる。(経済部 菊井彩乃)
[EU/対露制裁]
EUのカッラス上級代表は、独紙『Die Welt』のインタビューにおいて、「ウクライナ侵攻開始以来、最も広範な」対露制裁を今秋に提案する方針を明らかにした。2022年のロシアによるウクライナ侵攻開始以来、EUはこれまでにロシアの政治・軍事指導者、実業家、オリガルヒ、企業などを標的とした21の制裁パッケージを承認してきた。現在までに3,000を超える個人および団体が制裁対象に指定され、EU域内で凍結された民間資産は280億ユーロ以上に達している。カッラス上級代表は、これまでのEUによる制裁を通じてロシア側がすでに支払った経済的コストは1兆ユーロを超えていると推定している旨発言した。
[中国/「十五五」エネルギー計画]
中国国家発展改革委員会(NDRC)と国家能源局(NEA)は8月、石油・天然ガス産業および石炭産業の第15次五カ年計画(2026~2030年)を相次いで公表した。両計画は再生可能エネルギーの拡大や脱炭素化を推進しつつも、石油・天然ガス・石炭の安全保障機能を引き続き重視し、国内供給力やインフラ、備蓄体制の強化を進める方針を示した。
石油・天然ガス分野では、2030年までに国内供給量を4.4億トン(石油換算)へ引き上げるとともに、長距離パイプライン網を2万km拡張し総延長22万kmとする目標を掲げた。あわせてLNG(液化天然ガス)受入能力を年2億トン、天然ガス輸入パイプライン能力を年1,140億m³、ガス貯蔵能力を国内消費量の13%超へと拡大する。国内生産の高水準維持と同時に、LNG・陸上輸入・貯蔵を組み合わせ、供給源と輸送ルートの多様化を進める。また、CCUSによるCO₂圧入量を年1,000万トンまで増やし、石油・天然ガス産業の低炭素化も推進する。
石炭分野では、2030年までの石炭消費ピーク達成を目指しつつも、供給保障機能は維持・強化する。西部地域を中心とした大型・高効率炭鉱への集約を進め、山西省、内モンゴル西部、内モンゴル東部、陝西省北部、新疆ウイグル自治区の五大供給基地で全国生産の80%超を担う体制を構築するほか、大型近代化炭鉱の生産能力比率を87%、スマート炭鉱の同比率を75%へ引き上げる方針。
また、石炭火力の高効率化やバイオマス混焼、再生可能エネルギーとの統合運用を進めるとともに、2030年までに年間1億トン超の石炭生産能力備蓄(Capacity Reserve)を整備し、製品在庫や産地備蓄と組み合わせて緊急時の供給体制を強化する。さらに、AI・自動化、炭鉱メタン回収利用、CCUSなどを通じ、石炭産業自体のグリーン・低炭素化も推進する。石炭を燃料だけでなく原料として使う取り組みも継続する。
一連の計画からは、中国が再生可能エネルギーの拡大と脱炭素化を進めながらも、2030年に向けて石油・天然ガス・石炭の国内供給能力、輸送網、備蓄・予備能力も同時に強化し、エネルギー安全保障と外部ショックへの耐性を高めようとする姿勢が明確になっている。(経済部 鈴木直美)
[ロシア、反戦政党を下院選から排除]
8月17日、ロシア最高裁は9月の下院選からリベラル系野党「ヤブロコ」を比例代表名簿から除外する決定に対する同党の異議申し立てを棄却し、同党の排除が確定した。最高裁は8月10日、外国からの資金調達などを理由に、同党の選挙参加を認めない判断を示していた。ヤブロコは、登録政党の中で唯一、ウクライナ侵攻に明確に反対し、「停戦、外交、平和」を掲げてきた政党であり、今回の排除はプーチン政権による反戦世論の封じ込めとみられる。もっとも、同党は2003年以降、下院議席を獲得しておらず、選挙結果を左右する可能性は限定的とみられる。一方、ウクライナによるロシア本土の軍事・エネルギー施設への攻撃、ガソリン価格の上昇や供給制限などを背景に、国民の間では戦争疲れが広がりつつある。ヤブロコは、こうした不満の受け皿となる可能性があり、政権は象徴的な異論すら許容しない姿勢を示した形だ。最高裁周辺では支持者70人以上が拘束されており、下院選を前に政治統制が一段と強まっている。(国際部 ゴロシニコフ アントン)
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2026年8月25日(火)
『日本経済新聞(電子版)』に、当社チーフエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。 - 2026年8月21日(金)
『東京新聞』に、当社チーフマーケットアナリスト 鈴木 直美のコメントが掲載されました。 - 2026年8月17日(月)
『日刊産業新聞』に、当社社長 横濱 雅彦のコラムが掲載されました。 - 2026年8月17日(月)
『日本経済新聞(電子版)』に、当社経済部長 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2026年8月7日(金)
『日本経済新聞(電子版)』に、当社チーフエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。
