デイリー・アップデート

2021年10月26日 (火)

[米国] FRBが公表した『地区連銀経済報告(ベージュブック)』によると、米国経済は9月から10月初旬にかけて、「緩慢から緩やかに拡大した」と判断された。ただし、一部では「鈍化した」という報告もあった。供給網の問題や人手不足などが生産活動や個人消費の重石になっており、自動車価格の上昇も販売の下押し要因となった。先行きについて、景気回復が期待される一方で、物価については「高水準の継続」や「更なる上昇」、「緩やかな上昇」など異なる見方が報告された。

[ロシア/アフガニスタン] 10月20日、タリバン暫定政権の代表団は、アフガニスタンで権力を掌握してから初めてロシアを訪問し、ラブロフ露外相と会談した。また、ロシア政府が主催したアフガン情勢を協議する国際会議にも招待され、中国やイラン、パキスタンなど周辺国の代表と意見を交わした。ロシアはアフガンの政情安定化を支援しつつ、米軍撤退後のアフガンでの影響力拡大を目指しているとみられる。

[EU] 欧州委員会は10月19日から経済ガバナンス評価を再開することを正式に発表した。安定・成長協定(SGP)の改善に向けた加盟各国政府ならびにEU機関との協議が2022年から本格化する見込み。欧州委員会側は、EUが共通対応(財政ルールの一時停止)や新型コロナウイルスワクチンの共同調達を行ったことで、パンデミックの影響を和らげることが可能となった点を強調、今後は持続可能で競争力のある社会・経済構築に向けたルール作りが必要との見解を示した。

[シリア] 10月20日朝、首都ダマスカス中心部を走っていたシリア政府軍のバスが爆発し、兵士14名が死亡、3名が負傷した。爆弾2発が爆発したという。ダマスカス中心部でのテロは最近では珍しく、2017年3月に30人以上が死傷したISによる爆破事件以来最悪の規模。犯行声明などは出ていないが、事件の1時間後には、シリア政府軍が反体制派の拠点であるシリア北西部のイドリブを空爆し、通学途中の子供4人を含む13人が死亡、30人以上が負傷した。

[米国] 米国西部地域は深刻な干ばつや熱波等の異常気象に見舞われているが、カリフォルニア州のニューサム知事は、7月8日に発令された干ばつ緊急事態宣言の対象に従来はなっていなかったロサンゼルス郡やサンディエゴ郡等8つの郡も対象とすることで州全域が対象となる干ばつ緊急事態宣言を10月19日に発令した。現在、カリフォルニア州は観測史上2番目に深刻な干ばつに見舞われており、水不足や電力の逼迫状況に直面している。

[マレーシア] 10月25日、イスマイルサブリ・ヤーコブ首相は、輸出をドライバーとした持続可能な経済成長を実現するための「国家貿易ブループリント(青写真)」を発表。ブループリントは、2021~25年の5年間で8つの戦略的指針と40の提言などから構成されている。官民の専門家で構成される8つの作業部会が実行を担う。「第12次マレーシア計画(12MP)」(2021~25年)で示した目標の達成に向け、貿易におけるプレゼンス・競争力の強化を促し既存の政策を補完するもの。

[トルコ] 10月18日、トルコに駐在する欧米諸国10か国の大使が、2017年からトルコ当局に拘束されている実業家オスマン・カバラ氏の即時釈放を求める共同声明を発出。それに対し、23日にはエルドアン大統領が当該10大使のトルコからの国外追放を外務省に指示したが、25日になってその決定を見送ると表明した。欧米諸国との大きな外交問題への発展はいったん免れたが、関係悪化の流れは続くものとみられる。これら一連の動きに伴って通貨リラは$1=9.8リラを記録、過去最安値を更新した。

[米国] バイデン大統領は10月28日から約1週間の日程で就任後2度目となる外遊に出発、ローマで開催されるG20首脳会議と英国グラスゴーで開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)に出席する。国際会議での米国の指導力を誇示する観点からも、自らの経済公約「Build Back Better」の中核をなす主要法案であるインフラ整備法案と民主党が重視する施策が盛り込まれた歳出法案を外遊出発前に可決・成立できるかが極めて重要となる。

[英国/EU] 10月26日から再開される英国とEUの北アイルランド議定書問題に関する協議を前にフロスト英内閣府国務相が、議定書に関する紛争は新たに共同で設置する仲裁委員会で解決すべきとの見解を再度主張。議定書第16条で定めている緊急措置の適用も辞さない構え。フロスト氏とシェフチョビチ欧州委員会副委員長は10月29日に最終的な協議を行う見込みだが、合意は困難とみられる。

[中国] 新型コロナウイルスのデルタ株による感染者が10月25日時点で11省に広がり、移動制限の強化やイベントの延期などが行われている。特に北京市では厳しい措置が取られ、25日、北京市政府は同市と他地域との行き来を制限する7つの措置を発表した。原則、往来は禁止となり、感染者が一人でも出た小都市から北京への移動は許可せず、どうしても必要な場合は直轄市や副省級都市から北京への移動は検査・隔離措置などを条件として許可するが、その場合も会議などの主催者と承認者(責任者)を明確にするよう求めている。

[ミャンマー] 10月25日、米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が民主派の「挙国一致政府(NUG)」のドゥワ・ラシ・ラー「副大統領(大統領代行)」とジン・マーアウン「外相」とオンライン会談を行った。サリバン補佐官は、ミャンマーの民主化運動に対する米国の継続的な支援を強調し、ミャンマー国軍の残忍な暴力に懸念を表明。また、民主運動家のコ・ジミー氏が最近逮捕されたことに懸念を示し、不当に拘束されている全ての人々の釈放を引き続き求めていくと述べた。さらにASEANが軍政に5点のコンセンサスの義務を履行させようとする取り組みへの支援を改めて表明した。

[ドイツ] Ifo経済研究所によると、10月のドイツ企業景況感指数(2015年=100)は97.7と、4か月連続で低下し、4月以来の低水準となった。足元の状況を表す現況指数は100.1、半年程度先を表す期待指数は95.4となり、両方とも低下したのは2か月連続だった。フューストIfo所長は「供給問題が企業の頭痛の種」と指摘、供給網の問題は9月に製造業に、10月には製造業に加えて商業にも悪影響を及ぼしており、第4四半期のドイツ経済に下押し圧力をかけている。

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