デイリー・アップデート

2024年4月5日 (金)

[南アフリカ] 下院議会において「土地収用法」案が賛成多数で可決された。同法案は、個人が投機目的で所有している土地や、放棄された土地などを政府が公益のために「必要」と判断した場合、政府が無補償で収用することを認めるものである。同国では全人口の約8割が黒人である一方、全農地の約7割を白人が所有していることから、黒人への農地分配・返還が大きな議論となってきた。与党「アフリカ民族会議(ANC)」は5月末の総選挙の前に、黒人有権者の支持獲得のために同法案を可決させたとみられる。白人有権者を支持母体とする最大野党「民主同盟(DA)」はシリル・ラマポーザ大統領に対して同法案に署名しないよう書簡を送った。

[原油] ブレント原油価格が一時、1バレル91ドルを突破。年初来18%高、2023年10月以来の高値。年初から、1月の米国の悪天候による減産、紅海でのフーシ派の船舶攻撃による輸送混乱、OPECプラス加盟の有志国による自主減産延長、ウクライナのロシア石油施設攻撃による精製能力の一部喪失などが重なり需給が引き締まっていたところ、4月1日の在シリア・イラン大使館空爆とイランの対イスラエル報復表明で中東リスクが緊迫化。産油国ナイジェリア・メキシコでは燃料輸入依存脱却のため長年計画されていた新規製油所が立ち上がり、原油での輸出を減らしている。

[タイ] 3月29日、タイ中央銀行は2024年2月の月例経済報告書で、同国経済が1月に比べて緩やかに拡大したとしている。特に、春節(2月10日)と観光ビザ免除措置の影響により中国からの観光客が増加し、サービス業、特に観光業が大きく好転したと指摘している。また、日本やマレーシアからの観光客も多かった。特に、マレーシアからの観光客は、イスラム教の断食月(ラマダン、3月中旬から)を前に増えた。タイの観光・スポーツ省は、2024年1~3月にタイを訪れた外国人観光客が前年同期比+44%の937万297人に達したと発表しており、今後も観光客の増加が見込まれる。

[米国] 労働省よると、3月30日までの1週間の新規失業保険申請件数は22.1万件となり、前週から0.9万人増加した。4週連続で前週比で減少していない。その一方で、3月23日までの週の継続受給者数は179.1万人だった。前週から▲1.9万人となり、2週ぶりに減少した。雇用環境が崩れたとは言えず、堅調さを維持しているものの、悪化する方向へ変化する兆しが見えつつある。

[米国] 下院中国特別委員会の委員長に就任しているギャラガー下院議員は4月19日任期途中で議員辞職する意向を発表したが、ジョンソン下院議長は後任の委員長にムーレナー下院議員を指名し、ギャラガー氏の議員辞職を受けて就任することになる。中西部ミシガン州選出のムーレナー氏は中国製電気自動車(EV)の対米輸出増大を警戒しており、米自動車産業が大打撃を受けかねないとして中国製自動車に対する現行の関税27.5%の引き上げ等を要求している。

[米国] スピード、利便性、手頃な価格、いずれが理由であってもアメリカ人のファストフードへの愛が深いことは知られている。しかし、もはや価格は手軽ではないかも知れない。米FinanceBuzzが現在と10年前の価格を比較したところ、米国のインフレ率が31%の上昇に対しファストフードは39-100%ほど値上がりしていた。報告によるとマクドの値上がりが最も高く、2014年に1ドルだったチキンサンドは3ドルへと大幅に値上がりし、ミディアムサイズのフライドポテトなど人気メニューも軒並み価格は値上がりした。安くて手軽に食事ができるとの評判のタコベルでも価格が引き上げられファンは衝撃を受けている。また、バーガーキングやスタバでも値上がりしているがインフレ率をやや上回っている程度としている。

[ロシア] 米誌フォーブスは4月2日、ロシアの富豪の総資産が2024年に5,770億ドルとなり、昨年から720億ドル増えたと報じた。過去2年間に商品価格が高騰したことや、戦時に対応した経済成長により西側諸国の制裁の影響を抑制したことが総資産の増加を後押ししたものとみられている。

[ポーランド/イスラエル] イスラエル軍の空爆によってワールド・セントラル・キッチン(NGO団体)のポーランド国籍の職員1名が殺害されたことをめぐり、扇動的なLivne駐ポーランド・イスラエル大使の発言に対してポーランド政界が反発している。トゥスク・ポーランド首相は2国間の連帯を損なうと非難。ドゥダ同大統領は繊細さに欠けるLivne大使の発言は言語道断で受け入れがたいと発言。ポーランド外務省は、5日に同大使を召喚し、道義的、政治的、犠牲者の家族に対する賠償責任について協議する予定。

[カンボジア] 4月3日、上院が全会一致でフン・セン前首相を議長に選出した。同前首相は2月の上院選で当選していた。フン・セン新議長は議会外交が優先課題になると表明した。副議長にプラク・ソコン前副首相兼外務国際協力相とウィッ・ボリット外務国際協力省長官が選出され、体制においても外交を重視する姿勢が示された。

[パレスチナ] 4月2日、パレスチナ自治政府のマンスール国連大使は、グテーレス国連事務総長と4月の国連安全保障理事会議長国であるマルタの国連代表部に対し、パレスチナの国連への正式加盟を再検討するよう要請した(前回は2011年に同様の要請を行っている)。パレスチナの国連加盟には、国連安全保障理事会で9か国以上の賛成と常任理事国が拒否権を行使しないことが条件で、その後国連総会の3分の2以上が賛成することが必要となる。パレスチナの国連加盟に反対するイスラエルを支持する米国の対応がカギとなる。

[米国/欧州] 4月4日、北大西洋条約機構(NATO)の外相会議に参加していたブリンケン国務長官は記者会見に応じ、ガザ地区にて人道支援団体職員が死亡したことを受け、攻撃を担ったイスラエルを非難した。現地の人道状況の悪化は受け入れることができないと述べ、イスラエルの行動変化が無ければ、米国は対イスラエル政策を見直すと発言。会見に先立って発表されたバイデン大統領の声明と同様のメッセージを繰り返した。米国側の政策変更の内容を問われたが、国務長官は詳細な説明は避けた。会見では、ウクライナ支援についても問われ、中長期的なウクライナの防衛力強化支援も進めるが、まずは米議会による補正予算可決が必要との認識を示した。

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