デイリー・アップデート

2024年4月16日 (火)

[金] 4月15日付の英FT紙は社説で、金価格の上昇は世界が大きな転換点にあることを示唆すると述べている。「ワシントン・コンセンサス」と戦後の「パックス・アメリカーナ」は終焉。中銀が金を買うのは、ブレトンウッズ体制が崩れ出した1960年代後半に欧州の中銀がドルを金に換え始めたのと類似。当時のそれは長期上昇相場の始まりだった。1971年、ニクソン大統領(当時)は金・ドルの兌換を停止し、米国産業を守るため10%の輸入課徴金を課した。これは一種のドル切り下げだった。現在、トランプ氏は、ドル高は米国製造業に不利益だと批判し、大統領に返り咲けば10%の全面輸入関税を課すと述べている。また米国債務と財政赤字は急速に持続不可能になりつつある。米国予算から削れるのは利払いのみで、FRBが最終的に利下げしても、金には好都合となる。

[米国] 商務省によると、3月の小売売上高は前月比+0.7%となった。速報の+0.6%から+0.9%に上方修正された2月からは減速したものの、市場予想を上回り、個人消費の底堅さを印象づけた。内訳をみると、飲食店が+0.4%と増加した一方、スポーツ・娯楽(▲1.8%)や家電(▲1.2%)、自動車・同部品(▲0.7%)など、生活必需品以外の売上高が減少した。利下げ開始先送り観測を強める内容だったものの、個人消費は見た目ほど強いとは言いがたい点には注意が必要だ。

[中国] 4月16日、国家統計局は、2024年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率が、前年同期比+5.3%だったと発表した。前期(2023年第4四半期(10~12月))の+5.2%を上回った。また、政府は2024年通年の実質GDP成長率の目標を前年比+5.0%前後に設定しているが、この目標値も上回った。前期比では+1.6%と前期の+1.2%から加速した。生産や投資が堅調だった。同時に発表された3月の鉱工業生産は、前年同月比+4.5%、小売売上高は+3.1%だった。1~3月の固定資産投資は+4.5%だった。

[米国] 米ベンチャーキャピタルSignalFireが、技術系従業員の動向に関するレポートを公表した。それによるとサンフランシスコは依然テクノロジーの中心地として君臨しているが、労働者はテキサス州やニューヨーク州に移りつつある。テキサス州の経済成長には目を見張るものがあり、トップクラスの技術系人材が、サンフランシスコやシアトルからニューヨークやオースティンへと移動していることが指摘されている。ニューヨークは家賃・生活費が高く、人材が既存のITハブから流出しているわけではない。かつてのようにリモートワークでありながら企業所在地による労働移転ではなく、労働者の物理的な移動であることも注目点とされる。また、このレポートでは世代による特徴についても述べられており、Z世代はその2世代上のX世代と比べてマネジャーになりたくない傾向が強く、IT人材の高齢化も進んでいることから、将来の事業を推進する人材が不足する可能性を指摘している。

[ドイツ/中国/米国] 訪中しているドイツのショルツ首相は、4月16日、習近平国家主席と首脳会談を行う予定だが、その際に、習近平氏にロシアに対する中国の経済支援を縮小し、ロシアにウクライナ和平交渉に参加するよう圧力をかけてほしいと説得するつもりだとWSJ紙が報じている。ドイツ政府関係者は、中国はロシアに武器や弾薬の提供はしておらず、中国の政策が変わるわずかな望みがあると話しているとしている。他方、米国政府は4月12日に、中国のロシアに対する支援に関する新たな情報を公開し、中国の対ロ支援は殺傷能力のある武器提供と同じくらいの影響があるとしている。

[シンガポール] 4月15日、ローレンス・ウォン副首相兼財務相が5月15日に首相に就任すると首相府が発表した。ウォン氏は2022年4月、与党PAPの第4世代党員のリーダーに就任して次期首相になることが事実上決定し、同年6月に副首相に就任していた。リー・シェンロン首相は2023年11月にPAP結党70周年を迎える2024年11月21日より前に首相を退任する意向を示していた。次期総選挙は2025年までに行われる予定であり、PAPはウォン新首相を中心とする布陣で臨むことになる。

[イラン/イスラエル] 4月13日夜のイランからのミサイル・ドローン攻撃(4月1日の在シリア・イラン大使館領事部に対するイスラエルによる空爆に対する報復攻撃)に対して、イスラエル政府内では、イランに対して報復攻撃を行う事で合意しているものの、いつどのように行うかで意見が一致していない。米、欧、地域のパートナー国などは、イスラエルが大規模な報復攻撃を行うことを思いとどまらせようとしている。仮にそのような報復攻撃が行われれば、イランが再度報復攻撃を行わざるを得ず、攻撃の連鎖から地域紛争拡大の事態に進んでしまう懸念がある。

[米国/中国] 4月14日~16日、クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋地域担当)とベラン国家安全保障会議上級部長(中国・台湾担当)は、北京を訪れ、米中関係や国際情勢などについて中国側担当者と協議を行った。4月2日に米中首脳による電話会談、そして4月3日~9日にはイエレン財務長官が訪中している。今後、ブリンケン国務長官が中国を訪れることも予定されているため、それに先立っての米政権高官の訪中とみられている。米国は、中国が軍民両用技術・製品をロシアに提供していることを問題視しており、4月17日から開催されるG7外相会合においても提起するとみられている。

[米国] 4月13日から14日にかけて、イランがイスラエル本土を標的とした大規模攻撃を実施したことを受け、下院共和党指導部を率いるジョンソン下院議長は、4月14日の日曜政治討論番組出演時、4月15日の週に対イスラエル軍事支援法案を可決する方針を表明していた。4月15日に開催された非公開の下院共和党議員総会では、イスラエル軍事支援、ウクライナ追加軍事支援、台湾武器供与、そのほかの米国の国家安全保障上の優先事項の個別法案4本を明らかにした。

[ウクライナ] 4月11日、ウクライナ議会は、兵士の動員に関する改正法案を賛成多数で可決した。ウクライナ東部でロシア軍が前進を続けていることを受け、ウクライナは、兵力の増強を狙っている。ただ、動員された兵士を36か月間で交代させるとの規定が、審議の最終盤で削除されたことへの不満も出ている。

[アイルランド/スペイン] 4月9日に就任したアイルランドのハリス首相が、4月12日にアイルランドを訪問したスペインのサンチェス首相と会談した。アイルランドとスペインはパレスチナ国家承認を推進しており、EU加盟国全体の支持を期待。ミシェルEU大統領も支持した。一方、この2か国はイスラエルのガザやヨルダン川西岸での行動が基本的人権の尊重に反するとして、EU・イスラエル連合協定の見直しも求めている。

[ペルー] ペルー議会は4月12日、退職者が年金を早期に引き出すことを認める法案を承認したことから、最大で70億ドル相当が取り崩し可能とされる。これまでも計6回、約240億ドル相当の年金基金の取り崩しが承認されてきた。年金引き出しにより、インフレの促進、労働市場の悪化、社会への財政負担の増大などが懸念される。

[ガーナ] 4月15日、モハメド・アミン=アダム財務相は、民間の債権者グループとの債務再編にかかる協議の結果、暫定合意に至ったと発表した。しかし、国際通貨基金(IMF)が求める債務持続可能性目標を達成するためには返済の条件面の微調整が必要であり、さらに協議を続けると述べた。2022年12月に事実上のデフォルトに陥ったガーナの対外債務の約6割(約170億ドル)は、主に海外の民間債権者で占められており、元本の割引や償還期間延長の交渉が続けられてきた。4月13日にIMFスタッフチームは「拡大クレジットファシリティ(EFF)」の第2回レビューの結果、実務レベルでの合意に至ったと発表したが、引き続き政府による債務再編に向けた取り組みの必要性を強調した。

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