デイリー・アップデート

2024年4月22日 (月)

[タイ] 4月18日、セター首相は、2025年度(24年10月~25年9月)予算を閣議承認し、前年度比+7.8%の3兆7,520億バーツ(約15兆6,386億円)とした。中央政府の支出予算は8,057億4,500万バーツ、政府機関に分配される支出予算は1兆2,545億7,680万バーツで、全体の割合はそれぞれ21.5%、33.4%となる。予算拡大の主な背景には、第4四半期に国民へ配布を予定されるデジタル通貨支給政策がある。同政策では、総額約5,000億バーツ(約143億ドル、GDPの2.8%に相当)を第4四半期(10~12月)に実施し、2025年に少なくとも5%の経済成長を達成する見通しだが、この結果、財政収支の悪化が懸念されている。

[ニジェール/米国] 4月19日、カート・キャンベル米国務副長官は、ワシントンでニジェールのアリ・ラミネ・ゼイン首相と会談を行い、同国に駐留する米軍約1,000人の撤退に合意したと、複数のメディアが報じている。3月に、両国の軍事協定に関する協議のために、米国高官がニジェールを訪問したが、ニジェール側から軍事協定の破棄を表明されていた。2023年のクーデターにより誕生した軍事政権は同年11月にフランス駐留軍の撤退を決定。代わりに隣国のマリとブルキナファソ、そしてロシア、イラン、中国等との軍事・経済協力関係を強化させている。米国との外交関係は継続するもよう。

[イラン/イスラエル] 4月19日、イラン中部イスファハン州に対するミサイルとドローンによる攻撃があり、防空システムがドローン3機を破壊した。また、防空システムのレーダーが破壊されたとの報道も出ている。イスラエルは公に認めていないが、事前に米政府には通達があったとされており、イスラエルによるものだったとみられている。イスファハン州には核施設もあるが、核施設への攻撃はなく、イランの外相は「物的、人的被害はなかった」と発表した。今回のイランとイスラエルによる直接攻撃の応酬は、イランがこれに対する報復を行わないとしたことで一旦落ち着くとみられるが、今後エスカレートする可能性は残されている。

[米国/中国] 4月20日、国務省は、ブリンケン国務長官が4月24日から26日まで、上海、北京を訪れる予定と発表した。二国間関係のみならず、中東、ウクライナ、台湾海峡、南シナ海の情勢についても議論される予定。米中間では、首脳の電話会談、財務長官の訪中、また米中国防相オンライン会議などが4月に実現している。両国政府は、関係を安定的に管理する方向で努力を重ねているが、一方で、バイデン大統領が対中関税の引き上げに言及し、議会でも複数の対中通商規制法案が提出されており、米国内政治の力学と経済外交のバランスを図ることの難しさが明らかになっている。

[米国] 4月20日、米議会下院本会議で対ウクライナ追加軍事支援、対イスラエル軍事支援、対台湾武器供与、TikTok規制法案の計4本の個別法案が賛成多数で可決された。ウクライナ、イスラエル、台湾に対する対外支援法案の総額は約950億ドルであり、内訳は、対ウクライナ追加軍事支援は608億ドル、対イスラエル軍事支援は260億ドル、対台湾武器供与は約81億ドルとなっている。法案は上院に送付され、4月22日の週に可決され、バイデン大統領の署名を受けて成立する見通し。

[中国] アップル社は中国当局からの要請に従い、中国のアプリストアからメッセージングプラットフォームのWhatsApp、Signal、Threadsを削除することを決定し、4月19日に実施された。同社の広告担当者は「たとえ同意できない場合でも、事業を展開している国の法律に従う義務があります」とコメントした。これらのアプリは中国ではVPNを通さなければ使用できないが利用者はいる。中国当局は、これらのアプリによって、中国政府が公開していないネガティブな情報が自国民に拡散され、社会不安が起こることを懸念しているもよう。

[フィリピン/中国] 4月18日、在フィリピン中国大使館が、中国はドゥテルテ前政権との間で、南シナ海のセカンドトーマス礁にあるフィリピン軍の座礁船への補給活動の範囲について「紳士協定」を結んでいたと発表した。これに先立ち、ドゥテルテ前大統領が、マルコス大統領の訪米の際、同内容の協定を結んでいたことを示唆していたが、それを中国も正式に認めた。また、マルコス現政権になってからも、両国は紳士協定について話し合い、双方の関係機関は2023年2月初旬までは約束を守り、また両国は2024年初めには「新たなモデル」について合意したが、フィリピンが合意の範囲内で補給活動を行ったのは1回だけで、合意は正当な理由なく一方的に破棄されたと主張した。マルコス大統領は、紳士協定について前政権から引継ぎはなかったと述べ、仮にそうした協定があれば撤回する意向を示していた。

[ウクライナ/米国/ロシア] 米国議会下院がウクライナへの追加の軍事支援のための緊急予算案を可決したことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「待ち望んでいた決定だ」と述べ歓迎するとともに、予算の速やかな成立に期待を示した。一方、4月20日、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、ロシアの国営メディアの取材に対し、「ゼレンスキー政権のせいでより多くのウクライナ人が死ぬだろう」と述べ、追加の軍事支援を批判した。

[EU] 4月19日にEUが、「パレスチナ人に対する深刻な人権侵害の責任を負う」ヨルダン川西岸地区の過激派入植者4人と2つの団体に対して、EUグローバル人権レジームのもとで制裁(渡航禁止、資産凍結、資金提供禁止)を発動した。ボレルEU上級代表が制裁を提案したのは2023年12月であり、発動まで4か月を要した。一方、スペインとアイルランドが求めているEU・イスラエル連合協定の見直しに関し、ベルギーが主導することを発表。しかし、EU内部分裂を背景に、困難が伴うとみられる。

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