野菜や果物の「名前」
スーパーや八百屋に行くと多くの野菜や果物が並んでいるが、その中で、米の「コシヒカリ」や、りんごの「ふじ」のように品種名まで広く認識されているのはごく一部だろう。全国の店頭で日常的に品種名等が表示され、消費者にも選択の手掛かりとして意識されているものは、恐らく米、トマト、りんご、いちご、ぶどう、じゃがいも、さつまいも程度ではないだろうか。
ただ、たとえ特売の1束98円の小松菜であっても、身近な農産物の大半は、選抜されてきたエリートたちである。同じ野菜や果物でも、食味や見た目が消費者に好まれるもの、貯蔵性や輸送耐性等の流通上有利な特性を持つもの、病害虫への耐性や環境適応性に優れ、栽培しやすいものが、長い年月をかけて選ばれてきた。その成果が店頭に並んでいる。当然そこにはいろいろな品種があり、中には、どのような農産物か想像できないようなきらびやかな名前も、かわいらしい名前もある。開発者の話を聞いても、命名にはかなり頭を悩ませるらしいのだが、そうして付けられた名前がほとんど知られていないのは、少々残念に思える。
また、特定の名前で指名買いされるような農産物についても、その「名前」にいくつかの種類があることは、あまり知られていない。表に店頭で目にする名前をいくつか並べたが、実は、「コシヒカリ」や「ふじ」は品種名であるのに対して、「ふさこがね」や「紅いわて」は商標名である。「巨峰」ももともとは商標名だが、広く普及する中で普通名称化し、商標権の効力が及ばなくなった例として知られている。ほかにも、じゃがいもの「デストロイヤー」(品種名:「グラウンド・ペチカ」)のように、品種名でも商標名でもない通称で親しまれているものもある。つまり、売り場は、人間の名前に例えれば、姓、名、ミドルネーム、ニックネームが混在しているような状態になっている。
紛らわしいのは、同一品種に複数の流通名がある場合である。「不知火」と「デコポン」、「シャインマスカット」と「晴王」等が好例で、いずれも品種は同一だが、特定の基準を満たしたものに後者のブランド名が付けられている。冒頭の画像の河内晩柑に至っては、産地や地域の違いによって「愛南柑」「愛南ゴールド」「宇和ゴールド」「美生柑」「夏文旦」「ジューシーオレンジ」等、多くの名前で流通しているため、別のものだと思って購入したり、逆に、同じものだと気付かず購入の機会を逃したりしたという話を何度も聞いたことがある。筆者も経験者の1人である。
<執筆者・アーカイブ>真鍋 舞
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