デイリー・アップデート

2026年9月17日 (木)

[シリア/燃料値上げに抗議広がる] 

9月13日、シリア移行政府は燃料価格を一斉に引き上げた。ディーゼルは1リットル125シリア・ポンドから175ポンドへ40%、95オクタンガソリンは152ポンドから195ポンドへ約28%、90オクタンガソリンは147ポンドから185ポンドへ約26%値上げされた。

 

発表と同じ13日から各地で抗議活動が始まり、参加者は値上げの撤回やムハンマド・アル=バシール・エネルギー相の辞任を要求した。タイヤを燃やし、ダマスカスとアレッポを結ぶ幹線道路などを封鎖する動きも広がった。16日には北東部タル・タムル付近の高速道路が封鎖され、カミシリとルメイラン周辺の油田から原油を運ぶタンクローリーが足止めされた。

 

政府は、国際的な燃料調達費の高騰とバニヤス製油所の改修による精製能力の低下が重なったためで、値上げは一時的だと説明している。シリア・エネルギー省によると、国内の原油生産量は日量約10万バレルにとどまる一方、石油・石油製品の国内必要量は日量約30万~32万5000バレルに上る。このため同国は輸入に大きく依存しており、ディーゼル供給の約60%を輸入で賄っている。議会は国民の反発を受け、エネルギー相を招いて値上げの理由を聴取する方針を示した。

 

シリアでは、アサド政権崩壊後も経済再建は進まず、国連機関の推計では国民の約9割が貧困ライン以下で生活している。燃料価格の上昇は交通費や食料品などの価格に波及するため、家計への影響は大きい。実際に各地で公共交通の運賃が上昇し、運転手からは収入の大半が燃料代に消えるとの声も上がっている。

 

北東部では、中央政府による旧クルド自治地域の燃料補助金撤廃に加え、クルド語教育が限定的であることへの学生抗議も続く。今回の抗議は、燃料値上げだけでなく、深刻な貧困、補助金削減、生活改善の遅れ、少数派の権利をめぐる不安が重なって生じたものであり、政府が十分な生活支援を示せなければ、抗議が長期化し、政権の安定を揺るがす可能性がある。(国際部 広瀬真司)

[アンゴラ/3会合連続利下げ] 

9月15日、アンゴラ中銀(BNA)は金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を15.75%から14.75%に引き下げた。利下げは3会合連続となった。


直近8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比で8.78%と、7月の9.33%から低下し、約11年ぶりの低水準となった。輸出の約8~9割を原油が占めているアンゴラは、油価低迷期の2023年頃に自国通貨クワンザが1ドル=800クワンザ台に急落。産油国でありながら石油精製品に加え、食料の海外からの輸入に依存しているアンゴラでは、通貨安によりインフレ率は2024年7月に31%まで上昇するなど深刻な物価高を経験した。しかし、中銀による利下げ策と為替介入(アンゴラは2018年から管理フロート制を導入)によってディスインフレプロセスが順調に進んでいる形だ。今回のMPCにおいて中銀は2026年末のインフレ率予測を8.6%に据え置いたものの、2026年の実質GDP成長率の見通しを6.15%に上方修正した。


8月28日にアンゴラ国家統計院(INE)が発表した2026年第2四半期(4~6月)のGDP成長率は8.74%で、前期の5.3%から加速した。アンゴラ経済を支える石油部門が5.64%の成長を記録したほか、製造業、ダイヤモンド採掘業、情報通信業など非石油部門の成長率が9.24%と石油部門を上回っている。イラン情勢の緊張と油価の変動を受けて、サブサハラ各国中銀が利上げや据え置きなどの動きを示す中、産油国のアンゴラではそれに逆行する形で利下げサイクルが継続している状況だ。


原油生産に関しては2008年前後の日量200万バレルをピークに、油田の成熟化や新規開発の不足により、現在は同100万バレル程度まで減少しているが、それでもナイジェリア(日量約160万バレル前後)に次ぐサブサハラ第2の産油国だ。新規開発に関しても2026年7月にイタリア資源大手・ENIらが日量10万バレル弱の深海油田開発にかかる最終投資決定(FID)を行ったほか、現在アンゴラの原油生産量の約4割を占めているフランス資源大手・トタル・エナジーズも今後5年間で100億ドルを投資すると表明している(9月10日、Bloomberg)。


アンゴラでは、2017年に就任したジョアン・ロウレンソ大統領による経済・汚職改革も続く。アンゴラでは長く国営石油会社・ソナンゴルをはじめとする国営企業群が民間企業の参入による競争の強化やビジネス環境の改善を阻んできたが、IMFらの勧告もあり、ロウレンソ大統領は2019年に民営化プログラム「PROPRIV」を開始。これまで約14億ドルの売却益を得るとともに、国内通信最大手・ユニテルや、アンゴラ国営航空(TAAG)、ダイヤモンド公社・エンディアマなど主要10社の資産の一部売却を進めるなど、民営化を進めている。これは2027年8月に実施される予定の大統領選に向け、現政権が経済改革の実績を強調する意図があるとみられている。なお、アンゴラでは大統領の3選が禁じられているため、ロウレンソ大統領は次回選挙に出馬しないものの、与党「アンゴラ人民解放運動(MPLA)」の総裁職にとどまり、一定程度の権力を維持するとの見方が多い。一方、前回2022年の選挙で得票率43.95%と善戦した、最大野党「アンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)」がどこまで支持を伸ばせるかにも注目が集まる。(国際部 髙橋史)

[フィリピン/バンサモロ自治地域議会選挙] 

9月14日、フィリピンのミンダナオ島のイスラム自治地域である「バンサモロ自治地域」にて初の議会選挙が実施された。全80議席が争われ、40議席は比例代表、32議席は小選挙区、残り8議席は女性、若者、先住民族、移住者など8枠のセクター代表から構成される。有権者数は約240万人である。

 

選挙の結果、暫定自治政府のマカクア首相率いるバンサモロ連邦主義党(BFP)が31議席を確保し、第1党となった。一方、議席の過半数確保には至らなかった。第2党は分離組織が率いる統一バンサモロ正義党(UBJP)で、30議席を確保した。今後、連立交渉が行われる見込みである。議員はその後、首相を選出し、自治政府が発足する。

 

フィリピンはキリスト教国であるが、人口の約5%をムスリムが占める。その大宗はミンダナオ島南西部に在住している。彼らはスペインおよび米国の植民地時代より島内のキリスト教徒と対立してきた。独立以降、フィリピン政府は彼らが在住する地域において大規模な開発事業を実施してきたが、収益の大部分がマニラに拠点を置く地場企業や外資系企業に還元されるなど、開発の恩恵を十分に受けられなかった。一方で、開発による環境破壊や土地収用による土地の喪失など、環境・社会的な悪影響が顕在化した。このような不満も受け、1960年代よりフィリピン政府と分離組織(MNLF、MILF)との間で武装闘争が発生していた。その後は両者が歩み寄り、2014年にマレーシア政府の仲介の下で包括的和平合意が成立した。ドゥテルテ元大統領がMNLFとの和解を進め、2018年7月にイスラム教徒居住区への自治政府設立を認めるバンサモロ基本法が成立した。2019年1月・2月に住民投票が行われ、5州1市、63のバランガイ(最少行政単位)が暫定自治政府の地域として認められた。これにより「バンサモロ暫定統治機構(BTA)」が発足し、その統治地域は「イスラム教徒バンサモロ自治地域(BARMM)」とされた。今回の選挙は、本自治地域の議員を選出するための選挙であった。

 

フィリピンの中でも特にミンダナオ島では、殺人やテロなどの治安リスクの大きさが日系企業を含む外資系企業の進出を躊躇させる要因となってきた。中でも2016年のダバオ市での爆発事件など一部のテロは、分離組織によるものである。2018年以降は治安が改善傾向にあるとの指摘もあるが、日本外務省の海外安全ホームページ上では渡航中止勧告(レベル3)と表示されていることから、依然として治安リスクは高いといえる。

 

第1党のBFPはMILFの公式政党であるUBJPから分裂した経緯を踏まえると、両者の連立は考えにくいとの見立てがある。今後、BFPが別政党との連立により与党となった場合、UBJP党員やMILF構成員は選挙結果に不満を示しかねない。このような不満がテロ発生につながらないか、留意が必要である。(国際部 土田慧)

[日本/訪日外国人数(8月推計)] 

9月16日に日本政府観光局(JNTO)が発表した8月の訪日外国人数(推計値)は309万8,900人で前年同月比▲9.6%と、2か月ぶりにマイナスとなった。

 

東アジアや欧米、中東を中心とした多くの市場で、夏季休暇や祝日に合わせた訪日需要の高まりが見られた。最も多かったのは韓国の85万500人(+28.7%)、次いで台湾の66万6,000人(+7.3%)、中国の41万8,000人(▲59.0%)、香港の24万7,300人(+9.4%)、米国の19万7,400人(+1.5%)。

また、韓国、台湾、香港、マレーシア(2万6,000人、+23.0%)、インドネシア(3万2,500人、+3.4%)、インド(1万9,500人、+4.7%)、米国、メキシコ(1万8,600人、+37.0%)、フランス(4万300人、+8.4%)、イタリア(4万7,300人、+15.1%)、スペイン(3万6,500人、+14.1%)、ロシア(1万4,400人、+10.4%)、北欧地域(9,400人、+3.9%)、中東地域(2万2,900人、+24.8%)の14市場において8月として過去最高を記録した。

 

暑い夏場は東南アジアを中心に訪日需要が落ち着く時期でもあり、フィリピン(3万9,100人、▲11.6%)、タイ(3万2,200人、▲9.3%)、ベトナム(5万6,600人、▲7.5%)などで減少した。また、タイやベトナムなどでは、訪中旅行の人気と競合したとみられる。

 

中国は41万8,000人(▲59.0%)と、中国政府による訪日自粛要請などの影響で2025年12月以降9か月連続の前年同月比マイナスとなった(この間のマイナス幅は▲45.2%~▲60.7%)。

 

2025年通年の訪日外国人数に占める割合では、韓国22%、中国21%、台湾16%(計59%)だったが、2026年1~8月累計に占める割合では、韓国27%、台湾20%、中国11%(計57%)となった。訪日外国人の構成に変化がみられることから、日本での消費行動にも変化がみられる可能性がある。

 

2026年1~8月の累計は2,762万6,300人と、前年同期の2,838万4,099人に比べて▲2.7%減少した。年間の訪日客数は、新型コロナウイルス感染症の影響で激減し2021年に底を打って以降増加を続けており、2025年は過去最多の4,268万人に達した。2026年はこのままのペースで推移すれば5年ぶりに前年割れとなる。(経済部 菊井彩乃)

[米中首脳会談へ最終調整] 

9月24日に予定されている米中首脳会談に先立ち、ベッセント米財務長官と中国の何立峰副首相が9月20日にニューヨークで会談し、貿易摩擦やAIをめぐる懸案について最終調整を進めると複数のメディアが報じている。米通商代表部(USTR)のグリア代表も参加する。


最大の焦点は昨年(2025年)10月の釜山での首脳会談で合意した貿易休戦の延長になるもよう。報道によれば、今年11月に期限を迎える同合意について、中国はトランプ政権の残りの任期中までの延長を求める一方、米国は6か月間の延長を主張している。米側には、中国がレアアース輸出に関する約束を十分に履行していないとの不満がある。また、日本向けのレアアース輸出規制は米国のサプライチェーンにも影響しており、米国は規制緩和を要求しているとされる。


AIをめぐっては、ベッセント氏が中国との「共通リスク」の回避やAIシステムの分断防止に向けた協議に前向きな姿勢を示した。とはいえ、米国では中国企業による米国製AIモデルの利用が問題視され、中国側は米国の安全保障政策が自国の技術発展を妨げていると反発している。双方の研究者はAIの暴走などへの懸念を共有するものの、具体的な協力に向けては隔たりがある。


一方、両国は今年5月の首脳会談で設置に合意した「貿易委員会」の具体化も進めている。同委員会にて、安全保障上の機微性が低い製品を特定し、関税引き下げを検討するとしている。首脳会談では、貿易休戦の延長や同委員会を通じた関税削減で成果を示せるかが注目される。ただ、レアアースやAIをめぐる対立は根深く、包括的な合意に至るかは不透明だ。(国際部 前田宏子)

[米下院 対ロシア制裁/関税法案を可決] 

米下院は9月16日、故リンゼー・グラム上院議員が主導した対ロシア・対イラン制裁法案を可決した。法案は既に上院を通過しており、トランプ大統領の署名を経て成立する見通しである。


同法案の最大の特徴は、ロシア産石油・天然ガスを輸入する主要国に対し、米大統領が最大100%の関税を課す権限を持つ点にある。主な対象として中国やインドが想定されており、ロシアそのものではなく、ロシアのエネルギー輸出を支える第三国への圧力を通じて、ロシアの歳入基盤を揺さぶる狙いがある。さらに、ロシアの「シャドーフリート(影の船団)」への制裁強化や、金融機関・政府関係者への追加制裁も盛り込まれている。


ロシアにとって最大のリスクは、原油・ガス輸出収入の減少である。西側制裁以降、ロシアはエネルギー輸出先を中国やインドへ転換することで収入を維持してきたが、これらの国が米国からの二次制裁リスクを考慮し、輸入削減や価格引き下げを要求する可能性がある。結果として、ロシアは一層大きな価格割引を余儀なくされる可能性がある。


もっとも、法案は制裁発動を自動化するものではなく、適用時期や対象範囲については大統領に大きな裁量が与えられている。そのため、トランプ政権は本法を対ロシアのみならず、中国やインドとの交渉材料として利用する可能性もある。今後は法案成立後の具体的な運用と、中国・インドの対応がロシア経済への実際の影響を左右する重要な焦点となろう。(国際部 ゴロシニコフ アントン)

[アルゼンチン/2027年度予算] 

2026年9月15日、アルゼンチン政府は憲法で定められた期限に合わせて2027年度予算法案を議会へ提出した。今回の法案には、経済成長率やインフレ率、為替レートなどの主要な経済前提が盛り込まれており、今後の財政運営や議会審議の方向性を示す内容となっている。


政府は2027年の実質GDP成長率を4%と予測している。これは2026年の成長見通しである2~3%程度を上回る水準であり、経済活動の拡大が続くとの見方を示したものである。一方で、民間の経済予測では政府見通しより慎重な見方が多く、成長率は4%を下回る可能性が指摘されている。
インフレ率については、年間平均で21.1%を想定している。年末時点のインフレ率は18%前後まで低下すると見込まれており、物価上昇の鈍化を前提に予算が組まれている。しかし、中央銀行が集計する民間予測では、政府見通しを上回るインフレ率を予想する声が多く、今後の審議における論点の一つとなる可能性が高い。
為替レートについては、2027年の平均レートを1米ドル=1,728ペソ、年末には1,847.6ペソと想定している。法案提出時点の公定レートがおよそ1,530ペソだったことを踏まえると、政府は急激な通貨下落ではなく、緩やかなペソ安進行を前提としている。一方で、2026年度予算では2026年末のレートを1,423ペソ程度と見込んでいたが、実際には既にそれを上回っているため、今回の予算ではより現実的な為替想定へ修正した形となった。


家計関連では、平均賃金が2027年に25.4%上昇すると予測している。賃金上昇率がインフレ率を上回れば実質所得の改善につながるが、想定以上に物価が上昇した場合には家計負担が重くなる可能性もある。
対外部門では、輸出額が1,300億米ドルを超え、貿易黒字は150億米ドル以上になると見込んでいる。輸出数量は8.5%増、輸入数量は8.2%増と予測されており、政府は貿易拡大が経済成長を支えると期待している。また、民間消費は3.4%増、設備投資は9.2%増と想定されており、内需と外需の双方が成長に寄与するシナリオとなっている。
財政面では、引き続き財政黒字の維持を最重要目標として掲げている。政府は2027年も黒字を確保し、4年連続の財政黒字達成を目指している。これはハビエル・ミレイ政権が発足以来推進してきた財政規律路線の中核であり、国際投資家や金融市場への信頼維持を重視した姿勢といえる。


今後、法案は10月5日から下院で本格的な審議に入る。予算案の審議は、予備選挙制度(PASO)の廃止を巡る法案と並行して進められる見通しであり、限られた議会日程の中で激しい政治交渉が予想される。特に州政府への財政移転や支出配分は例年大きな争点となるため、州知事や野党勢力が予算案への支持と引き換えに譲歩を求める可能性が高い。
今回公表された経済前提は、2027年の政府運営が評価される基準にもなり、実際のインフレ率や為替レート、成長率が大きく乖離した場合には、歳入や歳出の見通しが崩れ、財政運営全体にも影響が及ぶ可能性がある。2027年には総選挙も控える中で、ミレイ政権の経済政策の信頼性を問う重要な政治プロセスとなるとみられる。(国際部 小橋啓)

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