デイリー・アップデート

2026年9月25日 (金)

[米国/政治・経済事情] 

米共和党内で、トランプ大統領との距離の取り方にばらつきが目立ち始めている。全面的な「反トランプ」への転換ではないが、中間選挙を前に、イラン戦争、移民、議会運営、選挙戦略、倫理問題ごとに個別の反発や離反が増えている。
特に目立つのはイラン戦争に対するもの。NBCは、アイオワやミシガンなどの共和党議員・候補が、政権の戦争方針から距離を取り始めたと報じた。背景には戦争長期化への反発だけでなく、原油やガソリン価格の上昇を通じた家計負担の悪化がある。外交・安全保障の問題が、最終的には物価と生活費の問題として選挙に跳ね返っている。
共和党候補にとっては、トランプ氏への忠誠と地元有権者の不満が一致しにくくなっている。生活費高騰への不満が強まれば、イラン政策への支持そのものより、「戦争によってガソリン代や日用品価格が上がっている」という受け止めの方が選挙では重くなる。これは、政権が景気の強さを強調しながら、5,000ドル給付など家計支援策を打ち出していることとも矛盾する。
議会制度を巡っても亀裂がある。トランプ氏は上院共和党にフィリバスターの廃止を迫っているが、多くの上院議員は、将来自党が少数派になった際の防波堤を失うため慎重だ。これは反トランプというより、大統領の短期的な政策実現と、上院共和党の長期的な制度利益の衝突ともいえる。
選挙メッセージにも混乱がみられる。共和党は民主党を「社会主義化している」と攻撃してきたが、トランプ氏がニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長を好意的に評価したことで、一部党関係者からは中間選挙向けのメッセージを自ら弱めているとの不満が出た。
さらにジョン カーティス上院議員は、ドナルド・トランプ・ジュニアとHunter Bidenの双方について、大統領一族による利益相反がないか調査するよう求めた。共和党がバイデン一家を厳しく追及してきた以上、同じ基準を自党にも適用すべきだという論理である。
現状は共和党の「トランプ離れ」と断定する段階ではないが、物価高と高金利が家計を圧迫するなか、候補者や現職がトランプ氏との距離を争点ごとに計算し始めていることは確かである。経済の問題が、最終的にはアフォーダビリティを通じて米国政治に跳ね返り始めている。(経済部 本間隆行)

[モロッコ/下院選挙暫定結果] 

9月23日、任期5年の下院(代議院)全395議席を選ぶ選挙が行われた。24日に発表された暫定結果では、現政権の連立与党の一角を担う「真正性と近代性党(PAM)」が、2021年の前回選挙から10議席増の97議席を獲得し、第1党となった。現首相が所属する「独立系国民連合(RNI)」は102議席から66議席に減り、第1党の座を明け渡した。同じく連立与党の独立党は65議席だった。第1党となったPAMでは、選挙前にモロッコ王立サッカー連盟会長のファウジ・レクジャア氏が入党し、注目を集めた。

 

もう一つの大きな変化は、野党の穏健イスラム政党「公正開発党(PJD)」の復調である。前回選挙では13議席まで落ち込んだが、今回は54議席を獲得した。同党は物価高や若者の失業、医療・教育などの公共サービスや汚職対策を取り上げ、現政権の実績を批判した。元首相のベンキラン党首による演説も、支持回復を後押ししたとみられる。

 

PAMの97議席は、過半数の198議席に届かない。国王は最多議席を得た政党から首相を任命するため、PAMが次期政権を率いる見込みだが、首相の人選と連立の枠組みはまだ決まっていない。首相候補には、PAM党首のファティマ・エル=マンスーリ氏とレクジャア氏の名前が挙がっている。エル=マンスーリ氏が任命されれば、モロッコ初の女性首相となる。PAMは選挙戦でRNIとの連立継続を否定していたが、選挙後、エル=マンスーリ氏は協議の相手を排除しない姿勢を示した。

 

投票率は約38%と、前回の約51%から大きく低下した。特に、若者の政治参加の低さが課題となっている。2030年サッカー・ワールドカップのスペイン、ポルトガルとの共同開催に向け、競技場や交通網への大型投資が進むモロッコだが、若者の失業や生活費の上昇、医療・教育サービスの不足に対する不満は根強い。2025年にはZ世代が主導する広範な抗議行動が起き、2026年7月にはスペイン領セウタへの大規模な越境で多数の死者が出た。次期政権には、大会準備と暮らしの改善を両立させ、政治への信頼を取り戻すことが求められる。(国際部 広瀬真司)

[コロンビア/イランと断交] 

2026年9月24日、コロンビア政府が9月19日付でイラン・イスラム共和国との外交関係を正式に断絶した。政府は今回の措置について、国家主権を守り、外部からの干渉を排除し、国民と国益を保護するための決定であると位置付けている。新政権は発足以来、米国やイスラエルとの関係強化を重視しており、今回の決定もその外交方針を反映したものとみられている。


コロンビア外務省は外交関係断絶の理由として、イランにおける人権侵害への懸念、イラン政府と国際テロ組織や麻薬関連の武装組織との関係が疑われている点、世界の重要な海上輸送路であるホルムズ海峡の封鎖問題、イラン当局が国際原子力機関(IAEA)による核開発計画の監視・査察活動を妨害していることの4点を挙げている。
ただし、外務省の声明では、テロ組織や麻薬組織との関係を示す具体的な証拠や、コロンビア国内に直接影響した事例については明らかにされていない。


今回の措置は外交関係の断絶を意味するが、領事関係までは対象としていない。両国の大使館を通じた正式な外交関係は終了する一方で、ビザ発給や自国民保護などの領事サービスは継続される。コロンビアとイランの貿易規模はもともと限定的であるため、経済面への直接的な影響は比較的小さいとみられる。
一方で、政治的な意味合いは大きい。今回の決定は、コロンビアがイランとの対立を深める米国やイスラエルとの連携を一層鮮明にしたことを示している。また、前政権が進めてきたイランとの協力関係を見直し、新たな外交路線へ転換する象徴的な出来事ともいえる。


こうした動きはコロンビアに限られたものではなく、ペルーも2026年9月1日にイランとの外交関係断絶を発表している。ペルー政府はホルムズ海峡をめぐる問題や民主主義の後退を理由に挙げており、短期間のうちに南米で二つの国が同様の措置を取ったことになる。


2026年8月に発足したデ・ラ・エスプリエラ政権は、前政権の外交政策を見直し、親欧米路線への転換を進めている。外交拠点の整理など、従来とは異なる方針を次々と打ち出しており、今回のイランとの外交関係断絶もその一環と位置付けられる。(国際部 小橋啓)

[東アフリカ/エネルギー安全保障] 

東アフリカ各国でエネルギーをはじめ輸入依存からの脱却の動きが進展している。


9月24日、ジブチで総額6億ドル規模の石油インフラプロジェクトの起工式が行われた。同プロジェクトは、アデン湾に面するジブチのダメルジョグと、エチオピア・ソマリ州デウェレ間の約120kmに石油パイプラインを敷設し、両端に合計100万立方メートルの石油貯蔵施設を建設するものだ。式典にはジブチのゲレ大統領、エチオピアのアビィ首相のほか、ナイジェリア最大のコングロマリットであるダンゴテ・グループのアリコ・ダンゴテCEOらが参加した。同プロジェクトはダンゴテ社と、アフリカ最大級のソブリン・ファンドであるエチオピア・インベストメント・ホールディングス(EIH)が参画する。


前日の9月23日にエチオピア北部ティグライ州で、「ティグライ人民解放戦線(TPLF)」軍とエチオピア国防軍(ENDF)との紛争が激化(2026年9月24日付デイリーアップデート参照)した中で起工式に参加したアビィ首相は、同プロジェクトが完成すれば、ジブチからエチオピアの首都アディスアベバまでの燃料の輸送時間が5日から1日に短縮されると、その経済効果を強調した。内陸国のエチオピアは石油製品をはじめとする輸入品のほぼ全量をジブチからの輸入に依存している。イラン情勢の緊張により油価の変動や燃料供給の不安定化がインフレを通じて国民生活に影響を及ぼす中、燃料輸送の効率化と備蓄の確保を図ることができる同プロジェクトの実現は、エチオピアのエネルギー安全保障に直結するものとなる。


また、ナイジェリアに拠点を置くダンゴテ社も東アフリカでのエネルギーをはじめとする輸入代替の動きに積極的に関与している。エチオピアでは、同じくEIHと共同でソマリ州・ゴデで年間300万トンの肥料生産プラントの建設を進めている。原料となる同州での天然ガス開発および約110kmのパイプライン施設は中国のGCLグループが進めている。プラント周辺では120メガワットの天然ガス火力発電所のほか、ポリプロピレン包装施設の建設が行われており、エチオピアは主要産業である農業に必要な肥料や包装資材などの輸入依存を軽減できる見込みだ。


さらに、ダンゴテ社はケニアのラム島で東アフリカ最大の製油所となる「東アフリカ製油所」の建設計画を進めている。9月30日に現地で予定されている起工式には、アリコ・ダンゴテ氏、ケニアのルト大統領などが出席予定だ。原油の調達は当面、海外からの輸入に頼る必要があるものの、日量70万バレルの製油所が完成すれば、現状、石油精製品のほとんどを中東などから輸入している東アフリカ諸国に安定的に燃料を供給できる仕組みとなる。ダンゴテ社は現在、ナイジェリアのラゴスで日量60万~70万バレルの精製施設をフル稼働させており、さらに2029年までに140万バレルにまで拡張する計画だ。中東情勢の緊張が続く中、同社の供給能力への期待が高まっており、9月14日にはアフリカ最大級となる新規株式公開(IPO)を実施した。東アフリカ製油所が計画通り2030年までに稼働すれば、同社の総生産能力は日量210万バレルとなり、世界トップ10の製油会社の一つとなると予想されている。(国際部 髙橋史)

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