デイリー・アップデート

2019年5月9日 (木)

[ブラジル] 3月の鉱工業生産は前月比▲1.3%。食品分野が▲4.9%、自動車分野が▲3.4%と目立って縮小し、26分野の内の16分野で縮小が見られた。第1四半期で見ると前期比▲0.7%となり、昨年第4四半期が▲1.3%だった事から2期連続の縮小となり、定義上の不況へ戻った。2015年、2016年の不況期で後倒しされていた購入需要及び融資条件の改善が2017年、2018年は顕在化して自動車需要を支えてきたが、2019年に入ってから減速が見られる。電子機器分野の需要も同様。

[中国] 5月8日、税関総署は4月の貿易統計を発表。 ドルベースで、輸出は前年同月比▲2.7%。輸入は政府が道路・鉄道・港湾への支出拡大などの景気刺激策を打ち出しており、内需回復を背景に同+4%と5カ月ぶりの増加となった。4月の貿易黒字は138億4000万ドル(3月324億2000万ドル)、対米貿易黒字は210億1000万ドル(3月は205億ドル)だった。米国からの輸入は約26%減、米国への輸出は約13%減。貿易戦争を巡る不確実性は今後も中国貿易の重しとなる見込み。

[米国] 5月8日、ブレイナードFRB理事は、今後の景気低迷に備えて、より長期の金利水準を目標とする政策を検討する意向を示した。日本銀行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和(YCC)に似た政策案といえる。これを含めて、FRBで金融政策のあり方が広く議論されている中での発言。利上げ余地が過去に比べて小さいこともあり、金融緩和の長期化に向けた取り組みが市場では注目されつつある。

[石炭] 18世紀の産業革命・石炭エネルギー利用の発祥の地である英国で、石炭火力発電所が稼働を開始した1882年以降初めて、1週間にわたり「石炭火力ゼロ」を達成。National Gridの制御システム部門(ESO)が発表した。英国は2015年、「2025年までの石炭火力全廃」を目標に掲げ、今年3月には国内使用電力の3分の1を洋上風力発電にする計画を打ち出している。再エネへの移行が加速する中、「石炭火力ゼロ」は今後の「ニューノーマル(新常識)」となる見通し。

[ロシア/ウクライナ] ロシア産天然ガスの供給を巡り、両国間の関係が再び悪化しつつある。ロシアからウクライナ経由で欧州向けに供給される天然ガスの輸送契約は2019年末に終了することになっているが、新契約の交渉が難航している。露ガスプロムは2020年に、ウクライナ経由で輸送するガスの供給を一時停止する恐れがある。

[中国] 財新網は、今年3月21日に江蘇省塩城市で発生した化学品製造工場の爆発事故(78名死亡)を契機に、化学品生産額が全中国一位の山東省と二位の江蘇省がそれぞれ法令の公布などを通じて、化学品製造工場の安全操業への管理を強化し、所定の基準に達しない企業及び工業団地の淘汰を進める方向性を報じた。河南省や江西省なども同様の動きを行っており、特に江西省は、江蘇省から移転してくる危険な化学品の製造企業の転入を警戒している。

[タイ] 5月8日、タイ選挙管理委員会は、3月24日に実施された下院総選挙の正式結果(500議席のうち498議席)を発表した。1位タイ貢献党(136)、2位国民国家の力党(115)、3位新未来党(80)、4位民主党(52)、5位タイ名誉党(51)で、タイ貢献党を中心とする反軍政連合7党の合計議席は245にとどまり過半数に届かなかった。首相の選出は上下両院(750)の過半数で決定されるので、親軍政派は下院で126議席を獲得すれば上院の250議席とあわせて首相を選出できる。

[米/イラン] 昨年のトランプ大統領によるJCPOA離脱発表からちょうど1年となる5月8日、米国及びイランの両政府がさらに緊張を高める発表を行った。イランは、JCPOAの履行を一部停止して重水及び低濃縮ウランの保管許容量を超えること、そしてさらに今後60日間事態が改善しない場合は、ウラン濃縮の制限を超えることを発表した。対して米政府は、イランの鉄、鉄鋼、アルミニウム、銅産業に関与する外国企業に対して二次制裁を課すと発表した。

[米国] 5月8日、トランプ政権は中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する追加関税を10%から25%に引き上げる旨、官報にて公示した(正式には9日付)。追加関税率の引き上げは5月10日から実施される。当該関税は、米通商法301条に基づき、2018年9月より中国からの輸入品5745品目(魚介類、野菜、卑金属等)に対して賦課されていたもの。米中交渉の進捗が遅れていることを理由にトランプ政権は関税引き上げを決定した。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。

16人が「いいね!」と言っています。