デイリー・アップデート

2025年6月26日 (木)

[エネルギー] 

Energy InstituteがKearney・KPMGと共同で、世界エネルギー統計の2025年版を発表。以前は英BPが集計・公表し、一般に「BP統計」と呼ばれていたもの。

 

世界のエネルギー総需要は2024年に2%増加し、過去最高の592EJを記録。電力需要は4%増とエネルギー需要全体の伸びを上回り、世界の電化が進んでいることを示す。風力・太陽光発電の16%もの伸びをもってしても、再生可能エネルギーの増加だけでは賄えず、化石燃料消費も1%増加。CO2排出量は40.8Gtと前年比1%増加し、4年連続で記録を更新した。再エネは化石燃料にとってかわるのではなく、全体的なエネルギーミックスに加わる形となっている。クリーンエネルギーの拡大を牽引するのは圧倒的に中国で、中国の石油需要は2024年に前年比1.2%減少し、2023年がピークだった可能性があると述べている。

 

Kearneyは、プレスリリースで、「地政学的な緊張の高まりにより、エネルギー安全保障・資源アクセス・技術主権は気候目標より優先されるようになり、記録的な温室効果ガス排出量と気温上昇につながっている」と警鐘を鳴らしている。

[ケニア] 

6月25日、首都ナイロビ中心部で数千人規模の反政府デモ隊と警察が衝突し、少なくとも16人が死亡、400人以上が負傷したと報じられている。ケニアではちょうど1年前に政府が増税を盛り込んだ「2024年財政法」に反対するデモが発生し、同じく治安当局との衝突により60人以上が死亡。2024年のデモ参加者の死を悼む大規模な1周年記念集会が開かれることは事前に計画されていたが、今回も過熱した抗議活動を抑え込もうとした警察がデモ隊に向かって放水、催涙ガス、ゴム弾の使用に加え実弾を放ったもよう。ケニア通信当局はテレビ局に対してデモ映像を放送しないよう命じたほか、通信アプリ・テレグラムの使用を制限したとも報じられている。

 

大規模な反政府抗議活動の拡大の背景には、市民による警察への不信感の高まりがある。6月8日に、教師で著名なインフルエンサーのアルバート・オジュワン氏が警察庁副長官の名誉を棄損する投稿を行ったとの罪で警察に逮捕された後、拘置所内で死亡した。警察は、オジュワン氏は自身による「自傷行為」により死亡したと主張したが、その後の司法解剖の結果、暴行により死亡したことが明らかになり、また警察による事実の隠ぺいも発覚した。

 

この事件を受けてケニア国内では断続的に警察・政府に抗議するデモ活動が発生。ウィリアム・ルト大統領も警察がオジュワン氏の死に関与したことを公の場で認めた。しかし、その後も警察が抗議デモに参加していない通行人に対して至近距離から実弾を放ったことや、暴力組織と警察が結託してデモ隊を襲撃した疑惑などを受けて「Z世代」の若者らを中心による怒りがさらに高まっていた。

 

ケニア警察による市民に対する過剰な暴力行為に関しては、国際人権団体からもたびたび強く非難されている。しかし、ルト大統領は今回のデモの前日にも警察の活動を称賛する声明を出す一方で、デモ隊の暴力的な活動を強く非難しており、政府と市民の間の溝が埋まらない状況が続いている。エコノミスト・インテリジェンス・ユニットは、政府がデモ活動の沈静化やデモに参加した死傷者への補など等の対応を適切に行わなければ、ルト大統領は2027年の総選挙に向けてさらに支持基盤を失うとの見方を示している。

[米国/ウクライナ] 

6月25日、トランプ米大統領は、オランダ・ハーグでの北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせ、同日にウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。両首脳が会うのは4月下旬のバチカン以来で、50分ほど話し合った。トランプ米大統領は会談終了後に記者会見し、ウクライナ侵攻の和平仲介は、中東の紛争よりも困難との認識を示した。ゼレンスキー大統領は通信アプリに「停戦や和平を協議し、米国製の防空兵器購入や無人機の共同生産の可能性についても話し合った」と投稿した。ゼレンスキー大統領は戦闘の長期化を見据え、トランプ大統領に防空システムなど兵器の供与継続を訴えている。トランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)首脳会合後の記者会見で、米国はウクライナに迎撃防衛ミサイルシステム、パトリオットを供与する用意はあるかと聞かれ「ウクライナが求めている。可能な限り提供できるかどうか検討する」と表明した。

[中国] 

中国・湖南省にある国防科学技術大学の学生は、監視を実施しながら検出を回避できる「蚊」サイズのドローンを発表した。6月14日のテレビ報道では、「このタイプのマイクロロボットは特に、戦場での情報偵察などの特別な任務に適している。」と紹介された。

 

この新しいデバイスは、長さは2センチメートル、幅は3センチメートルほど、重さは0.2グラム未満。中央電視台の放送では、研究者の指の間でほとんど重さを感じさせることはなかったという。技術進歩により、センサーやバッテリーなどコンポーネントを小さなフレームに詰め込むことが可能となり、小型軽量で高度なドローンの開発が可能になっている。

 

昆虫型ロボットとしては、ハーバード・マイクロロボティクス・ラボの「ロボビー」は人工筋肉を使って羽を毎秒120回打って飛行を実現している。こうした小さなロボット群は、将来的には救助任務や人工授粉のような作業を支援することを目指している。

 

他方で、ノルウェーで開発された軍事用のマイクロドローンは熱画像を送信し、最大2マイルの距離をカバーし、30分以上飛行を続けることができる。中国の「蚊」サイズのドローンは限られた容量、短い射程、おそらく短いバッテリー寿命のために、最小限に留まる可能性が高いと「今のところは」みられている。

 

ランド研究所の国際防衛研究上級職のティモシー・ヒースがThe Telegraphに対して、「もし中国が蚊サイズのドローンを生産できれば、さまざまな情報、監視、偵察任務に使用することに興味を持つ可能性が高く、特に大型のドローンがアクセスしにくい屋内などの場所での使用が考えられる」と述べた。ドローンの小型化はミサイルの代替手段から捜索救助活動に至るまで、多くの可能性を開いている。また同時に、個人のプライバシー侵害や犯罪などの悪用への懸念も高まることになる。

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