2025年6月11日 (水)
[米国]
エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が月次の短期エネルギー見通しを公表。今回「予測概要」のトップにエタン輸出を挙げている。6月4日、商務省産業安全保障局(BIS)が、Enterprise Products Partners社による中国向けエタン輸出許可申請を却下したのを受け、米国のエタン輸出の半分を占める中国向け輸出が認められない場合の影響を織り込み、エタン輸出・生産予測を下方修正した。
原油生産は2025年第2四半期の日量1,350万バレルをピークに減少すると予想。年間平均では2026年に前年割れとなる予測に転じた。Baker Hughes社の統計によると、米国の掘削リグ稼働数が予想以上に急速に減少している。原油価格は引き続き下落予想だが、WTIの年間平均は2025年62.33ドル、2026年55.58ドルと、いずれも前月予測から上方修正している。米国のガソリン価格も下落するが、製油所の生産能力削減が進む西海岸では値上がりを予想。
天然ガスは、LNG輸出の伸びが国内ガス生産の伸びを上回るとして値上がりを予想している。
電力需要についてはデータセンター増設を主因に、商業部門の需要の予測を2025年3%増、2026年5%増に上方修正。2025年夏はガス価格高騰によりガス発電は伸び悩み、石炭・太陽光・水力発電量が増えるとしている。
[米国/中国]
6月10日、英国ロンドンにて行われていた米中通商交渉は、貿易の枠組みについて米国・中国の両国が合意する形で終了した。交渉に臨んでいたラトニック商務長官によると、2日間の交渉を経て、5月のジュネーブ合意と、6月5日の米中首脳電話会談での合意事項を実施するための枠組みについて両国で合意された。米中両首脳の承認を経て、合意内容が実行に移される。これによって、中国からのレアアース、磁石類の対米輸出は再開され、米国側は対抗措置を撤廃すると商務長官は発言した。
米国は、4月に中国をはじめ世界各国に対して相互関税を発動していたが、5月の米中交渉を経て、3か月間の関税引き下げに同意していた。しかし、中国が4月から実施していたレアアース輸出管理が緩和されなかったことを受け、5月末にトランプ大統領は、中国による合意違反を言い募り、米中関係に対する注目が改めて高まっていた。
[米国]
トランプ大統領の関税政策は、ペンシルベニア州に拠点を置く玩具メーカーにとってビジネスの好機となった。Rodonグループという民間のプラスチック射出成形メーカーは、米国でほんの数社しかできないことをしている。それは、STEM(科学、技術、工学、数学)教育も兼ねたおもちゃの生産だ。
この会社ではたくさんの種類のプラスチック製品を生産しているが、その中には「K’nexのおもちゃセット」が含まれている。K’nexシリーズは、ブロックよりダイナミックに動く立体モデルを作成できるおもちゃセットで、「電話がひっきりなしに鳴り、メールも増え、すべてが慌ただしい」という。同社社長は、トランプ大統領が最初に関税を発表して以来、需要はほぼ50%増加したと述べている。
この活況は、玩具の生産を国内で維持するために自動化を進めてきた結果でもある。同社は1980年代から生産ロボットへの投資を40年にわたって続けてきた。その結果、海外の150人の労働者が達成できることを国内の従業員1人で成し遂げることができ、労働コストの低い海外の製造業者に対して優位に立つことができた、と社長は言う。また、この様に自動化の成果を信じているにも関わらず、米国は自国の労働力に投資しない限り国内生産はうまくいかず、STEM教育のコンビネーションが必要で、それには時間が必要だ、とも社長は主張している。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2025年6月16日(月)
『時事通信』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行が寄稿しました。 - 2025年6月13日(金)
『日刊工業新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2025年6月13日(金)
『日刊工業新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2025年6月4日(水)
『鉄鋼新聞』に、当社社長 横濱 雅彦の取材対応記事が掲載されました。 - 2025年5月26日(月)
『Quick Knowledge 特設サイト』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のQuick月次調査・外為5月レビューが掲載されました。