デイリー・アップデート

2025年6月18日 (水)

[マリ/ロシア] 

6月6日、ロシアの民間軍事会社ワグネルはマリでの任務を完了し、同国から撤退すると発表した。ワグネルはマリでクーデターが起きた2021年から約3年間、マリ国軍と協力して反政府組織との戦闘を繰り広げてきた。ロシア政府は2023年にアフリカでのワグネルらの軍事活動をロシア国防省傘下の「アフリカ部隊(Africa Corps)」に置き換えると発表していたが、その後もマリや中央アフリカではワグネルとしての活動を継続していた。現在マリに配置されている約1,500人のワグネル兵はアフリカ部隊として再編成される見込み。6月9日にロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官は、アフリカ諸国との軍事・経済関係を強化する方針を表明しており、引き続きマリを含めロシアのアフリカでの影響力を確保する意向を示している。

 

しかしマリでは、6月2日にも中部トンブクトゥでアルカイダ系反政府組織「「イスラム・ムスリムの支援団」(JNIM)」がマリ軍を攻撃し、十数人を殺害。2024年にもマリ北部でワグネル・マリ軍は大規模な損失を被っており、マリ政府が失地回復に苦戦している中でのワグネルの「任務完了」発言は矛盾しているとの指摘がある(米・戦争研究所)。また、「アフリカ部隊」の70~80%は元ワグネルの傭兵で構成されているものの、アフリカ部隊はロシア国防省の支配下にあるため、より官僚的でリスクを回避し、実戦よりも現地政府軍の訓練を行うなど間接的な支援に留まる傾向があるとのこと。それとは逆にリスクを好んで実戦に参加し、アフリカ政府・軍との関係を積極的に構築してきたワグネルの撤退は、逆にロシアの影響力を弱める可能性があるとの見方もある(アル・ジャジーラ紙、戦争研究所)。

 

マリの軍事政権がフランス軍や国連軍を撤退させる中でJNIMは拡大を続け、現在6,000人程度の戦闘員を擁するサヘル地域最大の武装勢力となっている。JNIMはマリやブルキナファソの主要都市の制圧にとどまらず、沿岸国のベナンやトーゴ軍にも攻撃を加えている。さらにJNIMの情報提供者や物流網はセネガル、ガーナ等の政治的に安定した国にも及んでいるとの指摘もあり(ワシントン・ポスト紙)、今後の治安悪化の拡大が憂慮される。

[中国/中央アジア] 

6月17日、カザフスタンの首都アスタナにおいて、第2回中国・中央アジア首脳会議が開催された。第1回が2023年に中国・西安で開催されて以来である。中国からは習近平国家主席が出席した。習氏にとってカザフスタンは、ロシアに次いで訪問回数が多い外遊先となっている。

 

会議では、経済貿易、資源エネルギー、技術協力などに関する協定や覚書が締結されたほか、すべての参加国を当事者とする「善隣友好協力条約」が締結された。同条約第3条には、「ほかの締約国に対するいかなる同盟やブロックにも参加せず、ほかの締約国に敵対するいかなる行動も支持しない」と明記されており、個別具体的な脅威に対する従来の安全保障協力に比べ、水準が戦略的な次元へと引き上げられている。

 

習氏は会議での演説において、「関税戦争や貿易戦争に勝者はなく、一国主義、保護主義、覇権主義は人々をも自らをも傷つける運命にある」と述べ、暗に米国の行動を批判した。中国外交は米国に比較して、平和的かつ公平であるとの印象を与えようとしている。

 

また、習氏は中央アジア5か国の首脳とそれぞれ二国間会談を行った。ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領との会談では、イランとイスラエルの紛争に言及し、次のように述べた。「イスラエルの対イラン軍事行動によって中東の緊張が急激に高まっていることに深く憂慮している。我々は、他国の主権、安全、領土保全を侵害するいかなる行為にも反対する。軍事衝突は問題の解決策ではなく、地域情勢に油を注ぐことは国際社会の共通の利益にはならない。すべての当事者は、さらなる緊張の激化を避けるため、できるだけ早く紛争を沈静化させるよう努めるべきである。中国は、中東の平和と安定の回復に建設的な役割を果たすため、すべての当事者と協力する用意がある。」

 

なお、第3回首脳会議は2027年に中国で開催される予定である。

[イスラエル] 

イランとの交戦状態に入ったイスラエルでは、6月13日以来空域が閉鎖されており、イスラエル国内には4万人の外国人観光客が足止めを食らっているとされている。逆に海外に取り残されイスラエルに帰国できないイスラエル人も、推定で10~20万人いるとされている。

 

そんな中、イスラエルに取り残された自国民を帰国させるためにチェコ政府とスロバキア政府が動き、チェコ政府の飛行機は乗客66人を乗せて6月17日の朝にプラハに到着(ほとんどがチェコ国籍であるとのこと)、スロバキア政府の飛行機も115人の乗客をブラチスラバに運んだ。イスラエルは空域を閉鎖しているため、避難を求めた人たちはイスラエル国内からバスでエジプトやヨルダンなど隣国の空港まで運ばれ、そこから帰国したとのこと。

 

イスラエルのみならずイランや周辺国でも突然空域が閉鎖されたことで、現地に取り残されている外国人や帰国できない人たちが多数存在する。

[米国] 

連邦準備制度理事会(FRB)によると、5月の鉱工業生産指数は前月比▲0.2%、2か月ぶりのマイナスとなり、市場予想(横ばい)を下回った。内訳をみると、製造業は+0.1%、4月(▲0.5%)からプラスに転じてものの、ほぼ横ばいにとどまった。鉱業(+0.1%)もプラスに転じた一方、公益事業(▲2.9%)がマイナスに転じた。

 

製造業では、耐久財が+0.4%と2か月ぶりのプラスになった。しかし、4月(▲0.4%)の減少を踏まえれば、ならしてみれば横ばい圏にある。自動車(+4.9%)が増加した影響が大きく、それを除くと2か月連続の減産だった。そのほかでは、非鉄金属鉱物(▲1.6%)や一般機械(▲1.0%)、金属製品(▲1.2%)、電算機類・電子部品(▲0.2%)などが減少した。非耐久財(▲0.4%)は4月(▲0.6%)に続いて2か月連続で減産した。 食料品(▲0.3%)や石油・石炭製品(▲1.4%)も2か月連続で減少した。

 

また、商務省によると、6月の小売売上高は前月比▲0.9%となり、市場予想(▲0.7%)を下回った。4月分は速報値(+0.1%)から▲0.1%に下方修正され、2か月連続のマイナスになった。もっとも3月(+1.5%)に関税引き上げ前の駆け込み需要があり、その反動減が表れていると言える。

 

内訳を見ると、主要13業種中7業種で前月から減少した。 自動車・同部品(▲3.5%)や建材・園芸用品(▲2.7%)、食品店(▲0.7%)、電気・家電(▲0.6%)などの減少も目立った。ガソリンスタンドは▲2.0%、ガソリン価格の低下も響いた。また、唯一のサービス分野である飲食サービス店は▲0.9%と、2023年2月以来の減少幅を記録した。一方で、無店舗販売(オンライン)も+0.9%と増加しており、節約志向もうかがえた。

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