デイリー・アップデート

2025年6月13日 (金)

[オーストラリア/米国] 

6月11日、米国防総省が、豪英米の安全保障枠組み「AUKUS」 の見直しに着手したと報じられ、6月12日、マールズ豪国防相も米国から見直しについて説明を受けたと表明した。同国防相は、新政権が大規模な計画の進捗や成果を検証したいと考えるのは当然であるとして、協定の継続に楽観的な見方を示した。アルバニージー首相とトランプ米大統領は、カナダで6月15~16日に予定されているG7サミットの機会に会談する見通し。

[ドイツ] 

6月12日、ドイツの主要なシンクタンクは経済見通しを上方修正した。

 

①キール世界経済研究所(IfW)は、2025年の経済成長率を+0.3%と前回(0.0%)から上方修正、2026年の成長率も+1.5%から+1.6%へ小幅上方修正した。サブタイトルは「トンネルの先に光が見えている」。上方修正は国内要因で、個人消費は再び増加しており、民間投資も持ち直し始めていると指摘。2026年には連邦政府の財政余地が拡大するため、拡大ペースが加速すると期待されるものの、米関税の影響から経済のモメンタムは抑制されていると言及している。

 

②ライプニッツ経済研究所(RWI)は、2025年の経済成長率を+0.3%、2026年を+1.5%と予想した。 「ドイツ経済は危機からの第一歩を踏み出す」とのサブタイトルを付けた。米国向け輸出の反動減から2025年Q2の成長ペースは鈍化するものの、年後半から持ち直す見通し。金利の低下や政府の財政拡大もあって、民間設備投資がこれまでの想定よりも早いペースで増加すると予想している。

 

③Ifo経済研究所は、2025年の経済成長率を+0.3%、2026年を+1.5%と、それぞれ0.1pt、0.7ptの上方修正だった。「回復が近づいた、経済政策の不確実性は依然高い」とのサブタイトルを付けた。実質購買力の持ち直しから、個人消費も回復しつつあるとし、2024年の冬に底を打ったとみている。2025年Q1にやや高めの伸びからQ2に減速した後、その後成長が加速する見通し。メルツ政権の財政政策(国防費の増額やインフラ投資計画)と貿易交渉の進展が、上方修正の材料となった。

 

④ハレ経済研究所(IWH)は、2025年の経済成長率を+0.4%と前回から0.3pt上方修正した。なお、2026年は+1.1%成長と予想。2025年Q1は米関税引き上げ前の駆け込み輸出などから成長ペースが加速したとしている。仮に貿易摩擦が激化しなければ、ドイツの生産は2年のマイナス成長から小幅に増加する見通し。サブタイトルは「ドイツ経済の回復、しかし構造問題と米貿易政策が経済の重石に」としている。

[フランス] 

フランスでは2027年の大統領選挙に向けた前哨戦が始まっているが、今回はこれまでで最も予測が難しい選挙といわれている。唯一確かなことは、決選投票に進出する2人の候補者のうち1人は極右の国民連合(RN)党の候補者になるとみられていることだ。ただし、その候補者がマリーヌ・ル・ペン氏になるか、事実上のNO.2であるジョルダン・バルデラ氏になるかは定かではない。ル・ペン氏は横領の罪で5年の被選挙権が剥奪され、控訴しているものの事実上大統領選への立候補は難しいとみられている。極右以外を見てみても現在有力な候補者がおらず、2回目の投票に進出するもう1人の候補者は最後まで未知数となっている。

 

予測が不可能となっている要因は複数あり、政治への不満が広範に蔓延していることや、旧来の左右の対立構造が崩壊していること、マクロン大統領は再出馬できず後継者の選択にも影響を及ぼせないほど影響力が弱まっていることなどがあげられる。

 

候補者という観点では、主に中道と右派の与党連合の後継者は、中道右派「ホライズン」のフィリップ氏とマクロンが属する「再生」の党首であるアタル氏に加え、強硬派の「共和党(LR)」の党首に選出された内務大臣ルタイロー氏が挙げられ、与党連合を構成する4政党のうち3政党の党首が、マクロン大統領の後継者を決める予備選挙でのライバルとなる状況が生まれている。

 

マクロン大統領は、1年前の総選挙で敗北して以来、国内での影響力をほぼ失い、この重要な争いの中で影響力を行使する余地はほとんどない。さらに、フィリップ氏とルタイロー氏の両者は、マクロン大統領と距離をとり、シラク氏やサルコジ氏のような、社会的には保守的で経済的には自由主義的、欧州統合にあまり熱心ではない中道右派に近い政治体制を復活させることを目標に掲げるとみられる。

 

左派はさらに混戦状態で、かつては強大な勢力だった中道左派の社会党(PS)は、急進派と改革派、親欧州派に分裂したままであり、極左など左派全体では最大8人の候補が立候補する見込みとなっている。

 

極右のRNの支持率は依然として高く、ル・ペン氏/バルデラ氏の支持率は30%以上を獲得していると同時に、不支持率も47%から49%と非常に高く、勝利に必要な50%の得票率を獲得することは困難となっている。それでも万が一、極右で反欧州のフランス大統領が誕生した場合、国内政策に広範な影響が及び、これまでのような体制でのEUは存在しなくなる可能性がある。

[中国/米国] 

6月5日に米中首脳による電話会談が実施され、その後、英国ロンドンで行われた閣僚級通商協議により、米中間の通商摩擦は一時的に緩和された。これを受けて、対面による米中首脳会談がいつ実現するのかに注目が集まっている。

 

香港紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)』は、複数の中国側外交関係筋の話として、9月の国連総会に習近平国家主席が参加する可能性は低く、李強首相が出席する見込みであると報じている。

 

習主席が先に訪米する可能性は極めて低く、首脳会談が実現するとなれば、先立ってトランプ大統領が訪中することになるとの見方が示されている。時期としては、11月に韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の前後が有力であるが、それも現在進行中の貿易交渉の進展次第であるとされている。

 

電話会談後、トランプ氏は「習近平主席は私を中国に招待し、私も彼を米国に招待した。双方ともに承諾した。ある時点で夫人と共に中国を訪問することになるだろう」と述べた。一方、中国側の発表では「トランプ氏の訪中を歓迎する」との言及はあったものの、習主席の訪米に関する言及はなかった。

 

ある中国人識者は、中国が9月3日に開催予定の抗日戦勝80周年記念パレードにトランプ大統領を招待する可能性があるとしながらも、トランプ氏が実際に参加する可能性は低いとの見解を示している。

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