2025年6月2日 (月)
[ナイジェリア]
5月30日、米格付け大手ムーディーズはナイジェリアの長期外貨建て・現地通貨建て発行体格付けを「Caa1」から「B3」に引き上げた。また、見通しを「ポジティブ」から「安定」に修正した。
ムーディーズは、この格上げはナイジェリアの外部・財政状況の著しい改善を反映したものと説明。2023年5月に就任したボラ・ティヌブ大統領が実施した変動相場制への移行と燃料補助金の廃止は高インフレを招く政策となったが、結果として財政再建が進み、外貨準備(輸入の7か月分をカバー)が強化され、市場からの信頼回復をもたらしたと評価した。中銀(CBN)による金融引締め政策の継続によりインフレ率(4月は前年同月比+23.7%)は低下の兆候が見られており、2024年の基礎的財政収支は対GDP比で0.8%の黒字に転換するなどマクロ経済の見通しはポジティブな方向にあるとの見通しを示した。米格付け大手フィッチ・レーティングスも同様の理由から4月にナイジェリアの格付けを「B-」から「B」に引き上げている。
5月13日に世界銀行が発表した「ナイジェリア開発動向レポート」において、2024年通年の実質GDP成長率は3.4%で、過去10年で最も高い水準だと評価。主要産業である原油・ガス部門の成長に加え、金融・ICTセクターの成長が経済成長をけん引しているとした。他方で、2024年の推計で2億3,270万とアフリカ最大の人口を擁するナイジェリアは、人口の半数が18歳以下であり、2050年までに4億人を上回ると予測。しかし、労働力人口の増加が雇用創出能力を上回っていることから、現在の2倍の速度(6~7%)の経済成長を達成する必要があると指摘。若者が新たな雇用と生産性の高い収入機会を得るためには、政府・企業による人的資本への投資が必要であり、それが十分ではない場合は貧困のさらなる拡大や社会不安を招く恐れがあると警鐘を鳴らしている。
[ロシア/ウクライナ]
6月2日、ロシアとウクライナ両国は、将来的な和平に向けた2回目の直接協議を、トルコ・イスタンブールで行う予定である。今回の協議で、両国はそれぞれが準備した和平案を相手に文書で正式に提示する予定だが、双方の立場の隔たりは大きく、協議は難航が確実視されている。一方、ロシアとウクライナのドローン(無人機)による攻撃の応酬が激しさを増している中、ウクライナ軍は6月1日、東シベリアからモスクワ近郊にかけて、国内5か所の軍用飛行場を攻撃したもよう。
[インド]
2024/25年度(2024年4月~2025年3月)の実質GDP成長率は、前年度比+6.5%だった。前年度(+9.2%、改訂値)から減速したが、高い水準を維持し、2025年1~3月期の成長率は前年同期比+7.4%と2期連続で加速している。インフレは沈静化し、中銀は2月と4月に利下げを行っており、今後も内需の拡大が見込まれるが、米国の関税政策などにより財輸出は伸び悩む可能性が高い。2025/26年度の実質GDP成長率の見通しは、政府+6.5%、IMF+6.2%。
[米国]
商務省によると、4月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+2.1%だった。上昇率は3月(+2.3%)から縮小し、2024年9月(+2.1%)以来の小さな伸びになった。ここ1年弱を振り返ると、上昇率は2024年下半期に2.5%前後と一進一退の状況だったものの、ここ2か月連続で一段と鈍化して2%台前半で推移していた。
内訳をみると、食品(+1.9%)は3月(+2.0%)から小幅に縮小し、エネルギー(▲5.6%)は3か月連続の減少であり、3月(▲5.0%)からマイナス幅を拡大させた。財(▲0.4%)は2か月連続のマイナスであり、耐久財(▲0.3%)に加えて、非耐久財(▲0.4%)も6か月ぶりに低下した。特に、耐久財では、自動車・部品(+0.6%)が2か月連続のプラスになり、非耐久財では食料品(+1.9%)が3月(+2.0%)に続いて高めの伸びとなった一方で、ガソリン(▲13.1%)が2か月連続の2桁減少だった。なお、サービス(+3.3%)は、3か月ぶりに3%台前半の伸び率に落ち着いた。
物価の基調を見る上で注目されている食品・エネルギーを除くコア指数は+2.5%となり、3月(+2.7%)から縮小した。2021年3月(+2.2%)以来の小さな伸びだった。また、家賃・エネルギーを除くサービス(スーパーコア)は+3.0%と、3月(+3.3%)から縮小、これも2021年2月(+2.4%)以来の小さな伸び率だった。市場ベースのPCE物価指数は+1.9%、3月と同じであり、2か月連続で2%を下回った。物価の基調も落ち着きつつある状態を示している。
2月以降、中国やカナダ、メキシコへの追加関税、3月には鉄鋼・アルミニウム製品、4月に相互関税(基本税率)と自動車、5月に自動車部品への追加関税が実施されており、それらの影響は今後出てくるとみられる。足元にかけてFRBの目標2%に近付いていた物価上昇率がどの程度拡大するのか、また一過性の上昇で済むのかが注目される。
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