デイリー・アップデート

2026年1月23日 (金)

[中南米/米国] 

米国が強化している重要鉱物を確保する取り組みの一環で、2026年2月4日、マルコ・ルビオ米国務長官は初の「重要鉱物閣僚会議」を主催する予定となっている。この会議が特に南米諸国からも強い関心を集めており、アルゼンチンのパブロ・キルノ外相も1月21日に出席を確認し、戦略的サプライチェーンや投資分野で協力する意向を示した。

 

南米はリチウム、銅、レアアースなどの宝庫であり、対中依存からの脱却を目指す米国にとって、この会議は「西半球の結束」を再構築する決定的な場となる。アルゼンチン・ボリビア・チリの「リチウム・トライアングル」は世界のリチウム資源の約半分を占め、ペルーとチリは世界の銅生産の30%以上を占める。米国は、これら南米諸国を米国のサプライチェーンに深く組み込み、中国の影響力を排除することも狙いとしている。

 

南米諸国は、米国の投資意欲を歓迎しつつも、自国の主権や経済的利益を天秤にかける複雑な対応を見せている。南米諸国は、単なる「未加工鉱物の輸出拠点」になることを拒んでおり、現地での精製施設建設や技術移転も求めている。また、すでにペルーやブラジルなどインフラや鉱山には巨額の中国資本が投じられており、脱中国は短期的には経済的損失を意味する場合があり、その代替となる強力な金融、投資面での連携が必要となる。

 

特に、アルゼンチンはリチウムで世界第5位の生産国であり2025年には炭酸リチウム換算で13万800トンの生産が見込まれるほか、銅分野でも成長が期待されている。しかし、公表されている2025年1月から11月までの輸出データをみると、73%が中国向けであり、米国向けはわずか10%にとどまっている。中国企業は現地で強固な基盤を築いており複数のプロジェクトを進めている。親米色の強いミレイ政権でも中国とのつながりは強く、今後の方向性に注目が集まる。

 

米国の課題として、迅速に資金調達し、許認可を進め、加工能力の拡充を図り、中国が築いたエコシステムに対抗できるかどうかである。重要鉱物をめぐる地政学的競争は、今後さらに激化するだろう。

[南部アフリカ/モザンビーク] 

12月下旬から続く南部アフリカでの豪雨による洪水被害が拡大している。「国家災害」を宣言した南アフリカ(南ア)では、北東部のムプマランガ州とリンポポ州では計37人が洪水の犠牲になっており、被災者は約1万人に上る(1月22日時点)。南アを代表する野生動物保護区のクルーガー国立公園(日本の四国ほどの面積)も洪水で一時閉鎖を余儀なくされ、全面的な補修には約5年を要するとみられている。

 

南ア北東部に隣接するジンバブエでもこれまで70人以上の死亡が報じられており、洪水被害が地域レベルで拡大している。しかし、域内で最も被害が甚大なのが、豪雨が続く地域の下流にあるモザンビークだ。モザンビーク・国家災害管理庁(INGD)は、1月21日時点で死者は112人、洪水の影響を受けている総数は64万人を超えると発表している。被害は南部のガザ州が最も大きいとみられるが、首都マプトに隣接するマプト州、中部のソファラ州、ザンベジア州など国内の広範な地域に拡大している。ダニエル・チャポ大統領は「国家非常事態宣言」を発表し、スイスでのダボス会議の出席を急きょ取りやめるなど災害対応を進めているが、すでに総延長5,000kmに上る道路・橋梁が洪水により破壊されており、避難や救援活動を困難にしていると指摘されている。また、ユニセフは洪水後の感染症の拡大にも警鐘を鳴らしている。

 

今回の南部アフリカの異常豪雨は、低速で移動する低気圧の停滞が繰り返し(インド洋からの)湿気を呼び込んでいるためとみられているが(1月16日付、英The Guardian紙)、雨季は例年3月まで続くほか、サイクロン(熱帯低気圧)の襲来時期と重なっていることからさらなる被害の拡大が懸念される。

 

また、この大規模な洪水はモザンビークへの中長期的な経済見通しにも影響を与える可能性がある。財政難に苦しむモザンビークは、国際通貨基金(IMF)と新規の財政支援プログラムの交渉を行っている最中だが、IMFからは財政赤字の軽減努力を求められている。しかし、そのような中で起きた今回の洪水は、災害対応・復興のための財政出動をさらに拡大させ、同時に税収を減少させる要因となり得る。ユーラシア・グループは、洪水による財政赤字拡大の不安から、IMFとの交渉が複雑化・長期化するとの見通しを示している。

 

さらにモザンビークでは、政府にとって重要な外貨獲得源となっているアルミ精錬工場「Mozal」が電力調達に関する交渉難航により、3月に操業停止することが決まっている。また、仏資源大手トタル・エナジーズが率いる北部カーボ・デルガード州の「モザンビークLNG」プロジェクトは、2025年10月に不可抗力宣言が解除されたが、プロジェクト停止期間に生じた45億ドルの損失の政府負担に関して政府と事業者間でまだ折り合いがついておらず、本格的な工事再開に至っていない。IMFとの交渉が長引く中での外貨収入の減少や遅延は、GDP成長率が2.5%(2025年)と低迷する経済をさらに疲弊させる恐れがある。

 

一人当たりGDPが656ドル(世界銀行、2024年)と、アフリカの中でも最も低開発なモザンビークは、目の前に迫る自然災害への脆弱性と、中長期的な安定した経済成長を描き切れないといった2つの大きな課題に直面している。

[米国/パレスチナ] 

トランプ大統領が主導する「平和評議会(Board of Peace:BoP)」をめぐり、国際社会の反応は明確に分極している。21日付の共同声明で、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、カタール、エジプト、トルコ、パキスタン、インドネシアの8か国は、招待を受諾しBoPへの参加を決定したと発表した。声明では、トランプ主導の和平努力を支持し、BoPが国連安保理決議2803号に基づき、ガザ紛争の終結と復興を担う移行期の枠組みであり、国際法に則ってパレスチナ人の自決権と国家建設を通じた恒久和平を目指すものだと位置づけている。今後は各国で必要な法的・制度的手続きが進められる見通しだ。

 

一方で、多くの招待国が即時参加を躊躇(ちゅうちょ)している背景には、BoPの憲章が国連を迂回、あるいは代替する制度として設計されているのではないかとの懸念がある。実際、全11ページ・13条から成る憲章にはガザへの直接的な言及がなく、平和評議会の権限や位置づけが不透明だとの指摘が出ている。日本を含む複数の主要国は態度を明確にしておらず、慎重な見極めを続けている。

 

欧州では不参加の動きが目立つ。複数の国が、単一国家の指導者が主導する枠組みへの参加は憲法や外交原則と整合しないと判断したほか、ロシア指導部が同じ枠組みに招かれていることへの反発も強い。結果として、招待対象となっている約60か国のうち、参加表明国は米国やイスラエルを含む26か国、不参加を明確にした国は主に欧州の8か国、態度未定は日中印露などを含む約30か国に上っている。

 

1月22日にはスイス・ダボスで、世界経済フォーラム(WEF)に合わせてBoPの調印式が行われ、トランプ大統領と関係の深いアルゼンチンのミレイ大統領やハンガリーのオルバン首相、アルメニア首相、アゼルバイジャン大統領のほか、中東諸国を中心に約20か国の代表が参加した。BoPは一定の地域的支持を得た一方で、国際秩序との関係や正統性をめぐる疑念を抱えたまま発足した形であり、今後の実効性と持続性は各国の関与の広がり次第となる。

[EU] 

1月22日、欧州議会において、極右会派が提出したフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長に対する不信任動議が圧倒的多数で否決(反対390、賛成165、棄権10)した。

 

本動議は、農家や市民の反対を押し切ってメルコスールとの自由貿易協定を推進したことは、「その権限を超えた政策だった」との主張により提出されたもの。抗議活動を行う農家からは辞任を求める声が上がっていたが、中道、左派勢力も本動議には賛成せず、右派以外からの支持はほぼ集められなかった。

 

フォン・デア・ライエン委員長にとって今期4度目となる今回の信任投票は、前回を上回る支持を得る結果となり、議会内での強固な基盤を改めて示す形となった。

[日本/米国] 

日本の物価について、総務省によると12月の消費者物価指数(総合)は前年同月比+2.1%だった。上昇率は11月(+2.9%)から縮小したものの、2022年4月以降45か月連続で2%を上回っている。物価の基調を表す生鮮食品を除く総合(コア指数)は+2.4%、11月(+3.0%)から縮小、3か月ぶりに3%を下回った。生鮮食品とエネルギーを除く総合(コアコア指数)は+2.9%、11月(+3.0%)から小幅に縮小、3月以来の3%割れになった。ただし、物価の基調も、2%を上回った状態が続いている。

 

内訳を見ると、エネルギー(▲3.1%)が、11月(+2.5%)から4か月ぶりにマイナスに転じた影響が大きかった。これが物価上昇率を0.44pt押し下げた計算になる。電気代(▲2.3%)や都市ガス代(▲3.9%)に加えて、ガソリン(▲7.1%)が11月(▲0.9%)から下落幅を拡大させた影響が大きかった。これは、暫定税率廃止に向けた移行措置の補助金拡充の影響による。その他では、生鮮食品が▲2.7%と11月(+1.5%)から下落に転じた影響などから、食料(+5.1%)が11月(+6.1%)から上昇率を縮小させた。ただし、サービス(+1.4%)に比べて財(+2.7%)が物価上昇のけん引役という構図が続いている。

 

米国の物価について、米商務省によると11月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+2.8%だった。上昇率は10月(+2.7%)から拡大し9月と同じだった。4月(+2.3%)を直近の底にして緩やかに拡大している。また、物価の基調を表す食品とエネルギーを除いたコア指数は+2.8%となり、10月(+2.7%)から拡大し9月と同じだった。上昇率は4月(+2.6%)から拡大、2.7~2.9%で推移しており高止まりしている。

 

内訳を見ると、食料品(+1.9%)は10月(+2.2%)から縮小し7月以来の2%割れになった。エネルギー(+4.1%)は、10月(+2.2%)から拡大、3か月連続のプラスになった。財(+1.4%)は、10月(+1.3%)から拡大し9月と同じだったものの、1%超は3か月連続だった。そのうち、耐久財(+1.2%)が10月(+1.0%)から拡大、家具・家庭用品(+2.5%)が5か月連続2%を上回り、その他の耐久財(+2.8%)も上昇した。自動車・同部品(+1.9%)は、4か月ぶりに2%を下回った。非耐久財(+1.6%)も10月(+1.4%)から拡大し、3か月連続で1%を上回った。食料品が2%を下回った一方で、ガソリン(+1.5%)が18か月ぶりにプラスに転じた影響が大きかった。また、サービス(+3.4%)は、10月(+3.3%)から拡大し、9月と同じだった。ここ1年は、3%台半ばを推移している。

[カザフスタン] 

1月20日、トカエフ大統領は、国民クルルタイ(大統領直属の諮問機関)の年次総会で演説し、2025年9月に自ら提案した大規模な憲法改正と統治体制の改革の詳細について説明した。主な改革案には、現行の二院制から一院制への移行、副大統領職の新設、完全な比例代表制の導入などが含まれる。改正案は2027年の国民投票で最終的に決定される予定である。

 

これらの改革は、ナザルバエフ前政権の影響を取り除く「脱ナザルバエフ化」を完遂し、行政の効率化を図る狙いがあるとされている。また、トカエフ大統領は2029年に任期満了を迎えるが、権力移行の枠組みを整備し、自らの統治モデルを確立することで、2029年以降の体制安定を意図しているとの指摘もある。

[韓国] 

1月22日、韓国で人工知能(AI)の発展と信頼基盤の構築を目的とする「AI基本法」が施行された。AIを包括的に規制・支援する法律としては世界で初めてであり、欧州連合(EU)のAI法に先行する形で全面施行に踏み切った点が国際的にも注目されている。

 

AI基本法は、AI産業の振興とリスク管理の両立を掲げる。政府は3年ごとにAI基本計画を策定し、国家人工知能戦略委員会を中核に研究開発、データ基盤整備、人材育成、スタートアップ支援、海外展開支援などを進める。一方で、ディープフェイクや虚偽情報、人権侵害といった弊害を防ぐため、安全性と信頼性を確保する制度を整備する。

 

規制の柱は「高影響AI」「高性能AI(フロンティアAI)」「生成AIの透明性確保」の3点だ。高影響AIとは、エネルギー、交通、医療、金融など人命や権利に大きな影響を及ぼす分野で用いられる完全自動化システムを指し、人間による監督体制やリスク管理措置を義務づける。現時点で該当するのはレベル4以上の完全自動運転車に限られるが、将来的に対象が拡大する可能性がある。

 

また、生成AIについては、実在と誤認され得るコンテンツにはAI生成であることを明示する表示を求め、その他についてもメタデータによる表示を認める。違反した場合の過料は最大3,000万ウォンとされるが、刑事罰は設けられていない。

 

政府は産業界への影響を考慮し、事実調査や過料賦課を少なくとも1年間猶予する期間を設け、相談や教育を重視する方針だ。しかし、規定の曖昧さや法令の複雑さから、中小企業やスタートアップを中心に「萎縮効果」を懸念する声も根強い。韓国政府は支援センターを設置し、運用を通じて制度を調整していく考えで、AI基本法は完成形ではなく、議論を継続するための出発点と位置づけられている。

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