2026年1月29日 (木)
[ロシア/シリア]
1月28日、ロシアのプーチン大統領は、モスクワを訪問したシリアのシャラア暫定大統領と会談した。ロシアは2024年12月に崩壊したシリアのアサド旧政権を支持してきたが、暫定政権とも協力強化を目指しており、シリアでのロシア軍駐留継続などを協議したとみられる。シャラア氏がモスクワでプーチン氏と会談するのは2025年10月に続き2回目。
一方、シリア関係者の話として、ロシア軍が2019年から駐留してきたシリア北東部カミシュリの飛行場から軍関係者を撤収させていると報じられた。シリア暫定政権がカミシュリ周辺の支配権をクルド人勢力主体の民兵組織シリア民主軍(SDF)から奪還したことを受け、ロシアは軍事的な存在感を終結させる動きを見せているという。
[中国/英国]
1月8日、スターマー英首相は中国に到着し、4日間の訪中日程を開始した。スターマー氏にとって就任後初めての中国公式訪問であり、北京と上海を訪問する予定。
英首相の訪中は2018年のメイ政権以来8年ぶりで、スターマー氏は冷え込んでいた中英関係を「一貫性と現実主義」に基づき再構築するとしている。スターマー氏は到着にあたり、中国は英国にとって第3位の貿易相手国であり、37万人の雇用を支える重要な存在だと強調。「黄金時代から氷河期へと揺れた過去の不安定な対中政策を改め、国益に即した実利的な関係を築く」と述べた。
訪問には約60の英国企業・文化機関が同行し、金融、自動車、ライフサイエンス、創造産業などでの市場アクセス拡大を中国側に働きかける。2025年の中英経済金融対話で6億ポンドの成果を得た流れを引き継ぎ、通商・投資面での具体的利益を追求する構え。一方で首相は、経済協力と引き換えに国家安全保障を損なうことはないと説明し、人権や安全保障など意見の異なる問題についても「率直で開かれた対話」を行うとしている。
英紙などによれば、英国内における中国によるスパイ活動や人権問題への懸念の声から、首相団は安全対策を徹底している。英国内では、野党・保守党から「対中融和」との批判も出ているが、スターマー氏は「中国を無視することは現実的ではない。協力できる分野では協力し、必要な場面では競争し、挑戦する」と主張している。米国との同盟を維持しつつ、中国とも実務的に向き合う姿勢は、変動する国際秩序の中で英国が取るべきバランス外交の試金石となりそうだ。
[米国/イラク]
イラクで次期首相候補として再浮上しているマリキ元首相をめぐり、国内外で緊張が高まっている。75歳のマリキ氏は、シーア派イスラム主義政党ダアワ党の重鎮で、2006~14年に2期8年にわたり首相を務めた人物である。在任中はスンニ派やクルド勢力との権力闘争を激化させ、治安悪化と政治的分断を招いたほか、対米関係の悪化やイランとの関係深化でも知られる。2014年にイスラム国(IS)が台頭すると、米国の圧力もあり退陣したが、その後も「法治国家連合」を率い、イランが支援するシーア派勢力との強固な関係を維持してきた。
1月24日、議会最大勢力であるシーア派連合「調整枠組み(CF)」がマリキ氏を次期首相候補として指名したことで、事態は新たな局面に入った。これに対し、トランプ米大統領はSNSで、マリキ氏の再登板は「イラクを再び貧困と混乱に陥れる」と強く批判し、仮に就任すれば米国は支援を停止すると警告した。イラクの石油収入の多くが米国の金融システムを通じて管理されている現状を踏まえれば、これは実質的な強い圧力と受け止められている。
トランプ発言はイラク国内でも波紋を広げた。バグダッドでは米国の内政干渉に抗議するデモが発生し、シーア派各派も相次いで声明を発表した。多くの勢力は「首相選出は純粋にイラクの主権事項」として外部介入を拒否する姿勢を示す一方、スーダーニ首相に近い穏健派などは、国際的孤立や支援喪失を避ける必要性にも言及している。CF内部でも、マリキ氏支持を貫くべきか、代替候補を模索すべきかで意見が割れており、調整は難航している。
マリキ氏本人はトランプ発言を「露骨な主権侵害」と断じ、立候補継続を表明した。今回の混乱は、イラク政治が依然として米国とイランという外部要因に強く左右される現実と、主権をめぐる国内世論との緊張関係を改めて浮き彫りにしている。次期政権の行方は、国内安定のみならず、対米関係や国際的立ち位置を大きく左右する試金石となりそうだ。
[欧州]
1月28日、欧州委員会は、合計14の国際エネルギーインフラプロジェクトに対し、「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ(CEF)」プログラムから約6億5,000万ユーロの助成金を割り当てることを発表。この資金提供案は今後数週間以内に正式な授与決定が採択される予定。今回の公募は2度目となるが、当初の予算目安であった6億ユーロを超える規模となった。
助成金の内訳は、6件の電力インフラプロジェクト(スマートグリッド含む)に約4億7,000万ユーロ、水素インフラプロジェクト8件に1億7,600万ユーロ超が配分される。主な支援対象として、スペインのAGUAYO II揚水発電所建設に最大額の1億8,000万ユーロ、ドイツのGronau-Epe水素貯蔵施設建設に1億2,000万ユーロ、ポーランドおよびバルト三国の重要インフラ保護に約1億1,300万ユーロが充てられる。
この決定の背景には、エネルギー安全保障の強化、再生可能エネルギーの統合、および脱炭素化の推進というEUの重要政策目標がある。欧州委員会は「欧州送電網パッケージ(European Grids Package)」に基づき、相互接続性を高めることでエネルギー価格の抑制と自立性の確保を目指しており、特に今回の投資は、物理的およびサイバー上の脅威への防御強化や、初期段階にある水素市場の拡大を意図している。また、老朽化したグリッドインフラは、風力や太陽光発電に対応するための柔軟性、容量、デジタル制御等を欠いており、電力業界から問題視する声が高まっている。
[欧州]
欧州自動車工業会の販売統計によると、2025年12月に欧州でバッテリー式電気自動車(BEV)の販売台数がガソリン車を初めて上回った。2025年通年のデータでは、ガソリン車が依然として26.6%のシェアでトップを維持しているが、BEV(電気自動車)は販売の17.4%を占めている。もっとも、ハイブリッド車が全体で最も人気が高く、2025年の欧州販売全体の34.5%を占めている状況だ。
示唆に富む数字はガソリン車の登録台数が18.7%減少したことだろう。主要市場すべてで減少が見られたと報告されている。ディーゼル車は一段と深刻で、登録台数は24.2%減少し、2025年のシェアはわずか8.9%に留まった。この動きは、欧州や英国の一部ガソリンスタンドが早ければ2030年にもディーゼル燃料の販売を停止する可能性があるという最近の報道の裏付けともなる。
欧州連合がガソリン車販売禁止の期限を2030年から2035年に延期したにもかかわらず、電動化への移行は確実に進行している。欧州では先月だけで30万台以上のEVが販売されている。技術系メディアのTechradarはEV販売増加の理由として3つ挙げている。まず、欧州は中国やアジア市場に次ぐ豊富なEVの選択肢があること。既存の自動車メーカーですら、コンパクトEVから7人乗りSUVまで全車種をラインアップしている。次に欧州でのモデル選択肢の急増と並行して、EVのコストも大幅に低下したこと。小型で手頃な価格の電気自動車が市場に投入されている。例えば、最も売れ筋であるルノー5 E-Techのようなモデルは、英国では23,000ポンド(32,000ドル)から販売されている。同様に、BYD、Omoda、Jaecoo、Leapmotorなどの中国ブランドも、すべてヨーロッパ市場に参入し、EVを手頃な価格で提供している。そして、故障リスクの高い複雑な機械部品が大幅に少ないEVは、手頃で信頼性の高い中古車購入選択肢としてますます注目されており、これが特に重要な点としている。EVの製造には多大なエネルギーを要するため、社会に対する温暖化ガス排出量を埋め合わせするにはより長距離を走り、長く使う必要がある。特に、エネルギー供給業者が再生可能エネルギーを供給するオフピーク時間帯に定期的に充電する場合、環境負荷が軽くなる傾向が顕著となるとしている。さらに、バッテリーパックの寿命終了時にその大部分をリサイクルできる点を加味すると、EVは寿命が尽きる段階に至っても、依然として説得力のある選択肢として存在意義を発揮すると結論付けている。
[米国]
1月27~28日、連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利(FF金利)の誘導目標レンジを3.50~3.75%に据え置くことを決定した。判断は10対2と割れた。反対したウォラー理事とミラン理事は0.25%の利下げを主張した。なお、ミラン理事は就任後、4会合連続で利下げを支持している。2025年9月から12月にかけて3会合で計0.75%の利下げを実施した後に、据え置いた。これまで2024年9~12月に計1%、2025年9~12月に計0.75%の合計1.75%の利下げを実施してきた。
パウエル議長は記者会見で、「経済はその力強さで、再び我々を驚かせた」と述べた。経済活動の見通しは前回から明らかに改善しており、物価の上振れリスクと雇用の下振れリスクは後退した。また、追加利下げの必要性を見極める上で「よい位置にある」という認識が示された。政策は、おそらく緩やかに中立的な、幾分引き締め的になっていると評価された。
なお、パウエル氏にとっては、刑事捜査の対象になり、1月11日にメッセージを公表してから初めての記者会見だった。1月11日には、刑事捜査を政治的圧力と批判していた。今回の会見では、 「詳しく説明したり、繰り返したりしたくない」と述べるにとどめ、中銀の独立性を失えば、「信頼回復が困難になる」と指摘した。また、クック理事解任を巡って、「FRBの113年の歴史の中で最も重要な事件の1つ」とした上で、口頭弁論に「出席しない理由を説明するのが難しい」と述べた。
声明文では、経済・物価の現状について、「利用可能な指標が示唆するように、経済活動が堅調に拡大してきた」として、前回2025年12月の「緩やかに」から上方修正された。また、「雇用創出は低水準にとどまり、失業率は安定の兆しをいくらか見せた」と、後半部分で判断を上方修正した。一方で、「物価上昇率は幾分高止まりしている」としており、前回とおおむね同じ評価だった。また、「二大責務の両面のリスクを注視している」としており、前回まで3回連続で記された「最近の雇用の下振れリスクの高まりを判断する」という雇用の下振れリスクへの言及が削除された。
金融政策について「その目標を支援するために、委員会は政策金利の据え置きを決定した」と述べ、前回の「リスクバランスの変化の観点」いう表現はなくなった。基本的な姿勢は維持されており、「政策金利目標の追加的な調整幅や時期を考える際、入手する経済指標、進展する見通し、リスクバランスを注意深く評価する。委員会は雇用の最大化と2%目標への物価の回帰を強く確約している」となっており、追加利下げなどについて、明確に言及していない。
[中国]
1月28日、中国国家能源局が発表した「2025年全国電力統計」によると、中国の発電設備容量は2025年末時点で3,891.34GW(38億kW強)となり、前年比+16.1%と大きく増加した。
内訳: 総発電容量 3,891.34GW 前年比+16.1%
うち 水力 448.02GW +2.9%
火力 1,539.04GW +6.3%
原子力 62.48GW +2.7%
風力 640.01GW +22.9%
太陽光 1,202.73GW +35.4%
全国送電損失率 4.23% (前年比▲0.13%)
全国発電設備率利用時間 3,119時間(▲312時間)※6,000kW以上の発電設備の累積平均稼働時間
太陽光+風力発電容量が合計で1,842GWとなり、火力発電容量を初めて上回った。設備利用時間の低下は、再エネ急増に伴う大型電源(火力・水力)の稼働減少が示唆される。また、送電損失率改善は超高圧送電網(UHV)拡張、電力網投資増強などが寄与したものとみられる。
Bloombergは今回の統計について大きく2つの点を指摘。①中国が2025年単年で新設した発電容量543GWは、2024年末時点のインドの総発電設備容量を12%上回る(注:日本の総発電設備容量は約300GW)。2021年末以降に中国は1,515GWを新規増設しており、4年間に米国電力システム全体を上回る規模の容量を増設したとしてその規模感を伝えている。②エネルギー産業競争力の観点から米中を対比。中国は安定的かつ豊富なエネルギー供給を確保し、輸入燃料依存を減らし、AI・ロボティクス製造・先進材料など、エネルギー多消費産業に競争優位をもたらすことを目指している。一方、米国では安価な電力供給が不足しつつあり、これら成長産業の発展が制約される可能性が懸念されるとしている。
[ブラジル]
ルーラ大統領は依然として次期大統領選挙で有力候補とみなされているが、汚職スキャンダルに関連する潜在的なリスクは残っている。ブラジルの複数メディアは、ルーラ大統領がブラジルの史上最大級の銀行不正事件に発展しているマスターバンクのオーナーであるダニエル・ヴォルカロ氏と面会していたと報じた。面会は銀行が2025年11月に清算される約11か月前に行われたとされている。また、マスターバンクは当時の司法大臣リカルド・レヴァンドフスキ氏の親族が率いる法律事務所と契約を結んでおり、この点も政治的な注目を集めている。
大統領と銀行重役の会談自体は日常的におこなわれており、現時点では、ルーラ大統領の不正への関与を断定するのは時期尚早であるとの意見が多い。それでも、今回の面会は公式議事録に記載されておらず、透明性への疑念が生じているのも事実となっている。ヴォルカロ氏とルーラ大統領の間に直接的な利害関係は確認されておらず、政治的な影響は限定的にとどまる可能性が高いものの、銀行家とレヴァンドフスキ前大臣との親しい関係が報じられ続ける限り、この問題は世論の関心を引き続けるとみられる。
一方で、汚職疑惑に関する捜査が強まれば、有権者の間に不信感が広がり、ルーラ大統領にとって大統領選挙への逆風となる可能性もある。また、マスターバンク事件を担当する最高裁判事トフォリ氏について利益相反の疑いが指摘される中、野党候補や保守層は司法の公正性を問題視し、政治対立がさらに先鋭化する恐れもある。
議会においては、マスターバンクを巡る調査委員会(CPI)設置を求める動きが複数の議員から提起されている。しかし、アルコルンブレ上院議長はCPI設置に慎重であり、実現する可能性は現時点では高くないとみられている。CPIが設置されれば政界の幅広い関係者が調査対象になり得るため、多くの政治指導者が調査の拡大を避けようとしているためだ。それでも、議会の休会が明け再開すれば、野党勢力を中心に圧力が再び強まることは避けられない。
仮にCPIが設置されない場合でも、上院の経済問題委員会(CAE)が調査の中心的役割を担うとみられている。CAEのカルヘイロス議員は、マスターバンク事件を監視するための作業部会をすでに立ち上げている。この作業部会は当局者の召喚や資料の要求、さらには監督強化に向けた法案提出も可能であり、CPIがなくても問題が政治的に拡大する余地は十分にある。
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