デイリー・アップデート

2026年1月27日 (火)

[パキスタン] 

1月26日、中銀は政策金利の据え置き(10.5%)を決定した。中銀は2024年6月以降、インフレ低下を踏まえて2025年12月までにかけて合計11.5%の利下げを実施してきた。ロイター通信によるエコノミストへの事前調査では、利下げを予想する声が多数とのことであったため(ロイター通信、1月26日付記事)、市場予想に反することになる。中銀は、足元で景気が回復傾向にあることなどを踏まえて据え置きを決定したと表明している。

 

同国のマクロ経済情勢は足元で改善が進んでいる。実質GDP成長率に関し、2025年度(2024年7月~2025年6月)は3.0%(IMF推計値)と2024年度(2.6%)の水準から微増した。背景にはインフレ率低下により民間消費が堅調に推移したことや、ルピー安の一服も踏まえて製造業の生産量が回復したこと等が挙げられる。

 

インフレ率に関しても、2022年6月以降は洪水による農作物収穫量減少が食料品価格高騰につながったほか、洪水発生により対外債務不履行懸念が上昇したことで20~30%台と高水準で推移し続けていたが、その後は中銀による利上げなどを踏まえて2025年12月時点で5.6%と終息傾向にある。

 

外貨繰りについても、経常収支は慢性的に赤字である一方で資本流入が十分でないために外貨準備高は低水準で推移していた。2024年9月に、パキスタン政府・IMFは3億2,000万SDR(約70億ドル)の追加融資プログラム(拡大信用供与措置「EFF」、期間37か月)に合意し、これまでに合計約20億ドル分の支援が実施されている。本プログラムの下で、歳入拡大策実施など財政健全化が進んでいるほか、銀行を介さない非公式ルートでの郷里送金の取締を強化したことで経常収支が改善。外貨準備高は1月16日時点で161億ドルと2023年度末の水準から約3倍まで増加している。

 

結果、ルピーの対ドルレートも直近では1ドル275ルピー近辺にて安定推移するなど、2022年以降継続してきたルピー安にも歯止めがかかっている。

 

今後の見通しに関し、IMFは2026年度の実質GDP成長率は製造業・サービス業の伸びがけん引し3.2%と回復が続くほか、2027年度以降も4%以上の成長が続くと見込まれている。今後もIMFプログラムを履行し続け、追加の支援を受けられるかどうかに注目が集まる。

[米国/韓国] 

1月26日、トランプ米国大統領は自身のSNS・Truth Socialを通じ、韓国製自動車や木材、医薬品、および「相互関税」の対象品目に対する関税率を現在の15%から25%へ引き上げると表明した。2025年に妥結したばかりの米国・韓国間の貿易・投資合意について、韓国国会がその承認を遅らせていることが理由だとしている。

 

米国と韓国は2025年7月に、韓国による3,500億ドル規模の対米投資と引き換えに、米国が韓国製自動車等への関税を25%から15%に引き下げる「韓米戦略的貿易と投資協定」に合意した。トランプ氏は同年10月の訪韓時にも、李在明(イ・ジェミョン)大統領とその条件を再確認している。

 

米国側は2025年12月、関連法案が韓国国会に提出されたことを受けて関税引き下げを遡及適用したが、トランプ氏は今回、「韓国国会が合意を守っていない」と批判。投資履行に必要な「韓米戦略的投資管理のための特別法案」が国会で停滞している現状に、関税引き上げを示唆した形となっている。今回の発言が直ちに関税引き上げとして発効するのか、それとも韓国国会に圧力をかけるための交渉カードにとどまるのかは不透明だ。

 

また韓国内では、トランプ氏が挙げた承認遅延以外にも、米国の韓国に対する不満が今回の関税引き上げの背景にあるのではとの見方もあるようだ。一つは、韓国国会で可決された「情報通信網法改正案」や「オンラインプラットフォーム規制法案」が米国企業を標的にしているとして、米国側は不満を募らせていること。もう一つは韓国ネット通販大手クーパン(親会社は米国に存在)で発生した個人情報流出事件に対し、韓国政府が追及を強めていることについて、米国政界からは「米国企業への差別」との声が上がっていることなどが報じられている。

 

今回のトランプ氏の発信を受け、韓国財務省は法案の早期成立を国会に働きかけるとみられるが、今回の措置が実際に発動されれば、日本や欧州など、同様の貿易合意を結んでいる他の同盟国にも大きな動揺が広がるとみられる。

[日本] 

日本銀行によると、2025年12月の企業向けサービス価格指数(総平均)は前年同月比+2.6%だった。上昇率は10~11月(+2.7%)からやや縮小し、3か月連続で2%台後半になった。2025年上半期には3%台前半だったため、やや勢いを失いつつある。

 

内訳を見ると、情報通信(11月前年同月比+2.9%→12月2.7%)、リース・レンタル(+2.0%→+1.6%)などが上昇率を縮小させた。また、諸サービス(+3.5%→+3.4%)のうち宿泊サービス(+13.3%→+10.9%)の縮小が目立った。

 

また、原材料に占める人件費の多い産業を整理した高人件費率サービスは+3.0%と11月と同じだった。その一方で、低人件費率サービスは+2.3%となり、11月(+2.5%)から縮小した。2022年からの物価高騰局面の初期には歩調を合わせていたものの、2024年下半期ごろから乖離(かいり)が目立つようになった。これは、国内企業物価指数の上昇ペースが一時より縮小するなど、モノの価格上昇鈍化が反映された一方で、賃上げの継続などから人件費の上昇率の高止まりが継続していることを反映しているのだろう。

 

なお、12月の企業向けサービス価格指数の前月比は0.0%であり、11月(+0.3%)から減速した。減速は2か月連続だった。

 

2025年通年の企業向けサービス価格指数(総平均)は前年比+3.0%、2024年(+3.2%)に続いて3%台を維持した。2013年(ゼロ%)以降、前年比プラスが継続している。ただし、コロナ禍前は消費税率引き上げを除くと1%弱と足元の状況とは異なっている。実際、上昇率は2021年に+0.8%、2022年に+1.5%、2023年に+2.2%、2024年に+3.2%と4年連続で拡大してきていた。

[チリ] 

1月20日、3月11日に就任するカスト次期大統領が内閣人事を発表した。カスト氏は自らの政権を「緊急政府」と位置づけ、犯罪対策や不法移民の取り締まり、そして停滞する経済成長の再活性化を最優先課題として掲げている。さらに、チリでは南部で大規模な山火事が発生し、広範囲に甚大な被害が及んでおり、復興対応も政権の大きな課題となっている。

 

選挙後の世論調査では、国民の多くが新政権の主要分野における改善を期待している。銅価格の上昇や投資回復、犯罪率の安定などは政権に追い風となる一方、カスト政権は就任直後から迅速な成果を求められ、議会承認を要しない短期的な施策に重点を置く可能性が高い。

 

しかし、企業からは、新政権が財政制約と経済政策の両立を図れるかどうかについて懸念が示されている。また、退任するボリッチ政権と同様に政治経験の不足が不安視される。チリでは2028年10月の地方自治体・地域知事選挙までは大きな選挙が予定されておらず、政治的には一定の安定が続く見込み。

 

今回発表された内閣は24人で構成されており(25省庁だが経済大臣が鉱山大臣を兼任)、主要閣僚は、極右の社会キリスト教党や保守色の強い共和党、保守連合チリ・バモス(CV)などカスト氏を支持した党から選出された。一方で、全24人中16人が無所属であり、これはカスト氏が党派ではなく個人的な忠誠を重視した結果とみられるが、政治経験や人脈の弱さが懸念されている。

 

経済成長を任期中に4%へ引き上げるという公約の実現には、治安対策の強化と不法移民の取り締まりが不可欠である。しかし、不法移民対策では、不法ベネズエラ移民の帰還を目的とした「人道回廊」構想はペルー政府の反対で実現が困難となっている。

 

財政面では、銅価格上昇という追い風を受けつつも、法人税引き下げと財政赤字抑制、社会プログラム削減なしで60億ドルの歳出削減という難題に直面している。また、経済面では、規制簡素化を通じた投資促進が計画され、中央銀行は2026年の投資が7%増加すると予測している。

 

さらに、南部の山火事は20人以上の死者、800棟を超える建物の焼失という大きな被害をもたらしており、財政に負担がかかる一方、迅速な復興を進めることで政権支持を高められるかにも注目が集まる。

[タンザニア] 

1月26日、タンザニア政府高官が同国南部で計画されている「タンザニアLNGプロジェクト(TLNG)」について、6月までに事業者と政府間の契約を締結できる見込みを示したと英・ロイター通信が報じている。

 

TLNGはタンザニア南部の深海にある推定埋蔵量35~45兆立方メートル(Tcf)の天然ガスを、港町リンディに建設する陸上施設で液化するプロジェクトで、年間1,000万トンの生産が見込まれている。現在サブサハラ・アフリカ(サブサハラ)では複数のLNGプロジェクトが稼働・計画されているが、実現すれば、「ナイジェリアLNG(NLNG)」の年産約3,000万トンに次ぐ大型プロジェクトとなる。

 

タンザニアの深海ガス田は1970年代に発見されていたが、国内政治や商業性等の理由から具体的な進展がなかった。2000年に入ってから、英BG(その後、Shellが買収)と、ノルウェー石油会社Statoil(その後、Equinorに社名変更)がガス田の権益を取得し、開発を進めようとしてきたが(注)、2015年に就任した故・マグフリ大統領が「資源ナショナリズム」の動きを強化。就任直後に国内の石油・ガス資源の国営石油会社(TPDC)の管理を強め、ローカルコンテンツの義務化を定めた「2015年石油法」を制定したほか、政府のロイヤルティ収入を引き上げる「2017年金融法」、権益の政府持分比率をフリーキャリー(政府負担なし)で引き上げる「2019年天然資源管理法」を相次いで採択するなどEquinorら国際石油会社(IOC)にとって不利な制度改正を続けてきた。こうした法律改正による商業性の見通しの悪化により、Equinorは同社のポートフォリオ平均損益分岐価格である40ドル/バレルを上回ったとし、2021年に9億8,000万ドルの減損処理を行っていた。

 

しかし、同年にマグフリ大統領が急逝(新型コロナ感染による肺炎が死因とみられている)。副大統領から大統領に昇格したサミア・ハッサン大統領はEquinor、ShellらIOCによるプロジェクト推進に協力的で事業者との対話を継続してきた。交渉の最大の争点は、マグフリ時代に改正された法制度に基づく「生産分与計契約(PSA)」の見直しとみられている。このPSAや、タンザニア史上最大となる大型LNGプロジェクトの法制度の枠組み等を定めた「ホスト国政府協定(HGA)」の締結をEquinorら事業者は「最終投資決定(FID)」の条件としている。今回、タンザニア政府高官が発表した「契約」はこのHGAを指しているとみられており、仮に6月までに締結されれば、その後詳細な商業・財務・技術評価を経てFIDが行われ、早ければ2029年に生産が開始される見込みだ。タンザニア南部に隣接するモザンビーク北部では、推定埋蔵量約160Tcfと、TLNGの約3倍の規模の大きな天然ガス田があり、すでにイタリアの石油ガス会社ENIらが年間約350万トンのLNGを洋上浮体液化施設(FLNG)から輸出している。トタル・エナジーズらの「モザンビークLNGプロジェクト(年間約1,300万トン)」は一部着工が行われ、エクソンらの「ロブマLNGプロジェクト(年間約1,800万ドル)」もFID待ちの状況だが、国内の治安・政治情勢によりプロジェクトは遅滞していることからTLNGの方が先に生産開始する可能性はある。

 

一方で、タンザニアでも権威主義的な態度が強まるサミア政権下で政治的な不安も高まっている。2025年10月に実施された大統領選では、野党支持者らの抗議活動が治安当局により徹底的に弾圧され、少なくとも数百人が死亡したとみられている。この大規模な人権侵害を受けて欧州連合(EU)は11月にタンザニア向けの援助の停止を決定。米・国務省も12月にタンザニアとの関係を「見直す」と発表しており、西側諸国から現政権への風当たりは強まっている。それでもロシアからの天然ガス調達の見直しを迫られている欧州をはじめ、世界的なLNG需要の拡大の機をとらえ、サミア大統領はTLNGプロジェクト実現への意欲を強めており、プロジェクト周りのインフラ整備向けの資金として国庫で保有している金(タンザニアは金産出国でもある)の売却を指示したとも報じられている(1月26日付、英Reuters紙)。タンザニアがサブサハラにおける新たなLNG輸出大国となるのか注目が集まる。

 

(注)深海ガス田の鉱区・権益はBloc1(Shell:60%、Medco(20%)、Pavilion(20%)、Bloc2(Equinor:60%、Exxon:35%)、Bloc4(Shell:60%、Medco:20%、Pavilion(20%)の3つに分けられており、共通の陸上液化施設を利用する。TPDCは今後法律上10%の権益を取得する権利を有している。

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