2026年10月9日 (金)
[資源安全保障と鉱山会社再編]
資源の安定供給確保を重視する各国の政策が、鉱山会社の経営再編にも影響を及ぼしている。
英資源大手Anglo Americanは2024年、非中核事業の売却・分社化を通じ、銅や鉄鉱石を中心とする事業構造への転換を図る大規模な合理化計画を発表した。この一環として、2025年2月、ブラジルのニッケル事業を中国五鉱集団傘下のMMGに約5億ドルで売却することで合意した。
しかし、米国では、中国企業が強い影響力を有するインドネシアに加えてブラジルのニッケル資源に対しても中国の影響力が強まるとして業界団体から懸念の声が挙がり、米国政府がブラジルとの関税交渉の際に中国企業への鉱山売却の見直しを求めたとされる。また、EUは同年11月、買収によって欧州向けの低炭素フェロニッケル供給が減少する懸念があるとして詳細審査を開始し、2026年9月には正式な異議告知書を送付した。EUは、買収後に中国国有企業傘下のMMGが供給を中国などに振り向ければ、欧州のステンレス産業の原料調達が困難になると懸念している。
一方、MMGはフェロニッケル市場に既存のシェアを持たず、買収は競争を阻害しないと反論した。Anglo Americanも10月8日のEU当局の聴聞会に際し、売却が阻止されればブラジル事業の操業休止や閉鎖に向かう可能性があると主張した。供給減少への懸念から買収を阻止すれば、かえって供給減少を招きかねないという構図だ。
Anglo Americanは石炭・プラチナ・ニッケル・ダイヤモンドなどの事業売却・分社化を進める一方、2025年9月にカナダTeck Resourcesとの経営統合を発表した。新会社は銅をポートフォリオの軸とする世界有数の銅生産企業となる。本案件について、主要国の承認はおおむね取得済みだが、まだ中国当局の承認が残っている。中国側は承認条件として、中国向け銅精鉱の安定供給を求めているとされる。
すなわち、EUはニッケル、中国は銅と、双方が自地域向けの資源供給確保を不安視している構図だ。Anglo AmericanのWanblad CEOは、本件は独占禁止法上の本質的問題はないはずだとしたうえで、地政学的変化や重要鉱物を巡る資源ナショナリズムが企業再編を複雑にしており、同社の案件が今後の市場にとって一つの試金石になっているとの認識を示している。(経済部 鈴木直美)
[EU/対中関係]
(1)概要
シェフチョヴィチ欧州委員(通商・経済安全保障担当)は10月8日、北京で中国の王文濤商務相と2日間の協議を開始した。この協議は、6月に開始した貿易関係の再均衡化に向けた取組の最終ラウンドと位置付けられている。協議では、1日10億ユーロ超に達するEUの対中物品貿易赤字と、中国によるレアアースなどの重要鉱物の輸出規制が扱われる。中国の対EU貿易黒字は2025年に3,606億ユーロ(前年比15%増)となり、2026年上半期にはさらに9%拡大した。
(2)EUの要求と交渉状況
協議の焦点は自動車である。8月にEU域内で購入された車の8台に1台が中国車であり、主な要因はプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売増加とされる。EUは、PHEVを中心に何らかの輸出抑制を約束するよう中国に求めている。中国製バッテリー電気自動車(BEV)は2024年から相殺関税の対象となっているが、PHEVは現状対象外である。欧州委員会は、中国から意味のある約束が得られない場合には一方的な措置を講じると警告している。自動車については、輸入割当と関税を組み合わせたセーフガード措置を検討している。また、セジュルネ欧州委員は、加盟国からの要請を条件として、プラスチックおよび複合材料に対象を絞ったセーフガード措置を導入する計画を明らかにした。
(3)EU内の動き
独仏首脳は10月5日付のフォンデアライエン委員長宛て共同書簡で、既存の貿易防衛手段はもはや十分ではないと指摘した。その上で、①依存を減らすための多様化手段、②域内市場に深刻かつ組織的な歪みをもたらす第三国に対し、逆特定多数決で発動し、必要であれば域内市場から即時に遮断することまで可能とする手段の創設を求めた。この手段は特定の国を対象としないものとされている。欧州委員会は、この書簡を歓迎すると表明している。欧州議会は10月7日、EU・中国の政治関係に関する勧告を賛成454、反対86、棄権110で採択した。勧告は、中国の不公正な経済慣行と、ロシアによるウクライナ侵略戦争への中国の立場により、二国間関係が危機的な局面に達したとしている。また、中国軍がロシア軍要員を訓練したとの報告に深い懸念を表明した。
(4)今後
EU首脳は、15日から始まる欧州理事会で北京協議の結果を点検し、次の対応を検討する。報道では、対中通商関係への対応がこの首脳会合の議題の筆頭であると報じている。一方、コスタ議長の招集状は中国を名指ししておらず、世界的なマクロ経済不均衡の是正に向けた作業について指針を示すと記載している。また、EPRSは議題の第一項目を競争力としている。(国際部 濱嵜隆吏)
[台湾/松山空港移転構想]
10月8日、台湾の蔣万安・台北市長は、市中心部にある松山空港を移転し、跡地をAI産業の拠点として再開発する構想を発表した。構想では、約300ヘクタールの敷地にAI関連企業200社を誘致し、住宅地区や大規模公園も整備する。約6万5,000人の雇用創出を見込み、2033年の実現を目指す。空港周辺の建築物の高さ制限を解除し、都市再開発を促進する狙いもある。
しかし、中央政府は事前協議がなかったとして驚きを示し、交通部は桃園国際空港の拡張計画に松山空港の移転は織り込まれていないと指摘した。また、松山空港は国際線や離島路線に加え、軍用機や救急ヘリコプターの拠点でもあり、国防や緊急医療への影響も懸念されている。澎湖県では国民党、民進党双方の県長候補が反対を表明した。民進党の沈伯洋・台北市長候補も、移転の是非を議論することには前向きながら、蔣氏がなぜ選挙直前に提案したのかに疑問を呈した。
松山空港の移転は1990年代以降、与野党の政治家が繰り返し提案してきた。都心の広大な敷地や周辺の建築制限が都市開発の障害とされる一方、交通の利便性、離島住民の生活、国防上の重要性などから実現していない。
今回の発表は、11月28日の統一地方選挙まで約7週間という時期に行われた。国民党は地方選の選挙戦が盛り上がりを欠き、支持者の投票率低下を懸念している。9月下旬には党幹部が組織動員の強化を表明し、10月から各地で大型集会を開催する方針を示した。
台北市長選でも、当初は再選に向け大幅に優勢とみられていた蔣氏に、民進党の沈氏が迫っている。10月8日公表のTVBS世論調査では、両者の支持率は蔣氏49%、沈氏41%で、5月下旬の28ポイント差から8ポイント差に縮小した。蔣氏自身も沈陣営の活発な動員に警戒感を示している。空港移転構想がこうした選挙情勢を意識したものかは不明だが、中央政府や与野党の政治家らから反対や疑問が相次ぎ、選挙直前の発表時期を問題視する声も出ている。(国際部 前田宏子)
[ミャンマー/マレーシアとの首脳会談]
10月8日、アンワル首相はミン・アウン・フライン大統領と会談を実施した。会談後、アンワル首相はミャンマーのASEANへの完全復帰に向け協力すると述べた。また会談では、マレーシア国内に滞在するミャンマー難民の送還が協議された。なお、9月末よりマレーシア政府は難民の送還を進めている。ミャンマー難民約19万人のうち、ロヒンギャは約13万人と半数以上を占める。
今年1月までの総選挙、4月のミン・アウン・フライン大統領就任以降、ASEAN各国ではミャンマーへの関与を強化する動きが目立つ。例えば、今年8月にはタイのアヌティン首相、9月にはベトナムのトー・ラム書記長がミン・アウン・フライン大統領と会談を実施した。また、7月のASEAN非公式外相会合にはティン・マウン・スエ外相が出席した。中でも、従来はミャンマー国軍に強硬姿勢を取っていたインドネシアおよびマレーシアによる外相・首脳会談の実施は特筆に値する。両国およびフィリピンは、ベトナムやタイに比べて政治体制が民主主義的であり、国軍の政治的影響力が小さいことなどから、2021年のクーデター以降は5項目合意の不履行を理由にミャンマー国軍を強く非難するなど、強硬姿勢を貫いてきた。他方、直近ではインドネシアのスギオノ外相が6月8日にミャンマーを公式訪問し、大統領および外相とそれぞれ会談した(インドネシア閣僚のミャンマー訪問は2021年以降で初めて)。また、前述のとおりアンワル首相もミン・アウン・フライン氏と会談を実施した。
これらの背景には、ミャンマーがASEAN以外の国との関係を深める中で、相対的にASEANのミャンマーに対する影響力が低下するとの懸念が挙げられる(The Diplomat、2026年8月11日付記事)。2026年6月、ミン・アウン・フライン氏は大統領選出後の初外遊先としてインドを訪問し、モディ首相と会談したほか、習近平国家主席とも会談した。また直近では、ミャンマー国軍関係者や関連企業に対して経済制裁を実施している米国が、関与を再開する兆候もみられる。10月8日付のロイター通信によれば、米国務省情報・調査担当次官補のマイケル・ヴァンス氏は9月中旬にミン・アウン・フライン氏と会談した。会談では、米国人を対象としたオンライン詐欺拠点の取り締まりのほか、レアアース(特に重希土類)へのアクセスも協議されたもようである。特にレアアースについては、米国は中国に代わる代替輸入先としてミャンマーに注目している。このような中、ASEANが5項目合意の不履行のみを理由にミャンマーのASEANへの完全復帰を見送れば、相対的な影響力を失うことを懸念していると考えられる。(国際部 土田慧)
[米国・ザンビア/外交]
10月8日、ザンビアの首都ルサカで、ザンビアと米国の間で「保健・データ共有協定」の調印式が行われた。同協定は、今後5年間にわたりザンビアの保健プログラム向けに、米国が15億ドル、ザンビア政府が9.8億ドルを拠出することを約束するものである。
第二期トランプ政権は発足直後に米国際開発庁(USAID)の廃止を決定しており、その代替枠組みとして米国務省は「アメリカ・ファースト・グローバル・ヘルス・ストラテジー」を発表し、従来の支援を二国間保健協定へと置き換える取り組みを進めてきた。これまでに、米国との関係を重視するケニア、ルワンダ、コンゴ民主共和国(DRC)、レソト、エスワティニなど12か国以上が同様の協定に署名しており、今回ザンビアもこれに加わった。しかし、米国はアフリカでDRCに次ぐ第2位の銅生産国であるザンビアに対し、協定に米国企業が「重要鉱物」へ優先的にアクセスできる条項を盛り込む形で交渉を進めようとしたことから、ザンビア政府は反発していた(5月7日付NYTなど)。
また、この二国間保健協定では、米国がアフリカ側に対し検体や病原体情報などの提供を一方的に求めているとみられており、プライバシー保護上の懸念からガーナやジンバブエは協定締結を見送っている。今回締結された米・ザンビア協定では、データ提供の範囲を「(保健)プログラムのモニタリング」に限定する一方、重要鉱物に関する協定については別途交渉を進める方針と報じられている(10月8日付WPなど)。このことから、米国側が一定の譲歩を行ったものとみられる。
AI・半導体需要の拡大を背景に銅価格が記録的な高値圏で推移する中、ザンビア経済も好調を維持している。中東情勢の緊張という逆風にもかかわらず、2026年第2四半期の実質GDP成長率は前年同期比7.2%を記録した。さらに、世界銀行は10月6日、同国の2026年通年の経済成長率見通しを、4月時点の4.4%から5.6%へ上方修正した。
主食であるトウモロコシの豊作も追い風となり、インフレ率は直近の9月に6.1%まで低下した。これは中銀の目標レンジ(6~8%)の下限に近い水準であり、ザンビア中銀は9月30日、政策金利を13.00%から10.75%へと大幅に引き下げた。2020年にデフォルトに陥った同国だが、現在は金融緩和サイクルに入ることができるほど経済環境が改善している。
また、近年深刻な干ばつに伴う大規模な計画停電に見舞われていたザンビアだが、銅生産を支える発電設備容量は足元で4,722MWまで増加し、ピーク需要の約2倍に達している。なかでも太陽光発電は、2024年の178MWから2026年には1,027MWへと急拡大しており、電力セクターの成長を牽引している。政府は2031年までに総発電容量を1万MWへ拡大する計画を掲げている(10月8日、Lusaka Times)。
こうした電力供給力の向上を受け、商品取引大手トラフィグラは、ザンビアとDRCのカッパーベルトを結ぶ3億ドル規模の高圧送電線プロジェクトを推進している。同プロジェクトでは、700MWの電力を、同社が取引を行うDRC側の銅鉱山へ輸出する計画だ。
同地域での銅生産の拡大が続く中、ザンビアとDRCの銅鉱山の多くに中国企業が関与していることも、アフリカにおける重要鉱物の確保を急ぐ米国が両国への接近を強める背景となっている。(国際部 髙橋史)
[日本/街角景気(9月)]
10月8日、内閣府は9月の景気ウォッチャー調査を発表した。3か月前と比較した足元の景気に関する現状判断指数(DI、季節調整値)は47.0で、前月比+0.6ポイント上昇した。
景気ウォッチャー調査は経済活動の動向に敏感な業種から選定された2,050人を調査客体とし、調査は毎月25日から月末にかけて実施される。
2月(48.9)以降、中東情勢を受けて3月(42.2)、4月(40.8)と落ち込んだが、5月(43.6)、6月(44.0)、7月(45.7)、8月(46.4)、9月(47.0)と5か月連続で持ち直した。
基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。先行きについては、「中東情勢による不透明感が残ることに加え、自然災害の影響に対する懸念もみられるが、持ち直しの動きが続くとみられる」とされた。
現状判断指数を構成する3項目のうち、雇用関連DI(49.0)は+0.2ポイント、家計動向関連DI(46.8)は住宅関連が低下した一方でサービス関連等が上昇し+1.3ポイントとなった。一方、企業動向関連DI(47.1)は製造業、非製造業ともに低下し▲1.1ポイント。
地域別では、前月比で全国12地域中、7地域で上昇、5地域で低下した。
現状判断のプラスの理由としては、「残暑が厳しかった前年と比べて秋への移行が順調で、秋物が好調に推移している」(東北の衣料品専門店)との意見や、「例年9月は秋の紅葉シーズンと夏休みの間で客の来訪が減る時期だが、今年は大型連休のお陰で売上が非常に伸びた。また、連休が長かったため遠方からの客も多かった」(甲信越の観光型旅館)という意見がみられた。企業動向関連でも、「AI関連事業及び携帯電子機器向け製品の受注量が安定して好調で、その恩恵が従業員の給与へも反映されつつある」(南関東の電気機械器具製造業)とプラスの意見が聞かれた。マイナスの理由として、物価高や雨天が続いたことでの客足の伸び悩みや、建設業からは「資材価格や人件費上昇が利益を圧迫してきている」との声も聞かれた。
一方、2〜3か月先の景気の先行きに対する判断指数(DI、季節調整値)は47.4で、前月比▲0.9ポイント低下した。2月の50.0から、3月には38.7まで落ち込み、8月は48.3まで回復したが、今回は低下した。
先行きについても、指数を構成する3項目は全て前月から低下した。企業動向関連DI(47.8)は▲1.3ポイント、家計動向関連DI(47.0)は▲1.0ポイント、雇用関連DI(48.4)は▲0.2ポイント低下した。
地域別では、前月比で全国12地域中、6地域で上昇、6地域で低下した。
先行き判断のプラスの理由として、消費者が徐々に物価高に慣れてきたことや、賃上げの動きもあり、消費者マインドが高まるだろうとの見立てや、秋の行楽シーズンから年末にかけてのインバウンドに期待する声があがった。マイナスの理由として、金利上昇や物価高、各地での自然災害発生による旅行控えの影響などが聞かれた。
継続する物価高、長期化する中東情勢の影響、各地で頻発する自然災害への懸念に加えて、金利上昇に伴う消費者や企業の負担増加のコメントがみられた。ローン負担増加により住宅や車両購入に慎重な姿勢が強まっている。先行きについては、劇的な改善や悪化を見込むよりも、現状が続くのではとの見方が多くみられた。(経済部 菊井彩乃)
[世界/海運事情]
ホルムズ海峡を巡る緊張は、原油価格だけでなく船舶市場そのものを大きく変えている。足元では、タンカー不足、危険手当、保険料、船舶間移送(STS)などのコストが重なり、原油を「運ぶ」こと自体が高コスト化している。
10月8日付Al Jazeeraによると、ホルムズ海峡を通航するタンカーでは船長に1航海5万ドル規模の危険手当が支払われる例があり、船員全体でも通常の数倍の報酬を提示するケースが出ている。通航船舶数が限られるなか、原油輸出を維持するためにSTSを利用する動きも広がり、1往復の輸送コストが数千万ドルに達する例も報じられた。船員だけでなく、保険、安全対策、船舶確保まで含めた「ホルムズ・プレミアム」が形成されている。
影響は中東航路にとどまらない。海運メディアのLloyd’s Listによると、VLCCが中東向けに吸収されることで大西洋側では大型船が不足し、荷主がSuezmaxやAframaxへ切り替える動きが広がった。その結果、船型をまたいで運賃上昇が連鎖している。つまり現在の高運賃は、単純な原油輸送量増加ではなく、航路制約と安全保障リスクによる船腹配置の歪みが生み出している。
一方、対立が終息した場合には逆方向のリスクもある。ホルムズ通航が正常化すれば、危険手当や特殊なSTS需要、迂回輸送の一部は不要となり、逼迫していた船腹需給が急速に緩む可能性がある。危機対応のため中東や代替航路へ集められた船舶が通常市場へ戻れば、一時的に船余りが生じ、タンカー運賃が急落する可能性もある。
ただし、正常化しても元には戻らないと想定されていることもあって、すべてのコストが同時に消えるわけではないとの見方は多い。保険会社が戦争保険料を引き下げるまでには時間がかかり、船舶の再配置や契約見直しにもコストが生じる。高値で用船した船や危険手当前提で契約した船主にとっては、運賃だけが先に下落すれば収益を圧迫する可能性がある。
そのため、ホルムズ危機を巡る船舶市場では、現在の「船不足・高運賃」だけでなく、終息局面の反動も見る必要がある。危機が長引けば船員、保険、船腹のコストが上がる。一方、急速に正常化すれば、今度は特需の消失と船腹余剰によって運賃や関連する資産の価値は下がることになる。危機そのものだけでなく、危機が終わる速度も重要なリスクになっている。(経済部 本間隆行)
[トルクメニスタン/CIS(独立国家共同体)首脳会議]
2026年10月9日、トルクメニスタン西部のカスピ海沿岸保養地アワザにおいて、独立国家共同体(CIS)首脳会議が開催される。2026年はCIS発足から35周年の節目に当たり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領をはじめ、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、ベラルーシ、アゼルバイジャン、アルメニアの首脳らが参加する。開催国であるトルクメニスタンは正式加盟国ではなく準加盟国であるが、今回の会合を主催し、旧ソ連圏の協力枠組みとしてのCISの継続的な意義を示す場となる。
首脳会議では、安全保障、法執行協力、サイバー犯罪対策などが主要議題となる予定。特に情報通信技術を利用した犯罪への対応強化や加盟国間の情報共有拡大に関する文書の採択が予定され、デジタル空間における共同対処能力の向上が重視されている。また、受刑者移送に関する協力協定や司法分野での法的枠組みの整備についても協議される。
さらに、ロシア語圏の人的・文化的結び付きを維持する取り組みも議題となり、国際ロシア語機関の活動報告が行われる。加えて、CISの国際的なイメージ向上や情報発信の強化についても議論され、加盟国間の結束を対外的に示す方策が検討される。
今回の首脳会議で特に注目されたのは、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領がゲストとして招待された点である。CIS加盟国ではないイランの参加は、近年進むロシア・イラン協力やカスピ海地域における連携強化を象徴している。また、プーチン大統領はトルクメニスタンのセルダル・ベルディムハメドフ大統領およびイラン大統領との個別会談を行い、エネルギー、物流、地域安全保障など幅広い分野で協力強化を確認する。
今回の会議は、ロシアがウクライナ戦争の長期化と対西側対立の中でも、旧ソ連圏を結ぶ唯一の包括的地域枠組みとしてCISを維持・活用する姿勢を示したものといえる。同時に、中央アジア諸国やイランを含むユーラシア地域との連携を強化し、「大ユーラシア構想」の推進と非西側諸国との協力拡大をアピールする外交的な場となる予定。(国際部 ゴロシニコフ アントン)
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