2026年10月1日 (木)
[日本/月例経済報告(9月)・鉱工業指数(8月)]
9月29日、内閣府は9月の月例経済報告を発表した。9月の国内の景気の基調判断は、8月の「緩やかに回復しているが、中東情勢や自然災害の影響を注視する必要がある」との表現を維持した。
個別項目では3項目で記述が変更された。生産については、8月の「横ばいとなっている」から「総じてみれば持ち直しの動きがみられる」に上昇修正された。AI・半導体需要を背景とした半導体製造装置などの生産用機械の生産が好調なことなどによる。
貿易・サービス収支は8月の「おおむね均衡している」から「赤字となっている」に下方修正された。中東情勢に伴う原油の代替調達によって輸入額が増加していることなどに起因する。
公共投資について、「堅調に推移している」から「底堅く推移している」に下方修正された。
先行きについては、「雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるものの、中東情勢や自然災害の影響を注視する必要がある」という表現が据え置かれ、緩やかな回復基調に対する下振れリスクへの懸念が示唆されている。
また、9月30日に経済産業省が公表した鉱工業指数(2020年=100/季節調整値)の8月速報値によると、生産・出荷・在庫において前月比低下した。
生産指数は102.6で前月比▲1.7%となった。4月、5月、6月と上昇基調にあったが、7月、8月と2か月連続で低下した。生産の基調判断は「一進一退」に据え置かれた。2024年7月以降、同様の表現が継続している。
8月の生産を業種別でみると、全15業種のうち12業種が前月比低下し、3業種が上昇した。低下したのは、自動車工業(普通乗用車、小型乗用車など)▲6.8%、汎用・業務用機械工業(コンベヤ、運搬用クレーン)▲6.0%、石油・石炭製品工業(ガソリン、軽油)▲13.3%。8月の低下幅▲1.7%に対する寄与度で約半分を占める自動車工業(寄与度▲0.90%ポイント)において、7月末の熊本地震や豪雨などの影響を受け、工場が稼働停止したことによる減産が響き、指数全体を押し下げたとみられる。
上昇したのは、生産用機械工業(金型、個装・内装機械)+6.1%、輸送機械工業(自動車工業除く、航空機用発動機部品など)+2.9%、化学工業(無機・有機化学工業・医薬品除く、仕上用化粧品、柔軟仕上げ剤)+0.7%。
また、先行き2か月について、主要企業の生産計画から算出した生産予測指数は、9月は8月から+3.2%の増産、10月は9月計画から+3.1%の増産の見込み。ただし、生産計画は生産実績より上振れする傾向があり、9月の増産計画について実績との間で生じるズレを統計的に補正すると+1.6%。7月・8月と2か月連続で減産となったが、計画通りに生産されれば3か月ぶりの増産となる。
出荷指数は100.8で前月比▲2.5%と、2か月ぶりの低下となった。全15業種のうち14業種が低下、1業種が上昇した。
設備投資の一致指数として注目される資本財出荷指数(除く輸送機械)は122.5で+0.7%。中東情勢の影響を受けて前月比増減率の上下のブレが大きかったが、6月の+5.1%から、7月は+7.7%、8月は+0.7%と3か月連続で上昇した。今後も上昇傾向が続くのか注目される。
在庫指数は97.6で前月比▲0.5%と、3か月ぶりの低下となった。全15業種のうち7業種で低下、6業種で上昇、2業種で横ばいとなった。
低下したのは、石油・石炭製品工業(ガソリン、灯油など)▲15.0%、自動車工業(普通トラック、小型乗用車など)▲3.3%、電子部品・デバイス工業(アクティブ型液晶パネル(大型)、トランジスタなど)▲3.3%。上昇したのは、無機・有機化学工業(ポリエチレン、合成ゴムなど)+2.8%、プラスチック製品工業(プラスチック型フィルム・シート、プラスチック型容器(中空成形)など)+2.5%、化学工業(無機・有機化学工業・医薬品除く、溶剤系合成樹脂塗料、頭髪用化粧品など)+1.7%。(経済部 菊井彩乃)
[ロシア/NATOへの核の威嚇]
(1)概要
2026年9月30日の報道によると、ロシアはバルト海に面する飛び地カリーニングラードを巡り、NATOに非公式文書(ノンペーパー)を送付していた。同文書でロシアは、NATOの姿勢を「直接的な武力衝突が起きるリスクの高い、危険で無謀な路線」と批判した。そのうえで、NATO加盟国がカリーニングラードをロシア本土から孤立させようとした場合には、核兵器を含むあらゆる戦力と能力を使用する用意があると警告した。また、直接的な武力衝突となった場合、初期段階からNATO加盟国の意思決定中枢を攻撃する可能性にも言及した。欧州各国のロシア大使館も、NATOが軍事演習などを通じて緊張を高めていると批判した。
(2)NATOの反論・対応
NATO側は、あくまで防衛的な同盟であり、NATOの演習や活動はロシア領を脅かすものではないと反論し、あわせて、ウクライナ侵攻の終結と、無責任な核をめぐる発言の停止を求めたという。ルッテ事務総長は9月30日、核使用は現実のリスクではないとの認識を示し、その理由として、プーチン大統領はNATOに勝てないと理解していることを挙げ、NATO領域への差し迫った脅威はないと発言している。NATOのハート報道官は、ロシアのハイブリッド戦術を「焦りの表れ」とし、NATOのウクライナ支援は揺るがないと述べた。
(3)地政学的背景と留意点
カリーニングラードは、NATO加盟国のポーランドとリトアニアに挟まれたロシアの飛び地であり、面積は米国コネチカット州をやや上回り、ロシアの重要な軍事拠点となっている。同地はバルチック艦隊の拠点であり、核搭載可能なイスカンデル・ミサイルも配備されている。欧州では、ロシアによるハイブリッド攻撃や破壊工作への警戒が高まっており、核の威嚇だけでなく、インフラなどへの非軍事的な脅威にも引き続き注意が必要である。(国際部 濱嵜隆吏)
[エチオピア/北部情勢緊張続く]
9月28日、エチオピア北部ティグライ州南部の交通の要衝・アラマタで、エチオピア国防軍(ENDF)らとティグライ防衛軍(TDF)ら反政府勢力との間で交戦が発生し、少なくとも民間人52人が死亡した(9月28日、BBC)。アラマタはTDFが拠点を置くティグライ州の州都メケレから120kmの位置にある。
9月20日にティグライ人民解放戦線(TPLF)、アムハラ・ファノ民族運動(AFNM)、アファール民族統一革命戦線(ARDUF)ら7つの反政府組織が「エチオピア人民生存のための勢力同盟」の結成を発表した(2026年9月24日デイリー・アップデート参照)。9月23日にTPLFの軍事部門であるTDFらが連邦政府管理下にあったティグライ州の3つの空港の制圧を発表して以降、反政府勢力と政府軍との衝突はティグライ州、アムハラ州、アファール州といったエチオピア北部に拡大している。ドローン攻撃が多用されている戦闘により、民間人が巻き込まれる被害が増加している。
激しい戦闘が続いたアラマタは現在、ENDFが制圧したとみられているが、TDFとARDUFはアファール州の州都・セメラに向けて進軍していると複数のメディアが報じている。セメラはジブチとエチオピアの首都アディスアベバを結ぶ物流の大動脈である国道1号線沿いに位置している。内陸国であるエチオピアは物流の約9割強をジブチ経由に依存していることから、反政府勢力には物流の混乱を招いてENDFを疲弊させたい狙いがあるとの見方がある(9月28日、ACLED)。
約60万人が死亡したと推定される2020~2022年の「ティグライ紛争」のような大規模な人道危機の再発を防ぐべく、国際連合、欧米諸国、アフリカ連合(AU)、日本政府などもエチオピア北部情勢への懸念を示している。9月28日には、米国上院議員6人(民主党)がマルコ・ルビオ国務長官に対し、ティグライ地域における緊張の高まりに向けた措置を講じるよう要請した。同議員らは、「戦闘再開は米・トランプ政権が(9月18日に)エチオピア・エリトリア向けの経済制裁を解除してから、わずか1週間もたたないうちに起きた。これらの制裁を期限切れにすることは、自らの恐ろしい行為に対する抑制がないと考える交戦当事者を助長する」として米政府の対応を批判し、ルビオ長官および米国務省が直ちに調停の場に戻るよう求めている。
しかし、エチオピア政府は戦闘のみならず外交面でも攻勢を強めている。9月27日にENDFのジュラ最高司令官はTDFなどの反政府組織をエリトリア、スーダン、エジプトといったエチオピアと対立する国々が支援していると改めて非難(9月28日、ロイター通信)。しかし、スーダンやエジプトなどはこの主張を否定しており、周辺地域でも事態解決に向けた足並みがそろっていない状況が続いている。また、7つの反政府同盟のうち一部の反政府組織は同盟への参加を否定するなど、同盟内でも早くも連携のほころびがみられる。しかし、2025年に政党登録を抹消されたTPLFをはじめ、政府と対立を続ける反政府勢力連合は、ENDFとの軍事力の圧倒的な差があるものの、ゲリラ戦のような「非対称戦争」を継続するとの見方もある。(国際部 髙橋史)
[韓国/LNG事情]
アラスカLNG計画が、米韓の対米投資協議の象徴的な案件として再浮上している。9月30日、トランプ大統領は韓国による対米投資案件として、約540億ドル規模のアラスカLNG計画を発表した。アラスカ州ノーススロープの天然ガスを約1,300キロのパイプラインで南部へ運び、液化してアジアへ輸出する構想で、年間約2,000万トンの生産能力を想定する。米国側は雇用創出やアラスカ州内のエネルギーコスト低下も強調しており、中間選挙を前に大型投資を政策成果として示す狙いもある。
しかし、韓国側の説明は慎重だ。政府が正式に第1号案件として選定したのはテキサスのガス火力発電所で、アラスカLNGについては商業性や法的条件を検証したうえで投資の可否を判断する立場をとっている。韓国産業相も「税金を投入する以上、一銭も無駄にしない」とし、採算性と国益を最優先すると説明している。米国側の政治的な「投資発表」と、韓国側の最終投資判断はまだ同じ段階にはない。
この温度差は日本の対米投資にも共通する。日本は最大5,500億ドルの戦略的投資枠を設けているが、政府は米国側が自由に使える資金ではなく、JBICやNEXIが採算性を確認した案件に投融資・保証を行う仕組みだと繰り返し説明している。赤澤経産相も、不採算案件への投資は原則避けるとしており、日本側の基本姿勢も「政治的協力は行うが、商業性は別途審査する」というものだ。
アラスカLNGには確かに戦略的、とりわけ経済安全保障の観点では魅力的な案件だ。アジア市場までの輸送距離が米湾岸より短く、パナマ運河、紅海・スエズ運河、ホルムズ海峡といった主要チョークポイントを回避できる。中東情勢が不安定化するほど、供給源の多角化という意味で北米産ガスの価値は高まる。
他方で最大の課題はコストである。約1,300キロの大型パイプライン、ガス処理設備、液化設備を新設するため初期投資は巨額で、価格設定を含めた長期販売契約や資金調達もなお詰める必要がある。建設費が想定を大きく上回るコストオーバーランが生じれば採算性は急速に損なわれるとの指摘も多く、また、カナダも太平洋岸からの燃料輸出に積極的な姿勢を見せていることも念頭に置く必要がある。(経済部 本間隆行)
[米/物価上昇と利上げ観測の後退]
商務省によると、8月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+3.4%だった。上昇率は7月と同じであり、一部の価格について推計方法が見直され、2021年まで遡及改定されたため、7月分は前回発表(+3.7%)から下方修正された。
内訳を見ると、エネルギーが+16.8%となり、7月(+15.1%)から拡大し、6か月連続で2桁上昇となった。特に、ガソリンなどは+27.9%と3割近い伸び率に拡大した。食料品は+1.9%と、7月(+2.3%)から縮小し、3月(+1.8%)以来の2%割れとなった。
また、財は+3.6%と7月(+3.3%)から拡大した。そのうち、耐久財(+2.6%)は7月(+2.5%)から小幅拡大にとどまった。娯楽財や乗り物(+7.7%)が上昇した一方で、自動車・同部品(▲0.2%)は3か月ぶりに下落した。非耐久財(+4.1%)は7月(+3.8%)から拡大し、2か月ぶりに4%台の伸び率となった。サービスは+3.4%で7月と同じだった。輸送サービス(+8.0%)が2か月ぶりに8%台の伸びとなったのに対して、家賃・公共料金(+3.1%)や金融・保険サービス(+4.3%)が7月から縮小した。
物価上昇率は連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%上回っているものの、改定される前ほどの高さではなかったうえ、市場予想を下回ったこともあり、市場では10月利上げ観測が後退した。(経済部 鈴木将之)
[米朝対話再開に現実味]
9月30日、韓国の情報機関である国家情報院(国情院)は、国会情報委員会の非公開懇談会での報告で、米朝対話が11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の前後に実現する可能性を「50%程度」と分析していることを明らかにした。
国情院によると、北朝鮮はトランプ米国大統領からの友好的なメッセージを受け、米朝関係改善に向けた余地を残している。他方で、金与正・朝鮮労働党副部長や崔善姫外相らは、米国に「核保有国」としての地位の尊重や敵視政策の撤回などを要求し、対話には米国側の明確な政策転換が必要との立場を崩していない。ただ、トランプ氏本人への直接的な非難や中傷は控えており、国情院は、交渉の機会を壊さないとの意図が表れていると分析している。
水面下の動きを示唆する情報もある。国情院は、北朝鮮が海外公館にかん口令を敷いたほか、現場の対米担当者が「非常に忙しく動いている」との情報を入手したと報告した。金正恩総書記の今年の公開活動は121回と前年同期比30%増えたものの、最近は兵器実験や軍事訓練の視察など米国を刺激しかねない活動を控えているという。
米国の専門家からも同様の見方が出ている。北朝鮮が、米国との接触の余地を残しているとの点に加え、従来より高い条件を提示するようになっており、対話再開がそのまま非核化交渉の進展を意味するわけではないとの見方も強い。「北朝鮮は核保有国である」という新しい前提を米国に受け入れさせる外交になる可能性が懸念される。一方で、9月の米中首脳会談後の米政府発表からは、5月には明記されていた「北朝鮮の非核化」が消えたことも注目されている。(国際部 前田宏子)
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