デイリー・アップデート

2026年4月1日 (水)

[キューバに石油供給] 

キューバでは現在、深刻な経済と生活の危機が同時進行している。長年続く経済運営の停滞に加え、米国のトランプ大統領が、エネルギー取引を厳しく制限したことにより、キューバは石油やガスの輸入が滞り、発電や交通、物流が大きな打撃を受けている。電力網は短期間に複数回全面停止し、数百万人が長時間の停電に見舞われている。街路には回収されない腐敗したゴミが積み上がるなど衛生状態は悪化し、移動手段としての自動車利用も難しくなった。また、物価も大幅に高騰しており、卵30個の価格が、公式月給のほぼ半分を占めている。

 

そうした中、制裁対象となっているロシアのタンカーが、約70万バレルの原油を積んでキューバへ到着し、今年1月9日以降で初めて対キューバのエネルギー供給遮断が、限定的ながら緩和された。

 

今年1月初旬以降、ベネズエラ情勢をめぐる米国の強硬姿勢を背景に、キューバを取り巻くエネルギー供給環境は急速に悪化していた。長年、同盟関係にあったベネズエラは、石油供給と引き換えに医師などの人的支援を受けてきたが、こうした枠組みは事実上停止状態に陥った。さらに、メキシコも米国との通商関係への影響を懸念し、出荷の見合わせを行っている。

 

今回のロシアからの原油供給に先んじて、トランプ大統領が、「いかなる国もキューバに原油を送ることは問題ない」と述べたことから、キューバへの石油輸送阻止の方針の転換かと思われた。しかし、報道官は、今回ロシアのタンカーの入港を認めた判断については、対キューバ政策の変更ではなく、人道的配慮による個別対応だったとして、今後のキューバへの石油供給についてはケースバイケースで検討するとし、今回の石油供給は短期的な延命措置に過ぎないとの見方が強い。ロシアの供給を受けて、シェインバウム大統領は、メキシコはキューバに石油を供給する権利があると発言しているが、実際に供給を再開できるかは疑わしい。

 

キューバの1日当たりの石油需要は約10万バレルとされており、今回の供給量は1週間程度の供給量に過ぎず、また老朽化した発電設備や送電網そのものが危機的な状態にあることから、燃料が確保されても安定供給には直結しないという構造的問題も指摘されている。

 

こうした中、キューバのミゲル・ディアス・カネル大統領は、米国との間で協議が行われていることを認めており、体制内部でも危機への対応を模索している状況がうかがえる。ただし、キューバ政府は経済面で一定の譲歩を行うとしつつも、政治体制そのものの改革については交渉の対象外であるとの立場を崩していない。深刻化する生活危機と国際的圧力の狭間で、同国がどのような方向へ進むのかは、依然として不透明なままとなっている。

[日本/短観] 

日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)の3月調査によると、大企業製造業の業況判断指数は+17だった。業況判断指数は、業況が「良い」の割合から「悪い」の割合を引いたものであり、指数がプラスであれば、業況が良い企業が相対的に多いことを表す。

 

調査期間は2月26日~3月31日で、回収基準日は3月12日であり、イラン戦争の影響は十分に織り込まれていない。しかし、前回12月調査から+1ptと、4期連続の改善になった。前回見通しは▲1ptの低下であり、横ばい圏内であるものの、低下するという見通しに反して上昇した点は安心材料になった。

 

大企業製造業の内訳を見ると、石油・石炭製品が+18(前回から▲18pt)、木材・木製品がゼロ(▲7pt)となり、前回から低下した。その一方で、非鉄金属は+23(+10pt)、生産用機械は+26(+10pt)となるなど、幅広い改善が見られた。

 

大企業非製造業は+36で前回から横ばいだった。前回見通しでは▲5ptの低下であり、底堅く推移した。内訳を見ると、対事業所サービスが+43(▲7pt)、運輸・郵便が+23(▲8pt)などが前回から低下した。また、宿泊・飲食サービスは+34(+18pt)や物品賃貸は+46(+12pt)などが上昇した。

 

中小企業製造業の業況判断指数は+7で横ばいであり、前回見通し(+2)から上振れた。中小企業非製造業は+16で、前回から▲1pt の小幅低下にとどまり、見通し(+12)を上回った。なお、全規模全産業は+18で前回から横ばい。前回見通し(+13)を上回っている。

 

先行きについては悪化が見通されている。全規模全産業の業況判断指数は足元の+18から+11へ低下するものの、プラスを維持している。ただし、イラン戦争に伴うエネルギー価格の上昇や供給減少などの影響が十分に織り込まれていないため、下振れリスクが依然として大きい。

[米国農産物の作付意向面積] 

3月31日、米国農務省(USDA)は2026/27年度作物の作付意向調査をまとめた『Prospective Plantings』を公表した。2026年春、米国農家はトウモロコシより大豆の作付を選好する傾向が示されている。

 

米国農務省は2月時点の報告書で、2026暦年の米国の純農業所得(純収入-経費)は名目で▲0.7%、実質▲2.6%と厳しい収益見通しを示していた。作物価格低迷・コスト上昇・輸出不振・重債務などが背景にある。さらに、3月には、イラン戦争により肥料・燃料価格や金利が上昇した。このことは作付判断に大きく影響したとみられる。

 

トウモロコシの作付意向面積は9,530万エーカー。過去10年平均よりは多いが、前年比では▲3%減。輸出は堅調だが、前年度の豊作で在庫水準が高いことに加え、施肥量が相対的に多いことで採算が悪化している。一方、大豆は前年比4%増の8,470万エーカー。在庫水準や投入コストの相対的な低さに加えて、2026~27年の再生可能燃料基準(RFS)において、バイオマスディーゼルの混合義務量が大幅に引き上げられたことで、原料となる大豆油の需要拡大見通しから大豆油・大豆価格は相対的に強含んでいる。小麦は内需がほぼ横ばいで推移する一方、輸出市場では競争が激しく、作付面積は漸減傾向。2026年度は4,380万エーカーと前年比▲3%減、1919年以来で最低水準になると予想されている。

 

もっとも、今回の調査は戦争開始直後に実施されており、実際の作付面積は今後のエネルギー価格、肥料価格、農産物市況の変動により修正される可能性が高い。

[ロシア/現金回帰の動き拡大] 

ロシアでは2026年に入り、現金決済への回帰が目立って広がっている。2026年1月の現金引き出し額は約1.6兆ルーブル(約3.2兆円)と、ウクライナ侵攻直後(2022年)以来の高水準となり、小売におけるキャッシュレス比率も急低下した。背景には、①カード決済関連サービスへの付加価値税(VAT)課税(22%、2026年1月導入)による事業者負担増、②通信・モバイルインターネットの不安定化、③税務監視強化を意識した中小事業者の現金志向がある。

 

世論調査では、消費者の約半数が「現金払い」を求められた経験があると回答しており、影の経済拡大や税収への影響も懸念されている。

[パキスタン/中国との外相会談] 

3月31日、パキスタンのダール外相は訪問先の北京で中国の王毅外相と会談を実施し、湾岸・中東地域における即時停戦と戦争終結を求めるとともに、早期の和平協議の開催を促す「5項目のイニシアティブ」を発表した。5項目の内容は以下のとおり:①敵対行為の即時停止と紛争拡大の防止・人道支援の確保、②イラン及び湾岸諸国の主権と安全を尊重・確保した上での速やかな和平交渉の開始、③民間人と非軍事目標の保護・国際人道法の遵守・原子力発電所や海水淡水化施設など重要インフラへの攻撃停止、④ ホルムズ海峡の航行の安全確保・民間船舶の早期かつ安全な通航の回復、⑤国連憲章と国際法に基づく多国間主義の強化、包括的かつ持続的な平和の実現。

 

パキスタン政府は、3月26日に米国が提示した15項目の停戦計画をイラン側に伝達する役割を担ったほか、3月29日から30日にかけてエジプト・トルコ・サウジアラビアを含めた4か国の外相会談を実施するなど、停戦に向けた外交努力を継続している。原油・ガスの湾岸諸国への輸入依存度が高く外貨繰りが逼迫している中で、輸入途絶や価格高騰により実体経済が停滞するほか外貨準備高の減少が懸念される。タリバンとの紛争を抱えている中でサウジアラビアとの相互防衛協定を履行することで自国の防衛リソースが地理的に分散することも懸念されており、これらリスクを解消するためにパキスタン政府は米国・イラン・湾岸諸国との外交関係も活用して停戦実現を目指している。

 

他方でイラン側は、米国の提示した停戦計画を拒否したほか、4か国との外相会談についても在ムンバイのイラン総領事館がXの投稿にて「4か国が勝手に実施したものであり、我が国は参加していない」と停戦協議に参画していないと公表するなど、停戦交渉は停滞している。

 

イラン側は米国との停戦合意を保証する国を求めているとの分析もある(アル・ジャジーラ、2026年3月31日付記事)。パキスタンとしては、イランとの経済的な結びつきが強い中国を関与させることでイラン側を停戦協議に参画させることを狙っていると考えられる。中国側としても、イランには原油輸入の約12%をイランに依存していることや、原油輸入全体の45~50%がホルムズ海峡経由で輸送されることも踏まえて(アル・ジャジーラ、2026年3月31日付記事)、停戦実現により自国のエネルギー安定供給を維持することを目指していると考えられる。加えてパキスタンを介することで米国との直接的関与を避けつつして停戦に関与するほか、国際社会における「責任ある大国」のイメージを印象づける狙いがあるとみられる(ラジオ・フリー・ヨーロッパ、2026年3月31日付記事)。

[韓国/補正予算] 

3月31日、韓国政府は中東情勢の悪化に伴う原油高・物価高への対応として、約26兆ウォン規模の補正予算案を閣議決定した。4月10日頃に国会で成立する見込み。李在明政権下では2度目の補正予算であり、原油高対応、国民経済の安定、サプライチェーン維持の三本柱で構成されている。最大の特徴は、所得下位70%の国民約3,580万人に対し1人当たり10万~60万ウォンを支給する現金給付で、総額4.8兆ウォンが充てられる。それ以外に、石油価格の上限設定制度の維持や、ナフサ供給不足対策として5兆ウォンを投入するほか、交通費還付の拡充、エネルギーバウチャー支援、農漁業者や文化・若者支援など幅広い分野での支出が盛り込まれた。財源は主に税収の増収分で賄われるとしている。

 

輸出企業支援については、中東危機による資金繰り悪化に対応して政策金融を拡充し、合計7兆ウォン超の流動性を市場に供給する。中小企業向け融資や信用保証、貿易保険を通じて、原材料輸入や新市場開拓を支援する仕組みが整備される。また、エネルギー転換を進めるため、再生可能エネルギー分野への追加支出や、住宅向け太陽光導入支援、電動商用車普及なども推進される。さらに、ナフサ輸入支援や戦略石油備蓄の拡充など、供給網の安定化にも予算が配分された。

 

これに対し、最大野党「国民の力」は、現金給付を「選挙(※2026年6月地方選挙)目当てのばらまき」と批判し、必要なのは価格安定や産業支援など実質的対策だと主張している。特にウォン安の進行やインフレ上昇を背景に、韓国経済がスタグフレーションに入りつつあるとの認識を示し、追加財政出動はむしろ物価や為替を悪化させると警告している。補正予算は国会で成立見込みだが、その効果と副作用を巡る与野党の対立は続く見通しだ。

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