デイリー・アップデート

2026年4月2日 (木)

[米国/雇用環境堅調も、価格上昇が重荷] 

ADPの全米雇用報告によると、3月の民間雇用者数は前月比6.2万人増だった。市場予想(4万人増)を上回った。2月(6.6万人増)並みの増加ペースを維持した。

 

産業別では、製造業(▲1.1万人)で減少した一方で、建設業(3.0万人増)で増加した。また、サービスでは、商業・輸送・公益事業(▲5.8万人)の減少幅が大きかった。その半面、教育・ヘルスケア(5.8万人増)や情報(1.6万人増)などで雇用者数が増加した。なお、ヘルスケアでは、ストライキが終わった影響が大きかったと報じられている。企業別では、大企業(▲0.4万人)や中堅企業(▲2.0万人)で減少した一方で、中小企業(8.5万人増)が雇用を増やした。

 

雇用の増加が一部産業に偏ったものの、他産業でも増加しており、雇用環境は底堅く推移している。雇用の最大化と物価の安定の二大責務を負う連邦準備制度理事会は、物価の安定に注力しやすい環境になる。それを確かめる上でも、週末に発表される雇用統計が注目される。

 

米供給管理協会(ISM)によると、3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は52.7(+0.3pt)へ上昇し、2022年8か月ぶりの高水準になった。好不調の境目となる50を3か月連続で超えて、市場予想(52.5)も上回った。

 

内訳を見ると、供給遅延指数が55.9(+3.8pt)へ上昇した影響が大きかった。これは、通常、需要の強さを示すものの、足元では供給網混乱を反映している。また、仕入価格が78.3(+7.8pt)へ上昇し、2022年6月以来の高水準をつけたことも注目される。掲載されたコメントからも、中東情勢の緊迫化に伴う供給網の悪影響や価格上昇が報告されており、すでに悪影響が米国経済に表れ始めている。

 

米商務省によると、2月の小売売上高は前月比+0.6%となり、1月(▲0.1%)から増加に転じた。2月までは個人消費は底型さを見せたと判断される。しかし、ガソリン価格をはじめとして物価上昇圧力が高まっており、今後の個人消費には下押し圧力がかかりやすいと考えられる。

[ウクライナ] 

ゼレンスキー大統領が、次期大統領選挙への出馬を見送る可能性を検討していると、一部のメディアが報じている。自身の後継候補として、元情報局長で現大統領府長官のキリル・ブダノフ氏を擁立するシナリオが浮上しており、政権内での連携が模索されている。一方、最大の対抗馬は依然として国民的人気を誇るザルジニー前総司令官であり、世論調査でも現職を脅かす存在となっている。背景には、長引く戦争や政権内の汚職スキャンダルによる支持率の低下、さらには軍上層部との確執が影を落としている。ブダノフ氏は軍の背景を持ちながらも現政権に近い立場だが、独自に政治勢力を形成する動きも見せている。最終的な選挙の実施時期や候補者の決定は、停戦交渉の進展やトランプ政権下の米国との関係性に大きく左右される見通しである。

[ホルムズ海峡をめぐる国際政治動向] 

イランにより事実上封鎖されたホルムズ海峡の航行再開を巡り、トランプ米国大統領は「有志連合」への参加を欧州同盟国に要求し、応じない場合はNATO経由のウクライナへの武器調達枠組み「Purl」からの供給を停止すると発言した。ルビオ国務長官も先日、ウクライナ向け兵器を米国の対イラン戦争補充に回す可能性を示唆した。欧州諸国は「自分たちの戦争ではない」として、戦闘が続いている間に、ホルムズ海峡での船舶護衛などの任務に参加することはないと繰り返し発言していた。

 

一方、日本や欧州をはじめとする各国はホルムズ海峡の安全な航行の確保のため「適切な取り組みに貢献する用意がある」との共同声明を発出している。4月2日、英国のスターマー首相は、戦闘終結後のホルムズ海峡の航行の自由回復や船舶の安全確保に向けた外交的・政治的措置を検討するため、全35か国による会議を主催すると発表した。

 

トランプ大統領は、欧州の非協力的な姿勢への不満からNATOを「張り子の虎」と批判し、同盟からの脱退を強く検討していると発言した。しかし、米国の実際のNATO離脱には高い法的ハードルが存在する。米国国内には、大統領の単独での離脱を禁じ、議会の承認または上院の3分の2の支持を義務付ける法律や、欧州からの大規模な部隊・兵器撤収を困難にする法律が存在する。トランプ大統領は以前、このような法律の抜け穴を使って大統領の判断で脱退が可能と発言していた。

 

これに対する欧州諸国の反応は、実際の離脱には懐疑的ながらも、度重なる脅しが同盟を弱体化させるとして強い懸念を示している。欧州側は、米国がNATOに留まりつつも、集団防衛を定める条約第5条の履行を拒んだり、核抑止の拡大を停止したりすることで、軍事同盟が脆弱化する事態を恐れている。トランプ大統領がNATOの結束を脅かすことは初めてではないとして冷静な対応を模索する意見が多い一方で、混乱の広がりを懸念する声も多い。

[南アフリカ/投資会議] 

3月31日、南アフリカ(南ア)経済の中心地・ヨハネスブルグで「南ア投資会議(SAIC)2026」が開催された。南アへの国内外からの投資を促進すべく、南ア政府が2018年から開催している同会議は今回で6回目を迎えた。

 

脱炭素化(Decarbonisation)、デジタル化(Digitisation)、多角化(Diversification)の3つの「D」が主要テーマとなった本会議の冒頭で、ラマポーザ大統領は「世界経済は不確実性に包まれているが、南アは強固なファンダメンタルズを備えた魅力的な投資先である」と強調。2018年から2023年までの5年間で政府は1兆ランド(約9.4兆円)の投資を呼び込むとの目標を掲げていたが、それを上回る1.5兆ランド(約14.1兆円)の投資のコミットメントを得たことがそれを証明していると述べた。

 

一方で、アフリカ大陸全体でみると世界の外国直接投資(FDI)に占める流入の割合は4%に留まっており、最近のFDIの増加はエジプトのラス・エルヘクマ(350億ドル)のような単発のプロジェクトが牽引してきたと指摘。南アはアフリカ全体のGDPの15~20%を占めつつも、国内企業による投資に成長を依存してきたことから、今後はFDIの流入拡大を促したいとの意向を示した。

 

主催者の発表によると今回のSAICでコミットされた投資は81件で、総額4,150億ランド(約3.9兆円)に上るとのこと。最大の案件は南ア化学大手SASOLによるムプマランガ州、フリーステート州での既設工場の近代化(600億ランド、約5,640億円)で、ほかにもトヨタ南ア(TSAM)のクワズールー・ナタール州での追加投資(104億ランド、約1,100億円)、コカ・コーラ南アによる追加投資(176億ランド、約1,654億円)、英・資源大手アングロ・アメリカンの非コア事業見直しのため2025年に分離・独立したValterra Platinumによる178億ランド(約1,673億円)。セクター別では、観光・不動産部門(814億ランド、約7,651億円)が最もコミットメント額が大きく、グリーン経済・再エネ(658億ランド、約6,185億円)、化学・包装(626億ランド、約5,884億円)、農業加工・食品(419億ランド、約3,938億円)と続いた。

 

一方で、中東情勢の緊迫化はエネルギー純輸入国である南ア経済に暗い影を落としつつある。世界的な油価高騰を受け、3月31日に政府はガソリン小売価格を1リットル当たり3.06ランド(約29円)引き上げると発表。値上げ幅は過去最大だ。同時に市民生活の混乱・打撃を緩和するために、1リットル当たり3ランド(約28円)の燃料税の引き下げを発表し、値上げ分の相殺を試みているが、これにより南ア政府は2月に発表した2026年度予算時点から60億ランド(約564億円)の税収減を被る見込みだ。ホルムズ海峡の閉鎖が長期化すれば、さらなるガソリン価格の上昇が予測されるため、財政再建を進める中、政府がどこまで国庫で支え続けられるか疑問が生じる。また、3月31日に南ア・水・衛生省が発表した報告書によると、水道施設の老朽化・管理不足による漏水などにより国内の未収水(収益化できていない上水)の割合は全国レベルで47.3%にも上っているとのこと。南ア政府は電力や物流・港湾などのインフラ整備・投資に注力してきたが、市民生活や投資環境にも影響する水道対策にも資金と労力を投じる必要性を浮き彫りにしている。

[インドネシア・日本韓国との首脳会談] 

4月1日、インドネシアのプラボウォ大統領は訪韓中に李在明大統領と会談を実施した。その中で、両国の外交関係を「特別包括的戦略パートナー」に格上げすることを発表した。両国にとり、本パートナーシップを結ぶのは初めて。インドネシアからのLNG安定調達や電気自動車用バッテリーに不可欠なニッケルやコバルトのサプライチェーン強化につき合意したほか、インドネシアが導入を計画している原子力発電や、再生可能エネルギー、二酸化炭素回収・貯留(CCS)といった電力・脱炭素などの分野に関するMoUを締結した。韓国にとり、インドネシアは第6位のガス輸入先国で、輸入額に占めるシェアは4.4%(1位・2位は米国・オーストラリアで、シェアはそれぞれ21.8%・20.8%)。加えて防衛面では、両国で共同開発している第4.5世代戦闘機「KF-21」の量産に向け合意した。

 

またプラボウォ大統領は3月31日には東京で高市首相と会談し、LNGなどエネルギー供給の安定確保やAZECの下での地熱・廃棄物発電での協力にも合意した。防衛面では、日本側は政府安全保障能?強化?援(OSA)の枠組みでインドネシア国防軍に対する防衛装備品供与の継続を表明した。

 

インドネシア政府は世界第6位の温室効果ガス(GHG)排出国であるが、2050年までのカーボンニュートラル達成を目指している。他方で電力供給のうち2023年時点で69%(出力ベース)を石炭火力発電由来の電力に依存しているほか、ガス火力発電にも13%依存するなど、化石燃料への依存が継続している。政府は電力部門の脱炭素化を推進すべく、2022年9月公布の大統領令にて、再生可能エネルギー(再エネ)による電力供給の加速と、新規石炭火力発電所建設を原則禁止する方針を示した。加えて2025年に示した2034年までの電力供給事業計画(RUTPL)では、新規導入容量(69.5GW)のうち61%を水力・太陽光・地熱などの再エネで賄う方針を示した。またRUTPLの中では、2040年までに国内で初めて原発を新設する方針も示した。再エネ・原発の新設に向けて日本・韓国の資本・機材・ノウハウを呼び込むことを狙っていると考えられる。また同国ではスマトラ島など再エネ容量のポテンシャルの大きい地域と、ジャワ島・バリ島など電力需要の大きい地域が地理的に離れているため、両者間を高圧海底ケーブルにより連系する送配電網の新設も必要となる。2026年2月に国際協力銀行と国営電力公社PLNがMoUを更新したが、その中で送電網・スマートグリッド整備も協力分野として挙げられているため、日本として送配電網整備で協力する狙いがあるとみられる。

 

また同国では、2014年の鉱業法改正による未加工鉱石の禁輸を契機として、ニッケル・ボーキサイトをはじめとした資源の下流産業への投資呼び込みを通じて産業の高付加価値化を狙っている。他方、これまでは青山集団やCATLなど中国企業による投資が主であり、かつ輸出先も中国市場向けがメインとなっており、貿易・資本面での中国依存拡大が懸念されていた。日本・韓国からの投資呼び込みを通じて中国への過度な依存を解消する狙いがあるとみられる。

 

インドネシア国防省は近年、国軍出身であるプラボウォ大統領の意向も反映し、従来の主要調達先である米国以外からの防衛装備品の調達先多様化を進めている。例えば直近ではフランスのラファール戦闘機やトルコのKaan戦闘機、中国のJ10戦闘機の購入に合意している。加えて防衛産業の対外依存度低下を目指し、2025年2月にはトルコのドローンメーカーバイカルとインドネシアの国営防衛企業レプブリコープがドローンの共同生産を公表するなど、自国での生産能力拡大を目指している。日本・韓国との間でも防衛装備品の共同開発・調達を通じてこれらの取り組みを加速させる意図があるとみられる。

 

他方で、足元では両国からの直接投資額は停滞している。2025年の直接投資実現額は、日本が50兆ルピア(約4,700億円)と前年の51.9兆ルピアから僅かに減少したほか、韓国も31.7兆ルピア(約2,980億円)と前年の44.8兆ルピアから大きく低下した。

 

2026年2月・3月にはMoody's・Fitchが政策の予測可能性低下や政権のガバナンス低下を理由にソブリン格付見通しを引き下げたほか、2月にはマンディリ・インスティテュートが2025年の人口に占める中間層の割合が低下したと公表するなど、政策変更リスク拡大やマーケットの成長性を懸念したものと考えられる。

[トランプ大統領演説] 

4月2日、トランプ大統領は対イラン軍事作戦の進捗とその意義について、米国民に向けて演説を行った。大統領は、米国がその全ての軍事目標を近々達成すると述べる一方、今後2~3週間にわたり、イランに対して苛烈な攻撃を加えてイランを徹底的に破壊するとも発言した。イランとの停戦合意がまとまらなければ、今後、発電施設や石油関連施設をも破壊すると警告。過去の戦争と比べても遥かに短期間で目標を完遂しつつあるとその成果を誇った。ホルムズ海峡に関しては、同海峡を通過する中東産エネルギーに依存する国々が自ら警護にあたるべきだとのかねてからの主張を繰り返し、米国もそうした活動を支援する準備はあることを示唆した。トランプ政権が改めてNATO(北大西洋条約機構)からの脱退を検討しているとの報道もあるが、欧州諸国における拠点を活用することで米国の対イラン軍事作戦は成立している。今後のトランプ政権による政治判断と軍事的合理性に基づく判断のせめぎあいも注視される。

[肥料高騰のブラジルへの影響] 

マットグロッソ州農業経済研究所(Imea)は、ホルムズ海峡の物流停滞を背景とする尿素およびリン酸肥料価格の急騰が、2026/27年作の農業生産に与える影響について分析を行った。肥料価格の上昇は、単なるコスト増にとどまらず、作付構成や生産量そのものを左右しかねない局面に入りつつある。

 

Imeaによれば、今回の肥料危機は、ブラジルの需給サイクルにとって極めて敏感な時期に発生している。トウモロコシ生産に不可欠な窒素肥料の輸入は、例年3月頃から本格化し、第3四半期から第4四半期にかけて数量が大きく増える。一方、大豆生産で主に使用されるリン酸肥料の輸入も3月から始まり、第2四半期から第3四半期にピークを迎える。つまり、価格上昇がまさに「買い付け初期」に重なっており、生産者は高値リスクを回避しにくい状況に置かれている。

 

Imeaの調査によれば、マットグロッソ州の農家が2026/27年作向けに確保済みの尿素は、必要量のわずか約6%にとどまっている。これは例年の同時期の平均を大きく下回る水準であり、多くの農家が今後の価格変動に無防備な状態でさらされている。

 

具体的なコスト影響の試算では、トウモロコシ生産において、窒素肥料価格が30%上昇すると、コストは4.68%増加するとしている。トウモロコシは単収が高い一方で肥料依存度も高く、価格上昇の影響を最も受けやすい作物となっている。大豆については、懸念の中心はリン酸肥料となっており、昨年ブラジルはリン酸肥料輸入の約40%をエジプトとイスラエルに依存していた。中東情勢の不安定化は、価格だけでなく供給そのものへの警戒感を強めている。

 

こうした価格上昇は、2026/27年作に向けた作付判断にも影響を与える。9月からの作付けシーズンにおいて、農家が第1期作トウモロコシの作付面積を減らし、その分を大豆に振り向ける動きが考えられる。また、一部の第1期作トウモロコシが、より遅い時期に肥料を調達するサフリーニャ(第2期作)へとシフトする可能性もある。サフリーニャ向けの窒素肥料購入は年後半に行われるため、それまでに価格が落ち着くとの期待が背景にある。

 

一方、大豆では、生育期間中の天候条件が良好であり、単年であれば既存の土壌肥沃度でも一定水準の収量を確保できる余地があることから、肥料コストを抑えるために単純に肥料の使用量を減らす可能性もある。

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