2026年4月20日 (月)
[ウクライナ経済/26年成長見通し]
ウクライナ経済は戦争長期化の影響で回復力を欠き、2025年の実質GDP成長率は1.8%と、侵攻後で最も低い水準となった。2023年の反動増(5.5%)、2024年(3.2%)から鈍化が続き、2026年も戦闘継続を前提にすれば、実質GDP成長率は1.5~2.5%にとどまる見通しである。ロシアによる冬季のエネルギーインフラ攻撃は産業生産を直撃し、2026年も同様の下振れリスクが高い。
インフレ率は一時的な沈静化を経て再加速の兆しを示し、スタグフレーション懸念が浮上している。貿易赤字は2025年に510億ドルへと急拡大し、経常バランスは対外支援への依存を強めている。通貨フリブニャは管理的に減価が進み、外貨準備は高水準を維持するものの、財政・為替の安定は引き続き西側支援に大きく左右される構図が続く。
[米・イラン停戦交渉の行方]
トランプ米大統領は自身のSNSで、パキスタンのイスラマバードでの交渉に向け米代表団が現地入りすると投稿し、4月21日に交渉を再開する意向を示した。当初はバンス副大統領が代表団を率いると見られていたが、「安全上の理由」から不参加となり、代わってこれまでと同様、ウィトコフ特使やクシュナー氏らが交渉にあたる見通しである。2週間の停戦期限が日本時間4月22日午前に迫る中、交渉の先行きは不透明な状況にある。
最大の争点は、ホルムズ海峡と核問題をめぐる対立である。米国はイランに対し、高濃縮ウランの放棄と海峡の完全開放を求める一方、イラン港湾への封鎖措置を継続している。これに対しイランは、封鎖解除を交渉参加の前提条件とし、米国の要求を「非現実的」と批判している。実際、イランは米国の封鎖継続を停戦違反と主張し、一度は「開放」を表明したホルムズ海峡の再封鎖に踏み切った。商船への発砲や通航制限も発生しており、海峡の安全性は大きく損なわれている。
こうした応酬の中、米国も対抗措置を強化している。イラン船舶の拿捕や航行阻止を行い、海上封鎖を維持するとともに、軍事的圧力を示唆する強硬な発言も繰り返している。一方でトランプ大統領は合意成立に楽観的な姿勢も示しており、圧力と交渉を併用する戦略がうかがえる。しかしイラン側は、米国の立場の変動や矛盾を指摘し、交渉への参加すら確定していない状況にある。
現時点では停戦は維持される可能性が高いとみられるものの、合意成立までの道のりは依然として険しい。海峡運用をめぐる主導権争いと相互不信が続く限り、船舶交通は低水準にとどまり、局地的な衝突のリスクも残る。今回の協議は中東情勢の安定化に向けた重要な試金石となり得るが、停戦期限直前の交渉であることから、停戦崩壊の潜在的リスクも内包している。
[南アフリカ/野党・党首懲役刑判決]
4月16日、南アフリカ(南ア)のクゴンポ(旧イーストロンドン)下級裁判所は、極左政党「経済的開放の闘志(EFF)」のジュリアス・マレマ党首に対して、5年の懲役刑を課す実刑判決を下した。マレマ氏は2018年にクゴンポがある東ケープ州でEFFの党結成5周年イベントを実施した際に、会場を盛り上げるために空包射撃を実施。銃器不法所持罪をはじめ複数の罪状で起訴されていた。マレマ氏の弁護士は有罪判決と量刑の双方に対して控訴の意向を示している。
マレマ氏はもともと最大政党・「アフリカ民族会議(ANC)」の出身で、ANC若手党員の代表格であるユース・リーグの議長も務めた。しかし、2013年にANCを離党し、EFFを結党。黒人の間で広がる格差や、若者の失業問題に焦点を当て、赤いベレー帽をかぶり、過激な抗議活動を行うスタイルは、1994年のアパルトヘイト廃止後に生まれた若者世代「ボーン・フリー」の支持を集めた。EFFはズマ前大統領の汚職問題などによりANCの支持率が低下する中、ANCからの離反票を吸収する形で、2019年の総選挙では10.8%の得票を獲得。当時最大野党だった白人を支持基盤とする「民主同盟(DA)」に次いで野党第二党を維持した。
しかし、ANCの汚職を追求してきたEFFの幹部自身にも汚職疑惑が浮上したことに加え、ANCを離党したズマ前大統領がEFFと思想的に近しい極左政党「民族の槍(MK)」を立ち上げたことにより、EFFの支持率は低下。2024年の総選挙ではEFFの支持率は9.5%に低下し、DAの21.8%、MKの14.6%に大きく差をつけられた。この選挙での敗北を受けて、2013年にマレマ氏と共同でEFFを結党したフロイド・シンバブ副党首をはじめ幹部が離党。事実上、現在のEFFの支持者はマレマ氏に対する「個人崇拝」の状態のため今回の同氏に対する有罪判決は党の存続を揺るがすものとなり得る。
南アの憲法では、12か月以上の懲役刑が課された国会議員は議員資格を剥奪されることとなる。ズマ氏も2021年に15か月の懲役刑が下され、収監された(その後、支持者による大規模な抗議・破壊活動が生じた)。しかし、控訴期間中は適用外となるため、マレマ氏は最低でも数か月は議員職を継続できるとみられている。仮に最上位となる憲法裁まで審理が上がれば、最終判決まで数年を要する可能性もある。一方で、争点となるのは2029年の総選挙だ。もし、マレマ氏に最終的に12か月以上の実刑判決が下されれば、服役後も5年間の資格停止処分を受けるため、2029年の選挙にマレマ氏が出馬することができない。そうなれば、依然として10%前後の支持があるEFF票の動向は、過半票を取得できる政党がなく、連立政権を組成している南ア国内の政治的駆け引きに少なからず影響を与える。
前回2024年の総選挙でANCが40.2%と過去最低の得票結果と終わった際、ANC内の左派グループを中心にEFFとMKとの連立政権組成に向けた交渉も行われた。しかし、結果的にはANC党首であるラマポーザ大統領が、ANC内の反対派を説得して、親ビジネス派のDAや、穏健派の「インカタ自由党(IFP)ら10党との連立政権(GNU)を組成。黒人への分配や中銀や民間企業の国有化などを掲げるMKとEFFは除外された経緯がある。その後南ア経済は市場での信頼が回復し、財政再建が進展した。他方で、依然としてANC内にはEFFやMKとの連立政権を志向する幹部も少なくない。特にANCの副党首であるポール・マシャティレ副大統領はEFFに対して協力的な姿勢を示しているとみられている(4月19日付、Africa Report紙)。ANCは2027年に総裁選を実施する予定だが、ラマポーザ大統領は党首の座を降りることが既定路線となっている。代々、ANC党首が大統領職を務めていることから、次期総裁選の最有力候補とみられているマシャティレ氏が党首に就任すれば、2029年の選挙の結果次第では大統領に就任する可能性がある。他方で、次回総選挙でもANCは単独過半数を得ることは不可能とみられており、連立政権の構築が必要となることから、マシャティレ氏は選択肢として再びEFFやMKとの連立を模索するとの見方もある。親ビジネス派のDAは2024年選挙後の連立政権加入をめぐる交渉に際して、MKとEFFが連立に入る場合は、DAは連立に入らない姿勢を明確にしていた。今後ANCがEFFへのアプローチを強めれば、DAが離脱し、市場の信頼低下を招く可能性もある。
マレマ氏の審理の行く末は、EFFの党の未来を方向づけるだけではなく、数年先の南ア政治のあり方や経済の安定性を占う上でも注目に値する。
[中国・出国留学生数の減少]
中国の出国留学者数の減少について中国経済誌『財新』が報じている。2025年の出国留学者数は57.06万人で、2019年のピーク(70.35万人)に比べ約2割減少し、2016年ごろの水準となった。
2008~2019年は経済成長や所得向上、政府の「留学奨励・帰国促進」政策、欧米の受け入れ拡大を背景に中国から海外に留学する学生数が急増し、中国は世界最大級の留学生供給国となった。しかし2020年以降はコロナ禍や世界経済の不確実性により拡大傾向が転換し、留学規模は調整局面に入っている。
一方で、帰国者数は近年では連続して増加しており、累計では留学経験者の約87%が帰国を選択している。背景には国内の雇用機会や政策支援の改善に加え、海外での就労・移民環境の悪化がある。例えば英国では就労ビザの最低給与要件が引き上げられるなど、留学生の現地就職がより困難になってきている。結果として、帰国して就職する留学生も増え、国内の留学人材市場は拡大傾向にある。
留学先の選択も変化している。米国、英国、オーストラリア、カナダなど従来の主要目的地は依然として人気があるものの、米国では中国人留学生数が過去10年間で減少している。一方で香港、シンガポール、マレーシアなど、距離が近くコストが比較的低い地域への関心が高まっている。また、複数国に同時出願する「分散戦略」が一般化し、リスク回避志向が強まっている。
さらに、留学先の決定において、コストと投資回収がますます重視されるようになっている。学費が専攻や就職率に次ぐ重要要素となり、奨学金の有無も判断材料とされる。2026年の平均留学予算は60.5万元と過去最高に達し、インフレの影響もあり負担が増大している。
[ブラジル組織、米からテロ指定への懸念]
米国政府が、ブラジル最大の犯罪組織であるPCC(首都第一コマンド)やCV(コマンド・ベルメリョ)を外国テロ組織(FTO)に指定する可能性を検討しているとの観測が強まっている。これらの組織は長年、麻薬密売や暴力犯罪を主な活動とする組織犯罪シンジケートとして扱われてきたが、近年、米国の安全保障当局の間で、その位置付けを見直す議論が浮上している。
PCCはブラジル国内のみならず周辺国にもネットワークを持つ南米最大級の犯罪組織であり、CVも長い歴史と強い影響力を有している。米国側は、これらの組織をテロ組織と位置付けることで、従来の麻薬対策を超え、軍や情報機関を含む幅広い手段を法的に動員できる余地を広げようとしているとみられている。
しかし、この動きはブラジル国内で強い反発を招いている。ルーラ政権は、こうした指定がブラジルの主権を侵害する可能性があると警戒している。米国が一方的にテロ組織と認定した場合、将来的にブラジル領内での軍事的・準軍事的行動を正当化する口実になりかねないとの懸念がある。さらに、ブラジルの国内法では、テロリズムは政治的またはイデオロギー的動機を持つ行為として定義されており、経済的利益を目的とするPCCやCVをテロ組織と認定することは法的に困難であるという立場が取られている。締め付けが強まれば、組織がより過激化し、都市部で無差別的な暴力行為が増えるリスクも指摘されている。
この問題で最も大きな影響を受ける可能性があるのは、治安当局よりもむしろ民間経済である。PCCやCVは、物流、農業、建設、デジタル決済など、合法的な経済活動にも深く浸透しているとされており、ブラジル企業や外国企業が意図せずこれら組織と接点を持った場合、テロ支援と見なされるリスクが生じる。これにより、米国の金融機関がリスク回避のためにブラジルとの取引を縮小する、いわゆるデリスキングが進み、投資や貿易が冷え込む可能性がある。企業にとっては、サプライチェーン全体を精査する厳格なコンプライアンス対応が求められ、そのコストと負担は非常に大きなものとなる。
この問題は、2026年10月に予定されているブラジル大統領選挙とも密接に関わっている。国内の右派勢力の一部は、治安強化の観点から米国の姿勢に理解を示す一方、左派のルーラ政権は主権と法秩序の観点から反対姿勢を強めており、政治的対立は深まりつつある。また、米国側がこの指定問題を外交上の交渉材料として用い、貿易や外交政策での譲歩を引き出そうとする可能性も否定できない。
この構想が現実の政策として実行に移されれば、ブラジルの治安政策のみならず、国際金融、企業活動、そしてグローバルなサプライチェーン全体にまで、深刻な影響が及ぶ可能性が高い。
[米国農家の肥料調達状況]
米国最大の農業ロビー団体であるAmerican Farm Bureau Federation(AFBF)は、世界的な肥料市場の混乱が農業経営に与える影響を把握するため、4月3~11日に全米の農家・牧場主を対象に調査を実施した。この結果、約5,700人の回答者のほぼ6割は財政状況悪化を報告し、約7割は必要な肥料を全て購入する余裕がないとして、政府に対して即時の経済支援を求めている。
ペルシャ湾周辺は世界の尿素輸出の約49%、アンモニアの約30%を占める。米国は最大の石油・ガス生産国だが、国際市場との連動により国内農家も価格高騰の影響を強く受ける。AFBFは、米国でも農業用ディーゼル価格は2026年2月以降に46%上昇、尿素価格は2月末以降に47%上昇したと指摘。このコスト高は、多くの生産者が既にマージン低迷で苦戦していた中で起こった。
肥料の事前確保状況は地域差が大きく、中西部は67%と相対的には高い一方、北東部は30%、西部31%、南部19%にとどまる。中西部ではトウモロコシ・大豆輪作が多く、作付け前に購入判断を行う慣行が背景にあるが、他地域では施用直前購入が多く、価格変動リスクに脆弱。特に南部では78%が必要資材を十分に確保できていない。作物別では大豆(49%)・大麦(47%)・トウモロコシ(44%)・小麦(42%)の生産者が肥料を事前予約しているが、南部のコメ・綿花・落花生生産者の事前調達率が著しく低い。また、小規模農家ほど事前確保率が低い。
AFBFは、生育期において厳しい財政状況が作付けや購入の意思決定に影響していると指摘したうえで、米政権が燃料輸送の安全を確保する取り組みを行うのであれば、食料安全保障の観点からその対象を肥料や農業資材にも広げるべきだと訴えている。
なお、ロイター通信によると、一部農業団体や与党共和党議員からは、肥料会社が不当に価格をつり上げているとの批判が出ているが、肥料価格は海外市場で米国価格を大きく上回るため、業者が米国向け肥料を海外に転売しているケースもあるという。大手肥料メーカーCF Industriesは3月下旬、米国農家が肥料を確保できるよう、春の作付け期間中は新規輸出受注を見合わせると発表しているが、メーカーが管理できるのは肥料生産から流通業者への販売までで、その先を管理することは困難だと同記事は報じている。
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