デイリー・アップデート

2026年4月21日 (火)

[ブルガリア/選挙結果] 

2026年4月に行われたブルガリアの総選挙(過去5年間で8回目)において、ラデフ前大統領が率いる中道左派の新党「進歩的ブルガリア」が勝利した。元空軍司令官であるラデフ氏は、今回の選挙で実質的な行政権を持っている首相職を目指し、2026年1月に大統領職を辞任していた。開票結果の予測や公式集計によると、「進歩的ブルガリア」党は約44~45%の得票率を獲得しており、議席配分に関する公式発表は行われていないが、全240議席中、単独過半数に達する可能性が高いとみられている。一方、ボリソフ元首相率いる中道右派「GERB」の得票率は約13~15%にとどまり、親EUの自由主義改革派連合「PP-DB」が約14~15%を獲得し、2位と3位を争う結果となった。

 

ラデフ氏は選挙戦において、ブルガリアの「オリガルヒ(新興財閥)による支配モデル」を解体し、マフィア国家と化した政治の腐敗を撲滅することを最大の公約に掲げ、新政権の最重要課題として司法制度の改革を挙げている。ラデフ氏は、この実現(憲法改正に必要な160議席の確保)のため、汚職撲滅という共通の目標を持つ改革派の「PP-DB」などとの連立や協力に前向きな姿勢を示している。

 

ラデフ氏は親ロ的で欧州懐疑派とみなされることが多く、ロシアへの制裁やウクライナへの自国兵器の供与に反対し、ロシアとの対話再開や安価なロシア産エネルギーの輸入を主張してきた。しかし、同氏は自らを「親ロ派」ではなく「親ブルガリア的かつ親欧州的」だと発言しており、EUおよびNATOへの残留は支持している。

 

ラデフ氏は、ハンガリー議会選挙で親ロ政権であるオルバン前首相を破ったEU回帰派のマジャール氏の姿勢をモデルにしていると発言し、「ウクライナへの資金的・軍事的支援は行わないが、EUレベルの決定事項に拒否権を発動して妨害することもしない」という立場を表明している。ロシアのメディアは同氏を「ブルガリアのオルバン」と呼んで期待を寄せているが、実態的には、新規のウクライナ支援などには懐疑的な姿勢を示しているものの、単独でEUのウクライナ政策などに拒否権を行使するようなことはないともみられており、今後の展開には注意が必要である。

 

2026年1月のユーロ導入以降、ブルガリアでは生活費の高騰が主要な懸念事項となっている。ユーロへの移行によりインフレ率が0.3~0.4%上昇したとされており、新政権を率いる見通しのラデフ氏は、ユーロ導入がインフレを助長したとして、導入に至るまでの意思決定や手続きに批判的な立場をとっている(ユーロ圏脱退そのものは求めていない)。

 

今後の経済における最優先課題は、政局の混乱によって未承認となっている2026年度予算の成立である。現在はユーロを導入したものの、新予算がないまま2025年度予算が延長されている状態であり、新政府による早急な予算編成が求められている。

[エチオピア/ティグライ情勢] 

4月20日、「ティグライ人民解放戦線(TPLF)」は公式Facebookアカウント上で、「平和の名の下に停止されていたティグライ州議会を復活させることを決定した」と発表した(4月21日付、Al Jazeera等)。TPLFはエチオピア連邦政府がティグライ州内での武力衝突を扇動していること、また地方公務員への給与支払いを拒んでいると非難している。TPLFと連邦政府は、2020~22年に両者の間で続いた「ティグライ紛争」を終結させる和平協定「プレトリア合意」に署名した。同合意では敵対行為の即時停止、TPLFの武装解除、連邦政府による主権の再確立、ティグライにおける暫定行政組織(TIA)の設置が約束された。そのため、今回のTPLFによる「州議会の復活」の声明は、ティグライ州の主権は連邦政府ではなくティグライ州に帰属することを主張することを意味していることから、事実上プレトリア合意の破棄とみられている。

 

2025年5月に政府がTPLFの政党としての法的地位を剥奪したことなどを受け、連邦政府とTPLFの緊張関係は再び高まっている。6月1日に実施される人民代表議会選(下院選)にTPLFが参加できない中、連邦政府はTPLFの存在を法的に担保するTIAの任期を4月8日に1年間再延長し、戦闘の回避を試みた。しかし、今回のTPLFによる事実上の和平合意終了を意味する声明は、連邦政府に対して「引導を渡す」ものであり、再び軍事衝突が起こる可能性を高める恐れがある。ティグライ紛争の際には、エリトリアは連邦政府側に回ってティグライ側を攻撃していたが、プレトリア合意においてエリトリアが除外されていたことに不満を持ち、連邦政府との関係が悪化。エリトリア軍は部隊をティグライ州の国境付近に部隊を集結させており、ティグライ軍(TDF)の部隊に投入しているとの見方もある(4月9日付、Critical Threats)。エリトリアはエチオピアのアビィ首相がたびたび「紅海へのアクセス」を求めていることを、自国のアッサブ港を占領する意図があるものと捉え警戒を強めている。エチオピアのティグライ州は実際にエチオピア連邦政府軍と、TDF・エリトリア軍の軍事衝突が発生した場合、エリトリアにとって地理的な緩衝地帯にもなる。

 

また、このティグライ州での情勢の緊迫化が地域紛争に拡大する別の火種となっているのが、ナイル川の水資源を巡る上流のエチオピアと下流のエジプトとの対立だ。エジプトや米国の反対を押し切ってエチオピアが建設した「グレート・ルネッサンスダム」は2025年9月に正式に開所式が行われた。しかし、エチオピアは3月にさらに青ナイル川沿いに3つのダムを新規に建設すると発表(3月26日、The New Arab紙)。エチオピアの発電量を25%増加させることになり、すでに国際入札を行っているとエチオピア側は報じているが、ナイル川に水資源の9割以上を依存するエジプトはこれに反発している。エチオピアはエジプトに対する圧力を高めるべく、エチオピアとの関係が悪化しているエリトリアや、ソマリアとの関係強化に乗り出している。そして内戦が続き国土がほぼ二分されているスーダンでは、アラブ首長国連邦(UAE)とエチオピアが支援しているとみられている「即応支援部隊(RSF)」と対立するスーダン国軍(SAF)を軍事支援することにより、エチオピアを周辺地域から孤立させようとしている。UAEとの関係悪化が指摘されているサウジアラビアともエジプトは連携を強化している。ナイル川の水利問題を引き金にエジプトがエチオピアへの直接的な軍事攻撃に踏み切る可能性があるとの見方もあり、「アフリカの角」地域での緊張悪化に注視が必要だ。

[韓国/李在明大統領訪印] 

4月19日から韓国の李在明大統領はインドとベトナムを国賓訪問している。4月20日には最初の訪問地インドで、李大統領はモディ首相と首脳会談を行い、両国関係の強化していくことで合意した。韓国大統領の訪印は約8年ぶり。

 

会談では、中東情勢の緊迫化により国際経済の不確実性が高まる中、エネルギーや重要原材料の安定供給で協力を強化する方針が確認された。特にナフサなどの基礎原料や重要鉱物の確保に向けた連携が重視され、両国は閣僚級の「産業協力委員会」を新設することで合意した。また、原子力、クリーンエネルギー、半導体、造船、防衛など幅広い戦略分野で協力を拡大する方針も示された。

 

経済面では、2010年に発効した包括的経済連携協定(CEPA)の改定交渉を加速し、現在約250億ドル規模の貿易額を2030年までに500億ドルへ倍増させる目標を掲げた。インド側は対韓貿易赤字の是正を求める一方、韓国側は市場アクセスの拡大を重視している。両国は、インドの成長力と韓国の製造技術を組み合わせることで「相互成長の新たなエンジン」を創出するとの認識で一致した。

 

こうした政府間の動きと連動する形で、韓国鉄鋼大手ポスコはインド最大手JSWスチールと合弁で、年産600万トン規模の一貫製鉄所を建設する計画を発表した。総事業費は約10兆ウォンに上り、2031年の完成を目指す。高成長市場であるインドに生産拠点を構築することで、グローバル供給網の強化と競争力向上を狙う。

 

また、文化面でも協力は拡大する見通しで、ムンバイに韓国文化拠点を設置し、K-POPとボリウッドの交流を促進する構想が示された。

 

インドを重視する韓国の戦略は、米中対立や中東情勢の不安定化が続く中で、供給網と外交の多角化を図る動きとして注目される。

[メキシコ/経済停滞とUSMCA] 

メキシコでは、2026年の経済成長率が低水準にとどまり、インフレ率は上昇するとの見方が強まってきている。2026年の成長率は、1.5%程度、2027年は1.9%とみられており、前年の0.6%成長からは加速する見込みではあるものの、成長率が2%未満となる期間が2001年から2003年以来、最長となる見通しとなっている。

 

貿易の持ち直しや、2026年6月から7月にかけて開催されるサッカーワールドカップによる需要増、さらに公共投資の加速といった要因が、経済にプラスの効果をもたらすとの見方を示している。

 

一方で、インフレ見通しは上方修正されている。2026年は4.0%へと上昇し、2027年についても3.8%へ引き上げられた。これは、米国とイスラエル、イランを巡る地政学的緊張がエネルギー価格に影響を与えていることが一因である。銀行は、インフレ目標を3%±1ポイントとしており、中央銀行の目標水準の上限で推移するとの見方となっている。スタグフレーションとなる見方強まる中で、金融政策の方向性についても中央銀行の委員の間で意見が対立している。

 

こうした経済見通しの背景には、北米貿易協定の将来を巡る不透明感がある。メキシコにとって最も望ましいシナリオは、現行の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が大きな変更なく維持・承認されることであるが、条約の再交渉になれば、メキシコの交渉余地は非常に限られ、米国側が提案する多くの変更を受け入れざるを得なくなる可能性がある。また、原産地規則の厳格化や、移民問題のような非貿易分野の条項など、法的な予見性が低下することも危惧されている。期限は7月1日だが、協定がまとまるのは2026年後半以降になるとの見方も出てきている。

 

こうした中、メキシコのエブラルド経済大臣は、米国通商代表グリアー氏と会談し、USMCAの正式な見直し交渉が5月25日の週に開始される予定であると述べた。また、シェインバウム大統領は、USMCAの見直しを本格化させる前に、鉄鋼、アルミニウム、自動車分野に関する二国間・三国間の合意形成を目指す考えを示した。USMCAの枠組みによって、メキシコから米国への輸出品の大部分は関税の免除や軽減を受けており、この協定はメキシコ経済にとって極めて重要な基盤となっており、USMCAの見直し交渉は、メキシコ政府にとって最優先の外交・経済課題の一つとなっている。

[日本/変化する消費者マインド] 

日本銀行は「生活意識に関するアンケート調査」の結果を公表した(調査期間は2月4日~3月9日、一部中東情勢の影響も反映されている)。5年後の物価上昇率について平均10.3%となり、前回2025年12月調査(9.8%)から拡大した。同年9月調査(10.0%)以来の10%台であり、比較可能な2006年9月以降で最高になった。また、1年後の物価上昇率は平均11.4%となり、12月調査(11.6%)から小幅に低下した。直近ピークは6月調査(12.8%)であり、2023年以降おおむね10%を上回っている。このように、消費者は高めの物価上昇が継続すると予想している。

 

一方で、雇用・所得環境の改善は実感されている。収入について、1年前から「増えた」の割合は18.6%、前回の15.8%から増加した。収入DI(「増えた」と「減った」の回答割合の差)は▲6.5ポイントであり、12月(▲11.5ポイント)から改善した。これは、比較可能は2006年以降で最大だった。また、1年先に収入について「増える」は14.2%、12月(12.5%)から改善し、この収入DI(「増える」―「減る」)は▲10.7ポイントとなり、12月(▲14.0ポイント)から改善した。

 

1年後の雇用・処遇についての不安は、「あまり感じない」の割合が28.2%と、12月(25.6%)から上昇した。その一方で、「かなり感じる」は27.9%へ減少、それらの差し引きであるDIは+0.3ポイントのプラスに転じた。直近ピークの2021年12月(+1.4ポイント)に近づいた。

 

こうした環境の変化もあって、日本経済の成長力について「より高い成長が見込める」の回答割合は7.9%になった。9月(3.4%)や12月(6.1%)から徐々に増加してきた。それに対して、「より低い成長しか見込めない」は39.4%であり、9月(54.4%)や12月(43.5%)から減少した。その結果、それらの差し引きであるDIは▲31.6ポイントとなり、9月(▲51.0ポイント)や12月(▲37.4ポイント)から改善し、比較可能な2006年以降のピークの2013年6月(▲26.7ポイント)に迫りつつある。

 

足元では、中東情勢の緊迫化などから、今後の物価上昇などが懸念される。しかし、雇用・所得環境や物価情勢の変化などから日本経済を巡る環境に上向きの変化の兆しが表れていたことに注意が必要だろう。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。

30人が「いいね!」と言っています。