自然の中の人類

2026年09月30日

住友商事グローバルリサーチ 経済部 戦略調査チームリーダー チーフアナリスト
大井 二三郎

 

 国内の集中豪雨、ヒマラヤの氷河崩壊、欧州の乾燥・山林火災。今年も気象災害のニュースが多い。この夏は最高気温40℃以上の「酷暑日」も多かった。ホルムズ海峡危機はエネルギー安全保障の重要性を再認識させたが、近年の気温上昇を考えればやはり気候変動対策も軽視できないだろう。人類の農耕開始の背景に最終氷期以降の大幅な気温上昇(+5~6℃)があったとすれば、気温の変化は人類に機会も与えるのかもしれないが、安定した気候が続く中で人間社会は気候変動に脆弱になったのかもしれない。17世紀の小氷期は1℃程度の気温変化(寒冷化)に過ぎなかったが、ヨーロッパや中国をはじめとして各地で社会の動揺が見られた。足元の気温の上昇は、総合的にはどのような影響をもたらすのだろうか。

 

 自然への負荷という点では、生物多様性の確保というテーマも気がかりである。先史時代のアメリカ大陸における大型哺乳類の絶滅には人類の行動も関係していると言われるが、仮にこの絶滅によって家畜化の可能性のあった大型動物まで失われたのだとすれば、過去の人類の行為がその後の人類の生活に大きな影響を及ぼしたことになる。現在も、人類は生態系にかなりの負荷をかけているようだ。地球上の哺乳類を炭素量に換算して比較すると、6割は家畜、4割弱は人類が占め、野生動物は5%程度にすぎないらしい。自然への負荷が将来の人類の選択肢を奪ってしまうようなことがないことを願う。

 

 もっとも、これまで地球上では、気候変動政策の目標とされる「1.5度」の気温上昇をはるかに超える大きな気候変動があり、生態系に甚大なインパクトを与えるようなイベントもあった。前述の炭素量で言えば、生態系全体では8割超は植物、1割強がバクテリアで、哺乳類は鳥類と併せても生物全体の0.03%に過ぎない。地球環境のバランスはあまりに複雑で、実際には人類には自らが地球環境に対して何をしているのかを理解することすら難しいのかもしれない。

 

 様々な政策目標は、所詮、人類にとっての閾値に過ぎないのだろう。とは言え、これまで人類は多くの化石燃料を使い、多くの土地を切り開き、活用することによって豊かな生活を追求してきた。そして、微妙なバランスの上で成り立つ現代社会では、自然にかけた負荷の対価をどのように支払っていくのかについても意識せざるを得ないだろう。

 


 

<執筆者・アーカイブ>大井 二三郎 

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