デイリー・アップデート

2025年10月20日 (月)

[気象/農産品市況] 

10月10日、日本の気象庁が発表した「エルニーニョ監視速報」によると、現在はラニーニャ現象に近い状態となっており、冬の前半にかけてこの状態が続く見通しだ。しかし、その後は急速にこれが解消するためラニーニャ現象の発生には至らず、平常の状態が続く可能性が高いという。

 

10月9日に米国海洋大気庁(NOAA)の気象予報センターは、2025年9月の海面水温が平年を下回り、「ラニーニャ状態が現在存在している」と述べたが、2025年12月から2026年2月にかけてこの状態が継続した後、2026年1月から3月にかけて中立状態(ENSO ニュートラル)へと移行する確率が55%だとの判断を示した。このラニーニャは比較的弱めで、典型的なラニーニャほど強い影響にならない可能性があるという。

 

過去5回の冬で4回ラニーニャ現象が発生しており、今回発生すると6回目となる。ラニーニャ現象発生の際の各地の気象状況にはパターンがあるが、毎回、状況は少しずつ異なる。今回は微妙な判断となっており、市場は今後の動向を注視している。

[マダガスカル] 

10月17日、首都アンタナナリボの最高憲法裁判所で軍・精鋭部隊「CAPSAT」元大佐のランドリアニリナ氏の大統領就任式が実施された。9月25日から続いた大規模な反政府抗議デモののち、10月14日に同氏は「軍が全権を掌握した」と発表。ラジョリナ大統領の国外退避と、同氏に対する弾劾裁判可決を受けて、最高憲法裁判所はランドリアニリナ氏に大統領に就任するよう要請していた(2025年10月15日デイリー・アップデート参照)。

 

フランス、EU、米国、中国、ロシアの政府代表らが参加した就任式で、ランドリアニリナ大統領は、「我々は過去との決別を誓う。主要な使命は、国の行政・社会経済・政治統治システムを徹底的に改革することだ」と宣言した(10月18日付、英BBC)。ランドリアニリナ氏は「2年以内」の民主的な選挙の実施を公約に掲げている。その間は軍が「移行期防衛国民委員会(CNDT)」の議長を務める。並行して設立される暫定文民政権も軍が支援するとの意向を示しており、10月22日前後に新首相の発表が行われる見込み(10月19日付、仏ル・モンド紙)。

 

ランドリアニリナ大統領は、これまでも国際社会からの批判を避けるために「クーデターではない」と主張している。また、「軍が権力を掌握した」と宣言した際には、下院議会を除く最高憲法裁判所や、選挙管理委員会などほぼ全ての国家機関を解散させると述べていたが、すぐにこれを撤回(10月17日付、仏RFI)。マダガスカル政府の総歳入のうち、国際機関や諸外国からの資金援助が約2割を占めており、それゆえ、クーデターではなく、国家機関が存続していることを、ドナーとの今後の交渉においてアピールしたい狙いがあるとみられる。ランドリアニリナ氏は、今回のデモの発端ともなり、また、かねてから国際通貨基金(IMF)が早急な経営改革を求めていた、「電力・水道公社(JIRAMA)」の調査を開始すると述べている。

 

マダガスカル南端部のアンドロワ地方出身のアンドリアニリナ氏は、推定年齢で50~51歳。敬虔(けいけん)なキリスト教徒(ルーテル派)として知られる。軍でのキャリアが長く、国政の表舞台に立つことはこれまで一度もなかった。しかし、2023年にラジョリナ大統領に対するクーデター計画の容疑で3か月間拘留された経験をもつことから、反ラジョリナ派の野党勢力に好意的な姿勢を示すとみられる。歴代の大統領はアンタナナリボを含む高原地帯から選出されていただけに、南部出身者の大統領就任は異例とみられている。同氏は「権力掌握後」のインタビューでもフランス語ではなく、マダガスカル語(どちらも公用語)の使用を好んでおり、「親仏政権」だった前政権とのスタンスの違いが表れている。

 

しかし、海外退避中のラジョリナ大統領(ドバイ滞在中とみられている)は依然として弾劾を無効だと主張しており、軍が政権移行を順調に進められるか見通しを立てることは難しい。英・Economist Intelligence Unitは、「2年以内に比較的平和に文民政権に移行する」との予測を示しつつも、軍が権力の保持に固執する場合は、諸外国からの融資停止や制裁などのリスクを招く恐れがあると指摘。また、格付け大手S&Pグローバルは10月17日、マダガスカルの政治不安の高まりによる財政の悪化や公的支援停止の可能性を受け、同国の格付けを当座3か月間にわたり「ネガティブ・ウォッチ」に指定すると発表している。

[ウクライナ/米国/ロシア] 

10月17日、トランプ米大統領は、ホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。ロシアによる侵攻を受けるウクライナが求める巡航ミサイル『トマホーク』をめぐり、トランプ大統領は「供与せずに戦争を終結させたい」と表明し慎重姿勢を見せた。会談後、現在の前線を凍結し即時停戦するようウクライナとロシアに呼びかけた。

 

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は米国NBCとのインタビューで和平交渉について、まずは現在の前線を凍結して戦闘を停止した上で開始すべきだとの考えを示したが、いかなる領土割譲も拒絶した。

 

ほか、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は関係者の話として、トランプ大統領が首脳会談の場で、ロシアが要求している停戦条件を受け入れるようゼレンスキー大統領に強く促したと報じた。同意しなければ「ウクライナを破壊する」とプーチン大統領が述べたと警告したという。10月17日にホワイトハウスで行われた会談では、何度も「激しい口論」になったとFTは伝えている。

 

10月18日、米国紙ワシントン・ポストは、ロシアのプーチン大統領が10月16日のトランプ米国大統領との電話会談で、侵攻するウクライナでの停戦条件として東部ドネツク州全域の割譲を求めたと報じた。見返りに南部ザポリージャとヘルソン両州の一部地域の支配を放棄する考えを示唆したという。

[米国/イスラエル/パレスチナ] 

10月19日午前、ガザ地区南部ラファハで、武装勢力がトンネルから出てイスラエル軍に対して対戦車ミサイルを発射し、イスラエル兵2人が死亡、3人が負傷したとのこと。ハマスは事件への関与を否定しているが、イスラエルはハマスによる停戦合意違反だとして強く非難し、ガザ地区全域に数十回の空爆を実施した。これにより少なくとも45人が死亡したとされる。イスラエルは10月20日から停戦を再開すると発表している。

 

10月19日、ハマスは人質の遺体2体をイスラエル側に返還し、これまでに計12体の遺体が引き渡された。ガザには依然として16体の遺体が残っている。一方、イスラエル側もすでに150体のパレスチナ人遺体をガザ側に返還している。

 

10月21日には、米国のヴァンス副大統領がイスラエルを訪問する予定で、ウィトコフ中東担当特使およびクシュナー元大統領上級顧問も同行する見通しである。今回の訪問は、不安定な停戦の維持と、合意の次の段階への移行に向けた道筋をつけることを目的としているとみられる。協議では、停戦合意違反の扱い、ラファハ検問所の再開、ハマスの武装解除のスケジュール、イスラエル軍のさらなるガザからの撤退など、複数の難題が議題となる見通しである。

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