デイリー・アップデート

2025年10月22日 (水)

[お休みのお知らせ] 

2025年10月23日~24日の2日間、デイリー・アップデートはお休み致します。ご了承ください。

[ウクライナ/米国/ロシア] 

10月21日、米国政府関係者は、トランプ米大統領が10月16日に「約2週間以内」に実施したいとの意向を示したハンガリーでの米国・ロシア首脳会談について、「近い将来には計画されていない」と表明した。トランプ大統領もホワイトハウスで記者団に対し、「無駄な会談はしたくない」と述べ、会談は一転して見送りとなった。理由は明確ではないが、ウクライナ停戦交渉に関しては、双方の見解に相違があるとされる。停戦合意の一環として、欧米とウクライナは現行の戦線を凍結すべきだと主張している一方で、ロシア側はこれを拒否している。

 

10月21日、ロシアのラブロフ外相は、トランプ大統領が主張する現在の前線での停戦案を巡り、「単に停止することは紛争の根本原因を忘れることを意味する」とし、受け入れられないとの考えを示した。ロシアは即時停戦ではなく、包括的な『和平合意』を目指すべきだと強調している。

 

同日10月21日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシアは外交から離脱しようとしているもよう」と訴えつつ、欧州各国の首脳と、現在の前線での即時停戦を求める共同声明を発表した。10月23日には、ブリュッセルでEU首脳会議が開催される予定で、ロシアへの追加制裁や、凍結されたロシア中銀資産を活用するウクライナ支援策が協議される見通しである。

[中国/日本/韓国] 

中国は日本および韓国との三国間通貨スワップ協定の締結を検討しており、10月中旬にワシントンで開催されたIMF・世界銀行年次総会の傍ら、中国人民銀行の潘功勝総裁が日本銀行の植田和男総裁、韓国銀行の李昌鏞総裁と協議を行ったと、『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)』紙が報じている。

 

米国トランプ政権による関税の影響を受ける中、中国側には域内金融の安全網を強化するとともに、ドル依存の軽減と人民元の国際利用拡大を図る狙いがあるとされる。また、中国は日本・韓国との自由貿易圏構想(日中韓FTA)の推進にも意欲を示している。

 

中国と韓国の5年間の通貨スワップ協定(総額4,000億元=約561億ドル)は2025年10月10日に期限切れを迎えたが、延長の公式発表はまだされていない。日本と中国は2024年10月に3年間のスワップ協定(2,000億元)を延長しており、日本と韓国も2023年12月に100億ドル規模の3年間スワップを再開している。中国人民銀行の提案は、これらの延長線上にあるものであり、現時点では三国間協定となるか、二国間の拡大版にとどまるかは不透明である。

 

仮に実現すれば、2000年にASEAN10か国と日中韓で設立された「チェンマイ・イニシアティブ」(多国間通貨スワップ枠組み)の拡充形となる可能性があり、今後、ASEAN首脳会議やAPEC首脳会議の場でも同様の議論が行われる見通しとしている。

 

中国人民銀行はすでに32の中央銀行と通貨スワップ協定を締結しており、総額は4.5兆元(約6,200億ドル)に達する。人民銀行が発行する機関紙では、「人民銀行のスワップ網はグローバル金融セーフティネットの重要な構成要素となった」と強調されており、今後も貿易相手国との協力拡大と流動性供給の強化を進める方針を示している。

 

一方で、日本と韓国にとっては、ドル圏から相対的に独立した「東アジア通貨連携網」に対して、米国がどのように反応するかを見極める必要があるとみられる。

[日本] 

財務省「貿易統計」によると、9月の貿易収支は▲2,346億円と3か月連続の赤字だった。円相場は1ドル=147円61銭(前年同月比+2.3%の円安・ドル高)。輸出額は9兆4,137億円(前年同月比+4.2%)へ5か月ぶりに増加した。ただし、数量(▲1.3%)は2か月連続で減少した。内訳をみると、半導体等電子部品(+12.6%)や鉱物性燃料(+46.9%)、原料品(+26.6%)などの増加が目立った。一方、輸入額は9兆6,483億円(+3.3%)へ3か月ぶりに増加した。数量(+5.9%)も2か月ぶりに増加した。電算機類(+28.0%)や通信機(+14.7%)、航空機類(+205.6%)などが増加した。それに対して、石炭(▲31.1%)や原粗油(▲8.6%)、液化天然ガス(▲13.3%)などが減少した。これらの数量をみると、石炭(+3.3%)、原粗油(+1.4%)、液化天然ガス(▲5.0%)であったため、引き続き価格低下の影響が大きかったと言える。

 

対米国の輸出額は1兆6,049億円(▲13.3%)と、6か月連続で減少した。自動車(▲24.2%)や半導体等製造装置(▲45.7%)、原動機(▲13.2%)などの減少が目立った。自動車関連で輸出減少全体の半分近くを占めた計算だ。米国からの輸入額は、1兆816億円(+7.1%)と2か月連続で増加した。特に、航空機類(+198.9%)や液化石油ガス(+62.8%)、原粗油(+43.9%)などの増加が目立った一方で、液化天然ガス(▲84.8%)や電算機類(▲57.6%)などが減少した。差し引きは5,233億円(▲37.7%)、5か月連続で減少したものの、黒字を維持した。

 

なお、対米輸出額の約23%を占める自動車の台数(▲14.2%)も減少したため、価格低下幅は約1割だった。自動車関税が引き下げられた影響などもあって、低下幅は8月の約2割から縮小した。

[コートジボワール] 

10月25日に大統領選が予定されているコートジボワールでは、政府による野党の抗議活動の抑制(repression)の強化が行われている。10月17日、政府は大統領選に立候補している5人を除く、「政党または政治団体」によるあらゆるデモや政治集会を2か月間禁止すると発表した。

 

9月に憲法評議会が発表した大統領立候補者リストにおいて、最大野党「コートジボワール民主党(PDCI)」のティジャネ・ティアム党首や、「コートジボワール・アフリカ人民党(PPA-CI)」党首のローラン・バグボ前大統領が除外されたことを受け、両党は「共同戦線」を組成。両党支持者らへの抗議活動を呼びかけていた(2025年10月7日デイリー・アップデート参照)。両党は党公認候補を大統領選立候補者として選出することに失敗したため、大規模な抗議活動の動員が、大統領選に対する限られた意思表示の手段となっていることが背景にある。

 

こうした野党の動きを受け、政府は10月2日に「大統領選の立候補者」の決定に関する抗議を禁止すると発表していた。公式な選挙戦が開始された10月10日の翌日、最大都市アビジャンのココディ地区などを中心に野党支持者が数百人規模の抗議デモを実施。治安当局は即座に催涙ガスなどで事態の収拾をはかり、約700人が逮捕されたと報じている(10月21日付、仏ル・モンド紙)。大統領選の第一回投票は10月25日に予定されている。過半数の投票を得た候補者がいない場合は、11月29日に第2回投票が行われる。さらには、12月27日に国民議会選挙が実施される予定であることから、10月17日の政府による発表は事実上、国民議会選までを含めた政治集会の禁止を意味する。

 

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、「平和的集会の全面的禁止は本質的に過剰であり、コートジボワール当局の明らかな失敗だ」と強く非難している(10月16日)。コートジボワールは、過去の大統領選で多数の死傷者が生じた歴史を持つ。政府は全国に44,000人(警察官18,000人、憲兵隊18,000人、兵士8,000人)の治安部隊を配備し、徹底的な抗議活動の抑え込みを図っている。10月11日の抗議デモで逮捕された700人のうち、すでに50人以上が有罪判決を受け、36か月の実刑が課される(20日以内に上訴可能)ことが決定しているとの報道もあり、過剰な対応に国内外で批判の声や緊張が高まっている。

 

他方で、こうした野党支持者らへの弾圧にも近い政府の対応を背景に、与党「ウフェ派連合(RHDP)」党首で、現職のアラサン・ウワタラ大統領(83歳)が第1回投票で圧勝するとの見方が強い。同氏が就任すれば事実上4期目の任期となり、2030年まで政権運営を継続する見込みだ。経済学者で元国際通貨基金(IMF)の要職を務めた同氏による経済運営の成果に納得感を持つ国民は多い一方で、高齢者を中心とした政権運営が続く状況に、人口の4分の3を占める30歳以下の若者らは、自らの世代の感覚との隔たりを感じているとの指摘もある(10月14日付、フランス国際戦略研究所/IRIS)。事実として、選挙結果をめぐって内戦が発生した2010年の選挙の投票率は84%だったのに対し、2015年は53%、前回2020年も54%に留まっている。特に都市部での投票率が低い傾向にあり、2020年の総選挙でもウワタラ氏の得票率が94%を超えていることから、政治に関心のない若者らが投票行動自体を行っていないものとみられる。

 

英・王立国際問題研究所(チャタムハウス)は、今回の大統領選は多くの国民が近年の社会の安定性の向上を認識していることから、「確認選挙」に過ぎず、ウワタラ氏が第1回投票で勝利すると予測(10月21日付、専門家コメント)。そのうえで、ウワタラ氏任期満了後の、2030年の次期大統領選に注目が集まるが、後継者として有力候補とみられていたアシ前首相(69歳)やコネ副大統領(76歳)は、「有能ではあるがカリスマ性に欠ける」と分析。ウワタラ氏は今後、若い世代の人材を全面に押し出す可能性があるとの見立てを示している。また、12月に実施される国民議会選挙の方が、より民意を色濃く反映する機会になり得ると指摘している。前回2021年の選挙で、与党RHDPは議会定数254のうち、過半を占める137議席を得たが、前々回選挙から30議席落としている。

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