デイリー・アップデート

2025年10月28日 (火)

[ロシア/北朝鮮] 

10月27日、ロシアを訪問中の北朝鮮の崔善姫(ちぇ・そんひ)外相は首都モスクワでプーチン大統領と会談した。これに先立ち崔外相はラブロフ外相とも会談し、ロシアと北朝鮮の関係強化を確認した。また、プーチン大統領は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記のモスクワ訪問を招請しており、今後の首脳会談日程も協議されたとみられる。

 

10月28~29日、ラブロフ外相と崔氏外相はベラルーシの首都ミンスクで開催されるロシア、ベラルーシ、北朝鮮、ハンガリー4か国外相らの安全保障関連の会議「ミンスク国際ユーラシア安全保障会議」に参加する予定。

 

この会議は、ウクライナ戦争や米国・中国対立など、ユーラシア地域の地政学的緊張が高まる中で、ロシアを中心とした新たな安全保障枠組みの構築を模索する場となっている。西側主導の安全保障体制(NATOなど)に対抗する形で、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカの新興5か国)や上海協力機構(SCO)などの枠組みが議論されることが多く、国際秩序の再編に関する重要な議論が行われるもよう。

[AI] 

AIチャットボットの「おべっか使い(sycophancy)」の傾向に関する最新の研究結果を、英科学誌『Nature』が取り上げている。一部のAIはユーザーに好印象を与えるために、おべっかを使って相手の意見に迎合する行動傾向があるとしている。これは、正確性よりも「人間らしい感じの良さ」を優先するAIの応答パターンであり、ChatGPTやGeminiなど特に対話型AIに顕著に見られると報告されている。

 

チューリッヒ工科大学のデコニンク氏が米論文サイトarXivに投稿した研究成果によれば、AIは人間より約50%多くおべっかを使うことが判明した。同氏の研究チームは11種類のLLM(大規模言語モデル)を使い、数学定理の記述に微妙な誤りを含む504問を用い、AIに証明を生成させた。AIが誤りを見抜けず、誤った前提に基づく証明を生成した場合を「おべっか」と判定した。GPT-5のおべっか回答率は29%と対象の生成AIのなかでも最も低く、DeepSeek-V3.1のおべっか回答率は70%と最も高かった。さらに、「まず前提の正誤を確認せよ」と指示したところ、DeepSeekの誤り率は34%減少した。

 

専門家らは、AIのへつらい傾向が科学研究の信頼性を損なう可能性を指摘している。この結果に対して、生物学や医学など、誤った仮定が現実的損害をもたらす分野では非常に危険との指摘や、出典を確認せずにユーザーの意見をそのまま反映してしまうことで、AIが科学的思考を助けるどころか、研究者の誤りを補強してしまうリスクが生じるとの指摘もある。

 

対策として、事前にAIへ「前提の検証」を明示的に求めること、また複数モデルのクロスチェック、つまりマルチエージェントを導入することを推奨している。それでも、もっとも重要なことは人間による最終確認(double-check)を徹底することだろう。

[アルゼンチン] 

中間選挙で、ミレイ大統領率いる政党「ラ・リベルタッド・アヴァンザ(LLA)」とその同盟勢力が40.8%を獲得し、野党のペロン主義連合を9ポイント上回った。この結果は市場の予想を大きく超えるものであり、すでに為替や、債券、株価など資産価格の上昇という形で反映された。

 

9月のブエノスアイレス州の地方選挙では、与党が破れ、最近のスキャンダルや、議会において年金や障がい者の補助金などの大統領の拒否権が覆されていたことなどから、今回の中間選挙では与党は30~35%程度にとどまると広く予想されており、ミレイ改革の先行きが懸念されていた。

 

今回、LLAとその同盟勢力は下院で80議席を獲得し、保守系のPRO党と合わせると104議席(全257議席)となった。これは、拒否権を維持するために必要な86議席を上回っており、改革推進に向けた政治的安定を確保したことになる。過半数には129議席が必要だが、今後の交渉次第では過半数の確保も可能となる。

 

上院でも勢力図が大きく変化した。LLA+PROは24議席(全72議席)を獲得し、過半数(37議席)には13議席足りないものの、ペロン主義連合は34議席から28議席に減少した。残りの20議席は急進党や小規模政党に分散しており、交渉次第では上院でも改革に必要な支持を得られる可能性がある。

 

米国との関係も安定化の兆しをみせている。トランプ大統領はミレイ大統領の勝利を祝福し、これまで不確実性を生んでいた米国の支援継続に対する懸念は後退した。これにより、アルゼンチンの市場アクセス改善と将来の債務不履行リスクが低下した。

 

痛みを伴う改革への国民の忍耐力が限界を迎えつつあるとの懸念があったが、それをペロン主義により経済が混迷することや、財政破綻への懸念やインフレ率鈍化への評価が上回ったことが背景にあるとみられる。

 

今回の勝利により、選挙後に為替の大幅切り下げをおこなう懸念がいったんは遠のいたことになる。ペソも一時9%(現在は4%ほどの上昇)ほど上昇した。

 

しかし、2025年から2027年にかけて米ドル建て債務の償還が集中しており、合計で約42.6億ドルに達する。これに対し、中央銀行(BCRA)の外貨準備は流動性ベースで約27.9億ドルとされており、十分とは言えない。特に、金や中国人民元(CNY)を除いた純粋な流動性準備は7.8億ドルに過ぎず、為替制度の見直しや準備金の積み増しについては課題となる。また、インフレ率に再び上昇の兆しがあることも懸念事項となる。

[コートジボワール/カメルーン] 

10月27日、コートジボワールの独立選挙管理委員会(CIE)は10月25日に実施された大統領選の暫定結果を発表し、現職のアラサン・ウワタラ大統領(83歳)が得票率89.77%で勝利したと宣言した。ウワタラ大統領は2011年から大統領職を務めており、2030年まで事実上4期目の任期を得ることとなった。

 

最大野党「コートジボワール民主党(PDCI)」のティジャネ・ティアム党首ら主要野党候補の立候補が軒並み認められなかったことを受け(2025年9月8日デイリー・アップデート参照)、野党は投票のボイコットを呼びかけていたこともあり、投票率は50.1%に留まった。2020年の54%、2015年の53%より低調な数字となり、特に野党支持者が多い最大都市アビジャン含む南東部での投票行動が低調だったと報じられている(10月27日付、英The Guardian紙)。2010年の選挙では、勝利したウワタラ大統領陣営と、敗北したローラン・バグボ前大統領陣営との衝突により、実質的に国内は南北に分断され、3,000人以上が死亡した。そうした過去があるだけに今回は全国に44,000人の治安当局が配備されていたことから、現時点で目立った暴動は生じていない。

 

ウワタラ氏以外に4人が立候補したが、2位のジャン・ルイ・ビヨン元商務省(元PDCI党員)の得票率は3.09%、3位のシモーネ・エヴィエ元バグボ前大統領夫人は2.42%に留まった。両氏はウワタラ氏の勝利を祝ったと報じられている(10月27日付、英Reuters紙)。

 

今後、11月4日まで候補者から憲法評議会に対する不服申し立てが可能であり、11月11日までに同評議会が最終結果を確定する予定。大統領就任式は12月上旬の見込み。2016年の憲法改正により大統領の任期は2期までと定められたことにより、ウワタラ大統領は改正後に実施された選挙(2020年、2025年)で勝利した今期が最後の任期となる。元IMF副理事を務めた経済学者のウワタラ大統領の指揮のもと、過去14年で「第二の象牙の奇跡」とも呼ばれる経済成長を遂げたコートジボワールだが、ウワタラ氏は明確な後継者候補を指名していないことから、同氏の退任後に与党「ウフェ派連合(RHDP)」は内部分裂し、政局が混乱するとの見方もある。そのような中で、事実上のウワタラ氏の後継候補とみなされる副大統領の指名に注目が集まっている。大方の見方では、アシ前首相(69歳)とコネ副大統領(76歳、現職)が最有力候補だが(英・チャタムハウス、ユーラシア・グループ等)、ウワタラ大統領の実弟のテネ・ビラヒマ・ワタラ国防相(70歳)の可能性もあるとの見方もある(10月27日付、仏ル・モンド紙)。人口の中央値が18歳と、若い国であるにもかかわらず、長期にわたり高齢の大統領が政治を支配する状況に、若者らが諦めを感じているとの指摘もある。

 

なお、10月12日に大統領選が実施されたカメルーンでも、現職としては最高齢となるポール・ビヤ大統領(92歳)が勝利し、8期目の任期を確保する見込み。西アフリカの仏語圏の国ではコートジボワール、カメルーンのほかに、トーゴも86歳のサビ=ド=トベ大統領が務めており(実権はフォール・ニャシンベ首相が握っているとみられている)、若い世代への政権交代が進んでいない国もある。

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