デイリー・アップデート

2025年10月27日 (月)

[モザンビーク] 

10月24日、仏資源大手・トタル・エナジーズは、モザンビーク政府宛の書簡において、2021年から停止していた北部の液化天然ガス(LNG)プロジェクト(Mozambique LNG)に関する不可抗力(Force Majeure)条項を解除したと各種メディアが報じている(10月25日付、英ロイター等)。北部のイスラム系過激派組織のプロジェクトサイトの襲撃により、年間生産能力1,300万トン、総額200億ドル規模のプロジェクトは工事進捗率40%の状況で中断。その後、モザンビーク・ルワンダ軍の共同作戦により、治安の改善がみられていた。

 

トタル社は、工事の「再開」に関しては、モザンビーク議会は、トタルらコンソーシアムが新たに提出した予算と行程表を承認した後に行うと述べている。同プロジェクトの10%の権益を持つインドのバーラト石油(BPRL、インド国営石油会社BPCRの子会社)は、4年間の工事中断によって、約40億ドルの追加費用が必要となっており、この費用分担をどのように行うか関係者間で協議中だとしている(注)。

 

このまま順調に工事が再開されれば、当初の予定より5年遅れとなる2029年に生産が開始される予定。トタル社らのプロジェクトが再開されれば、同じくアフンギ半島の近隣で計画されている、米・資源大手エクソン社らの「Rovuma LNGプロジェクト(年間生産量約1,500万トン)」の進展にも弾みがつく可能性がある。モザンビーク北部では治安の影響を受けない、洋上LNGプロジェクト2件(約年間700万トン)は一部生産・輸出が行われているが、陸上プロジェクト2件は洋上の約4倍の生産量が見込まれているだけに、深刻な財政難と経済の低迷にあえぐモザンビークにとって「頼みの綱」となる存在だ。

 

Mozambique LNGから生産されるLNGのうち、9割は買い手との契約が締結済みであり、中国海洋石油集団(CNOOC)、フランス電力公社EDF、英資源大手・シェル、モザンビーク政府などが含まれているとみられる。

 

(注)Mozambique LNGプロジェクトの出資者は、仏トタル・エナジーズ:26.5%、三井物産・JOGMEC合弁企業:20%、モザンビーク炭化水素公社(ENH):15%、印・BPRL:10%、印・オイル・インディア:10%、印・石油天然ガス公社(ONGC):10%、タイ・石油ガス公社(PTTEP):8.5%

[ロシア] 

10月26日、ロシアのプーチン大統領は原子力推進の新型巡航ミサイル「ブレベスニク」の発射実験が成功し、今後実戦配備に向けた準備を進めていくと表明した。ロシア側の主張によると、「ブレベスニク」は現在と将来のミサイル防衛システムに対して「無敵」で、射程距離はほぼ無限、飛翔経路は予測困難とされる。「ブレベスニク」は北大西洋条約機構(NATO)のコードネームで「SSC-X-9スカイフォール」と呼ばれる。

 

欧米諸国は対ロシア追加経済制裁を発動し、ロシアにウクライナと停戦するよう圧力を強めている。ロシアはそれに対し、10月22日に戦略核兵器使用想定の演習を実施し、今回は新型巡航ミサイルの発射実験も行った。ロシアが西側の圧力には決して屈しないというプーチン氏の強いメッセージとみられる。

[中国/オランダ] 

10月中旬、オランダ政府が中国資本の半導体メーカー「ネクスペリア」の支配権を取得し、中国政府がそれに対して報復措置を取ったことにより、欧州の自動車産業に再び混乱の兆しが広がっている。ネクスペリアは、フォルクスワーゲン、ボルボ、ホンダ、日産などに対し、自動車の電子制御ユニットや安全装置に不可欠な中級クラスの半導体を大量に供給している。

 

中国政府は報復措置として、同社の中国工場からの半導体輸出を禁止した。これにより供給網が突如として遮断され、自動車メーカー各社は、新型コロナウイルス流行時の半導体不足の再来を警戒している。

 

10月23日、オランダのディック・スホーフ首相は、政府による接収について「(中国人)CEOによる経営上の問題であり、中国への対抗措置ではない」と説明したが、中国政府が納得する可能性は小さい。

 

ネクスペリアは10月上旬、「一部製品の供給に影響が出る可能性がある」との通知を取引先に送付した。欧州自動車工業会やドイツ自動車工業会は、「短期間での代替生産の確保は不可能」として警鐘を鳴らしている。ドイツ経済省は業界幹部との緊急協議を実施し、日本自動車工業会も「世界の自動車生産に深刻な影響を及ぼしかねない」との声明を発表した。

 

欧州委員会はこの事態を受け、半導体の自給体制を強化するための「第二次チップス法」を来年初頭にも提案する方針だ。しかし、2030年までに世界シェア20%を目指す計画は遅れが目立っており、今回の混乱は、EV化とデジタル化が進む欧州自動車産業の中枢を直撃しかねない状況となっている。

[米国/日本] 

米労働省によると、9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.0%だった。上昇率は、8月(+2.9%)から小幅に拡大したものの、市場予想(+3.1%)を下回った。また、食品とエネルギーを除くコア指数も+3.0であり、これは8月(+3.1%)からやや縮小した。

 

内訳を見ると、食品(+3.1%)やエネルギー(+2.8%)は上昇した。財(+1.5%)に対してサービス(+3.5%)が上昇しており、物価のけん引役になっている。足元の物価の変動を見ると、衣料品や家具・寝具などの上昇ペースが加速しており、関税引き上げの影響が表れているようだ。

 

市場では、物価上昇率が予想を下回ったこともあり、10月の利下げ観測が高まった。 一方、日本の総務省によると、9月の消費者物価指数は前年同月比+2.9%となり、8月(+2.7%)から上昇率を拡大させた。2022年4月以降、2%を上回る物価上昇が継続している。生鮮食品を除く総合(コア指数)も+2.9%であり、8月(+2.7%)から拡大。生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア指数)は+3.0%、8月(+3.3%)から縮小した。

 

内訳を見ると、エネルギーが+2.3%と、8月(▲3.3%)からプラスに転じた。2024年9月に酷暑乗り切り緊急支援が実施されていた反動が表れた。また、2025年には引き続き電気・ガス料金負担軽減支援事業が実施されており、仮にこの支援策がなければ、物価上昇率は3.1%程度になっていた計算だ。生鮮食品を除く食料が+7.6%と、8月(+8.0%)から縮小したものの、依然として高い伸び率を維持している。そのため、生活実感に近いとされる持家の帰属家賃を除く総合は+3.4%であり、8月(+3.1%)から上昇率を拡大させた。

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