デイリー・アップデート

2025年9月3日 (水)

[中国] 

9月3日に実施された「抗日戦争勝利80周年」記念軍事パレードについて、中国国内ではどのような点に重点が置かれて展開されているのかについて、中国国内のSNS論調を分析しているマンヤ・コエステ(Manya Koeste)氏は、以下のように述べている。

 

中国のSNS上では8月以降、この行事に関連して225以上のハッシュタグが作成された。そのうち約6割が軍事関連、約2割が外交的意義に集中しており、トレンド入りしたタグの大半は新華社や人民日報などの国営メディアによって発信されたものである。これらには、以下の4つの主要テーマが含まれている。

 

第一のテーマは「歴史と記憶(抗日戦争とナショナリズム)」である。「決して忘れない」というスローガンのもと、抗日戦争の記憶を中国共産党の正当性や国民統合と結びつけている。SNSでは、戦時中の歌やAIによって作成された「当時の兵士(先祖)とのクロスタイム対話」動画など、過去と現在の連続性を意識させるコンテンツが多く投稿されている。

 

第二のテーマは「軍事力の現代化」である。新型兵器の初公開や「100%国産化」という点の強調を通じて、中国の軍事力を誇示している。

 

第三のテーマは「社会(若者と女性)へのアピール」である。2000年以降に生まれた世代「00後」のパレード参加や、最近のスラングを用いた親しみやすい表現、女性兵士に脚光を当てる演出などを通じて、若者や女性層の関心を引きつけようとしている。

 

第四のテーマは「国際的影響力の誇示」である。ロシアや北朝鮮、西側諸国と距離を置く国々の指導者が参加することで、米国との対抗構図を際立たせ、中国の国際的影響力を強調する狙いがある。

 

この軍事パレードは、単に歴史を記念するためのものではなく、習近平体制の統治力を国内外に示すこと、中国共産党の指導下での国民統合と国際的影響力の誇示を目的としている。

[イラン/ロシア/中国/E3] 

8月末に英国・フランス・ドイツの3か国(E3)は、イランが包括的共同行動計画(JCPOA)に重大な違反を犯しているとして、イランに対する国連制裁の再発動を求める通告を国連安全保障理事会に提出し、いわゆる「スナップバック」の手続きを開始した。これに対しイラン・ロシア・中国の3か国の外相は、E3のスナップバックは法的にも手続き的にも要件を満たしていないとして、その発動を認めない旨を国連事務総長宛てに共同書簡で表明した。

 

書簡では、2018年に米国が一方的にJCPOAから離脱して対イラン制裁を再開した際、E3はそれに抗議しなかったばかりか「JCPOAに違反し、米国の違法な制裁を支持した」と批判した。また、イランがJCPOAの遵守から逸脱し始めたのは米国の離脱から1年後であり、それは米国の措置に対抗するためのものであるため、イランが重大な違反を犯したと断ずるのは不当だと主張した。さらに、スナップバックの発動は、紛争解決の努力を尽くした後に行われるべきであり、紛争解決メカニズムを経ずに手続きを開始するのは認められないと指摘した。

 

イランのペゼシュキアン大統領は、上海協力機構(SCO)首脳会議に出席するため訪問した天津でロシアのプーチン大統領と会談した。その後、北京に移動して習近平国家主席とも会談し、核問題を含む諸問題について協議を行った。

[EU] 

EU統計局(Eurostat)によると、8月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)は前年同月比+2.1%だった。上昇率は6~7月(+2.0%)からやや拡大した。ECBの2%の中期目標でおおむね推移している。また、物価の基調を表す食品・エネルギーを除くコア指数は+2.3%であり、5月から横ばいを継続している。

 

内訳をみると食品は7月の+3.3%から8月の+3.2%へ、サービスも+3.2%から+3.1%へ、それぞれ上昇率をやや縮小させた。一方、財は+0.8%と、横ばいだった。この中で、物価を押し上げた主因は、エネルギーが▲2.4%から▲1.9%へ下落率を縮小させたことだった。

 

国別に見ると、エストニア(+6.2%)やクロアチア(+4.6%)、ラトビアやオーストリア(ともに+4.2%)など高めの国があった。それに対して、キプロス(▲0.1%)は物価下落に転じ、フランス(+0.8%)も依然として1%を下回ったままだった。なお、ドイツ(+2.1%)やイタリア(+1.7%)は2%前後で推移し、スペイン(+2.7%)はやや高めだった。足元にかけて、域内の物価上昇率の差が拡大している。

 

ユーロ圏の物価上昇率は2%程度で推移しているため、9月の欧州中央銀行(ECB)理事会では金利が据え置かれる可能性が高まったと、市場では受け止められているようだ。

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