2025年9月17日 (水)
[ロシア]
9月16日、プーチン大統領はロシア西部ニジェゴロド州の演習場で、ロシア軍とベラルーシ軍による合同軍事演習「ザパド(西方)2025」を軍服姿で視察した。9月12日に始まった合同演習は16日が最終日だった。プーチン大統領は、演習の目的は、主権防衛やロシアとベラルーシの連合国家に対する侵略への必要な要素の習熟にあると強調した。今回の軍事演習は41の演習場で兵員約10万人が参加し、航空機333機や艦艇247隻など約1万点の兵器が投入された。ロシア国防省によると、今回の演習の特徴としては、ウクライナへの特別軍事作戦の経験を踏まえ、無人航空機や地上ロボットシステム、電子戦装備を大量に使用したほか、無人機との戦闘やバギーによる突撃作戦などの訓練にあると説明した。ベラルーシ国営ベルタ通信(ベラルーシの国営通信社)によると、9月16日にベラルーシ軍のムラベイコ参謀総長は戦術核兵器の使用検討や、ロシアの最新式中距離弾道ミサイル「オレシニク」の配備など、全ての課題を演習で遂行したと成果を強調した。
[日本]
財務省「貿易統計」によると、8月の貿易収支は▲2,425億円、2か月連続の赤字だった。輸出は8兆4,252億円(前年同月比▲0.1%)と、4か月連続で減少した。内訳を見ると、自動車(▲7.9%)や鉄鋼(▲14.9%)、自動車の部分品(▲12.6%)などの減少が目立った。また、輸入は8兆6,677億円(▲5.2%)、2か月連続で減少した。原粗油(▲21.0%)や医薬品(▲33.2%)、液化天然ガス(▲16.4%)などが減少した。ただし、これらの数量はそれぞれ▲2.5%、▲10.7%、▲6.5%であり、相対的に価格が低下した影響が大きかった。
米国向け輸出は1兆3,855億円(▲13.8%)であり、5か月連続で減少した。自動車(▲28.4%)、建設用・鉱山用機械(▲26.1%)、半導体等製造装置(▲38.9%)などが減少した。特に自動車の数量は▲9.5%であり、価格が引き続き20%近く低下した。これは、関税分の引き下げと、売上が底堅い小型車へのシフトなどが一因とみられる。9月16日から自動車関税が27.5%から15%に引き下げられたので、その影響が今後どのように表れるかが注目点だ。輸入は1兆615億円(+11.6%)へ7か月ぶりに増加した。航空機類(+414.3%)や非鉄金属鉱(+174.4%)、液化石油ガス(+49.1%)などが増加した。差し引きで3,240億円の黒字だった。
EU向け輸出は7,804億円(+5.5%)、2か月ぶりに増加した。建設用・鉱山用機械(+79.2%)や自動車(+6.2%)、半導体等電子部品(+36.8%)などが増加した。一方、輸入は9,014億円(▲18.2%)へ4か月ぶりに減少した。医薬品(▲48.9%)の減少が主因。その他、航空機類(▲60.0%)や自動車(▲25.7%)が減少した。差し引きでは▲1,210億円、19か月連続の赤字だった。
中国向け輸出は1兆5,007億円(▲0.5%)、6か月連続で減少した。半導体等製造装置(▲6.9%)に加えて、自動車の部分品(▲29.6%)、非鉄金属(▲13.3%)などが減少した。一方、輸入は1兆9,264億円(+2.1%)、2か月ぶりに増加した。電算機類(+13.2%)や通信機(+10.1%)、音響映像機器(+9.8%)も増加した。差し引きは▲4257億円、53か月連続の赤字だった。
[化石燃料]
9月16日、国際エネルギー機関(IEA)が「The implications of Oil and Gas Field Decline Rates」(石油・ガス田の減耗率の影響)と題した報告書を発表。IEAは、1万5,000か所以上の油田・ガス田の生産データを分析した結果、既存油田への継続的な投資がなければ世界の石油生産量は今後10年間に年平均▲8%の減少、つまり毎年ブラジルとノルウェーの合計産油量に匹敵する日量550万バレルを失い、ガスは年平均▲9%、今日のアフリカ全体の産ガス量に匹敵する2,700億立方メートルが失われると述べた。米国シェールや深海油田など、在来型資源よりも減耗率の高い非在来型資源への依存が高まり、減少ペースは加速している。石油ガス上流投資の90%、年間約5,000億ドルは既存油田の生産減少を食い止めるのに費やし、需要増加に対応しているのは投資のごく一部に過ぎないとした。また、石油ガス探査ライセンス発行から生産開始までには平均20年かかるとも指摘している。自然減耗が続くと世界の石油ガス供給は中東・ロシアなど少数の国に集中し、エネルギー安全保障に影響する。
この見通しは、「世界がネットゼロエミッションを目指すなら、今後石油・ガス・石炭への投資は不要」と述べた2021年の報告書と全く対照的な内容となっている。英FTは、「IEAはトランプ米政権から大きな圧力を受けている」と報道。
OPECは、「IEAは石油産業への投資阻害要因として『2014~15年と2020年の油価暴落と長期的な石油需要の不確実性』を挙げ、新しく大規模でリードタイムの長い炭化水素プロジェクトへの投資が手控えられていると述べるが、IEA自身がネットゼロエミッションシナリオを提唱し、石油需要のピークアウトを喧伝したことこそが投資抑制と長期的な不確実性を招いた」と批判。OPECは一貫して減耗率を考慮し、需要増加に対応するには投資が必要だと訴え続けてきたとし、投資不要などというレトリックに戻らないことが重要だと述べている。
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