デイリー・アップデート

2025年9月29日 (月)

[モルドバ] 

9月28日、欧州東南部の旧ソ連構成国モルドバで議会(一院制、定数101)選挙が行われ、中央選挙管理委員会は、開票率98%の時点で、親欧米のサンドゥ大統領が率いる与党「行動と連帯PAS」の得票率が49.79%、親ロシアの野党連合「愛国者ブロック」が24.39%との結果を発表した。今回与党が勝利したが、引き続き議会における単独過半数を維持できるかどうか注目される。与党が単独過半数を確保できれば、早期の欧州連合(EU)加盟に向けて大統領と議会が一体となった政権運営を、過去4年間と同様に推進できることになる。

 

なお、2024年のモルドバ大統領選挙の際には、政治的コンテンツを検閲することをフランス情報機関から求められた、とロシアの起業家、パーヴェル・ドゥーロフ氏はメディア取材に対して明かしている。同氏はメッセージング・アプリ、テレグラムの共同創設者。2024年にフランス政府当局に逮捕されているが、その裁判においてフランス政府側が好意的扱いを約束する代わりに、テレグラム上のモルドバ大統領選関連情報を検閲することを当時、求められたと同氏は語っている。

[台湾/南アフリカ] 

南アフリカと台湾の外交摩擦が、半導体をめぐる新たな火種として浮上している。発端は、南アフリカ政府が台湾の窓口機関「台北連絡代表処」を首都プレトリアからヨハネスブルグへ移転させ、名称も「商務事務所」へと一方的に格下げしたことにある。この措置は、中国の「一つの中国」原則に沿ったものであり、中国の要請に応じた対応と見られている。

 

台湾側はこれを「主権への侮辱」と受け止め、台湾経済部は2025年11月末以降、南アフリカ向け輸出の47品目に対して事前承認制度を導入する方針を発表した。対象には集積回路やメモリ製品が含まれており、業界内では「事実上の報復措置」と受け止められている。

 

台湾は、世界の先端半導体製造において圧倒的な供給国となっている。南アフリカにおける台湾製半導体の輸入規模は限定的ながら、台湾が供給する高機能・先端的な半導体は代替が困難である。南アフリカのAI・データセンター、通信、公共部門のデジタル化は台湾製チップに依存しており、輸出制限が実施されれば、コストの増加や技術導入の遅延を招き、国家的なイノベーション目標に影響を及ぼす可能性があると警告する専門家もいる。

 

南アフリカの野党・民主同盟は、与党アフリカ民族会議(ANC)の外交対応を批判し、「半導体へのアクセスなしに経済成長はあり得ない」として、台湾との対話再開を政府に求めている。

 

一方で、台湾と南アフリカの間で全面的な対立を回避する動きも見られる。台湾外交部は、南アフリカ政府から台北事務所の今後について協議を求めるメッセージを受け取ったとして、輸出規制の発動を一時停止したと発表した。南アフリカ側も、台湾の窓口機関を「外国公館」から「国際機関」へ格下げする作業を進めているものの、閉鎖には至っておらず、一定の妥協を模索している様子がうかがえる。

 

しかし、根本的な摩擦は依然として解消されていない。中国は南アフリカの対応を「台湾機関の移転を断固推進した」と歓迎し、外交的成果として強調している。一方、台湾は象徴的な措置として半導体を交渉材料に用いた。

 

今回の騒動は、半導体が単なる産業財ではなく、国家間の力学に直結する戦略資源であることを改めて浮き彫りにしている。

[米国] 

商務省によると、8月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+2.7%と、市場予想と一致した。上昇率は7月(+2.6%)からやや拡大し、2月(+2.7%)の伸び率まで高まった。4月(+2.3%)にかけて2%の物価目標に近付いたものの、そこから反転し、足元にかけて2%台後半で推移している。

 

物価の基調を見る上で注目されている指標を見ると、食品・エネルギーを除くコア指数は+2.9%と、7月と同じになり、高止まりしている。また、家賃とエネルギーを除くサービス(スーパーコア)は+3.4%、7月(+3.3%)から2か月連続の拡大となった。市場ベースのPCE指数は+2.4%であり、3か月連続で同じ伸び率だった。3~4月には+2.0%まで縮小しており、足元にかけてやや拡大している。

 

内訳を見ると、食品(+2.2%)は7月(+1.8%)から拡大し、2か月ぶりに2%台になった。その一方で、エネルギー(▲0.1%)は7か月連続で下落している。ただし、下落率は7月(▲1.9%)から縮小しており、物価を押し下げる力は弱まった。財(+0.9%)は4か月連続のプラス、7月(+0.6%)から拡大した。財のうちでは、耐久財(+1.2%)が4か月連続プラスであり、そのうち、自動車・同部品(+2.6%)は7月(+1.9%)から拡大し、家具・家庭用品(+2.1%)は7月(+2.3%)からやや縮小も2%台の伸び率を維持した。また、非耐久財(+0.7%)は3か月連続のプラスとなり、さらに7月(+0.3%)から拡大した。サービス(+3.6%)は7月(+3.5%)から小幅に拡大し、そのうち輸送サービス(+4.4%)や宿泊・飲食サービス(+3.1%)の上昇率が目立った。

 

一方、8月の名目個人消費支出(PCE)は前月比+0.6%、7月(+0.5%)から加速した。物価上昇の影響を除いた実質PCEは+0.3%、7月(+0.4%)から減速したものの、6月と同じ増加ペースだった。

 

これらを踏まえると、物価上昇率は、関税措置の影響もあって緩やかに拡大している一方で、個人消費は底堅く推移している。

[マダガスカル] 

9月25日、首都アンタナナリボで「Gen-Z」と名乗るG世代の若者・学生らを中心とする大規模な抗議デモが発生。治安当局が催涙弾やゴム弾を発砲し、少なくとも6人のデモ参加者が死亡したと報じられている。抗議は、1日12時間以上続く停電・断水に対する政府への批判を主としたものだが、アンドリー・ラジョエリナ大統領政権の腐敗など現政権への不満も噴出。ラジョエリナ大統領に近い国会議員3人の私邸が襲撃されたほか、ショッピングセンターや商店での大規模な略奪が全国数か所で発生した。

 

こうした混乱に対処すべく、政府はアンタナナリボなど主要都市に対して夜間外出禁止令を発表。また、ニューヨークで開催された国連総会に出席していたラジョエリナ大統領は、当初「クーデターという形の不安定化行為」だと抗議活動を批判した。しかし、事態の大きさを受けてか、翌26日に「エネルギー相は職務を怠っていた」と国民に懐柔的な姿勢を示し、電力・水道供給を司るエネルギー相を更迭した。さらに、9月27日に帰国したラジョエリナ大統領は「過ちがあったならそれを認める。今後は国民のニーズに応え、生活を保護する」と事態の収束を図る発言を行った。

 

しかし、若者らの怒りは収まらず、9月27日にもアンタナナリボ大学の学生を中心に数百名が集まり政府への抗議の意思を表明。9月25日のような行進や混乱はみられなかったが、9月29日に再び大学生らはデモの実施を呼びかけている。目的は大学生側がまとめた政府に対する要求事項を48時間以内に回答することを求めるとしている。米・仏大使館等はマダガスカルへの不要な渡航の延期とともに抗議集会に近づかないよう呼びかけている。また、アフリカ連合(AU)と南部アフリカ開発共同体(SADC)はそれぞれ平和的解決を呼びかける声明を発表している。

 

しかし、一時的にデモが収束したとしても、国民3,000万のうち約3/4が貧困ラインを下回っている市民生活の改善は期待できない。国際通貨基金(IMF)はかねてから、電力・水道公社「JIRAMA」の体質的問題と不採算経営が電力・水道供給の不安定化をもたらしており、また、同社の営業赤字を補填するために政府が補填している支出はGDPの1.2%にも上るとし、早急な経営再建を求めている。しかし、同社の経営改善のためには市民からの公共料金徴収の拡大や値上げが必要なことから、国民の理解・協力が容易に得られる状況にはない。マダガスカル経済は、主要輸出品のニッケル(輸出の約4割)やバニラの市況価格の低下により低迷が続いている。

 

ラジョエリナ大統領はもともと有力な家庭の生まれで、実業家、DJ、アンタナナリボ市長を歴任した51歳。2009年の軍事クーデターで政権についたあと、5年間にわたり暫定大統領を務めたが、この間にマダガスカルの国際的な信用は低下。米国の「アフリカ成長機会法(AGOA)」やAU、SADCの参加資格停止を受けるなどし、経済はさらに疲弊した。ラジョエリナ氏が2014年に一旦大統領職を退いた後、ラジャオナリマンピナ前大統領のもと、マダガスカルは国際社会への復帰を果たした。しかし、2018年の大統領選挙に再び立候補したラジョエリナ氏が当選し、2023年の選挙でも再選された。過去にはクーデターを主導し、国際社会からの批判を集めた同氏だけに、今後のデモ隊の抑え込みや国民との対話の進め方に注目が集まる。

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