デイリー・アップデート

2025年9月25日 (木)

[ドイツ] 

ifo経済研究所によると、9月の企業景況感指数(2015年=100)は、87.7(前月比▲1.2pt)となり、市場予想(89.3)に反して低下した。前月から低下したのは、2024年12月以来、9か月ぶり。フューストifo所長は「景気回復への期待が後退した」と総括した。

 

内訳を見ると、足元の状況を表す現状指数は85.7(▲0.7pt)へ、2か月連続で低下した。また、先行きを表す期待指数は89.7(▲1.7pt)へ低下した。低下は4月以来、5か月ぶりだった。足元の状況、先行きの見通しともに前月から低下した。

 

産業別にバランス指数を見ると、製造業は▲13.3(▲0.9pt)へ2か月連続で低下した。製造業企業は現状に不満で、先行きに対する警戒感も強まった。新規受注は再び減少し、先月の資本財製造業で高まった「わずかな希望の光が消えた」と記された。サービス業は▲3.0%(▲5.6pt)へ3か月連続で低下、5月以来のマイナスに転じた。現状の評価が下方修正され、先行きの悲観的な見方が強まり、期待指数は2月以来の低水準まで低下した。特に、輸送・物流部門の下方修正が目立った。商業は▲22.9(▲1.5pt)へ3か月連続で低下した。小売業で現状の見方は依然として厳しいものの、やや持ち直した。しかし、先行きへの悲観的な見方が強まった上、卸売業の認識もさえなかったため、商業全体として低下した。建設業は▲14.6(+0.9pt)へ2か月ぶりに上昇した。マイナス圏にあることに変わりないものの、現状と先行きの見方が前月からやや持ち直した。

 

メルツ政権発足前に、基本法が改正されるなど、インフラや防衛費などを中心に財政が拡大し、景気が回復するという期待がこれまで企業マインドを下支えしてきた。しかし、2025年の予算案は9月18日に下院でようやく可決されたばかりであり、財政拡大の効果はこれからという段階にすぎない。新政権の経済改革の進捗が、当初の想定より遅いという認識も広がりつつある。その他にも、人手不足や供給網のボトルネックなども回復の重荷になっている。ドイツ経済の先行きの回復が期待されるものの、現在の進捗状況などと照らし合わすと、過度な期待が修正されたようだ。

[銅] 

9月24日、銅先物価格が急伸した。国際指標となるロンドン金属取引所(LME)の銅3か月先物価格の終値は前日比+3.6%高の10,336.5ドル/トンと1年4か月ぶり高値。NY銅先物の中心限月・2025年12月限は同+3.65%高の4.8315ドル/ポンド(約10,612ドル/トン)。

 

米鉱業大手Freeport McMoRanはインドネシア子会社PT Freeport Indonesia(PTFI)のGrasberg鉱山で9月8日に発生した事故に関する最新情報を発表。Grasberg Block Cave(GBC)地下鉱山の5つの生産ブロックのうちの1つで大量の湿潤物質が流出したこの事故で、閉じ込められた作業員7人のうち2人が遺体で発見され、5人はなお行方不明。事故後、採掘作業は停止されているが、GBCの他の生産ブロックに必要なインフラも損傷したことが判明し、2025年第4四半期の銅・金生産は大きな制約を受ける。2026年にかけ段階的に復旧を進めるが、事故前の操業率への回復は2027年になる見込み。PTFIは契約規定に則り、取引先に不可抗力を通知したという。

 

2025年は大規模銅鉱山での事故が重なっている。5月にはコンゴ民主共和国のKamoa-Kakula鉱山で地震・浸水事故が発生し、同鉱山を運営するIvanhoe Mines社は2026~27年の生産ガイダンス発表を延期。7月31日にはチリEl Teniente鉱山で地震・トンネル崩落による死亡事故が発生し、国営Codelcoは生産ガイダンスを引き下げた。Grasbergを含めた3鉱山はいずれも世界有数の規模で、合計で世界採掘量の約7%を占める。報道によると、2025年のこの3件の生産障害だけでも6%程度の生産損失が生じる見込み。

 

中国の銅製錬所の急拡大などで銅原料の供給が逼迫する中、生産障害でさらに供給が細り、代替原料となる銅スクラップの価格も高騰するなど影響は広がっている。

[マラウイ] 

マラウイで5年ぶりの大統領選が実施され、野党・民主進歩党(DPP)党首のピーター・ムタリカ前大統領(85歳)が56%の得票で勝利したと報じられている(9月24日現地時間時点)。現職で与党・マラウイ会議党(MCP)党首のラザルス・チャクウェラ大統領(70歳)の得票は33%に留まり、再選を果たすことはできなかった。投票率は76%とマラウイの選挙史上でも高く、国民の3/4が一日3ドル以下の貧困ラインで暮らす有権者の関心の高さが表れた形だ。

 

ムタリカ氏は第3代大統領を務めた故ビング・ワ・ムタリカ氏の実弟。米・イエール大学で法学博士を取得した元法学教授である。兄・ビング氏の死去後、2014年の大統領選で当時のバンダ元大統領や、チャクウェラ氏といった有力候補を破って勝利。2020年まで6年の任期を務めた。よって今回は5年ぶりの返り咲きとなる。

 

一人当たりGDPが508ドル(2024年世銀)と、サブサハラ・アフリカの中でも最貧国に位置づけられるマラウイは、年平均30%近いインフレと、外貨供給不足により国民の生活は困窮の一途を辿っている。2024年の実質GDP成長率は1.8%(国際通貨基金)にとどまっており、人口増加率(2.6%)を下回っていることから貧困化が進んでいる。

 

低迷が長引く経済の立て直しを宣言して、2020年の前回選挙では、チャクウェラ氏は58.57%の得票で当時現職のムタリカ氏(35.41%)に圧勝した。しかし、この直近の5年間で新型コロナ禍、ロシア・ウクライナ紛争による食料インフレの高騰などマラウイの経済状況はさらに悪化した。結局、経済再生を果たすことができなかったチャクウェラ氏に対する国民の厳しい審判が下された投票結果となった。

 

なお、マラウイでは2019年に大統領選が実施され、当時はムタリカ氏が38.57%の得票で35.41%の票を得たチャウクェラ氏に僅差で勝利した。しかし、この選挙の際にムタリカ氏陣営が投票用紙などに不正な操作をしたとして憲法裁判所は選挙結果を無効にすると発表。2020年に行われた「やり直し選挙」でチャクウェラ氏が勝利した背景がある。しかし、今回の選挙ではチャクウェラ氏陣営は早々に敗北を認めていることから、平和裏に政権交代が実現する見込みである。

[ロシア] 

9月24日、財務省は付加価値税(日本の消費税に相当)の税率を現行の20%から22%に引き上げる法案を政府に提出したと発表した。増税は「主に国防と安全保障のための資金調達が目的」と財務省は説明している。法案は政府の検討を経て、議会で承認されれば、2026年1月から施行される。財務省案では、付加価値税が引き上げられても、食料品、医薬品、子ども用品については低減税率の10%が維持される。ロシアでの付加価値税引き上げは、2019年1月に18%から20%に引き上げられて以来となる。

 

一方、財務省は2026~28年の予算法案や税率改正法案を政府に提出したと発表。戦略的な優先事項は、国防と国家安全保障のニーズに対する財政支援や、ウクライナにおける特別軍事作戦に参加する兵士やその家族の社会的支援だと強調した。

[中国] 

9月23日(現地時間)、中国の李強首相は、国連の「グローバル発展イニシアティブ(GDI)」ハイレベル会合において、今後、世界貿易機関(WTO)において「特別かつ差別化された待遇(SDT)」を新たに求めない方針を明らかにした。経済規模で世界第2位となった中国が、途上国特権の旗を降ろす姿勢を示すのは初めてであり、国際社会に向けた象徴的なメッセージとして受け止められている。

 

この表明の背景には、米国との交渉を円滑に進めたい意図がある。トランプ米大統領は、中国が世界経済第2位となった状況でも、依然としてWTOでSDTを享受していることを「不公平」と批判してきた。米中貿易交渉において、この問題は対立点の一つとなっていたが、SDTを求めないと宣言することで、中国は米国側の不満を和らげ、協議をスムーズに進めたい考えとみられる。

 

もう一つの目的は、「責任ある大国」としての中国イメージを強化することにある。トランプ政権が「アメリカ・ファースト」を掲げ、自国優先の姿勢を鮮明にする中、中国は多国間主義を支持し、国際ルールの形成に積極的に関与する姿勢を強調している。各国の指導者が集う国連総会は、米中両国の立場の違いを際立たせる絶好の舞台となっている。

 

一方で、中国の今回の表明による実質的な影響は限定的とみられる。中国は、発展途上国の地位を放棄するわけではないと強調しており、また、WTO以外の交渉においてSDTを主張しないとも言っていない。さらに、WTO加盟時に確保した途上国としての優遇措置は引き続き維持する見通しである。

 

中国はSDTを放棄しても、「発展途上国」としての地位を引き続き主張している。国際機関における自己定義は変更せず、グローバルサウス諸国との連帯や南南協力(発展途上国同士の経済・技術面での協力)の推進に活用する姿勢を崩していない。中国にとって、途上国の代表として振る舞うことは、外交戦略上欠かせない要素となっている。

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