デイリー・アップデート

2025年9月18日 (木)

[ブラジル] 

中央銀行(BCB)は、予想通り政策金利を15.00%に据え置いた。2回連続の据え置きとなり、全会一致で決定された。理事会は、米国の経済政策や世界経済の見通しが依然として不確実であると判断しており、特に地政学的緊張が高まる中、新興国市場に対する警戒が必要であるとした。

 

国内経済については、経済成長は鈍化しているものの、労働市場は依然として堅調であると評価するとともに、インフレ率は依然として目標水準を上回っていると警戒している。

 

BCBのインフレ予測は、6四半期先の2027年第1四半期を前年比3.4%とし、目標レンジ(3%±1.5pt)の中心値を40bpt上回るとしている。政策金利の引き下げ開始は2026年1月からと予想されているが、BCBはインフレ率を目標水準に収束させるには、より長期間にわたって高金利を維持する必要があると示唆している。また、米国による対ブラジル関税や、国内財政政策の不透明さから、理事会は慎重な姿勢を維持すべきであると強調している。

 

こうした高金利の状態が続くことが、国内経済に与える影響も無視できない。先日発表された第2四半期のGDPでは、工業部門の中で、製造業と建設業が2四半期連続で縮小した。これらの業種は資金調達への依存度が高いため、高金利の影響を受けやすく、依然として金利の高さが企業活動を抑制していることを示している。

 

また、家計消費の伸びが前期比0.5%に鈍化したが、雇用状況や信用環境に左右されたと考えられる。失業率は5.8%と過去最低水準にあるものの、賃金の伸びは鈍化し始めている。さらに、高金利は家計の債務返済を困難にし、消費を抑制する要因となっている。ブラジルの家計債務はGDP比で36.4%と国際的には過度ではないものの、債務の構成として、OECD諸国では家計債務の半分以上が住宅ローンである一方、住宅ローンの割合は30~40%にとどまり、残りは消費性の高いクレジットカードなどの割合が高く、家計の負担を増大させている。

 

また、高金利は投資にも悪影響を及ぼしている。ブラジルでは長年にわたり投資不足が続いており、生産性や将来の成長力を損なっている。固定資本形成は第1四半期のGDP比17.8%から第2四半期には16.8%に低下している。

[イタリア] 

国連の最新予測によれば、イタリアの人口は今後25年で約500万人減少し、2050年には、現在の5,900万人から5,400万人になり、また国民の3分の1以上が65歳以上となるとされている。メローニ首相は、2022年の就任以来、イタリアの人口減少問題を主要課題の一つとして掲げてきた。政府は出生率の低下を食い止めるため、子どもを持つことや大家族を奨励する政策を打ち出してきたが、これまでのところ目立った成果は上がっておらず、2024年の出生率は1.18と低下を続けている。

 

こうした人口動態が今後も続けば、2030年代には労働人口が大幅に減少することが予想される。その結果、イタリア経済に対する金融市場の信頼が揺らぎ、国債の利回り上昇など借入コストの増加につながる可能性がある。加えて、年金や医療費の公的支出に占める割合も大きくなり、財政負担が一層重くなると見込まれる。

 

政治的には、人口減少を移民で補う方向にはない。移民政策に関して、スペインのように非正規移民を合法化する方針には否定的であり、欧州連合(EU)が2024年採択した移民協定により、イタリアのような加盟国は、移民の受け入れ拒否や迅速な送還が従来よりも容易になる見通しとなっている。また、移民に対して厳しい現メローニ右派政権は、世論調査では高い支持率を維持しており、与党「イタリアの同胞」は2027年の次期総選挙でも有力な勝利候補とされている。

[サウジアラビア/パキスタン] 

9月17日、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相と、同国を公式訪問中のパキスタンのシャリフ首相は、共同戦略防衛協定に正式に署名した。共同声明によれば、この協定は「両国の安全保障の強化と、地域および世界の安全と平和の実現に向けた両国の共通の決意を反映するもの」であり、「両国間の防衛協力を発展させ、あらゆる侵略に対する共同の抑止力を強化することを目的とする」とされている。また、「いずれかの国に対する侵略は、両国に対する侵略とみなされる」と規定している。

 

両国は過去80年近く緊密な関係を維持してきたが、本協定の署名によって、従来の安全保障上の協力関係はさらに大幅に強化されることになる。パキスタンが核保有国であることから、「協定は核兵器の使用も含むのか」との質問に対し、サウジ政府高官は「これはあらゆる軍事手段を含む包括的な防衛協定だ」と答えたと報じられている。

 

協定締結のタイミングについては「長年の議論の集大成」と説明されているものの、1週間前の9月9日にイスラエルがサウジ隣国のカタールを空爆したこと、さらにアラブ連盟とイスラム協力機構による緊急サミット開催の直後であったことから、その政治的意味合いに注目が集まっている。

[米国] 

連邦準備理事会(FRB)は17日まで、連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利(FF金利)の誘導目標レンジを0.25%引き下げて4.0~4.25%にすることを決めた。利下げは2024年12月以来のことで、トランプ第2次政権下では初めてだった。今回の決定は、賛成多数で決定された。ただし、9月15日に議会上院で承認されたミラン理事は反対し、0.5%利下げを主張した。前回7月会合で0.25%利下げを主張したボウマン副議長とウォラー理事は、今回0.25%利下げに賛成した。

 

パウエル議長は記者会見で、「これまで待つことは適切だった」として、現在は急速に動く必要はないという考えを明らかにした。短期的に物価上昇リスクは上方に、雇用リスクは下方に傾いており、難しい状況になっているという認識を示した。また、今回の利下げ決定の焦点が労働市場リスクにあり、労働市場はもはや堅調とは言えないと示した。また、関税措置に伴って、物価上昇が根強くなるリスクは、労働市場の軟化と経済成長の減速もあって、やや低下したように見えるとして、一過性にとどまると分析した。ただし、今後の金融政策について、会合ごとに判断していく姿勢を改めて表明した。

 

今回公表されたFOMC参加者の経済見通しでは、実質GDP成長率は、2025年末に前年同期比+1.6%と前回6月時点から0.2pt上方修正された。失業率は4.5%、個人消費支出(PCE)物価指数は3.0%で据え置かれた。2026年以降、実質GDPとPCE物価指数は小幅に上方修正、失業率は小幅に下方修正された。

 

また、政策金利は2025年末に3.6%と前回の3.9%から下方修正された。2025年内に1回あたり0.25%とすると、2回の利下げが実施されると予想されている。ただし、2026年、2027年とも1回の利下げであり、利下げのタイミングが前倒しされて、長期の3.0%に向かうように修正された。これを受けて、市場では、次回10月と12月の追加利下げ観測が広がっている。

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