デイリー・アップデート

2022年7月21日 (木)

[ケニア] 8月9日に大統領選を控えているが、既存のIMFプログラムの枠組みの制約が大きく、当選者の違いによる経済政策への影響は軽微とみられる。干ばつやウクライナ戦争の影響などにより2022年度の経済成長率は当初予測の+7.1%から約+5%に減速するとみられている。財政再建が求められているものの、インフレにより生活が苦しくなった国民の反発から、補助金の削減は難しく、財政規律の健全化も遠いとみられる。

[ケニア/中国] ケニアの副大統領で、大統領候補のウィリアム・ルト氏は、「自身が8月9日に実施される大統領選挙で当選した場合、中国との政府契約内容を公表し、不法に働く中国人を強制送還する」とロイターとのインタビューで述べた(7月21日付)。ケニアは中国に対して約80億ドルの負債を抱えており、「ケニヤッタ現大統領のインフラ建設ラッシュの資金源となった債務を削減する」とルト氏は約束している。加えて「エチオピアやザンビアと違い、ケニアには債務再編を行わずとも状況を処理する能力がある」と述べている。

[トルコ/シリア] 7月19日にイランで行われたライーシ大統領およびプーチン露大統領との3者会談で、トルコのエルドアン大統領は改めてシリア北部のクルド人民防衛隊(YPG)に対する越境軍事作戦を近日中に実施する用意があると警告した。シリアのアサド政権を支持するイランとロシアは外交的な解決を求めており、軍事作戦に反対する姿勢を示した。同日エルドアン大統領と会談したイランのハメネイ最高指導者も、「軍事作戦はテロを助長することになる、対話が重要」として懸念を示した。

[米国/ロシア/ウクライナ] 7月19日に行われたホワイトハウス定例記者会見でカービー・ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)戦略広報調整官は、「ロシアが現在支配下に置いている多くのウクライナ地域を併合するための詳細な計画をレビューしていることを諜報情報等に基づき把握している」と記者団に対して説明した。今年9月に予定されているロシアの地方選挙に合わせる形でへルソン州やザポリージャ州、ドネツク州等をロシア領に併合する可能性を指摘した。

[インドネシア] 7月15日、政府は同国の主要な電力を石炭火力発電から再生可能エネルギー発電へ移行するため「エネルギー移行メカニズム(ETM)」のプラットフォームを立ち上げた。このプラットフォームを通じて、国内外から調達した資金を活用し、脱炭素化を進める。ETMは、11月初旬に英国で開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に合わせてアジア開発銀行(ADB)が打ち出した枠組み。まずはインドネシア、フィリピン、ベトナムで開始する予定とされている。

[日本] 財務省『貿易統計』によると、6月の貿易収支は1兆3,838億円の赤字だった。赤字は11か月連続。輸出額は8兆6,284億円、輸入額は10兆122億円で、いずれも比較可能な1979年以降で最大だった。エネルギー価格の上昇に加えて、円安が輸入価格を押し上げている。輸入価格が前年同月比+44.2%だったのに対して、輸入数量は+1.3%にとどまった。また、輸出価格が+21.1%と2桁増を続けた一方で、輸出数量は▲1.4%と4か月連続で前年の水準を下回った。

[ロシア] ラブロフ外相は、親ロシア派が一部を支配するウクライナ東部だけでなく、南部の制圧も目指していると明らかにした。欧米がウクライナに対し高機動ロケット砲システム「ハイマース」など強力な兵器を供与したことにより、ロシアのウクライナでの軍事作戦の「地政学的な課題は変わった」と述べた。将来のロシア領への編入を見据えた発言とみられる。

[中国] 7月19日、李克強総理は、世界経済フォーラム世界企業家ビデオ特別対話会の席で、中国の今後の経済運営について、「目下のマクロ政策は正確かつ強力で、合理的かつ適度であるため、(今後)過度に高い成長目標のために超大型の刺激策を打ち出したり、通貨を過剰に発行したり、未来を先食いしたりするようなことはしない」と発言した。5月23日に国務院常務会議が決定した6方面33項目の経済安定政策パッケージなどの政策効果が今後もかなり期待できるとしており、「政府として大型の景気刺激策は取らない」との意思を表明したものと理解される。

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