デイリー・アップデート

2026年3月11日 (水)

[南アフリカ/GDP] 

3月10日、南アフリカ(南ア)統計庁(Stats SA)は、2025年第4四半期の実質GDP成長率は+0.4%だったと発表した(前期比、季節調整済み)。前期の+0.3%からさらに加速し、プラス成長は5期連続となった。また、2025年通年の成長率は+1.1%で、2023年の+0.8%、2024年の+0.5%を上回った。

 

今期の成長はGDPの27%を占める金融・保険・不動産・企業サービスが+1.4%成長となり、最大の寄与度となった(0.3%pt)。特に金融仲介、保険、年金資産運用の活動が好調だった。また、好調な観光業により、卸・小売り・飲食業は5期連続のプラス成長となる+0.9%となった。農業も畑作物と園芸作物の豊作により、5期連続の成長となる+0.4%だった。

 

他方で、製造業は自動車および自動車部品やその他の輸送用機器部門が不振だったことを受けて▲0.6%となり、最大のマイナスの寄与度となった(▲0.1%pt)。また、電気・ガス・水道業も電力生産と消費の減少により▲2.2%となった。さらに鉱業はマンガン鉱、クロム鉱、鉄鉱石、ニッケル、銅の生産は増加した一方で、石炭、白金族、金、ダイヤモンドの生産が減少し、▲0.6%となった。

 

需要(支出項目)別では、GDPの6割を占める民間最終消費支出が+1.2%成長となり、最大の寄与度(0.8%pt)となった。政府最終消費支出も財・サービスの購入と公務員への人件費・報酬増により+0.5%だった。総固定資本形成も+1.3%で2期連続のプラス成長となった一方で、輸出は▲0.6%と減少に転じた。輸出の減少と製造業(自動車・自動車部品)の不振は、米国による自動車関税や2025年9月30日から2026年2月まで失効していた「アフリカ成長機会法(AGOA)」が影響した可能性がある。2026年第1四半期(1~3月)の成長率は、中東情勢の緊迫化による油価高騰などがどの程度南ア経済に影響を及ぼすかに注目が集まる。

[インド/FDI規制の緩和] 

3月10日、インド政府は、2020年4月に導入した海外投資規制(2020年プレスノート3号(PN3))を一部緩和することを発表した。本規制では、インドと国境を接する国が直接投資を実施する際には、投資対象分野に関わらず政府の事前承認を必要とすることが定められていた。それまでは特定分野を除き事前承認は不要であった。本規制は主に中国からのFDI規制を想定しているとの考察が多い。今回の発表では、国境を接する国によるインド系企業への出資比率が10%までである場合には事前承認を不要とするほか、資本財・電子部品・ポリシリコンやインゴットウエハー製造事業向けの投資については、申請から60日以内に政府が可否を決定するとしている。

 

インドでは、FDI規制により主に中国からのFDIが低迷し、製造業の生産能力拡大の足かせとなってきた。2020年の規制実施以降、中国からのFDI流入額は、2019年の121.8億ルピーから、2024年には3.1億ルピーまで急減した。例えば2023年には、BYDが予定していたEV・EV用バッテリー製造工場向けの10億ドル規模のプロジェクトに関し、政府が投資申請を拒否した。他方で国内の電子機器・機械類の需要は拡大が続いていたため、輸入に依存せざるを得ない状況となった。特に価格競争力の高さから中国製品の輸入額が急増した。2019年の対中輸入額は684億ドルであったが、2024年には1,270億ドルまで2倍弱拡大した。中でも、スマホやPCに使用する集積回路やリチウムイオン電池、太陽光パネルの部品であるセルなど部品・中間財や半導体製造装置など工作機械の輸入額が急増しており、これら品目(HSコード85・84の品目)は輸入額全体の約6割を占める。

 

インド政府は2020年より実施した「生産連動型奨励策(PLI)」により、これまでスマホや太陽光パネルなどの完成品組立・下流工程育成には成功してきたが、中間財・工作機械など上流工程については輸入依存が継続している。これらの結果、対中貿易赤字も拡大傾向にある。2019年の貿易赤字額は511億ドルであったが、2024年には2倍以上の1,121億ドルまで拡大している。

 

上記傾向は、インド政府が2020年より掲げていた国内製造業発展・輸入依存脱却を目指したスローガン「自立したインド(Self-Reliant India)」政策に反しているため、インド政府は中国からのFDI流入が製造業の生産能力拡大には不可欠であると認識し始めており、直近ではFDI規制や中国人技術者の国内渡航制限を緩和する姿勢や動きを見せ始めていた。2025年7月には、政府系シンクタンクであるNiti Aayogが、中国系企業によるFDIのうち、インド企業への出資比率が24%を下回るものついては事前承認を不要とするなど投資規制を徐々に緩和すべきと提言した(ロイター通信、2025年7月18日付記事)。また12月には、インド外務省が中国人専門職向けビザ発行のための審査手続きを簡素化した(ロイター通信、2025年12月12日付記事)。今般の発表を皮切りに、今後も徐々に投資規制を緩和することが見込まれる。

[中国人の対外認識] 

米カーター・センターとエモリー大学が実施している、中国人の対外認識に関する世論調査「China Pulse」の最新結果が公表された。本調査では、米中関係、貿易摩擦、台湾問題、周辺国との関係などが取り上げられている。

 

調査結果によれば、中国人の対米感情は総じて悪く、好感度は100点満点中34~37点程度にとどまっている。米国を国家安全保障上の脅威とみなす人は73%に達し、特に台湾問題(81%)および経済・貿易分野(81%)が主な脅威と認識されている。一方で、国際経済・貿易、世界の安全保障、技術革新といった分野では米中間に共通の利益があると考える人も多数を占めており、対立一辺倒ではない現実的な認識もうかがえる。

 

米中貿易摩擦については、57%が最終的に均衡した低関税での合意に至ると予想している。その主な理由として、関税による経済的損失が双方にとって大きい点が挙げられている。ただし、米国が貿易戦争を仕掛けた場合には、経済的損失が生じても報復すべきだと考える人が62%に上る。具体的な対抗手段としては、レアアースやソーラーパネルの輸出規制(66%)、米国製品への関税賦課、米企業の中国市場へのアクセス制限などが支持されている。

 

台湾問題については、多くの中国人が台湾を重要視しているものの、その理由は半導体などの技術競争よりも、歴史問題の解決や文化的共通性といったナショナリズム的要因に重きが置かれている。台湾に対する感情自体は比較的好意的であり、統一の方法については意見が分かれるものの、台湾が正式に独立を宣言した場合でも、全面侵攻よりも離島への限定的な軍事行動や経済制裁を支持する割合が高い。また、文化交流や経済交流など、非軍事的手段による関係強化を支持する人も多い。

 

周辺国に対する評価では、ロシアへの好感度が比較的高く、ロシアがウクライナ戦争で勝利すれば中国にとって利益になると考える人が43%に達した。ロシアや北朝鮮との経済協力を支持する意見は多い一方、ロシアへの派兵を支持する声は少数にとどまっている。また、日本や韓国が軍事力を強化した場合には、中国も軍事費を増額して対抗すべきだとする意見が多数を占めた。

[アルゼンチン・ウィーク in NY] 

ニューヨークで開催中の「アルゼンチン・ウィーク」において、ミレイ大統領は経済再構築と投資誘致を掲げたロードショーを展開している。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOとの会談や投資家向けの講演を通じ、これまでの政府の恩恵を受けてきたテックイント社のパオロ・ロッカ氏などの既存のエリートについて「特権を求める者たち」と改めて厳しく批判した。その上で、輸入障壁の完全撤廃と市場競争の徹底を明言し、アルゼンチンにおける「特権ビジネスの終焉(しゅうえん)」を強く宣言している。また、トランプ大統領を「重要な盟友」と位置づけ、米国との戦略的・経済的な結束を強調しながら、2026年を税制改革や教育、規制緩和を含む構造改革の年とすることで、アルゼンチンは世界で最も自由な国になると訴えた。さらに、アルゼンチンはエネルギーの純輸出国になったことや輸出する農作物価格が高騰していることを引き合いに出し、長年懸念されていた外貨準備も潤沢になるとした。

 

今回のニューヨーク訪問の主な意義は、劇的なインフレ抑制の実績を背景に、国際金融市場に対して実体経済の正常化への自信を示すことにある。大規模投資インセンティブ制度(RIGI)を活用し、バカ・ムエルタ油田のエネルギー開発やリチウム・銅などの鉱物セクターへ外資を呼び込むこともその狙いとなっている。さらに、2026年中の国際債券市場への再参入を見据え、投資家からの信頼を確立する極めて重要な局面となっている。

 

投資家層は、月間インフレ率がかつての25%から2%台まで低下した実績を評価し、持続的な成長への転換におおむねポジティブな期待を寄せている。一方で、保護を失う国内産業界や労働組合は、労働改革に対して法的措置を講じるなど強く反発しており、国内の社会的な緊張は依然として続いている。

 

今後の見通しについては、2026年のGDP成長率が4%前後に達し、年間インフレ率も20%以下に落ち着くとされ、マクロ経済の安定化は進む見込みである。しかし、議会における多数派工作の成否や、急進的な改革に伴う国民の痛みが社会的な限界を超えないかどうかが、ミレイ政権の命運を分ける鍵となる。

[独フォルクスワーゲン/純利益は前年比▲44%] 

3月10日、独フォルクスワーゲングループは、2025年の当期純利益は、前年比▲44%の69億ユーロへと大幅に落ち込んだと発表した。この業績悪化の背景には、トランプ米大統領が導入した25%の自動車輸入関税や、かつて最重要の成長市場であった中国での現地メーカーとの激しい競争による販売不振がある。さらに、傘下のポルシェが電気自動車部門の営業不振を理由に内燃機関モデル重視へと戦略を転換したことに伴う巨額のコストも、グループ全体の利益を大きく圧迫する要因となった。ポルシェの戦略転換で約50億ユーロ、トランプ関税で約30億ユーロの負担が生じたという。

 

この厳しい状況を受け、同社のブルーメCEOは、2030年までにドイツ国内のグループ全体で約5万人の雇用を削減する方針を発表し、事前に労働組合と合意していた3万5,000人の削減規模を大幅に上回る厳しい措置となる見込み。

 

一方で、歴史的な業績低迷にあえいでいるにもかかわらず、経営陣に対する高額な報酬が維持されていることが社内で波紋を呼んでいる。ブルーメCEO自身も約740万ユーロの報酬を受け取っていることから従業員側からは強い不満の声が上がっており、労働者にも利益を還元するよう特別ボーナスの支給を求める協議が始まっている。

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