2026年3月18日 (水)
[ブラジル、ローン市場鈍化だが…]
ブラジルの貸出市場の伸びが鮮明となっている。中央銀行によると、総融資額は約7.1兆レアル(約1.4兆ドル)に達したものの、成長率は前年の10.9%から10.2%へ低下した。不良債権比率(NPL)も3.0%から4.1%に悪化し、個人向けでは5%(2024年:3.5%)と商業向けでは2.5%(2024年:2%)と双方で悪化がみられた。金利の高止まり、国内需要の弱さ、財政政策の不確実性などを背景に、経済成長率も3.4%から2.3%へ減速している。
今年もブラジル経済はさらなる成長の鈍化が見込まれており、ローン成長の鈍化は続くと予測されている。10月の選挙が企業心理を冷やし、IMFは今年のGDP成長率を1.6%と見積もる。ブラジル銀行連盟の調査では、ローン成長率は8.4%にまで落ち込むとされ、不良債権比率も年末にかけて5.2%まで上昇する見通しとなっている。ただし、インフレが徐々に落ち着き、政策金利セリッチが15%から年末12%程度へ低下すれば、時間とともに貸出が持ち直す可能性はある。
この厳しい環境下で、ブラジルのネット銀行Nubankは例外的な成長を続けている。同社はブラジルで1億1300万人の顧客を抱え、国内最大の民間金融機関へと成長した。メキシコとコロンビアでも顧客基盤を拡大し、3カ国合計で1億3100万人を超えている。純利益は28.7億ドルに増加(2024年19.7億ドル)し、ROEは30%と非常に高い水準を維持した。
さらにNubankは、中南米外で初となる米国進出に動き、米国通貨監督庁から銀行設立の条件付き認可を取得した。今後、連邦準備制度理事会とFDICの承認を経て、18か月以内に米国で銀行サービスを開始する計画である。今年はAI活用を強化し、グローバルなデジタル金融企業への転換を図る重要な年と位置付けている。
一方で、ブラジル国内では金融機関のデジタル化が進み、支店やATM、スタッフの削減が進む見込みである。フィンテック企業は今後も増加し、特定分野で銀行と激しく競争するようになる。特に、即時決済システム「Pix」の普及は金融包摂を大きく押し上げており、ユーザー数は1億7300万人に達している。月間取引件数は70億件を超え、ブラジルの金融インフラを大きく変え続けている。
こうした動きから、ブラジルの金融環境は短期的には厳しさが残るものの、中長期的にはデジタル化と金融イノベーションが成長の原動力になると考えられる。
[ドイツ/ZEW指数急落]
欧州経済研究センター(ZEW)によると、3月のドイツ景気期待指数は▲0.5になった。2月(58.3)から▲58.8ptの急低下、市場予想(+39.0)を大幅に下回った。3月の調査期間は3月9~16日で、イラン戦争の開始後であり、178人のアナリストが回答した。
景気期待指数の内訳をみると、「改善」が回答者の29.4%を占めたものの、前回調査から減少した(前月差▲32.9pt)。その一方で、「悪化」は29.9%(+25.9pt)へ増加した。その差し引きで、景気期待指数は▲0.5まで低下した。
また、足元の状況を表す現況指数は▲62.9(+3.0pt)となり、前月からマイナス幅を縮小させた。 「良い」が+1.1%(▲1.8pt)へ減少した以上に「悪い」が+64.0%(▲4.8pt)へ減少したため、相対的に小幅に回復した。なお、物価上昇率についての指数は79.2(+81.5pt)へ急上昇した。内訳を見ると、「上昇」が80.3%(+64.3pt)へ大幅に増加した一方で、「低下」が1.1%(▲17.2pt)へ減少した。
バンバッハZEW所長は、「ZEW指数が崩壊した」と総括した。中東紛争の加速がエネルギー価格を上昇させ、物価上昇圧力を高めたこと、それが現在の回復トレンドのリスクが高めていること、これらの影響がどの程度強いのかは紛争の期間と激しさによることなどが指摘された。
なお、部門別の景況指数を見ると、化学の▲29.8(前月差▲43.6pt)の下げ幅が最も大きかった。それに次いで、機械エンジニアリングの▲14.3(▲35.5pt)、自動車の▲41.5(▲34.3pt)の下げ幅が大きかった。多くの産業で2月から軒並み2桁減となるなど、状況は一変した。
[深刻化する重油不足]
今般のイラン戦争で原油やガソリン・ディーゼルが値上がりし、石油化学品部門が混乱に見舞われているが、重油不足も深刻だ。イラン戦争の深刻化により、中東産原油が大幅に失われているが、その多くは重油の得率が高い中重質油である。迂回パイプラインの使用や戦略備蓄放出などで対応しても、油種のミスマッチは起こり得る。アジアの多くの製油所は重質油を前提とした生産設備を持ち、軽質原油で代替が効かない場合がある。長距離輸送の重質油で代替するにも、コストや時間、数量面の制約がある。
国際エネルギー機関(IEA)は3月12日に発表した月報で、ホルムズ海峡の事実上の封鎖やインフラへの軍事攻撃により、湾岸地域の生産者は日量計1,000万バレルの生産停止に追い込まれていると述べた。また、中東地域で日量400万バレル以上の精製能力が既に停止ないし停止リスクに直面している。
この構造問題の結果、世界の重油市場は極めて逼迫している。Bloombergは、重油は「原油蒸留塔の一番下から得られる低価値の副産物」のようにみなされることもあるが、現在起きている前例のない価格高騰は世界経済への警鐘だと指摘する。原油の国際指標価格が1バレル100ドルでも、重油はシンガポールでは1バレル140ドル、フジャイラでは160ドル、環境基準の厳しいグレードは175ドルに達し、2008年や2022年の高値を上回っている。主要港湾では供給枯渇も進んでおり、シンガポールとフジャイラでは在庫が極めて低い。重油が不足すれば、コンテナ船やばら積み船の運航停止にもつながり、物流への影響が世界規模で拡大する懸念がある。
国内でも既に、重油不足の影響が散見され始めた。重油は工場のボイラー燃料として使用されるため、スナック菓子『わさビーフ』の販売停止や銭湯の値上げなど、生活関連分野への影響が報じられている。今回のオイルショックはエネルギー産業だけでなく、サプライチェーンと日常生活全体を揺さぶる事態となりつつある。
[米国債]
米国債は、過去最大規模の社債供給と競合しており、戦争関連支出が積み上がる中、連邦政府の借入コストを押し上げているとFortuneが報じている。AI関連の投資により社債発行が進む中、イラン戦争が財政赤字をさらに拡大させている。さらに関税収入も長期見通しが立ちにくい。財務省は投資家にとって国債をより魅力的なものにせざるを得なくなっている。つまり金利の上昇が必要だ。
3月10日は米国での社債発行額が過去最高を記録した日となった。トランプ大統領が戦争終結の可能性を示唆したことで市場が一時的にだが落ち着き、企業は債券発行するために動き出したから。この日の投資適格債発行総額は650億ドルを超え、2013年の1日あたりの過去最高記録である520億ドルを上回った。この債券発行ラッシュを牽引したのは、電子商取引大手かつAIハイパースケーラーでもあるAmazonで、370億ドルを調達したとされる。投資家の需要が発行額を大幅に上回る約1,230億ドルの注文を集めたため、同社が当初予定していた250億~300億ドルの目標額を大きく上回ることとなった。
この企業債務の急増は、1日の取引高が1兆ドルを超える米国債市場に動揺をもたらすのに十分な規模だった。銀行系アナリストは、この債券発行が米国債10年物利回りに上昇圧力を加えたと指摘しており、実際に6ベーシスポイント上昇した。
他のヘッジファンド系のエコノミストは以前、社債大量発行が連邦政府の借入コストを押し上げる可能性があると警告していた。2026年に発行される投資適格債の規模について、ウォール街の見通しでは最大2兆2500億ドルに達するとの指摘もされていた。その後、状況はさらに大きく変化した。イランとの戦争は長期化する兆しを見せており、原油価格を急騰させている。その結果、インフレ加速への懸念から債券利回りは上昇し、借入コストを一段と押し上げている。イランへ毎日行われる空爆は財政赤字にも負担をかけている。ニューヨーク・タイムズによると、国防総省当局者は先週、議員らに対し、開戦から6日間の費用が113億ドルを超えたと伝えた。また、トランプ氏は国防費を年間1兆ドルから1.5兆ドルに増額すると公約しており、財政赤字をさらに膨らませる恐れがある。米国の債務が持続不可能な軌道にあることは、ウォール街で懸念を強めている。しかし現時点では、投資家は社債と国債の双方に対して強い需要を示しているようだ。Amazonの公募から数日後に実施された220億ドルの30年物国債入札では堅調な需要が見られたが、これは戦争開始以来の利回り急騰が追い風となったと見られる。需要堅調に見えるが金利、つまり価格で調整されている。
[ホルムズ海峡をめぐる米欧の緊張]
トランプ米国大統領はホルムズ海峡の安全確保のため、NATO諸国や日本、韓国、オーストラリアなどの同盟国、さらには中国にも協力を要請していたが、欧州の同盟国の多くはこの要請を拒絶。ドイツのピストリウス国防相は「我々が始めた戦争ではない」と述べたほか、フランスのマクロン大統領や英国のスターマー首相も紛争への参加を拒否し、ルクセンブルクの副首相は米国の要求を「恐喝」だと批判。
欧州の非協力的な姿勢を受け、トランプ大統領は「米国は世界最強の国であり、もはや誰の助けも必要としていない」と述べ、NATOについて米国が巨額の資金で他国を守りながら見返りのない「一方通行の道」だと非難。トランプ大統領に近いグラム上院議員は「大統領がこれほど怒っているのを見たことがない」と発言した。
大統領は直ちにNATOから離脱する意向はないとしつつも、「間違いなく検討すべきこと」と述べ、米国がNATO離脱に際して議会の承認を求める2023年の法律を回避して大統領の権限で離脱できると主張している。
一時緊張が緩和状態にあるグリーンランドをめぐる米国とNATOの緊張関係が、これを機に再燃する可能性に注意が必要。
[イスラエルがイランの高官2人を殺害]
イスラエルは3月16日から17日にかけての攻撃で、イランの最高指導層に近いラリジャニ国家安全保障最高会議事務局長と、民兵組織バシージのソレイマニ司令官を殺害した。両名は体制中枢を担う重要人物で、特にラリジャニ氏はハメネイ師死後、実質的な統治を担う「最重要人物」とされていた。イスラエルは指導部の排除を通じて政権の不安定化を狙い、「体制の中枢を断つ」戦略を強調しているが、イラン側は個々の要人の排除では体制は揺らがないと強く反発している。一方で政権が弱体化し革命防衛隊の影響力が拡大する中で、国内統治はより強硬な方向へ傾く可能性が指摘されている。
戦闘は急速に地域全体へ拡大している。イランはイスラエル本土に加え、湾岸諸国やイラクの米関連施設にもドローンやミサイルによる報復攻撃を継続している。イスラエルもこれに対抗し、レバノンではベイルート空爆や南部への地上侵攻を進めており、ヒズボラとの戦闘も激化している。各地で民間人を含む死傷者が増加しており、戦争は短期決着の見通しが立たないまま長期化の様相を強めている。
国際面では、トランプ政権がホルムズ海峡の航行確保に向けた多国籍連合の構築を模索しているが、欧州諸国や日本などは参加に慎重姿勢を示し、同盟国間の温度差が浮き彫りとなっている。一方でインドは自国船舶の護衛を独自で実施するなど、各国は個別対応を強めている。また、米国内でも亀裂が生じており、対テロ政策を担う高官が「イランは差し迫った脅威ではなかったにもかかわらず、イスラエルからの圧力の下で戦争を開始した」と痛烈な批判をして辞任し、戦争の正当性を巡る批判が顕在化している。
経済面では、ホルムズ海峡の緊張によりエネルギー輸送が制約され、原油・燃料価格が上昇している。米国ではディーゼル価格が急騰し、特に輸送コストの高い商品で価格上昇圧力が強まるなど、物流コストの上昇を通じて物価全体への波及が懸念されている。国連は、戦争が長期化した場合、食料供給の混乱により数千万人規模で飢餓リスクが高まる可能性を警告している。
[コンゴ共和国/大統領選]
3月17日、コンゴ共和国(コンゴ・ブラザビル、以下コンゴ)の国営TVは3月15日に実施された大統領選において、現職のサス・ンゲソ大統領が得票率94.82%で勝利したと報じた。投票率は84.65%だった。野党の主要候補が投獄されるなど大規模な政治弾圧が行われた中で出馬した6人の無名対立候補は、5日以内に結果の異議を訴えることができる。82歳のンゲソ氏はすでに42年間にわたり大統領職を務めており、赤道ギニアのンゲマ大統領、カメルーンのビア大統領に次ぐ長期政権を敷いている。憲法裁判所がンゲソ氏(82歳)の当選を確定すれば、2031年まで5年の任期を得ることになる。
社会・共産主義時代のコンゴで空挺部隊大佐を務めていたンゲソ氏は、1979年のクーデターで政権を掌握。1992年の複数政党制導入後にはじめて行われた大統領選でパスカル・リスバ前大統領に敗北したが、その後リスバ陣営とンゲソ陣営との間で内戦に突入。1997年に冷戦下で同じ東側陣営にあった隣国アンゴラの支援を受けてンゲソ氏は再び権力を掌握し、以降の選挙で再選を繰り返してきた。2015年の憲法改正において、事実上、大統領の任期と立候補の年齢制限が撤廃された。
これまでの選挙と同様に野党の活動が禁止され、野党もボイコットを呼びかける中で行われた選挙では今回も投票当日にインターネットが遮断された。コンゴ政府関係者は投票率を84.65%と報じているが、複数の欧州メディアが投票所には行列がほとんどみられなかったことから、この数字の信ぴょう性に疑義を示している。また、広くコンゴ国民の間でンゲソ氏の長期にわたる強権的な政治に対する諦観が広がる中、前回2021年選挙時の88.40%の得票率を上回る結果は信用に足るものではない。同国はサブサハラでナイジェリア、アンゴラに次ぐ産油国でありながら、国民の4割以上が貧困にあえいでいるが、これまでのところ若者らによる大規模な抗議活動は起こっていない。
ンゲソ氏も自身がすでに高齢であることに鑑み、次回選挙では後進に道を譲る意向を示している。同氏は後継者の指名を行っていないが、息子であるデニス=クリステル・サスー・ンゲソのほか、甥でコンゴ安全保障会議議長のドミニク・オケムバ氏や、従兄弟のジャック・ブヤ国土計画・主要事業大臣など、いずれも「身内」が有力候補として目されている。
コンゴにおける汚職や、人権侵害はたびたび問題視されてきたほか、ンゲソ氏の家族がフランス国内での「不正所得」の横領で司法捜査を受けるなど、ンゲソ氏の利己主義的な動きには批判も多い。その一方で、他のサブサハラ地域と比べて、コンゴの政治・経済は一定の安定を見せている。
石油輸出国機構(OPEC)に加盟する同国の生産割当は27万バレル/日だが、原油生産量は2019年の34万バレル/日をピークに油田の成熟化により減少しており、現在はOPECの割り当てを下回る生産に留まっている。しかし、2025年にフランス資源大手トタル・エナジーズが原油増産のために5億ドルの追加投資を発表。同年に中国系企業ウィング・ワらも沖合の原油・天然ガス鉱区で1日20万バレル/日の原油生産を目標とする230億ドル規模の開発契約を締結。コンゴ政府は2030年までに原油生産量を50万バレルまで拡大する計画を示している。このほかにも、イタリア資源大手・ENIが2023年にコンゴ沖で浮体式液化天然ガス(FLNG)によるLNG生産を開始。2025年には300万トンのLNGを生産し、イタリアなど欧州市場に輸出するほか、一部のガスをガス火力発電用にコンゴ国内に供給している。国内では新規の製油所の建設も進んでおり、石油輸入の減少は対外収支を改善させる材料となる(現在の公的債務は対GDP比で9割を超える危険水準)。
外交面でもンゲソ氏は「パートナーの多様化」をはかり、中部アフリカにおける安定勢力としての存在感を示している。輸出の9割が鉱物性燃料(主に原油)のコンゴはその約6割を中国向けに輸出している。コンゴの総輸出に占める中国の割合は54%で、最大の貿易相手国である。中国は2000年以降のエネルギー需要の急増と中東からの原油輸入依存から脱却するため、西アフリカの産出国からの調達を進めた。中国にとって共産主義時代からつながりがあるコンゴは、当時からアンゴラ、ナイジェリアに並ぶ調達先であり、当時内戦終結直後に大統領に就任したンゲソ氏と長期にわたる協力関係を温めている。コンゴは2024年に「中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)」の共同議長を務めており、また2027年のFOCACは首都ブラザビルで開催される予定だ。また、コンゴは旧ソ連時代からのつながりからロシアとの関係も深い(現在は安全保障面での協力)。
他方で、西側のパートナーとの関係維持にもぬかりがない。サブサハラの旧フランス植民地で反仏感情が高まる動きが強まる中、ンゲソ氏は2025年にフランスでマクロン大統領と会談し、コンゴにとって最大の援助国であるフランスの支援をとりつけている。フランスにとってはトタルが同国で安定的に操業を続けるためにも良好な関係の維持は必要だ。米国も引き続きコンゴを「アフリカ成長機会法(AGOA)」の適格国としてみなしている。
向こう5年はンゲソ氏が大統領職を務めることにより、大きな政策転換などは起こらない見込みが強まったが、この5年間での権力の移譲がスムーズに進行するかに注目が集まる。
[オーストラリア/利上げ]
3月17日、オーストラリア準備銀行(RBA)は金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げ、4.10%とすると決定した。4.10%は、G10諸国の中央銀行の中で最高水準。引き上げの理由に関し、ブロック総裁はインフレリスクが上昇していることを挙げた。政策決定委員9人のうち、利上げ賛成5人、据え置き賛成4人と極めて僅差で利上げが決定された。
オーストラリア経済は足元で堅調に成長している。2025年第4四半期(10-12月期)の実質GDP成長率は前年同期比2.6%と2025年第1~3四半期から加速したほか、市場予想(2.2%)を上回る伸びを記録。ただ支出別の寄与度では、政府支出増加や防衛装備品購入など政府部門の固定資本形成の増加、在庫の積み上がりが成長率上昇要因となっており、2024年以降に成長率を牽引してきた民間消費についてはインフレによる実質所得の伸び低下もあり、第4四半期にはむしろ減速した。
潜在成長率は2%程度と推計されており、RBAも需給ギャップは2025年末時点にてプラスであったと推計している。また2026年1月のインフレ率は3.8%と、2025年6月の水準(1.9%)から大きく上昇しているほか、RBAが定める目標バンド(2~3%)を上回って推移し続けている。加えて2025年第4四半期の失業率は4.2%とRBAの予想値(4.4%)を下回り推移しているほか、直近1月も4.1%を記録するなど、労働市場・財/サービス市場の双方において需給の逼迫感が懸念されていた。
直近のイラン情勢の影響に関し、オーストラリアは原油・ガスについては純輸出国である一方で、ガソリンなど石油製品に関しては精製能力不足から純輸入国となっている。特にガソリンについては、既に小売価格が2月時点より約35%値上がりしており、インフレ上昇圧力を高めかねない(AMP(豪州金融機関)、2026年3月17日付レポート)。石油製品の備蓄日数も、ガソリンは36日分・航空燃料は29日分・ディーゼルは32日分と、IEAの定める基準(純輸入量の90日分)を大きく下回る水準となっており(ロイター通信、2026年3月13日付記事)、今後輸入が滞った場合には経済活動が停滞しかねない。
今後の政策金利動向に関し、金融市場では年内に4.35%への追加利上げが織り込まれている。次回5月会合での利上げを予想する見方もあるが、今回の政策決定会合では5対4と僅差での利上げ決定となったことからもわかるとおり、利上げ自体には賛成であるものの時期を遅らせるべきとの考えを持つ政策決定委員も多いと考えられているため、次回会合では据え置かれるとの見方もある。
[中越「3+3」]
3月17日、中国とベトナムは北京で、外交・国防・公安(警察)分野の閣僚級協議「3+3」対話の初会合を開催した。中国側からは王毅政治局委員兼外相、董軍国防相、王小洪公安相が出席し、ベトナム側からはブイ・タイン・ソン外相、ファン・バン・ザン国防相、ルオン・タム・クアン公安相が参加した。外交と軍事に加え、治安当局が加わる閣僚級協議の枠組みは、両国関係において新たな試みとなる。
中国側の公式発表によれば、会合では国境管理、海上安全、越境犯罪対策などにおける協力強化を確認し、政治的信頼の深化と地域の安定維持を進める方針で一致した。王毅氏は「戦略的相互信頼を強化し、安全保障協力を深化させる」と述べ、外交・国防・公安の三分野を横断した協力を制度化する意義を強調した。
王毅氏は、2026年の全国人民代表大会(全人代)に合わせた記者会見において、中国が提唱する「グローバル・セキュリティ・イニシアティブ(GSI)」に加え、「グローバル・ガバナンス・イニシアティブ(GGI)」を積極的に推進する考えを示した。中国は、米国のように軍事同盟ネットワークを拡大するのではなく、治安管理や統治モデルの共有を通じて国際的影響力を広げる戦略を打ち出している。外交・軍事・警察の三分野を束ねた「3+3」は、こうした治安協力型外交を制度化する試みと位置づけられる。
ベトナムは、南シナ海を挟んで中国と隣接する地政学的に重要な国であり、近年は米国との関係強化も進めており、東南アジアの安全保障環境に大きな影響力を持つ。また、共産党による一党支配という政治体制上の共通点もある。さらに、ベトナムでは公安相を長く務めたトー・ラムが最高指導者の地位にあり、治安や社会管理分野での協力を進めやすい環境が整っているとみられる。
中国にとって今回の「3+3」は、周辺外交を強化すると同時に、治安協力を軸とした新たな国際協力モデルを具体化する場となる。米国主導の同盟網とは異なる形で地域秩序への関与を広げようとする中国の動きとして注目される。
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