デイリー・アップデート

2021年8月11日 (水)

[中国] 8月9日、国家統計局が発表した7月の工業品卸売物価指数(PPI)は前年同月比+9.0%と6月から0.2ポイント上昇し、約13年ぶりの高水準を記録した5月と並んだ。工業品卸売物価は国際的な原材料価格高騰の影響で高止まりしており、企業への圧力が高まっている。同時に発表された7月の消費者物価指数(CPI)は同+1.0%と、6月を0.1ポイント下回り、2か月連続で減速。昨年の豚肉価格高騰の反動で豚肉価格が同▲43.5%だったことが大きく影響したが、今後その効果は剥落するとみられる。

[ドイツ] 欧州経済研究センター(ZEW)が公表した8月の景気期待指数は40.4となり、7月の63.3から大幅に低下した。低下は3か月連続。内訳をみると、「改善」が51.1%と前月から16.1pt減少し、「悪化」が10.7%と6.8pt増加した。国・地域別にみると、米国やユーロ圏経済への改善期待が大きい一方で、中国経済の鈍化が懸念されつつある。また、現状指数は29.3となり、7月の21.9から上昇した。足元の景況感は改善しているものの、先行きへの懸念が大きくなっているようだ。

[フィリピン] 8月10日発表の2021年度4-6月期実質GDP成長率は市場予想を超える前年同期比+11.8%となり、6四半期ぶりにプラス成長に転じた。しかし前年同期の落ち込みからの反動分が大きく、コロナ前の水準は未回復(新型コロナウイルス発生前の2019年4-6月期比では▲7.2%)で、季節調整済み前期比もマイナス(▲1.3%)。民間消費が前年同期比+7.2%とプラスに転じ、総固定資本形成が同+37.4%、財・サービス輸出が同+27.0%と大幅上昇。一方、新型コロナウイルス感染再拡大は収まっておらず、首都圏中心の活動制限は再強化中で、民間消費の低迷は不可避とみられる。政府は2021年の実質GDP成長率見通しを+6.0~+7.0%としているが、その達成は危ぶまれている。

[イスラエル/モロッコ] イスラエルのラピード外相が8月11-12日の日程でモロッコを訪問する。昨年12月に両国が国交を正常化して以来初めての外相による訪問で、イスラエル外相のモロッコ訪問は2003年以来。両国をつなぐ直行便は今年7月に就航済み。議会外交国防委員長やモロッコ生まれの大臣、保健省高官などを帯同し、モロッコのブリタ外相との会談や首都ラバトでのイスラエル連絡事務所開設式出席、カサブランカのシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)訪問などが予定されている。

[米国] 8月10日、上院にてインフラ整備法案が超党派の支持を得て可決された(賛成69票、反対30票)。8年間で1.2兆ドル規模の歳出になる見込みで、道路や橋梁建設に1,100億ドル、送電網整備に730億ドルといった計画が含まれている。財源にはコロナ対策予算の余剰金などを充てる。バイデン政権の政治的勝利だが、民主党左派は、気候変動対策や社会政策上の手当てが不十分と反発。議会民主党は、別途、3.5兆ドルの歳出法案を独力で可決する構えを見せている。

[米国] ワシントン州からオレゴン州、カリフォルニア州北部にかけての太平洋岸北西部地域は記録的な干ばつと熱波に襲われている。カリフォルニア州水資源省は、州内で二番目に大きな規模を誇る人工湖であるオロビル湖の貯水量が発電に必要な最低水準近くまで低下したために、州内の主力発電所の1つであるハイアット水力発電所の稼働を8月5日に停止した。電力会社は州民に対して、7月28日から自主的節電への協力を要請。

[ベラルーシ] 8月9日、米国・英国・カナダの3か国は、大規模デモを招いたベラルーシ大統領選から1年となったのに合わせ、強権支配を続けるルカシェンコ政権に対する追加制裁を発表した。ルカシェンコ大統領は8月9日の会見で、必要に応じ制裁圧力に対応すると述べる一方、自身が独裁者であるとの批判を否定し、クーデターを企てる反対派からベラルーシを守ったのだと主張した。

[中国] 8月10日、商務部、国家発展改革委員会など9部門が、「物流の高品質発展特別行動計画(2021-2025年)」を発表。計画は、2025年までに標準化・デジタル化・スマート化・グリーン化した物流システムの構築、ブランド力・国際的競争力ある企業の育成などの目標を掲げている。重点施策として、物流インフラのネットワークの最適化、都市と農村の効率的な配送システム構築、「グレーターベイエリア」など国家的地域戦略との一体化、コールドチェーンの発展推進、国際物流の円滑化などが提示された。

[中国/日本] 今年5月、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、大阪ガスと国際協力銀行(JBIC)の官民連合が関与するプロジェクトへの融資を決定、日本企業が借入人として関与するプロジェクトへのAIIBによる初融資となった。プロジェクトは大阪ガスとJBICが出資するシンガポールのエンジニアリング事業会社AGPがインドで実施する都市ガス配給事業。総事業費用5.57億ドルのうち、AIIBは7,500万ドルを融資する。日本企業のプロジェクト参加は信用向上につながるため、AIIBは日本企業の関与する案件を積極的に支援したい考えという。

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